我が名は豪鬼! メイドを極めし者なり!   作:とんこつラーメン

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まずは戦闘の前に鍛えましょう。

幾らギアを纏えても、技術が素人じゃ話になりませんから。






メイド豪鬼 トレーナーになる

「と言う訳で、今日はちょっと予定を変更して、皆さん一緒にトレーニングをしていこうと思います」

「どんな訳だよ……」

 

 兄上からの励ましを受け、私も決意が固まった。

 こうなったら、私に出来る範囲で全力のサポートをさせて貰おう。

 さぁ少女達よ。体力の貯蔵は十分か?

 

「なんか豪鬼に連れられて来たけどよ……」

「ここはどこなんですか?」

 

 現在、私達がいる場所はいつもの二課本部にあるトレーニングルームではない。

 確かにあそこも十分に最新鋭の設備が整ってはいるが、あれはあくまでも『装者が使用する事』が前提となった場所だ。

 別にそれが悪いとは言わないが、それだけだとどうしてもやれる事に限界が来てしまう。

 それを懸念した私は、弦十郎さんと了子さんの二人に特別に許可を貰い、ある場所へと足を運んだのだ。

 

「ココはあのシャドルーに所属する人達が体を鍛える為に使用する、社員専用のトレーニングジムみたいな場所です」

「そんな場所まであんのかよ!?」

「流石は世界に名立たるシャドルーだな……施設の規模だけでも規格外だ」

 

 あのベガちゃまは部下達の事を常に第一に考えてますからね。

 社員教育もそうですが、このような施設も非常に充実してるんです。

 それがシャドルーがこの世界で好かれている理由の要因の一つでもあります。

 

「まぁ、それはいいんだけどさ……」

「どうしました?」

 

 奏さんが視線を向ける先には、始めてくる場所に好奇心全開で、目をキラキラさせながら周囲を見まくっている響さんと、それを落ち着かせようと悪戦苦闘している未来さん。

 それから、ついでにということで、さくらさんにも同行して貰った。

 

「なんでアイツ等も一緒にいるんだ?」

「流れでとはいえ、装者になってしまった以上は響さんも一緒にトレーニングをするべきだと思いまして。特に彼女は今までコレといった運動をしてきたわけじゃありませんから」

「いや、それは理解出来るのですが……」

「明らかに無関係の奴も一緒な事を言ってるんだよ」

「あぁ……そっちですか」

 

 因みに、現在の私達は端の方に集まってヒソヒソ話をしていたりする。

 傍から見ると相当に怪しいだろうな。

 

「響さんの隣にいらっしゃるのは、彼女のお友達の『小日向未来』さんといいまして。確かに彼女は無関係ではありますが、なんと言いますか……響さんに関しては少々、過保護な所があるんです。下手に言い訳をして誤魔化すよりは、こうやって実際に一緒に行動して貰って、これから先『響さんが急にいなくなった時は何をしているのか』の証みたいなものにしようかと」

「ふ~ん……」

 

 響さんと未来さんは互いに学校指定のジャージを着ていて、さくらさんもそれは同じ。

 しかし、ツヴァイウィングのお二人だけはいつもとは違った。

 動きやすさ重視のトレーニングウェアを着ている。

 奏さんは黒地に赤の、翼さんは黒地に青のスポーツブラとスパッツを履いている。

 完全に体のラインが現れる格好になるので、かなり色っぽい。

 女だけだからこそ許される格好ですよね。

 

「さくらさんは自分から言い出してついてきてくれました。似た立場の響さんの事を放っては置けなかったんでしょう」

「……いい奴だな」

「えぇ、全くですね」

 

 実は、さくらさんも地味に女子高生らしからぬスタイルの持ち主だったり。

 言葉には出しませんけどね。

 

 あ。なんかあの三人だけで盛り上がって自己紹介とかし始めてる。

 うんうん。仲良きことは美しきかな。

 

「私達も行きましょうか」

「おう」

「はい」

 

 なにやら話が盛り上がってきたので、私達も彼女達の元まで行くことに。

 こちらが来た途端に急に静かになるのは地味に傷つきますけど。

 

「もう仲良くなられたようでよかったです」

「「「豪鬼さん」」」

 

 なんか、いつの間にか私が皆のリーダー格みたいな事になってる気が……。

 私はそんな柄じゃないんですけどねぇ~。

 

「未来さん。本日は一緒に来てくれてありがとうございます」

「いえいえ! お礼を言われるような事は無いですって! 私は単純に響が皆さんにご迷惑をお掛けしないか心配で着いてきただけですから……」

 

 ほらね?

