我が名は豪鬼! メイドを極めし者なり! 作:とんこつラーメン
特に気にしなくても大丈夫ですよ。
「「「「デュランダル?」」」」
「そう。名前ぐらいは聞いたことがあるんじゃない?」
次の日の二課本部。
一晩寝てスッキリとした顔色になった了子さんから、昨日言いそびれたことを改めて話して貰っていた。
「どこかで聞いたことがあるような……」
「アタシもだ。どこだったかな……?」
「確か、とても高名な聖剣の名前だったような……」
三人共、少しは歴史の勉強をしましょうね。
翼さんが知らなかったのは意外でしたけど。
「デュランダル。フランク国の国王である『シャルルマーニュ』が天使から授かったとされている聖剣ですね。歴史を更に遡れば、古代トロイア戦争にて活躍した大英雄であり『世界九偉人』の一人に名を連ねている王子『ヘクトール』が所持していた武器と言われています」
「「「おぉ~…」」」
驚いてる場合ですか。
完全に私が先生役になってるじゃないですか。
「ヘクトールはデュランダルの事をイタリア読みである『デゥリンダナ』と呼んでいたそうです。しかも、普段は柄の部分を伸ばして剣ではなくて槍として使用していたと伝えられています」
「剣を槍に……」
「その柄は黄金で出来ていて、中には『聖ペテロの歯』『聖バジールの血』『聖ドゥニの毛髪』『聖母マリアの布』といった、キリスト教徒にとって最も尊い四つの聖遺物が収められていました」
「せ…聖遺物を四つもっ!?」
「そうです。何があっても決して壊れない『不滅の剣』であり、岩に叩きつけて破壊しようとした時、逆に叩きつけられた岩の方が真っ二つになってしまったほどらしいです」
「凄いんですね……」
まだまだ話したりないですけど、取り敢えずはこれで勘弁してあげましょうか。
余り説明し過ぎると、時間が掛かりすぎる上に、奏さんと響さんが知恵熱で熱暴走してしまいそうですし。
実際、今も耳から煙を出してますし。
「毎回毎回思うけど、豪鬼ちゃんのその知識は何処から出てくるのかしらね……」
「了子さん。いつも言っているでしょう? メイドに……」
「不可能はない…でしょ? その一言で片付けられちゃうのも、ある意味で凄いわよね……」
「それがメイドですから」
メイドたる者、知識の方も優れていなければいけませんからね。
実技だけでなく、座学もまたメイドとしての嗜みなのです。
「それで、実際にはどのような形になっているんだ?」
「余り急かさないで。今からちゃんと説明をするから」
そう言って、了子さんは私の淹れたコーヒーをゴクリ。
「まず、デュランダル自体は厳重に封印した状態で、政府が用意した移送用のトラックの荷台に入れて移動するわ」
「ならば、我々はそのトラックの護衛を?」
「基本的にはそうなるわね。まず、響ちゃんと豪鬼ちゃんの二人は、私と一緒に車に乗っての護衛よ」
「え? 了子さんも一緒なんですか?」
「そうよ。いつもの任務とは違って、今回は聖遺物が関係している。いざって時に備えて専門家がいた方がいいでしょ?」
「「確かに……」」
何事にも完璧な事なんてない。
万が一の事を想定するのは、非常に有益な事であり、同時に当たり前の事でもある。
この考えは、今回の事だけじゃなくて、色んな事にも通用する。
「そして、翼ちゃんと奏ちゃんの二人は、翼ちゃんのバイクで並走しながらの護衛になるわ」
「それは構いませんが、どうして私達だけバイクに?」
「もしも、任務中に予想外の場所にノイズが出現した時に備えてよ。バイクならば、車とは違って多少の無茶をして現場に急行できる」
「何も起こらなきゃ、それでよし。でも、緊急の事態になった時に自由に動ける『遊撃部隊』があたし達ってワケか」
「その通り。けれど、それだけじゃまだまだ不安が残る。どれだけ装者が強力でも、人数的な不利はどうにもできないから」
「それを言われちゃ……」
「反論のしようがないですね……」
「人数だけは、努力だけじゃどうしようもないですしね~…」
後々に装者の数の問題は普通に解決できますが、それは本当に先の話。
今は目の前の事だけに集中しましょう。
