我が名は豪鬼! メイドを極めし者なり! 作:とんこつラーメン
果たして、襲撃してきた謎の少女の運命はいかにっ!?
出現したノイズを一掃した直後に、いきなり物陰から強襲を仕掛けてきた、ネフシュタンの鎧を纏った状態で現れた謎の少女。
彼女の正体はとっくに知ってるんですけど、ここでは黙っておきましょうか。
その少女から放たれた鎧の一部である蛇腹状の鞭によって腕を絡め捕られた私は一転して大ピンチ~……なわけないでしょうが。
この程度でどうこうなっていたら、兄上に大きなゲンコツをお見舞いされてしまいます。
「なんで…お前のような者がネフシュタンを……」
「さぁて……なんでかねぇ~?」
「まぁ…こんな風に襲撃を掛けてきておいて、素直に白状をする訳がないよな……」
「当たり前だ。つーか、ンな事を言ってていいのかよ?」
「「なに?」」
「お前らのお仲間が一人、身動きが取れなくなってんだぞ? ほっといてもいいのかよ? それとも、仲間の命よりもネフシュタンを取り戻す方が大事ってか?」
「「あ~……」」
あ。奏さんに翼さん、本気で困惑してますね?
響さんに至っては、全く状況が把握出来なくて呆然としてますし。
「あの~…さっきから言ってる『ネフシュタン』ってなんですか?」
「あれ? まだ説明してませんでしたっけ?」
「はい」
「……弦十郎さん?」
『すまん……完全に忘れていた』
「「「…………」」」
弦十郎さんも人間だった事ですかね。
「簡単に言ってしまえば、前に二課から盗まれた完全聖遺物です」
「完全聖遺物……」
「ちょー凄い聖遺物って事です」
「成る程! 分りました!」
「「今の説明でいいのっ!?」」
いいんじゃないんですか? 本人が分かってくれば。
「テメェら!! こっちを無視してコントをしてんじゃねぇっ!! 状況分ってんのかっ!? つーか、ちっとは怒るとかしたらどうなんだ! お前らが血眼になって探しているネフシュタンが目の前にあんだぞっ!!」
「まぁ…そうだな。確かにお前の言う通り、豪鬼に会う前のあたし等なら、今みたいな状況に陥ったら怒りに身を任せてお前に突撃してただろうな」
「だが、私達は豪鬼さんと出逢い、修行を積み、心身共に鍛え上げてきた。流石に何も思わない訳ではないが、こんな事で動揺したり怒ったりするような無様な真似はもうしないだろう」
「んだと……!?」
……どうやら、私が思っている以上にお二人は大きく、強く成長していたようですね。
トレーナーとしては非常に嬉しい限りです。
「それとな、お前に一つだけ忠告をしておいてやろう」
「なに?」
「そんなちんけな鞭程度で、豪鬼の動きを本気で押さえ込むことに成功してると思ったら大間違いだぞ」
「はぁ? テメェら何を言って……なっ!?」
さて……と。ここからどうしましょうか。
彼女が完全聖遺物を身に纏っている以上、多少の手荒な真似は許されるでしょうし、まずはメイドとして悪い子には『おしおき』をしなくてはなりませんね。
「ビ…ビクともしねぇ……だと……! んなバカなっ!? こっちは完全聖遺物を身に纏っていて、あいつは何にも身に付けてねぇんだぞっ!? それなのに、どうしてこっちがパワー負けしてんだよっ!?」
「はいそこ。私の事を露出狂みたいに言わないでください。ちゃんとメイド服を着ているじゃありませんか」
「んな事を言ってんじゃねぇンだよ!! クソ…クソ! なんなんだよテメェはっ!」
「私はどこにでもいる普通のメイドです」
「普通のメイドがこんなパワーを持ってる訳ねぇだろうが!!」
「持ってますよ。メイドに不可能はないのですから」
(((あ…このフレーズ、久々に聞いたかも)))
しかし、これが本当に完全聖遺物であるネフシュタンの鎧の力なんでしょうか?
いや、今の状態ではまだ全ての力を発揮しているとは言い難い筈。
となれば、これは単純な力の差?
「多分、貴女が私の事を動かす事も出来ないのは、シンプルに力の差が歴然だからでしょう」
「それはつまり…あたしが弱いって事か?」
「その通りです。私は愚か、今の貴女では成長した翼さんや奏さんにすら勝てるかどうか怪しいですね。響さんは微妙ですけど」
「私、まだまだ初心者だしな~」
「テメェ……舐めやがって……!」
「舐めてません。事実を申し上げているだけです」
しかし、どうして彼女は真っ先に私の事を攻撃してきたのでしょうか?
