我が名は豪鬼! メイドを極めし者なり!   作:とんこつラーメン

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前回の続きで、準レギュラーである飛竜のお話です。

個人的見解、及び社会的要請により、彼にはかなりの出番や役目を用意しています。






メイド豪鬼 SHINOBIに会う

「まずは座れ。話はそれからだ」

「そうですね。では、お邪魔しましょうか」

「は…はい」

 

 飛竜さんに促されるまま、私達は彼と対面するような形でテーブル席に座った。

 それを確認したはぁとさんが、ニコニコ笑顔でこちらへと注文を取りに来てくれた。

 

「ご注文は何にしますか?」

「私は……そうですね。では、アイスココアとモンブランをお願いします」

「僕は彼と同じコーヒーで」

「分かりました。飛竜さんはコーヒーのお替りはどうします?」

「……頼む」

「はい! かしこまりました!」

 

 飛竜さんの空っぽになったコーヒーカップを持って、注文を伝えに行こうとしたはぁとさんに向けて、全力のサムズアップをする。

 

「はぁとさん。こちらが着席するのを確認してからの素早い注文確認。お見事です。成長しましたね」

「豪鬼さんが色々と教えてくれたお蔭です! ありがとうございました!」

「大切なお友達に助力をするのは当然の事ですから」

 

 歳は違えど、友情は育める。

 それが同性ならば猶の事です。

 

「まさかとは思いますが、飛竜さんはここの常連なんですか?」

「そうではない。仕事が無い時に暇を潰す為に来るぐらいだ」

「それを世間では『常連』というのですよ」

「そうなのか……」

 

 見た目は熱血系なのに、中身は超クールキャラなせいか、なんともいえないギャップがありますね……。

 しかも、意外と一途な部分がある…と。

 

「……こうして君と再会するのは、いつ振りでしょうかね……」

「俺の記憶が正しければ、俺が特A級になった頃だ」

「ついこの間のように思えるのに、随分と時間が経過してしまっているんですね……」

「そんなものだ」

 

 なんとも淡泊。

 でも、まさかこの二人が顔見知りだったのには本気で驚きです。

 

「お前の兄と弟はどうしてるんだ?」

「兄上はまだ当主をしています。捨くんの方も相変わらずのホスト生活をしていますよ」

「そうか……変わっているようで、変わらないものもあるのだな」

「飛竜くん……」

 

 彼がこんな事を言うのも珍しいですね。

 懐かしの再開で少しだけ饒舌になっているのですかね?

 

「……ストライダーズの事はボクも独自の情報網にて知っています」

「お前に隠し事は出来ないか」

「それはお互い様です」

 

 二人とも『忍』ですからね。

 そりゃ、普通に考えても無理でしょ。

 

「裏切り者『飛燕』によって、戦闘・諜報のプロフェッショナル組織『ストライダーズ』は君を残して完全に壊滅……。その後、飛竜くんの消息は一切不明となってしまった」

「…………」

「あれから君は何をしていたんですか? もしも可能であれば、教えてくれませんか?」

 

 なんか普通に聞いてますけど、彼だってプロですから、そう簡単には教えてはくれないと思うんですけど……。

 

「……いいだろう。どうせ、もう終わった任務である上に、表向きは『何もなかった』事にされているからな」

 

 ここではぁとさんが注文の品を持って戻ってきた。

 すぐにシリアスな空気になっていることを察した彼女は、すぐに会釈をした後で仕事に戻っていった。

 

「ストライダーズが壊滅してからも、俺は自分に与えられた任務を継続していた」

「任務とはまさか……」

「冥王グランドマスターの抹殺だ」

「冥王……グランド…マスター……」

 

 冥王グランドマスター。

 全世界を支配しようと企む独裁者で、絵に描いたような悪党なのですが、その存在には非常に謎が多い。

 悠久の時を超えて世界を影から支配していたとかなんとか。

 それは真実かどうかは私には分かりませんが、一つだけハッキリとしていることがある。

 それは、冥王グランドマスターの肩書が決して名ばかりじゃないと言う事。

 もしも本気の奴と戦おうとするならば、私も決死の覚悟をしなければいけません。

 

「俺は奴の足取りを追う為に世界各地を転々としていて、少しずつではあるが着実に奴へと近づいていった。だが、奴の本拠地となる場所が判明すると、流石に途方に暮れてしまった」