「そこで、今は無き広木防衛大臣は、とある二つの組織にも協力の依頼を出していたみたいなの。それが……」
『我々……と言う訳なのですヨ』
「「「「うわぁっ!?」」」」
いきなり本部のモニターが別の画面に切り替わった。
そこには、非常に見覚えのあるサングラスを掛けたエセ中国人みたいな細長い体つきの人物が。
「お久し振りですね。ファンさん」
『これはこれは豪鬼さんじゃないですか。そちらに協力しているという噂は本当だったんですね~』
「紆余曲折有りまして。それよりも、ちゃんと食事とか睡眠とかしてますか? この間なんて、仕事のし過ぎと栄養失調でシャドルー直結の病院に搬送されてたじゃないですか」
『御心配には及びません。あれからちゃんと健康には気を付けるようにしていますから。まずは己の体を整えなければ、ベガ様とシャドルーを支えられませんからね』
「そうですか。それならば、私からはもう何も言う必要はないですね」
サングラスを掛けているせいか、以前は了子さんも真っ青なレベルの隈が出来てましたからね。
どんだけ一人で頑張ってるんですかって話です。
「ご…豪鬼くん? この人物は……」
「あら。まだご紹介してませんでしたね」
『私としたことがうっかりしてました。では、改めてご紹介をば』
モニター越しにファンさんが丁寧に会釈をして挨拶をした。
『私の名は『ファン』。シャドルー四天王の一人で、普段は主にデスクワークばかりをしていまして。こうして表舞台に出る事は少ないのですが、今回の仕事は私がベガ様直々に作戦立案をするようにとの命でしたので、このように出た次第でして。はい』
見た目は全く変わってないですが、この彼は原作のように非情で非道な人物ではなく、割と普通のサラリーマンです。
四天王唯一の実務担当で、彼のデスクのゴミ箱には、大量の栄養ドリンクとエナジードリンクのゴミが山のように散乱しているとかなんとか。
勿論、毒手なんて持ってませんし、実験なんて全くしてません。
それどころか、間違いなく四天王の中で一番頑張っている人物と言っても過言じゃありません。
実質的にファンさんがシャドルーを支えているに等しいんですから。
『自称』じゃななくて、冗談抜きで彼こそがシャドルーのナンバー2…っていうか、副社長的なポジションなんじゃないかって思ってます。
因みに、この世界のシャドルーは、ベガは四天王の一員じゃなくて『総帥』としてトップに立っていて、その下に四人の幹部がいるって感じになってます。
ですので、サガットとファンさんは普通に同僚ですし、別に他の四天王とギスギスしてたりもしてません。
それどころか、サガットとバイソンのマネージャー的な事までやっていて、『24時間働けますか』を地で行ってる人物だったりします。
『今回の『デュランダル移送任務』には、我々『シャドルー』と『ハワード・コネクション』も特別に協力する手筈になっているのです』
「なんだとぉっ!?」
『驚くのも無理はありませんが、我らとしても貴重な遺産である聖遺物が失われる事だけは避けたいのです。それは、ハワード・コネクションのギースさんとも意見が一致しています』
彼女、歴史的な遺物とか本気で大切にしてますからね。
伊達に、自室に大量の仏像とか仁王像とか置いてないって事ですよ。
『当日、現場には私も一緒に同行し、そこで直接指揮を執る予定です。無論、私以外の四天王や、ベガ様の親衛隊も同じように現場に向かいます』
「おぉぉっ!! あのサガットとバイソンが来てくれるのかっ!? これは本気で百人力じゃないか!!」
『そこで彼らを高く評価してくださっているのは、あの『ツヴァイ・ウィング』の一角である『天羽奏』さんですネ』
「アタシの事も知ってんのかっ!?」
『勿論ですとも。ツヴァイ・ウィングは今や、世界的なアーティスト。シャドルーの方でも、いつかお二人と一緒にグッズ販売なんかが出来ればと考えている次第でして』
「グッズ販売……悪くないかも」
「あのシャドルーと私達が……か」
奏さんは本当に嬉しそうに、翼さんの方も冷静を装ってはいますが、口の方は完全に笑ってますよ。
こんな時ぐらい、素直に喜びを表現してもバチは当たらないと思いますが?
