我が名は豪鬼! メイドを極めし者なり!   作:とんこつラーメン

3 / 39
今回は前回の続きで、メイド豪鬼のバイトでの話になります。

メイドさんのバイトと言えば、勿論……?







メイド豪鬼のお仕事

 どんなに強い人間だろうと、どんな聖人君子であろうと、今の世の中では金が無いと生きてはいけない。

 どれだけ綺麗ごとを並べても、結局は世の中、金が全てなのだ。

 当然、メイドとして生きることを決めた私にも金は必要になるわけで、となればどうにかして仕事をしなければいけない。

 実は、転生した時に前世にて所持していた財布と通帳を持ってきていて、それなりに金はあった。

 嘗ては仕事しかしてない仕事バカだったので、金を使いたくても使えない日々だった。

 だからだろうか、私の預金通帳にはかなりの額が記載されてたりする。

 少なくとも、この世界でも何も仕事をしなくても軽く半年ぐらいは余裕で生きていけるだけの金額があるが、だからと言ってそれに甘んじるのは論外だ。

 どんなに節約していても、いつの日か必ず金は尽きる。

 故に、仕事を探す事は私にとって町への奉仕と同じぐらいに優先すべき事だった。

 そんな悩みも割と早く解決することになるのだが。

 というのも、これまた近所の人の知り合いの経営している店が人員募集をしているらしく、特に私のような人材を欲しがっていると聞いた。

 私は碌に話も聞かずに即座に『行きます!』と言って、その仕事を紹介して貰った。

 本当に、この人達には足を向けて寝られませんね。

 

 私が紹介して貰った仕事場。それは………

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

「「「「おかえりなさいませ、ご主人様♡」」」」

 

 メイド喫茶である。

 因みに店名は『メイドカフェ 地獄歌』。意味不明だ。

 最初に見た時は本気で驚いたが、よくよく考えれば私にとっては天職ではないのだろうか?

 今の私は謂わば、生まれながらのメイド。メイドをする為に生まれてきたような存在。

 私にこれ以上勤まる仕事があるだろうか? いやない。

 

「ウキちゃん! ご指名で~す!」

「承りました」

 

 『ウキちゃん』とは店での私の渾名的なものだ。

 流石に『豪鬼』なんて漢らしさ全開の名前では流石に店的にもどうかと思ったらしく、適当に『ごうき』から『ご』を取って『ウキ』となった。

 私としては生活資金を稼ぎつつ、自身のメイドスキルを磨く事が出来る一石二鳥な環境は願っても無いので、この程度の事では微塵も文句は言わない。

 

「お呼びでございますか? ご主人様(お客様)

「うぉぉ……! これは最近になって噂になっている眼鏡系お姉さんメイドの『ウキちゃん』……!」

 

 このお客様が言った通り、何故か店では私は伊達メガネを掻けるように言われている。

 別に絶対というわけではないのだが、眼鏡を付けているだけで時給が50円アップするらしい。理由は不明。

 唯でさえ、目つきがお世辞にもよくないのに、眼鏡を装着したおかげでまるでメイド長のような風貌に。

 

「何になさいますか?」

「……………」

「ご主人様?」

「あっ!? え…えっと、それじゃあ……このオムライスをお願いします……」

「畏まりました。少々お待ちくださいね」

「…………!」

 

 去り際にはちゃんと笑顔を忘れてはいけない。

 店での私の設定は『数あるメイド達の少し年上なお姉さん的な存在』らしいので、少し余裕のある感じの微笑を浮かべる。

 

(……女神がいた……)

 

 なにやら背後から変な気配を感じたが、気のせいだろう。うん。

 

「いつ見ても見事ですわね。豪鬼さん」

「チーフ。お疲れ様です」

 

 厨房に向かって注文を言って小休止をしていると、近くにこの店のチーフがやって来た。

 金髪縦ロールの、一昔前の少女漫画に登場する、主人公の良きライバルになりそうなお金持ちのお嬢様のような姿の女性だ。

 

「まるで本職のメイドのように優雅で可憐で華麗で、この店のポリシーである『癒しのエルドラドを脊髄で堪能して貰う』を体現しているかのような女性……。フフ……私のチーフの座も危ういですわね」