「それはどこなんですか?」

「……月だ」

「月……とは、あの宇宙にある天体の……」

「そうだ。奴は月にある『古代遺跡』らしき物を独自のテクノロジーで改造し、本拠地としていた。勿論、地球側からでは一切判明しないように特殊なフィールドで覆ってな」

「流石は悪い意味で噂に名高い冥王……! 月に遺跡なんて物がある事自体が驚きですが、それを改造して基地にするなんて……」

 

 なんというか…全てのスケールがデカすぎるんですよね。

 それはそうと、このモンブラン本当に美味しいですね。

 

「もきゅもきゅ……ごくん。で、飛竜さんはどうやって月まで行ったのですか?」

「背に腹は代えられなかったから、ある連中に手伝って貰った」

「それは?」

「アベンジャーズだ」

 

 これまた意外。

 確かに飛竜さんとアベンジャーズの皆さんは過去にも何度か共闘をして親交を深めてはいますが、まさかご自分から彼らに歩み寄ろうとは。

 彼もまた成長してるんですね……お姉さんは嬉しいです。

 

「成る程。あそこにはアイアンマン…トニー・スタークがいます。彼ならば月まで行けるロケットぐらい開発出来ても不思議じゃありません」

「その通りだ。その後、何故か奴らも一緒についてきたがな」

「でしょうね。彼等が冥王の存在を許すとは思えませんから」

 

 冥王グランドマスター…なんと哀れな。

 幾らなんでも相手が悪すぎましたね。

 

「冥王の本拠…『第三の月の都(ザ・サード・ムーン)』への侵入に成功した俺達は、内部を攻略しながら、遂に奴の玉座まで辿り着くことが出来た。そこで……」

「壮絶な死闘の末に、冥王を撃破出来た……」

「だが、奴は消滅する間際に謎の言葉を残している」

「「謎の言葉?」」

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

「ククク……ハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!!!」

「貴様…何を笑っている?」

「敗北のショックで頭がおかしくなったのか?」

「愚かなるストライダー……アベンジャーズ……私はお前達の事が哀れで仕方がない」

「なに?」

「この私を葬ったところで何も変わりはしない(・・・・・・・・・)何も終わりはしない(・・・・・・・・・)何も救われはしない(・・・・・・・・・)!」

「貴様は何を言って……」

「お前には分からぬか? 『自由の番人』よ。私が消滅しようとも、『心無き雑音共』は蔓延り続け、『自ら神を名乗る者』は立ち上がる時を待ち、『大いなる星の意志』は貴様らの事を見続けている」

「雑音…は、恐らくノイズの事だな。他の二つはなんだ……?」

「ここで知らずともいずれ分かる。そして知る。私の死は終わりではない。全ての始まりなのだと」

「本気で意味が分らん。もっと解り易く説明してくれると助かるんだが?」

「ならば言ってやろう。『天駆ける黄金の騎士』よ。お前達は選択を間違えた(・・・・・・・・・・・)。私はな……『呼び水』なのだよ」

「呼び水……?」

「クハハ……! 残念だが、お前の思う通りにはいかぬぞ……『先史文明の神』よ! 既に賽は投げられたのだ(・・・・・・・・・・・)! その身を持って思い知るがいい! この世には神すらも凌駕する『偉大なる意志』が存在することをな! 我が身を『生贄』として、御身が降臨の礎とならんことを!!」

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

「それだけを言い残して、冥王は跡形も無く消滅した」

「気になる単語ばかり出てきましたね……。戻ったら、了子さんに相談してみた方がいいかもしれません」

 

 神を名乗る者……星の意志……そして、先史文明の神……か。

 そのどれもが予想出来るのですが、今はまだ止めておいた方が良さそうですね。

 余りにも時期尚早すぎる。

 それに、了子さんの反応も気になりますし。

 

「事実、ノイズ被害は全く減ってはいない。それどころか、最近では増加傾向にある」

「それは僕たちも把握しています」

「少なくとも、ノイズを率いていたのは冥王ではなかったという事になる」

「そうなりますね……」

 

 この世界だと、冥王が何をしていてもおかしくは無いですしね。

 実は彼がノイズの創造主でした~…なんてオチもあったかもしれませんが、流石にそれは有り得なかったようですね。

 

