我が名は豪鬼! メイドを極めし者なり! 作:とんこつラーメン
でも、戦うとは言ってない。
その代わり、別の主人公たちが大活躍するから是非も無いよネ!
「はぁ……はぁ……はぁ……!」
今にも泣きそうな少女の手を引いて、響は必死の形相で走っていく。
この時、初めて彼女は『命懸け』という言葉の意味を正しく理解した。
「急がなきゃ……急いで逃げなきゃ……!」
「お姉ちゃん……」
背後からは、触れただけで人間を灰に変えるノイズの群れが。
万が一にでもアレに追いつかれれば、何の力も無い自分達では成す術がない。
息も絶え絶えになりながら、響はどうしてこんな事になったのかを考えていた。
この日、響は親友の未来と一緒にツヴァイウィングの最新曲のCDを購入する為に、放課後に街のCDショップへと足を運んでいた。
店の中をのんびりと見て回り、ようやくして目的の品を見つけた……その時だった。
いきなり街中に警報が鳴り響き、次々と街中の店のシャッターが閉じていく。
それと同時に人々が一斉にどこかへと走っていく光景が見えた。
『ノイズ』が来た。
これまでにも何度もノイズの警報を耳にし、その度に避難を繰り返していた彼女達は、直感的にそう思った。
今回も、急いで店から出て避難用のシェルターへと急がなければ。
そう思っていた矢先、響は店の中から、泣きながら一人で母親の事を叫んでいる少女の姿を見つけた。
恐らく、避難の途中で親とはぐれてしまったのだろう。
このままでは少女の命が危険に晒される。
常日頃から人助けを信条としている響に、その子を見捨てるという選択肢は存在していなかった。
結果、彼女は親友の必死の呼び掛けにすら応じず、そのまま混乱渦巻く街中へと飛び出していってしまった。
そして、今に至るという訳だ。
本来ならば自衛隊が避難誘導を行っている筈だが、周りには誰もいない。
恐らく、既に彼女達以外の人々の避難は完了してしまっているのだろう。
つまり、二人は逃げ遅れてしまった事になる。
その事実に気が付きながらも、必死に理性で否定しながら只管に走る。
(どうしよう……どうしよう……! これ以上、逃げ続けてたら私よりも先にこの子の体力が尽きちゃう……! あぁ~……こんな事になるんだったら、未来みたいに運動系の部活にでも入っておくべきだったかも……)
後悔先に立たず。今更言っても後の祭りである。
重要なのは、過去を嘆くよりも今をどうするか、なのだから。
「こうなったら……」
何を思ったのか、響は少女の体を抱えてから、そこら辺にある物陰へと隠れる事に。
これでノイズをやり過ごせたら最高だが、実際にはどうなるかは全く分からない。
響自身も恐怖に震えながら、それを誤魔化す為に庇うように少女を抱きしめる。
「怖いよぉ……お姉ちゃん……」
「大丈夫……大丈夫だよ。私が付いてるから」
きっとノイズは自分達を見失ってどこかに消えてくれる。
そう信じて、必死に息と気配を殺す。
心臓の鼓動音すらもノイズに聞こえてしまうんじゃないか。
そんな疑心暗鬼にすら捕らわれていた響の胸の中に、突如として胸の中に謎の旋律が流れてきた。
本人からすれば意味が分からなかった。場違いだと思った。何を考えてるんだと思った。
それでも、彼女は無意識の内に『ソレ』を口ずさんでいた。
「Balwisyall Nescell gungnir tron」
その瞬間、彼女の体が光に包まれた。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
二課の本部では、現場へと急いでいる装者二人と豪鬼の様子をモニターしていた。
「相変わらず、物凄い速度で飛ばすなぁ……」
「しかも、今度は女の子を二人も乗せて」
「……あの空飛ぶ箒に乗った魔法少女みたいな子に関しても、後で聞くべきかしらね」
「全ては今を乗り切ってからだ」
「そうね」
一般市民の避難自体は無事に完了しつつあった。
今更ながら、自衛隊の手際の良さには舌を巻く。
「こ…これはっ!?」
「どうしたっ!?」
「ノイズとは全く異なる高出力エネルギー反応を検知しました!」