「いや、別にチーフの座とか狙ってないんですけど」

「分かってますわ。貴女は損得勘定でメイドをしていない。本当に全身全霊を掛けてメイドをやっている。貴女こそが真のメイドと呼ばれるに相応しいですわ」

「分不相応な褒め言葉。ありがとうございます」

 

 おっと。話をしている間に注文の品が出来上がったようだ。

 冷めないうちにご主人様の元へと運ばないと。

 

「では、私はこれで」

「えぇ。今日も期待してますわよ」

 

 出来立て熱々のオムライスの器を持って先程のご主人様の元まで行き、静かにテーブルに置く。

 

「お待たせいたしました。オムライスでございます」

「ど…どうも」

 

 ここで謎の沈黙。

 恐らくではあるが、このご主人様は向こうのテーブルで行われている『アレ』を期待しているのだろう。

 

「美味しくな~れ♡ 美味しくな~れ♡」

 

 私にあれをやれと? 無理に決まってるだろ。

 幾らなんでもあれは痛すぎる。

 

「もしや、私にも『アレ』をしてほしいのですか?」

「あ……いや…その……」

「流石にあれは難しいですが、別の事ならばしてあげますよ?」

「え?」

 

 まずはケチャップにてオムライスに文字を書く。

 私の場合は主に数種類あるうちのどれかを書くのだが、今日はこれにする事に。

 

 

                滅 殺 ♡

 

「め…めっさつ?」

「文字に関してはお気になさらず。それよりも……フ~…フ~……はい。あ~ん」

「えぇっ!?」

 

 スプーンで一口掬ってから、私の息で冷ましてからご主人様の口へと持っていく。

 彼はいきなりの事で驚いているが、気にしないでそのまま待機。

 

「あ~ん」

「あ…あ~ん……んぐ……」

 

 このままでも埒が明かないと思ったのか、恥を忍んで私が差し出したスプーンをパクリ。

 最初こそ恥ずかしそうにしていたが、徐々に慣れてきたのか、すぐに普通の顔に戻っていった。

 

「よく食べられましたね。偉い偉い」

「お……お姉ちゃん……」

 

 また言われた。

 私を指定した客の殆どが、最後には私の事を『お姉ちゃん』と呼んでくる。

 これは、私のロールプレイが上手くいったという証拠らしい。

 前にチーフがそんな事を言ってた気がする。

 

(今、分かった。この人は俺達に『年上のお姉さんメイドにお世話されるショタっ子』の気持ちを体験させてくれているんだ……。普段は少し厳しいけど、本当は優しいお姉さん系メイドのウキちゃん……。ご飯を食べさせてくれるだけじゃなくて、時には一緒にお風呂に入って、時には俺の事を寝かしつける為に一緒のベッドに入って本を読んでくれたり……。そうしていく内に年上の女性を異性として意識し始め、そして……)

 

 あ。ご主人様が完全に妄想モードに入った。

 だって、目が完全に虚空を見つめてるし。

 

 その後も、ご主人様を精一杯におもてなしして、あっという間に彼が帰る時間になった。

 そそくさと会計を済ませ、店を出ようとするご主人様。

 ここですかさず、いつもの一言……と思うだろうが、私の場合は少し違う。

 彼が扉を開いて外に出た直後、私も一緒に外に出る。

 

「少しお待ちください、ご主人様」

「へ?」

 

 ポケットからほこり取りを取り出してから、それを使ってサササっと彼の服を綺麗にしていく。

 外でするのは、店内だと埃が立つ可能性があるから。

 一応、ここも飲食店である以上は店の中で埃を出すわけにはいかない。

 

「お…俺の服が……」

「これでよし。では、改めて……」

 

 スカートの両端を持ち上げてから、優美にご挨拶。

 

「行ってらっしゃいませ、ご主人様」

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 午後の四時頃になり今日のバイトが終了する。

 今日も立派に労働をしましたね。掃除をした時とはまた違う充実感がたまりません。

 帰り際に特にする事も寄る場所も無いので、今日は真っ直ぐと帰宅をする事に。

 と言っても、一休みしたらまた街を見回ってゴミとか落ちてないかチェックしに行くんですけど。

 