私の記憶が正しければ、彼女の…『彼女達』の目的は響さんの身柄だった筈。
それなのに、さっきから全く響さんを狙うような事をしていない。
「いい機会ですから、ここで問題を出しましょう。三人共、よく考えて答えてくださいね?」
「おま……ふざけてんじゃねぇっ!!」
はいはい。外野は黙っててくださいね~。
「今のように両手が使用不能になってしまった場合、皆さんならどうしますか?」
「「「ん~…」」」
「お前らもお前らで真剣に考えてんじゃねぇっ!!」
はっはっはっ。もう完全にツッコミ役ですね。
「あたしなら、逆に相手の方に突っ込んでいってから蹴りでもぶちかますけどな」
「私ならば、脚から刀剣を出現させて鞭を切断、その後に全速力で怯んでいる相手の懐に潜り込みます」
「相手の体ごと、全力でぶん投げます!!」
三人の性格がモロに出ている回答ですね。
「この問題に正解なんてありません。戦いは常に臨機応変かつ自分に合ったスタイルが一番ですからね。でも、今のように対処法を一つでも出せるようになるのは良い事です」
「豪鬼さんならどうするんですか?」
「私ですか? そうですね……」
腰を低くして、脚を前後に開いて技が出せる体勢になる。
「ぬぁっ!? ひ…引っ張られるっ!? 踏ん張れないっ!?」
そこから、全身のバネを利用して体を大きく回転させて、鞭を巻き取るようにして相手の体を自分の方に引き寄せて、そこから技をお見舞いする!!
「こ…このパワーはっ!? うわぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
「そこですっ!!」
竜 巻 斬 空 脚
「がはぁっ!?」
蒼い雷撃を宿す蹴りの一撃がクリティカルヒットして、彼女は大きく吹き飛んでから気にぶつかって止まった。
その勢いで私の腕に巻き付いていた鞭は引き千切れた。
「やったっ!?」
「いえ、まだです」
「え?」
彼女は両足を震わせながらも、何とか立ち上がり、こっちをキッと睨んでいた。
「この女ぁ…なんつー馬鹿力だ……! ネフシュタンが無かったら…確実に今ので肋骨とかが折れてたぞ……!」
「これでもかなりの手加減をしたのですけどね」
「冗談…キツすぎだろ……!」
やっぱり、技を掛けたのはやり過ぎましたかね?
ここは背負い投げぐらいにしておくべきでしたでしょうか?
(そういや……言われてたっけか……。メイド服を着た女だけには要注意しろってよ……。最初は『何言ってんだ』って思ってたけど、納得したぜ……! 『豪鬼』って呼ばれてたこの女は……明らかに普通じゃねぇ……! ノイズを素手で倒すばかりか、完全聖遺物すらも圧倒する力……。こんなバケモノをどうやって捕まえろってんだ……!)
さてと、本来ならばここで彼女を捕縛するべきなのでしょうが、それは余り推奨されませんね。時期尚早です。
「お行きなさい」
「なに……?」
「逃がしてあげると言っているんです。それとも、まだ戦う気ですか? その状態で? 全快の状態でも私に手も足も出なかったのに?」
「…………クソッ!!」
万が一に備えて予め用意していたと思われる煙幕を取り出して、こちらに投げつけた。
周囲が煙に包まれて何も見えなくなるが、彼女の遠くなる足音だけが聞こえていた。
「次はこうはいかねぇっ!! 覚えてろよっ!! この借りは絶対に返してやるからなっ!!」
「ちょ……待ちやがれ!」
煙が晴れると、そこにはもう誰もいなかった。
「逃げやがったか……」
「敢えて何も口出しをしませんでしたが、本当に奴を取り逃がしてもよかったのですか?」
「構いませんよ。彼女には『餌』になって貰わないといけませんから」
「「「餌?」」」
「そうです。確かに彼女はネフシュタンを身に纏っていましたが、だからと言って彼女が下手人だとは考えにくい」
「確かに……非常に厳重に管理されていたネフシュタンをたった一人で盗めるとは到底思えない」
「ほぼ間違いなく、彼女の背後には『黒幕』と目される人物が控えている筈です。そして、その人物は私達を狙っている。つまり……」
「確実に次の機会があるって事か」
「その通りです。今回は唐突な遭遇だった為に準備が心構えが出来ていませんでしたが……」
「今度もあるって分かっていれば、それに対する色々な準備が可能となる…ですね」
「はい。ですよね、弦十郎さん?」
「「「え?」」」
おや、気が付かなかったのですか?
いつもなら、彼女を逃がしたことに真っ先に大声を上げそうな人物がずっと黙っていたことを。
『流石は豪鬼くんだな。何も言わなくても、こちらの思惑を読んでくれたか』
「メイドですから」
これぐらいは朝飯前なのですよ。えっへん。
(なんて言ってるけどさ……)
(これって完全に……)
(長年連れ添った夫婦の会話だよね……)
なんでしょうか……また生暖かい目で見られている気がします。
『詳しい話はこっちに戻ってきてからだな。今から改めて撤収準備を始めさせる。それまで少しの間だけ休んでいてくれ』
「承知しました」
ふむ……矢張り、通信越しにも了子さんの声が全く聞こえなかった。
ということは、彼女は今、二課の本部にはいない?
