我が名は豪鬼! メイドを極めし者なり! 作:とんこつラーメン
本人を置いてきぼりにして状況は進んで行きます。
果たして、彼女は原作主人公らしい活躍が出来るのか?
「……で? 誰でもいいので、このカオスな状況を説明してくれませんかね?」
もう本気で訳が分からない。
私がバイクをかっ飛ばして超特急で現場に急行したかと思いきや、いつの間にかノイズは全滅していて、この場には何故かリュウとケンがいい汗掻いた状態で笑っていて、それを目が点になった状態で見ているシンフォギアを纏っている響さん。
彼女が着ているのは、間違いなく原作でも纏っていたガングニールだ。
やっぱり、こうなってしまったのか……。
「え…え~っと……そう言われましても……私にもいきなり過ぎて何が何だかって感じで……」
「でしょうね」
未だに困惑しまくりの響さんに状況説明は流石に求めてませんよ。
仮に冷静だったとしても、ちゃんと説明出来るかは甚だ疑問ですけど。
「もしかして、出現したノイズを一掃したのはお二人ですか?」
「あぁ」
「まぁな。にしても、まさか本当にメイドになってやがるとはな……。しかもそれ、コスプレの衣装とかじゃなくて、本職の奴が着る服だろ? よく手に入ったな……」
バイクから降りて二人の元まで歩いていくと、ケンからマジマジを体を見られた。
彼の場合はリュウとは違って俗世間にも詳しいですから、ちゃんと会話が成立するんですよね。ちょっとだけチャライ部分があるけど。
「リュウさん!」
「さくら? なんでここに?」
「豪鬼さんにお願いして連れて来て貰いました!」
「みたいだな。豪鬼がメイドでバイクって……もう滅茶苦茶じゃねぇか」
「そこ。うるさいですよ」
私が何に乗ろうがアナタには関係無いでしょうに。
ケンだって普段から高級車に乗ってる癖に。
「……んで、さっきからバイクの上で伸びてる女の子と、箒に跨って宙に浮いてる子は何なんだ?」
「お二人もよ~く知ってる人物達ですよ」
「あの赤い髪の子に関しては、なんとなく予想がつくけどよ……」
なんとか復活した庵さんが、頭を揺らしながらもヘルメットを外してから降りてきた。
「うぅ~……まだ頭がクラクラする……」
「無理もあるまい。あの速度は普通じゃない」
流石に心配になったのか、デミトリさんが彼女の背中を擦ってあげていた。
傍から見ると美少女同士の美しい友情に見えますけど、実際の中身は成人男性と吸血鬼ですからね。
読者の皆さんも、決して変な夢は見ないように。
「……む? その無駄に白い道着と目立つ赤い道着は……」
「リュウとケン・マスターズか」
「俺等の事を知ってるって事は、やっぱり……」
「まさかとは思うが、その赤い髪の子は……八神庵か?」
「そうだ……久し振りだな……う……!」
完全に酔ってしまったようで、早歩きで壁まで行ったかと思うと、そこでしゃがみ込んでしまった。
「んで、その魔法少女っぽいのは……」
「誰が魔法少女だ! 私は誇り高き高貴なる吸血鬼だ! 二度と間違えるなよ人間!!」
「その口調に吸血鬼って……誰かを彷彿とさせるよな」
「その予想は当たってますよ」
「へ?」
「彼女はあの『デミトリ・マキシモフ』その人です」
「え?」
「なぁにぃぃぃっ!? 冗談だろっ!?」
「冗談であればどれだけよかったことか……ハハハ……」
「笑いながら泣いてるし……」
彼…じゃなくて、彼女からしたら、もう笑うしかないんでしょうね。
元の姿は完全になりを潜めて、完璧なまでの美少女となってますから。
取り敢えず、変な誤解が生まれる前に軽く事情説明。
かくかくしかじか。かくかくうまうま。
「つまり、デミトリの技が暴発した結果、庵とデミトリ本人が女の子になっちまったと」
「そうです。そこら辺については余り深くツッコんであげないでください。本人達が一番気にしてるんで」
「分かった。その辺りは別に気にしないさ」
「ですよね! 二人共すっかり可愛くなって、今じゃ大人気ですから!」
そういうさくらさんも、密かにファンが増えつつあるんですよ? 自覚あります?