 街中を歩いていると、ここでまたもや彼女達を遭遇。

 

「あ、豪鬼さん! また会いましたね!」

「響さんに未来さん。今、帰りですか?」

「はい!」

「豪鬼さんはバイトの帰りですか?」

「そうです。今さっき終わりました」

 

 この子達も、私がメイド喫茶でバイトをしている事を知っている。

 なんでか普通に受け入れられたけど。

 

「メイド喫茶か~。どんな仕事をしてるのか、私には想像もつかないな~」

「私達には縁が無い場所だもんね。仕方ないよ」

 

 この二人もメイド服が良く似合いそうな気がする。

 素材は抜群なのだから、問題は無いだろう。

 

「そう言えば、未来さんは陸上部に所属しているのでは? 今日はいいのですか?」

「はい。今日は顧問の先生が急な用事で来られなくなって、部活は休みになったんです」

「そうでしたか」

 

 この小日向未来という少女。大人しそうな顔とは裏腹に、実はかなり運動神経がいい。

 人は見かけによらないとよく言うが、この子はその典型だと思う。

 

「あまり寄り道をしないで、早く帰るんですよ。最近は本当に物騒ですからね」

「「は~い」」

 

 なんて言っていると、まるでフラグが立ったと言わんばかりにノイズ発生のサイレンが街中に鳴る。

 わ…私は別に悪くないですよね? ね?

 

「このサイレンは……!」

「ノイズが出るの……?」

 

 拙いな。今の二人はまだシンフォギアとはなんの関わりも無い一般人。

 ここで巻き込むわけにはいかない。

 

「2人共、急いで近くの避難用シェルターに」

「豪鬼さんは? 一緒に来てくれるんですよね?」

「勿論、ちゃんと後で行きます。でも、その前に人々の避難誘導をしないといけません」

「そんな……!」

「大丈夫」

 

 不安そうになる二人の頭をそっと撫でてから落ち着かせる。

 さっきと同じように、余裕のある笑顔を見せておこう。

 

「誰かを守りたいと思った時、救いたいと思った時、メイドは無敵になれるんです」

「「豪鬼さん……」」

「さぁ早く! シェルターに走って!」

「は…はい! 響、行くよ!」

「う…うん! 豪鬼さん! また後で!」

 

 ちゃんと頷いてから、走り去っていく彼女達を見送った。

 これで、後顧の憂いは無くなった訳だ。

 

「さて……と」

 

 まだ奇跡的に犠牲者は出ていないようだが、このままでは時間の問題だ。

 私が二人を送り出している内に多くのノイズが出現しており、私の目の前で腕を伸ばして一人のサラリーマンを殺そうとしている。

 走っていては間に合わないと判断したので、殺意の波動を込めた全力の飛び蹴りでノイズを粉砕。

 

「ひぃっ!?」

「お怪我はありませんか?」

「あ…あぁ……俺は何ともないけど……アンタは一体……」

「怪しい者ではありません。通りすがりのただのメイドです」

「今時のメイドはノイズとも戦えるのかよ……」

「当然です。メイドに不可能はありません」

「すげ~……」

「それよりも、一刻も早く避難を。急がないとシェルターに入れなくなりますよ」

「確かに!」

 

 サラリーマンはすぐに立ち上がってから、ノイズがいない道を走っていった。

 

「ありがとう! 美人のメイドさん! 死ぬなよ!!」

「そちらこそ」

 

 こんな時になんですが、矢張り感謝の言葉は嬉しいですね。

 その気持ちに応える為にも、誰一人として犠牲者は出させない!

 

「むんっ!!」

 

 襲うべき一般人がいなくなったので私に目標を変えたノイズがこちらへと向かってくる。

 それに対して、私は竜巻斬空脚で複数体を同時にぶっ飛ばす。

 

「おや?」

 

 豪波動拳でノイズを一体倒すと、どこからか覚えのある気配を感じた。

 この感じは……サイコパワー?