「あの…豪鬼さん」
「どうしました、響さん?」
「また今度あの子が来たら、その時は私に戦わせてくれませんか?」
「……理由をお聞きしても?」
「私…思うんです。同じ人間同士、争う理由はあっても、敵対する理由は無い筈だって」
「響さん……」
「この拳を通じて伝えたいんです! 私の気持ちを! 本当は敵対する理由なんて無い筈だよって! そして、あの子の事も知りたい!」
……強くなってるのは、翼さんと奏さんだけじゃないみたいですね。
響さんも、原作以上に心が強くなっている。
戦いを否定せず、戦いを通じて絆を結ぶことを学び始めている。
リュウやさくらさんの影響を強く受けたせいですかね。
「わかりました。次にまた彼女が襲撃をしてきた時は、響さんにお任せします。お二人や弦十郎さんもそれでよろしいですか?」
「あたしは異論はないよ。今の響なら、きっとあたし等よりもいい結果を出しそうな気がするし」
「私も同意見です。これは恐らく、『拳で繋がる』ことを学ぼうとしている立花にしか出来ない事でしょうから」
『現場の人間が満場一致している状況で、こちらから言えることなど何も無いだろう』
「では……」
『あぁ。響くん、頼んだぞ!』
「はい!!」
過程は違いますけど、原作通りには進み始めた…のでしょうか?
まだハッキリと断言は出来ませんね……。
「そうだ。そちらに今、緒川さんはいらっしゃいますか?」
『慎二か? いるにはいるが…何の用なんだ?』
「実はこの後、少し一緒に着いてきてほしい場所がありまして」
『だそうだが、どうだ?』
『僕でよろしければ喜んで。しかし、どこに行くのですか?』
「それは後でお教えします」
念には念を入れて、『彼』に協力を求めましょう。
決して二課の事を信用していない訳ではないのですが、今回の事には『高い戦闘力を秘めた諜報員』が最適だと思うので。
それに、緒川さんとなら話が合うかもしれませんし。
ちゃんと、後でこちらから待ち合わせの連絡をしておかないと、ですね。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
「お待たせしました」
「では、行きましょうか」
本部に戻ってからの報告が終了した私は、緒川さんと合流してから目的の場所へと向かうことに。
「徒歩で向かうのですか?」
「はい。そこまで遠い場所でもないので」
暫く二人で歩いていくと、見えてきたのは一軒の喫茶店。
名前は『喫茶あいの』。
「ここ…ですか?」
「そうです。この喫茶店は私の知り合いの子の実家なのですが、その子とある人物が意外と仲がいいんですよ。共通の友人がいる店なので、待ち合わせには最適かと判断したんです」
「成る程……」
そんな訳で、遠慮なく店内へと入る事に。
入るな否や、すぐに元気のいい女の子の声が聞こえてきた。
「いらっしゃいませ~! って、豪鬼さん?」
「お久し振りです、はぁとさん」
この喫茶店の看板娘にして、何よりも『愛』を大切にする少女。
それが彼女『愛乃はぁと』さんです。
「ほぇ~……」
ん? いきなり私と緒川さんの事を交互に見て、どうしたんでしょうか?
「デートですかっ!?」
「違います。彼は仕事場での同僚です」
「あはは……分かっていても、結構グサってきますね……」
何がですか?
「初めまして。緒川慎二と申します」
「愛乃はぁとです! 初めまして!」
いつ来ても、彼女は元気一杯ですねぇ~。
まるで響さんがもう一人いるみたいです。
「それで、『彼』はもう来てますか?」
「はい。一番奥の席で待ってますよ」
「そうですか。分りました」
はぁとさんに言われるがまま、私達は店内にある一番奥の席へと向かうことに。
そこには、適当に組み合わせましたって感じの服装の青年が一人で座って、ちびちびとコーヒーを飲んでいた。
赤いパーカーとジーパンを履いていて、フードを深く被っていて顔はよく見えない。
けど、彼から発せられる雰囲気だけは私には丸分りだ。
「お待たせしました」
「気にするな。俺もついさっき来たばかりだ。それに……」
彼がチラっと視線を逸らすと、そこには元気一杯に働いているはぁとさんの姿が。
「暇だけはしないですんでいる」
「そのようで。相変わらず、仲が宜しいようで何よりです」
「…………」
おや、ここでだんまりですか。
この手の駆け引きだけは未だに苦手のようですね。
「お前は……」
「君は……!」
あれ? なんか二人が久し振りに会った感を出してる?
もしかして、知り合いでした?
確かに『同じ職業』ではあるでしょうけど……。
「久し振りだな」
「えぇ……そうですね……」
「ストライダー……飛竜くん……」
やっと出せました。
私が一番好きな忍者キャラの登場です。
今回は戦闘服じゃなくて、世を忍ぶ私服姿ですけど。
彼にはこれからたっぷりと活躍して貰う予定でいます。