 そんな風な視線を奏さんと翼さんに投げかけると、二人は『あぁ~』的な顔になって頷いてた。

 

「にしても、まさか響がツヴァイウィングのお二人と知り合っていたなんて……」

「厳密には、私を通じて知り合ったんです」

「そうなんですね」

「はい。それで、ツヴァイウィングのお二人のトレーニングをするついでに、偶には響さんにも体を動かす機会を設けようと思い至った訳なのです」

「本当に……豪鬼さんには頭が上がりません。実は、私も常日頃から響はもう少し運動をした方がいいと思っていたんですよ」

「そうなのですか。それは丁度良かったですね」

「はい! 今日は響の事をよろしくお願いします! ほら、響からも!」

「うえぇぇぇぇぇっ!? 未来がなんか私のお母さんみたいになってるっ!?」

「実際、おばさんからも頼まれてるんだから、似たようなもんだよ!」

「そうなのっ!? 普通に初耳なんだけどっ!?」

 

 いつの間にかコントみたいになってるし……。

 この二人と入ると、ツヴァイウィングとは別の意味で飽きないなぁ~。

 

 余談だけど、もう既に互いの自己紹介は済んでいるので、今更になって挨拶をするなんて事は無い。

 

「でも私、こんな場所に来るの初めてです。凄いんですね……」

「私もだよ~! 色んな器具が一杯あって、見てるだけで興奮するよね!」

「世界中で一流って呼ばれてる格闘家の人達って、皆こんな場所で体を鍛えてたりしてるのかな……」

 

 純粋に興奮している二人とは違い、さくらさんはどこまでも前だけを見据えている。

 この心は本当に素晴らしいと思う。誰にも真似出来ることじゃないから。

 

「けど……」

「ん?」

 

 なんか急に未来さんの視線が私に注目し始めた?

 って、翼さんも一緒になって私の事を見てる!?

 

「「………………」」

 

 あ…あの~……なんか気まずいんですけど。

 割とマジで何なんですかね?

 

 私の恰好も動きやすさを重視して、街にあるスポーツ用品店にて購入したジムウェアを着用している。

 真・豪鬼をイメージして、紫のタンクトップを中心に黒のスポブラとスパッツ。

 いつもよりもかなり露出が高いが、別にこの程度で狼狽えるような軟な精神はしていません。

 

「「負けた……」」

「何がですか?」

 

 いきなり二人揃って座り込んで天井を見出したし。

 なんか人生を悟ったような顔になってません?

 

「ど…どうしたんだ翼?」

「未来も。なんか様子が変だよ?」

「なんでも無い……心配しないでくれ……」

「世の中で無常だなって思っただけだから……」

「「「はい?」」」

 

 なんとなく、二人が言いたい事が分かった気がする。

 でも、まだまだ成長期なんだから、可能性はあると思いますけどね。

 

「ほらほら。とっとと立ち上がってください。使える時間は限られてるんですから」

「「は~い」」

 

 駄々をこねる子供か。

 

「オホン。本日はいつもとはメニューを変更し、『体幹トレーニング』を行おうと思います」

「体感?」

「響さん。『体感』じゃなくて『体幹』です。要は、頭と足と腕を除いた体の全てを指しているんです。インナーマッスルと言った方が分かりやすいでしょうか?」

「インナーマッスル……それならどこかで聞いた事がある気がする」

「それは重畳」

 

 流石は奏さん。既にご存知でしたか。

 

「豪鬼さん。質問いいですか?」

「はい、さくらさん。何を聞きたいんですか?」

「その『体幹』って、鍛えるとどうなるんですか? こう…効果的な意味で」

「ふむ……効果ですか」

 

 やっぱり、そこが気になりますよね。

 急に全員の目つきが変わったし。

 

「簡単に言いますと、普段からの姿勢が良くなったり、健康状態が保てるようになったり。それから……」

「それから?」

「太りにくくなります」

「「「「「体幹トレーニングやろうぜ!!!」」」」」

「きゃっ!?」

 

 いきなりやる気100%!?