 

「サイコクラッシャー!! はははははは!!」

 

 ……完全にベガですね。なんか遠くの方から眩しい光と一緒に何か小さいのが飛んでるのが見えますし。

 どんなに小さく可愛くなっても、格闘家としての実力は健在ってわけですか。

 恐るべしサイコパワー……次々とノイズを灰にしていってますよ。

 律儀にちゃんと例の赤い軍服も着てるし。

 

「私の愛する日本を汚す事は、この私が絶対に許さん!!」

 

 この声は……まさか彼女もここに?

 

「レイジング……ストーム!!!」

 

 複数からなる青白い気の奔流が大空へと屹立する。

 相変わらず、アホらしくなるような超威力ですよね……一瞬で近くにいたノイズを十体以上倒してますよ。

 こっちはこっちで谷間丸出しの例の道着を着てますね。お蔭で揺れまくりですよ。

 

「これは……私も負けてられませんね」

 

 私も一気にノイズ共を一掃しましょうか。メイドらしくスッキリと。

 一気に大きくジャンプをして、周囲を見渡せるほどの高度にまで至ったら、そこで両手に気を込めて何度も何度も豪波動拳を乱射する!

 

「天魔! 豪斬空!!」

 

 自分達の頭上から豪波動拳の雨が降ってきて、逃げる暇も無くノイズ達が駆逐されていく。

 技の威力の反動で落下がスローになっている為、時間が許す限りずっと撃ち続けた。

 私が地面に降り立ったときには、もう殆どのノイズが消滅していた。

 

「これで最後だ! ダブル烈風拳!!

 

 ギースが放った技が命中し、残った一体も灰になった。

 これで今回、出現したノイズは全て片付けた筈だ。

 

「ふっ……豪鬼よ。いつ見ても惚れ惚れするような技の冴えだな」

「やっぱりベガ様こそがさいきょーなんだな!」

「はいはい」

 

 私達が集まって話をしていると、そこに遅れてやって来た2課の装者二人がやって来た。

 来る前にシンフォギアを展開していたようで、彼女達の体には普通に考えて恥ずかしい赤と青のピッチリスーツが装着されていた。

 

「また…アンタなのか……」

「随分と遅い御到着だな。シンフォギア装者とやら」

「なっ!? 貴様……私達の事を知って……!」

「このギースに知らぬことは無い」

 

 流石は裏社会のドン。情報収集能力も侮れないようです。

 

「私知ってるぞ! あーゆーのを『痴女』って言うんだろ?」

「誰が痴女だ! このガキ!!」

「ガキじゃないもん! 25歳だもん!!」

「嘘つけ!」

 

 ベガと天羽奏が口喧嘩してる……凄い光景だ……。

 

「か…奏。子供相手にムキになるのはちょっと大人げない気が……」

「子供じゃないもん!! 大人だもん!!」

「いや……そう言われても……」

 

 その気持ち、よ~く分かりますよ。風鳴翼さん。 

 このベガと会った人は、誰もが最初は似たような反応をしますから。

 

「おっと。楽しいお話はこれまでのようだ」

「なにっ!?」

 

 私達の間に、いきなり黒塗りのベンツが見事なドリフトで滑り込んできた。

 助手席の窓が開いて顔を覗かせたのはビリーさん。

 

「ギース様! ベガ総帥! それから豪鬼の嬢ちゃん! 早く乗れ!!」

「流石は私の最も信頼する右腕。ナイスタイミングだ」

「わ~い! ベンツだ~!」

「では、お言葉に甘えまして。失礼致します、ツヴァイウィングのお二方」

「じゃ~ねぇ~」

 

 彼女達が呆けている間に車に乗ると、頬に傷跡がある運転手がアクセル全開で発進させた。

 

「ちょ……こら! 待ちやがれ!!」

「またもや逃がしたか……!」

 

 悔しそうにする二人を後ろに、私達は優雅なドライブに出かけましたとさ。

 この後、ちゃんと家まで送り届けてくれたのは普通に嬉しかったです。

 きちんとアフターフォローを忘れないのは素晴らしいですね。

 

 

 

 

 

  

 

 




メイド豪鬼のバイトは『メイド喫茶』でした。
ま、当然ですよね。

因みに、オムライスの文字は『滅殺』以外にも『天』と『神人』とかあります。
その日の気分によって違ったりします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。