「特定急いで! 私も手伝うから!」
「分かりました!」
了子も機器の前に座り、オペレーター二人を手伝う形で解析を急ぐ。
その顔には珍しく焦りが見えていた。
「この波形は……まさか、アウフヴァッヘン波形っ!?」
「何ぃっ!?」
「しかも、この波形はまさか……!」
了子の助力もあってか、すぐに波形の特定はされ、その結果がモニターに表示される。
だが、それはその場にいる誰もが驚愕するような結果だった。
「嘘……でしょ……?」
「こんな事が……!?」
「ガングニールだとぉっ!?」
・・・・・
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・・・
・・
・
今から向かっている現場にてガングニールの反応が出た事は、すぐに装者の二人にも伝えられた。
翼のバイクにて疾走し、その後ろに乗っている奏は大きく目を見開いて驚いた。
「嘘だろ……? なんでガングニールの反応が出るんだよっ!? ちゃんとガングニールはここにあるぞ!」
「急ぎましょう奏。私も本気で訳が分からないけど、それは私達が到着すれば分かる事だから」
「そう…だな。まずはノイズ共をぶっ倒す方が先決か」
「その通り。豪鬼さんも今向かっている最中らしいから、私達も急がないと!」
「あぁ! 師匠にばかり苦労を掛けさせる訳にはいかないもんな!」
「そういう事! それじゃあ、スピード上げるからしっかりと掴まってて!」
「えっ!? ちょっとまだ心の準備が……」
「いくわよ!!」
「のあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!? あ、舌噛んだ」
地味に
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
響は本気で混乱の極みにあった。
いきなり自分の体が光ったと思いきや、まるで日曜日の朝8時に放送している例のアレみたいな格好に変わっていたのだから。
オレンジ色のスーツのような物を身に纏い、普通に考えればかなり恥ずかしい。
「え……え……えぇ~~~~っ!?」
「お姉ちゃん……かっこいい……」
思わず大声を出してしまう響に対して、女の子は恐怖を忘れて見入る始末。
そんな時間も、すぐにノイズによって壊されてしまう。
「お…お姉ちゃん! 後ろ!!」
「え?」
女の子の必死の声に振り向くと、そこには既に攻撃態勢に入っているノイズの姿が。
反射的に女の子の体を抱えて、その場から飛んで逃げようとする。
だが、それはいい意味で予想外な結果となった。
「すごい飛んでる~!」
「あ……あれぇ~っ!? いつの間に私ってばスーパーマンみたいになってるのっ!?」
まるでどこぞの戦闘民族の如きジャンプ力を発揮し、あっという間にその場から離脱。
このまま跳躍を繰り返せば逃げられそうだが、未だに今の状況を正しく認識していない響は、あろうことか真っ直ぐと着地してしまった。
しかも、その途端にノイズ達に囲まれてしまう始末。
「う…嘘……!?」
「お姉ちゃん……!」
絶体絶命。万事休す。これまでなのか。
いつも前向きな響ですらも、本気で絶望しかけた……その時だった。
「そこの君!! 今すぐに真っ直ぐに上に跳べ!!」
「えぇぇっ!?」
「いいから早く!!」
「は…はい!!」
謎の声に言われるがまま、響は再び大ジャンプをする。
その瞬間、仄暗い物陰が眩しく光り出した。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
真 空 波 動 拳
青白い巨大なレーザー砲のような一撃が、響たちを囲んでいたノイズ達を文字通り一網打尽にした。
「す…凄い……」
自分の中の常識が壊れてしまうような攻撃に、響は純粋に驚いていた。
着地をしてから攻撃が放たれた場所を振り向くと、物陰から以前に見た白い道着の男、リュウが悠然と歩いてきた。
「あ…あなたはっ!?」
「ん? 君は確か、あの時の……」
リュウの方も響の事を覚えていたようで、顔を見た途端に目を見開いた。