『特に、奏さんにはベガ様が大変お世話なっているようで。あの方と仲良くしてくださって本当にありがとうございます。四天王を代表して、お礼を申し上げます』
「い…いや、そんな風にお礼を言われるとなんか照れるっていうか…あたしはただ、好きであいつと遊んでるだけで……」
『それでも、ですよ。総帥なんて立場にいると、それだけで疲れるものですから。どんな形であれ、ストレスを発散できれば、それに越した事は無いのです』
「そう…だよな。うん、分かった。その礼は素直に受け取っておくよ」
『感謝します。おっと? どうやらベガ様がいらっしゃったようですね。では、続きはベガ様から仰って貰いましょうか』
そう言うと、ファンさんは画面から姿を消した。
「あの人が四天王最後の一人なんだ……」
「にしても、まさかシャドルーやハワード・コネクションと正式な共同作戦とは、流石に驚いたぞ」
「私も最初に聞かされた時は同じようなリアクションをしたわよ。広江防衛大臣は一体どんな手であの二つの組織を協力させたのやら」
皆で少し話していると、なんでかベガじゃなくてバルログがマイクを持って現れた。
『ここで魅惑のCMタイム。この私の新曲【バルログ愛のバラード】』
『お前はそんな所で何をやってるんだ!』
『ぶべらっ!?』
あ。バルログがサガットの『タイガーアッパーカット』で派手に吹っ飛んでいった。
『見苦しいものを見せてしまった』
サガットが丁寧に謝罪をしてから、改めてベガが登場した。
『ベガ様さんじょ~! …って、なんでバルログはそんな所で気絶してるんだ?』
『気にするな。それよりも話を』
『そうだったな! おっほん!』
ワザとらしく咳払い。
増々子供っぽいですよ。
『久し振りだな皆!』
「ベガの方も元気そうで何よりだな!」
『ちゃんと早寝早起きをしてるからな!』
余談ですが、ベガの就寝時間は夜の九時で、起床時間は朝の七時らしいです。
完全に生活リズムが小学生なんですよね。
『さっきファンが言ってたとは思うけど、当日は現場に四天王が行くことになってる』
「らしいですね」
『それとは別に、私も一緒に行くことになってるんだ!』
「ベガちゃんまで来るんだ……」
『お~! 響~! 今度また、未来のお菓子を食べに行ってもいいか?』
「うん! 未来もきっと喜ぶよ!」
『やった~!』
ちょい待ち。
いつの間にベガと響さん達は知り合ってるんですか。
しかも、普通に部屋に遊びに行くほどの仲になってるだなんて。
本気で全く知らなかった……。
「ベガ総帥。ハワード・コネクションの方からは誰が来ることになっているんだ?」
『向こうからは、ギースの奴と一緒にビリーも一緒に来る予定になってるぞ』
「ビリー・カーン。棒術の達人である彼ならば、何の問題も無いですね」
『それから、ギースの奴が念の為に自分の義理の子供達も連れて来るって言ってた』
「「「「義理の子供?」」」」
あ~…彼等ですね。
なんというか……冗談抜きで盤石の構えになってません?
『後な、可能な限り広範囲に防衛網を展開したいから、バイトも雇うことにしたんだ』
「バイト?」
『それに関しては、当日になれば嫌でも分かるぞ。余り驚かないとは思うけど』
なんとなく想像出来ちゃいました。
敢えてここでは追求しませんけど。
「任務決行日はいつのなるのですか?」
『至急とのことなので、最終準備などの事も考えて明後日にする予定です』
ここでまたファンさんの再登場。
細男と幼女なので、全く画面が狭く感じませんね。
『これまでもずっと極秘裏に準備はしていたのですが、今回はこれまでに例を見ない程に大きな規模の任務になりますからね。念には念を入れて、最終準備をすることも考慮しました。櫻井博士。そちらの方はよろしくお願いします』
「任せておいて頂戴」
これは色んな意味で先が読めなくなってきましたね。
果たして、原作通りに『彼女』は襲撃をしてくるのか。
「私達は何をしていたらいいんだろう……」
『装者の方々は、当日に備えて身体を整えておいてください。実質的な防衛部隊である皆さんが、一番の要になっているのですから』
「「「はい!」」」
それからも、少しだけ当日についての話を詰めてから通信は切れた。
取り敢えはこれでお開きですが、果たしてこれからどうなる事やら。
そんな私ですけど、一つだけ考えていることがある。
(原作の時のように、響さんがデュランダルを握ってプチ暴走状態にさせる訳にはいかない。私やリュウの二の前だけは踏ませたくない。いざとなれば私が…!)
デュランダルの話の前段階で一つの話が出来上がる。
私って一体……。
次回はデュランダルの移送の話。
ってことは、またもやあの子が……?