「冥王討伐後はどうしてるんですか?」

「アベンジャーズを初めとする様々な組織経由で入る任務をこなしている。その際に、そこで呑気にココアを飲んでいる豪鬼とも知り合ってな。それからは時折、個人的にこいつの依頼も引き受けている」

「それで豪鬼さんとお知り合いだったんですね……」

 

 彼との出会いは色々と衝撃的でしたね~。

 最初にあった時は本気で斬り掛かれると思ってたんですけど、意外と話が通じる相手だったんですよね。

 それからはもう、本当に御贔屓にさせて貰ってますよ。

 

「……話し過ぎたな。それで、依頼はなんだ?」

「そうですね。緒川さん」

「はい」

 

 彼に目配せをすると、懐から一枚の写真を取り出してテーブルに置いた。

 

「これは?」

「つい先ほど、ノイズ討伐に出撃をした豪鬼さん達を襲撃した謎の少女の写真です」

 

 その写真は、本部で記録した映像をプリントアウトした物で、かなりくっきりと写っている。

 

「彼女の正体を探って欲しいのです。可能であれば保護もお願いします」

「……写真はこれだけか?」

「すみません。いかんせん、本当にさっきの出来事なもので」

「ですが、もう少しだけならば情報を提供出来るかもしれません」

「なんだと?」

 

 さっきからずっと会話に入れませんでしたが、ここからメイドの本領発揮と参りましょうか。

 

「まず、身長は150前半ぐらいで、年齢は恐らく10代半ば。髪の色は黒ではなく白みがかっていて、顔立ちはアジア人特有の形をしていて、それでいて日本語が堪能でしたから、もしかしたら日本と欧州、もしくは北欧辺りの血が混ざったハーフかもしれません。見た目に反して、言葉遣いは相当に荒れくれていましたけど」

 

 まずはこれぐらいでしょうか。

 余り話し過ぎると、却って怪しまれますしね。

 

「……たった一回の交戦でそこまで分かってしまったんですか?」

「何度も言っているでしょう? メイドに不可能はないのです。この程度、メイドとして当然の嗜みです」

「豪鬼さんと一緒にいると、メイドの定義が分らなくなってきますね……」

「気にするだけ無駄だ」

 

 あらま一蹴。

 これまた手厳しい。

 

「だが、豪鬼が今言った情報があれば、特定はかなりし易いだろう」

「一応、こちらでも調査はしますが、飛竜くんならば二課よりも圧倒的に早く仕事を終えそうですね」

「それが本職だからな」

 

 戦闘能力だけじゃなくて、諜報能力までチートだなんて。

 つくづく、彼が『天才』だと思い知らされますね。

 史上最年少の特A級ストライダーの名は伊達じゃないって事ですね。

 

「そうだ。僕の連絡先を……」

「それならば不要だ。いざとなれば、そちらの本部に直接赴くし、連絡先ならば既に豪鬼のものを持っている」

「ま…まさか、飛竜くんは二課の事も知って……」

「当然だ。かなり名が知れているからな」

「なら、僕の番号はいらないですね……」

「……いや。念の為に教えて貰おう。万が一、豪鬼と連絡が取れない状況に陥る可能性もあるかもしれん」

「分かりました」

 

 デ…デレた!? あの飛竜くんがデレたっ!?

 これも、はぁとさんの影響なんでしょうか……。

 愛の力とは偉大ですね……。

 

「依頼料はいつもの口座に振り込んでおきます」

「分かった。では、失礼する」

 

 テーブルの上にお金を置いてから、飛竜さんはお店を後にした。

 でも、私はちゃんと見てましたからね?

 あなたがお店を出る時に、はぁとさんの頭を撫でていたことを。

 

「これで一先ずは大丈夫ですね。さて、これから私達はどうしましょうか?」

「取り敢えず、豪鬼さんのモンブランを見ていたら撲も何か注文したくなったので、追加で頼むことにします」

 

 その後、緒川さんが頼んだガトーショコラがやって来てから、二人で何気ない会話をしながらの羽休めを楽しんだ。

 

 なんでか緒川さんに『司令にだけは絶対に内緒にしてくださいね』と念を押されたんですけど、どうしてでしょうか?

 

 

 




飛竜ならば、すぐに見つけ出しそうですね。

豪鬼は全く意識していないようでしたが、緒川さんの方は……?
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