だが、すぐに彼女が抱えている女の子を見て、すぐに事情を察した。
「成る程な。そういうことか」
「え?」
リュウが響に背を向けて構えると、先程やって来た場所からノイズの増援がやって来ていた。
しかも、今度はそれなりに体が大きな個体も交じっている。
「ここは
「逃げるんじゃないんですか?」
「ここで下手に逃げたりしたら、また別の場所で奴等に襲われる危険性がある。そうなるぐらいなら、ここで迎撃をした方がまだ安全だ」
「な…成る程……。でも、一人じゃ……」
「大丈夫。俺は一人じゃない」
「へ?」
響が目を丸くしてると、今度は後ろから赤い影がいきなり飛び出してきて、炎と共にノイズの群れを粉砕した。
疾 風 迅 雷 脚
「うえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」
炎を纏いながら降り立ったのは、リュウとは対照的な真っ赤な道着を着た金髪の男だった。
彼こそ、リュウの幼馴染にして、共に剛拳の元で修行に励んだ兄弟弟子にして、お互いに宿命のライバルと認め合っている男【ケン・マスターズ】である。
「遅かったなケン」
「文句を言うなよ。思ったよりも数が多かったんだよ」
笑い合いながら拳をぶつけ合う二人。
鋼よりも堅牢な男の友情が其処にはあった。
「で、その子達はなんなんだ?」
「どうやら、逃げ遅れてしまったらしい」
「成る程な。……お嬢ちゃんはどうして、そんなコスプレをしてるんだ?」
「いや、正直言って私にも何が何だか……」
ケンの素朴な疑問に戸惑う響。
本人も自分の身に何が起きたのか全く理解出来ていないので、この反応は仕方がない事だった。
「っと。んな話をしてる場合じゃなかったな」
「あぁ。まだデカい奴が残っている」
「となれば……」
「やる事は一つだな」
大型ノイズに対して構える二人。
蒼き風の拳を持つ男、リュウ。
烈火を纏いし格闘王、ケン。
嘗て、幾度となく世界の危機に立ち向かってきた最強の二人がここに揃った。
「リュウ、久々にアレをやるか!」
「アレか! 分かった!」
リュウとケンが一緒に走り出したと思いきや、ケンがいきなり飛び上がり、そこから炎を纏った竜巻旋風脚を放ちながらノイズの背後に回る。
その際にもちゃっかりとダメージは入っているのが、なんともケンらしい。
「いくぞ、リュウ!」
「おう!!」
一瞬のうちにノイズの懐に潜り込んでいたリュウとケンが放つ怒涛の乱舞攻撃。
唯でさえ気を纏った二人の攻撃はノイズにとって一撃必殺の威力があるのに、それを連続で浴び続けている。
リュウが拳を放てばケンが蹴りを。
逆にケンが拳を放つ時、リュウは蹴りを撃つ。
その動きはまさに阿吽の呼吸。息が合っているなんて次元じゃない。
事前に全く打ち合わせなんてしていないにも関わらず、その動きはコンマ1秒の狂いも無い。
これ程のコンビネーションが出来る者など、果たしてどれだけいるだろうか。
「こいつで!!」
「トドメだ!!」
双 龍 拳
風と炎の昇龍拳が合わさり、二乗化したその圧倒的な威力により、二人よりも遥かに巨大な体躯を誇っていたノイズは手も足も出ずに消滅していった。
「「よし!!」」
言葉が出なかった。
ノイズの前では人間なんてどこまでも無力だと思っていた。何も出来ないと思っていた。
けど、目の前の二人は違った。
普通なら怯えて逃げるような相手にも、全く恐れることなく立ち向かい、見事に勝ってみせた。
これこそが人間の可能性。これこそが人間の強さ。
心臓がとてつもない速さで鼓動する。
今、自分は興奮をしているのだと響は自覚した。
そして、生まれて初めて自分が人間であることを誇りに思った瞬間でもあった。
「響さん! 御無事ですかっ!? ……って、え?」
「リュウさん……!?」
「ウキュ~……」
「は…早すぎるぞ……」
そこに遅れて到着した豪鬼たち。
さくらはリュウがいた事に驚き、庵は目を回し、デミトリは疲れ果てて状況把握どころではなかった。
この日、本当の意味で運命の歯車が回り始めた。
まさかの主人公が最後にだけ登場。
そして、またもや装者達の出番なし!!
次回は響が二課に行く?