『あ~……豪鬼くん?』
「あ。すっかり忘れてました。なんですか?」
『一応、こちらでもモニターはしてたんだが……なんだか前にも似たような事が無かったか?』
「そうですっけ?」
全く記憶にございません。
メイドである私にとって、荒事は日常茶飯事ですから。
「ところで、翼さんと奏さんは……あ、いいです。たった今、到着したみたいですから」
私達が話している間に、翼さんの運転して奏さんが後ろに乗ったバイクがやって来た。
まだシンフォギアは装着してないようで、ヘルメットを除けば普通の服装だ。
「遅れて申し訳ありません! ……あれ?」
「なんか……もう終わってね?」
「みたい……ね……」
そうですよね。分かります。よ~く分かりますとも。
この時、私は初めて心の底から二人に対して申し訳ない気持ちで一杯になった。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
それから十数分後に二課の本部から他の黒服さんを連れて緒川さんがやって来た。
彼も現場を直接見て、顔を引き攣らせながら冷や汗を掻いてました。
「あの~…豪鬼さん? ご説明は……」
「ちょっと待ってください。実は私も少々困惑していまして、頭の中を整理している最中なんです」
「そ…そうなんですね」
本気で頭が痛くなる……。
本来なら私や翼さん、奏さんの二人と一緒にノイズを撃退し、そのまま原作の流れに沿って話を進めていくつもりだったのに……。
(ここで
完全に私達が噛ませっぽいじゃないですか! すっごい恥ずかしいんですけど!
庵さんは黒服さんの一人に薬を渡されて飲んでるし、当の二人はツヴァイウィングの二人と話してる。
「あ…アンタ……もしかして、あの全米格闘王の『ケン・マスターズ』かっ!?」
「もしかしなくても、俺がそのケン・マスターズだぜ」
「おぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!! まさか本物と会えるなんて思わなかった!!」
「え…っと? 奏? この人と知り合いなの?」
「つ…翼、まさか知らないのか? ケン・マスターズと言えば世界的な有名人だぞ!」
「そうなの?」
「あぁ! 全米中の腕に覚えのある格闘家が集う大会で何度も何度も優勝をかっさらってる世界トップクラスの超一流の格闘家だ! 試合の光景は日本でも中継されていて、すっごい大人気なんだぞ!」
「奏がここまで夢中になるなんて……」
「ハハハ……ケンには熱狂的なファンがいるんだな」
「それ、お前が言うのかよ?」
なんだか盛り上がってますねぇ~。
ここで一番の重要人物である響さんは、なにやら書類を書かされている。
多分、私が初めて二課と接触した時に書かされた物と同じやつだろう。
因みに、響さんが連れていた少女は、後でやって来た自衛隊の方々が保護して、無事に母親と再会出来たんだとか。
「この間会ったリュウはともかく、ケンまで日本に来ているとは意外でした」
「そうでもないぜ? 俺にとっては日本は第二の故郷だし、割と頻繁に家族と来てたりするぞ?」
「そうだったんですか」
これは素で知らなかった。
ケンは家族サービスの出来るいいお父さんのようです。
「あれ? 豪鬼と仲良さげに話してるって事は、ケン・マスターズと知り合いなのか?」
「知り合い…ですか。ある意味では、私と彼等とはそれ以上に関係になりますね」
「それはどういう……?」
「まず、このケンと似たような格好をしている彼はリュウといいまして、所謂ケンの幼馴染みたいな存在なのです」
「幼馴染か……言い得て妙だが、悪くは無いな」
何も知らない人達に説明する時は、これが一番楽なんですよ。
「リュウだ。よろしく頼む」
「「ど…どうも……」」
リュウから差し出された手を、恐る恐る握り返す二人。
さっきまでとは違った緊張が走っているようだ。
(この空気……なんだか豪鬼さんと似てる気がする……)
(すっげー爽やかな人だな……)
リュウってば、本当に誰彼構わずに仲良くなろうとしますね。
さくらさんが嫉妬しても知りませんよ?