 矢張り女性としては、太りにくくなる効果というのは大きいのでしょうか……。

 あ。今は私も女性でした。

 

「おうおう! なんだか盛り上がってるじゃねぇか!」

「元気があるのはいい事だ」

「あら。貴方達は……」

 

 奥にある特製トレーニング室から出てきたのは、いつもの恰好に身を包んだシャドルー四天王の『M・バイソン』と『サガット』のお二人。

 タオルで汗を拭きながらのご登場ですから、先程まで激しいトレーニングをしていたに違いありません。

 

「ボ…ボクシングで世界王者にまで上り詰めたM・バイソンに、『ムエタイの帝王』の異名を持つサガット……! めっちゃ有名な二人があたしの目の前にいるっ!?」

 

 奏さんが、この間ケンに会った時みたいに興奮してる。

 もしかして、彼女ってミーハーな格闘家ファン?

 

「お疲れ様です。お二人もトレーニングを?」

「まぁな。コンディションはバッチリだし、パンチのキレも申し分ねぇ! これなら、今度こそダッドリーの奴と本当の意味で決着がつけられるぜ!」

 

 ダッドリー。

 イギリス有数の貴族でありながら、超一流のボクシング選手としての一面を持つ男性。

 その実力は世界レベルで、今やバイソン以外とはまともな試合が成立しない程。

 そんな二人の実力は完全に拮抗していて、どちらかが勝つにしても、常に時間切れの判定勝ちになってしまう。

 つまり、二人揃って互いから未だに一度もKOを取った事が無いのだ。

 

「俺の方も、今度の試合は万全の態勢で望めそうだ」

「確か、今度の対戦相手はあの『ジョー・東』さんでしたね」

「あぁ。アイツの目はどこかリュウを思い出させるからな。今から楽しみでならない」

 

 ジョー東と言えば、日本出身のムエタイ選手で過去に何度もKOFにも出場し、常に好成績を残している。

 そんな彼が一方的にライバル視しているのがサガットで、これまでに何度も試合をしてはいるが、戦績はサガットが全戦全勝。帝王の名は伊達じゃない。

 

「サガットさん! バイソンさん! お久し振りです!」

「おう! なんか見た顔がいると思ったら、さくらの嬢ちゃんじゃねぇか!」

「お前も来ていたのか」

「はい! 今度の試合も頑張ってください! それから、出来ればまた私とお手合わせをして貰ってもいいですか?」

 

 あら大胆。でも、その積極性は嫌いじゃないですね。

 

「試合の後ならいつでもいいぜ!」

「俺もだ。どれだけ腕を上げたのか、楽しみにしているぞ」

「はい!」

「それじゃあな! 存分に体を動かしていけよ!」

「では、失礼する」

 

 いい笑顔をしてから、二人は出て行った。

 サガットはともかく、バイソンは元から変わり過ぎでしょう。

 完全に立派なスポーツマンになってるじゃないですか。

 

「き…緊張した……」

「私は別の意味で緊張したな……。二人共、物凄いプレッシャーだった……。あれが超一流の格闘家というものか……」

「???」

 

 未来さん以外は大なり小なり感じた事があったみたいですね。

 響さんも何も言ってはいませんが、先程からずっと手に滲み出た汗を服の袖で拭いてますし。

 

「では、我々もそろそろ本気で始めますか」

「「「「「はい!」」」」」

 

 今日の私はメイド豪鬼ではない……トレーナー豪鬼だ!

 この子達はどこまで着いてこられるかな?

 ツヴァイウィングの二人やさくらさん、元陸上部の未来さんは大丈夫だとしても、心配なのは響さんだなぁ~……。

 最初は余り無理はさせない方が賢明かな?

 

 

 

 




次回は本格的にトレーニング開始。

ついでに、四天王最後の一人も登場予定。

本当に『ついで』に。
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