我が名は豪鬼! メイドを極めし者なり!   作:とんこつラーメン

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今回もまた完全なオリジナル回。

響が自分の心と向き合う回になる…かも?






メイド豪鬼 遂に出番がなくなる

「レンタルショップ?」

 

 それは、本当に突然の事だった。

 昼食時、学内の食堂にて一緒に食事をしていた響と未来だったが、響のいきなりの言葉に箸が止まってしまった。

 

「うん。放課後にちょっと行きたいと思っててさ」

「ふ~ん。何か見たい映画でもあるの? それともアニメとか?」

「どっちでもないんだけど~…なんて言えばいいのかな~?」

「もしかして、イヤらしいビデオだったりする?」

「ち…違うよっ!? 全然違うからねっ!?」

 

 一体、何を指して未来は『イヤらしい』と言ったのか。

 単なる冗談のつもりだったのだが、まさかここまで動揺するとは思ってなかった。

 

「冗談だって。でも、自分でもどんなのか分らないの?」

「いや~…自分が見たいと思ってる物自体は分ってるんだけど、それをどう言葉で表現すればいいのか分らなくて……」

「そうなんだ。なら、試しに響の言葉で言ってみてよ」

「私の言葉で?」

「そう。まずはなんでもいいから、口で言ってくれないとこっちも判断のしようがないから」

「それもそっか。うんとね~……」

 

 腕を組んでうんうんと唸りながら、必死に頭を回転させる。

 そうすること十秒くらい経過してから、なんとか言葉を捻り出した。

 

「色んな格闘家の人達が試合をしている様子を映したやつを見たいって言うか…」

「それって、よく年末とかに特番であるK-1とか?」

「それって確か総合格闘技のことだよね? それもアリだとは思うけど、私的にはちょっと違うっていうか……」

「それじゃあ……これとかどうかな?」

 

 未来がスマホを操作し、とあるサイトを開いて響に見せた。

 

「なにこれ? けーおーえふ?」

「それは略称ね。正式名称は『ザ・キング・オブ・ファイターズ』っていって、文字通り世界中から色んな格闘家が集結して、凄い試合を繰り広げる物凄く大きな格闘大会らしいよ」

「こ…これだっ!」

 

 未来のスマホを取ってから立ち上がり、画面を食い入るように見つめている。

 よほど興奮しているのか、鼻息荒く目をキラキラさせていた。

 

「これのビデオってあるのかなっ!?」

「昔のなら普通にレンタルとかしてると思うけど……」

「そっか~…」

 

 もう完全に猪突猛進モードになっている。

 こうなった響はそう簡単には止められないと、今までの経験から学習している幼馴染だった。

 

「でも、珍しいね。響が格闘技に興味を示すなんて」

「あ…うん。ちょっとね。ほら、豪鬼さんもメイドになる前は格闘家として世界中を旅しながら、色んな人たちと試合をしてたって聞いたから、気になって…」

「そっか。確か、前にトレーニングをした時に翼さん達がそんな事を言ってた気が……」

「でしょ? それに、私達と同い歳のさくらちゃんも、もう既にその舞台に立ってるからさ。無性に興味が出てきちゃって」

「成る程ね~。身近な子が格闘技をしてたら、少しは見てみたいって気持ちになるかも」

「でしょでしょ?」

 

 親友が共感してくれたことがかなり嬉しいのか、今にも跳び上がりそうな程に喜んでいた。

 

(豪鬼さんっていうよりは、多分…あの道着の人の影響が強いんだろうな……)

 

 幼馴染は鋭かった。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

「まさか、未来が急に来れなくなっちゃうなんてな~」

 

 放課後になり、予定通りに響はレンタルビデオショップへと来ていたのだが、下校直前になって未来が部活の先輩に呼び出されて行ってしまい、結局は一人で来る羽目となっていた。

 

「ここに来るのも久し振りだな~。前はよく、アニメとかを借りて見てたんだけど、流石に今はね~」

 

 苦笑いを浮かべつつ、響は店内をゆっくりと散策する。

 今日はツヴァイウィングの二人が仕事で不在な上に、豪鬼自身もバイトが忙しくて特訓は中止となっていた。

 だから、放課後の時間をフルに活用して、自分の心が求めている『何か』を見つけるのに専念出来る。

 

「格闘技って、どのコーナーにあるのかな……」

 

 洋画、邦画、アニメにドラマ。

 R-18コーナーのカーテンの前を通り過ぎる時は少し顔を赤くしつつ、店内をぐるっと回る。

 

「ここも違う……。じゃあ後、探してないのは~…」

 

 まだ見ていないエリアへと向かいながら、念の為に辺りを見渡していく。

 すると、いきなり一人の青年の声が前から聞こえてきた。

 

「おぉ~! 草薙さんが初めて出場したKOFだ~! やっと見つけたよ~! よし! 早速、家に帰ってからこれを見て研究だ! そして、俺も草薙さんみたいに炎を出せるように……」

 

 青い制服に白いバンダナを付けた高校生が、嬉しそうに一枚のレンタルブルーレイを持って響の横を通り過ぎ、そのままレジの方まで向かった。

 

「なんだったんだろ……?」

 

 特に気にすることも無く、響は先程まで彼がいたコーナーへと足を向けた。

 辿り着いた途端、響の目が大きく見開かれた。

 

「これは……」

 

 そこに広がっていたのは、まさしく響が求めてやまなかったもの。

 大きく書かれた『KOF』のロゴが目立ち、パッケージには様々な格闘家がいた。

 