「さっきの説明の続きですが、リュウとケンは同門……つまり、幼い頃から同じ師匠の元で修行を共にした兄弟弟子なんです」
「その師匠ってのは……まさか……」
「私の実の兄、剛拳です」
「「マジですか!!」」
マジです。
「だから、私と二人の関係を簡潔に述べると……」
「豪鬼は俺達にとって親戚の姉貴……に近いのかな?」
「俺にとっては目指すべき目標でもあるかな」
「あら。嬉しい事を言ってくれますね」
私が目標……ですか。
なんだか、やっと兄から一本を取ったような気分ですね。
「ははは……豪鬼の交友関係って……」
「大抵の事じゃ驚かない自信が付いたつもりだったけど……」
「おっと。この程度で驚いてちゃ、まだまだだぜ」
「はい?」
「俺やリュウもそうだけど、豪鬼も相当に顔が広いからな。俺等以外にも、とんでもない連中と普通に知り合ってるぞ」
とんでもないって……あ、うん。とんでもないわ。
ケンの言ってる事は全く間違ってないわ。
「はぅ~……やっと終わったよぉ~……」
ここに来てやっと響さんのご登場。
どうやら、相当に参っている様子。
「響さん。一先ずは御無事でなによりです」
「豪鬼さん……ありがとうございます。でも、なんでここに?」
「未来さんから電話があったんですよ。避難中に響さんとはぐれてしまったと」
「未来……」
響さんと未来さんはリュウとケンにも負けない仲良し同士。
その一番の親友を心配させてしまった事に罪悪感を覚えてしまったんでしょう。
ここは彼女を慰める為に、そっと頭を撫でながら軽く注意喚起でもしときましょう。
「帰ったら、ちゃんと未来さんに謝るんですよ?」
「はい……」
「それと、誰かを助けたいと思う気持ちは立派ですが、それは他の誰かを心配させていい理由にはなりません。今後はちゃんと、周りをちゃんと見て行動しましょうね」
「へへ……なんだか、豪鬼さんってお母さんみたい……」
お母さん……ですか。
私もいつか、誰かと結婚でもして子を産むのでしょうか……。
全く想像出来ませんけど。
「それと」
「わっ!」
彼女の肩を掴んでから振り向かせて、リュウとケンに向き合う形にする。
「ちゃんと、この二人にもお礼を言いましょうね」
「そうだった! え…えっと……助けてくれてありがとうございました!」
「気にすんなって。あれぐらい、俺等には当たり前の出来事だしな」
「これも修行の一環だ。それよりも、君に怪我が無いようでよかった」
「また……助けられちゃいましたね」
「覚えていたのか?」
「はい。忘れるなんて出来ませんよ……あの時の事は……」
あらら。なんだかちょっぴりいい雰囲気。
これは、さくらさんに強力なライバルが登場ですね。
「えっと……さ。お前って、あの時の……ライブに来てた奴…だよな?」
「あ、はい。お久し振りです」
響さんの体を見つめながら、奏さんが翼さんと小声で話す。
私には普通に聞こえてますけどね。
「なぁ……やっぱこれって……あの時、アタシのガングニールの欠片を飲み込んだせいだよな……?」
「だとは思うけど……専門家じゃない私達で安易に判断しちゃいけないと思う」
ここは矢張り、了子さんに詳しく検査して貰った方が賢明なんだろうか?
でも、彼女だしなぁ~………ちょっと信用性に欠けると言いますか……。
「ところで、これってどうやって脱ぐんですかね?」
「……どうやってだっけ?」
「今じゃもう殆ど感覚的にやってるから、言葉じゃ説明しにくいわね……」
こればかりは私からは何も言えない。
自然と解除をされるのを待つしかない……と思った矢先、響さんの体が急に光ってギアが解除された。
「あ。戻った」
毎度毎度思うけど、この装着のシステムって本当にどうなってるんでしょうね。
一応の説明は受けましたけど、それでも分からない点は多々あるんですよね。
「お話し中に失礼します」
「緒川さん。どうしました?」
「司令とも相談したのですが、やはり、彼女達に本部に一度来て貰ってから詳しく事情を聴きたいという事になりまして」
ふむ……妥当な判断だな。
あそこなら他の組織よりも信頼性は高いし、弦十郎さんの性格的にも手荒な真似だけは絶対にしない。
「ですから、我々と御同行願えますか?」
「わ…私がですか?」
「はい」
「う~ん……豪鬼さんも一緒なんですよね?」
「豪鬼さんは私達の仲間ですからね」
「……分かりました。行きます」
「ありがとうございます」
どっちにしろ行く羽目にはなっただろうけど、彼女的には私のような知り合いが入りだけでも随分と精神的に違うんだろう。
なんだかんだ言っても、彼女はまだ15歳の女子高生。
見知らぬ大人に囲まれては緊張だってするだろう。
「出来れば、貴方方にもご一緒に来て頂ければ有難いのですが……」
「だってよ。どうする?」
「俺は一緒に行ってもいいと思う。豪鬼が仲間だと信じている人達なんだろう?」
「リュウがそう言うなら、俺もいいぜ」
「感謝します。その……そこにいる彼女達も大丈夫でしょうか?」
「あ~……」
さっきからずっと静かだと思ってたら、ま~だ庵さんは唸ってたんですね。
そして、デミトリさんが傍で呆れ、さくらさんは心配そうにしている。
もう何個目のエチケット袋を使ったんでしょうかね。
「問題無いと思いますよ? さくらさんはリュウが一緒なら嫌でも来るでしょうし、庵さんとデミトリさんは性格に難はありますが、それでも聞き分けはいい方ですから。素直に話は聞いてくれると思います」
「豪鬼さんがそう仰ってくれるのなら。彼女達も一緒に連れて行きましょう」
はい。これで皆揃って本部に行くことが確定。
さて、どうなることやら。
余談ですが、今回出てこなかったベガとギースは各々にお仕事が忙しくて来られなかったみたいです。
もしかしたら、どっちかは次回辺り登場するかも?
本当ならサクっと終わる場面ですが、最初からカオスな状態ではそうはいかない。
本部に向かうまでも一苦労です。