「テ…テリー…さん? ですよね? その格好はどうしたんですかっ!?」

「バッ…! 大きな声を出すな! 周りに迷惑だろうが!」

「あ…すんません。でも、なんで『そんな事』に…? はっ! まさか…八神さんと同じように……?」

「え? あいつも似たようなことになってんの? マジで?」

 

 なにやらレジの方で騒いでいるようだが、ここは無視することに。

 

 どれにしようか本気で迷っていると、更なる衝撃が響を襲った。

 

「え……? これって……」

 

 思わず手に取って、そのパッケージを凝視する。

 そこには『MILLIONAIRE FIGHTING』と書かれてあった。

 

「ミリオネア…ファイティング……?」

 

 ちゃんとカタカナでルビが降ってあったので、なんとか読む事は出来た。

 だが、重要なのはそこではない。パッケージに描かれている人物の方だ。

 

「これって……もしかしなくてもリュウさん……?」

 

 そこには、凛々しく構えたリュウと相対するように、学ランを着た青年が立っていた。

 今にも動き出しそうな写真に、響は一発で魅入られる。

 

「ってことは、リュウさんがこれに……?」

 

 ケースの裏を見えると、今度はケンが赤い帽子を被った金髪の男と壮絶な戦いをしている光景が映っていた。

 ワンシーンだけだが、それだけでも十分に当時の熱さが伝わってくるようだった。

 

「これにしよう…! うん! えっと、値段は……」

 

 準新作。

 中古よりは値段が張るが、それでもちゃんと一週間のレンタルが可能だった。

 

「私…今日はツイてるかも!」

 

 ルンルン気分でレジまで行くと、そこには店のエプロンをつけた金髪で美人の店員がいた。なんでか赤い帽子を被ってるけど。

 

(あれ? こんな人、この店にいたっけ? というか、なんか似たような人を見たことがあるような気が……)

「どうしました?」

「あっ!? なんでもないです。これ、お願いします」

「はい。レンタルですね~」

 

 妙に流暢な日本語を喋る外人店員を見ながら、響はある事に気が付く。

 

(あの帽子…なんか見覚えがあるような?)

 

 彼女がそんな事を考えている時、美人店員もまたある事を思っていた。

 

(おいおい…この子。よりにもよってコレを借りるのかよ……。この大会は今までで1・2を争うぐらいに楽しい大会だったけど、自分の姿がこうして映像記録として残っているのは、普通に恥ずかしいよな……)

 

 羞恥心を我慢しつつ、マニュアルに従って接客をする。

 ある意味でバイトの鏡である。

 

「お待たせしました」

「ありがとうございます」

 

 レンタルしたブルーレイを受け取り、店を出る為に扉へと向かう。

 

「ありがとうございました~。またのお越しを~」

 

 眩しい笑顔で見送る彼女だが、まさか自分が接客をした相手が、自分の義母と知り合いであるなんて微塵も想像していなかった。

 その事が判明するのは、もう少し後の話……。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

「早く帰って見よ~っと♡」

 

 スキップしながら帰路を急いでいると、いきなり響きの足が止まった。

 彼女の視線の先には一軒の本屋。

 そこの店頭にある商品に目が釘付けとなっていた。

 

「『マスターズ通信格闘講座』って……まさか、ケンさんが出してるの?」

 

 ケンがアメリカにて大金持ちで、その上で超一流の格闘家なのは知ってはいたが、まさか通信講座みたいなことまでしているとは思わなかった。

 だが、これは響からすれば棚からぼた餅な状況だった。

 

(ケンさんはリュウさんの宿命のライバルで、同じ師匠の元で一緒に鍛えた仲だって言ってた……。ってことは、これを習えば、少しはあの人に近づけるっ!?)

 

 ここで響の悪い癖が発揮された。

 

「これくださ~い!」

 

 思うが早いが、彼女は即座に店の中へと入っていき、通信講座の教材を買ってしまった。

 数秒後に自分の財布を見て絶望したのは言うまでもない。

 

「お小遣い……前借出来るかなぁ~……」

 

 それは無謀な提案とだけ言っておこう。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 財布が寒くなった事実に悲しみながら歩いていると、道端で人が集まっている光景が見えた。

 

「あれ? なんだろう……?」

 

 集まっているのは殆どが男性。

 かなり盛り上がっていて、離れた場所にいる響にも熱気が伝わってきそうだ。

 

「早く帰ってコレを見たい…見たいけど……あっちも気になる!」

 

 好奇心には逆らえない。

 特に、響のような真っ直ぐな人間は特に。

 

「よく見えないな~…」

 

 周りの人間は明らかに自分よりも背が大きい者ばかり。

 後ろからでは見たくても見えない。

 だが、こんな時の響の行動力を侮ってはいけない。

 

「うぐぐ……!」

「うおっ?」

「な…なんだ? この嬢ちゃんは?」

 

 人込みを掻き分けるように入っていき、どうにかこうにかして奥へと向かった。

 

「よいしょ…っと……え?」

 

 人が囲んでいる拓けた場所にて場所にて響が見たのは……。

 

「さぁ来い!」

「言われなくても、そうさせて貰うぜ!!」

 

 筋肉質な男とを対峙している、リュウの姿だった。

 

 この日、響は初めてストリートファイトを目撃する。

 立花響。もう一つの運命との出会い。

 

 

 

 

 

 

 




ちょっと短いですが、キリがいいので今回はここで。

次回こそは豪鬼の出番がある…と思います。多分。
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