我が名は豪鬼! メイドを極めし者なり!   作:とんこつラーメン

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前回、弦十郎にお姫様抱っこされた豪鬼。

果たして、二人はここからどう発展していくのか?







メイド豪鬼 リア充と化す

 ど…どうも。豪鬼です。

 現在、私は弦十郎さんの運転する二課所有の車の助手席に乗っています。

 トニーさんと了子さんの余計な一言により、私は彼に送って貰う事になりました。

 それは全然いいのですが、どうして私はあの時、お姫様抱っこされたのでしょうか……。

 駐車場まで向かう際に廊下で他の二課の職員さん達と遭遇するのですが、皆揃って私達の事をほんわかとした視線で見つめてくるんですよね。

 物凄く恥ずかしくなって顔が熱くなりました。

 顔から火が出そうって、あの事を言うんですね……。

 お蔭で、抱えられている間、ずっと弦十郎さんの顔が見れませんでした。

 というか、今もまだ見れてないんですけど……。

 

(こ…こんなにもドキドキしたのは、本気で生まれて初めてかも……)

 

 まだ胸の動悸が収まりそうにない。

 うぅぅ~…メイドともあろう者が…私は一体どうしてしまったんでしょうか……。

 

「豪鬼くん? まだ具合が悪いのか?」

「い…いえ。なんでもないです。大丈夫です」

「そうか……少しでも気分が悪くなったらすぐに言ってくれ」

「分かりました」

 

 や…ヤバいです……。

 どうして…今日の弦十郎さんがいつも以上にカッコよく見えてしまうのでしょうか……。

 

 気を紛らわせる為に窓の外を眺めると、そこには仲睦まじく歩くカップルの姿が見えた。

 私もいつか…彼と一緒にあんな事が出来るのカナ……。

 

(はっ!? わ…私は一体何を考えていたんですかッ!?)

 

 こ…これは非常に深刻な問題かもしれません……。

 なんとか自分の心を冷静に保とうと頑張っていると、見覚えのある光景が目に入ってきた。

 もうすぐ私の住んでるアパートが近づいてくる……。

 到着したら、まずは心配してくれた事と車で送ってくれた事に対してのお礼を言って、それから……なんて考えている内にアパートが目と鼻の先まできてるんですけどっ!?

 ちょ…ちょっと待ってください! まだ心の準備が! ポーズ! ポーズボタンを~!!

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 結局、無難な事しか思いつかないままの状況でアパートに到着することに。

 こんな事なら、出発した直後からちゃんと考えてるんだった……。

 

「車は何処に停めればいいんだ?」

「右隣にある専用駐車場で大丈夫ですよ」

「いいのか? こういう場所は普通、契約した車しか駐車できないのでは……」

「問題ありません。ここの大家さんはとても寛容な方で、契約車でなくても、住人の関係者であるならば問題無く停めることが出来るようになってるんです」

「そうか……それはいいな。では、遠慮なく……」

 

 弦十郎さんは慣れた感じで車をバックさせて、見事な駐車を見せてくれた。

 もしかして、この人は大抵の乗り物は乗りこなせたりするのでは?

 

「これでよし…っと。到着だ」

「ありがとうございました」

 

 ちゃんとお礼は言えた。

 問題はここからだ。

 

「しかし……」

「どうしました?」

「いや。ここが豪鬼くんが住んでいるんだなと思ってな」

「私の家の場所はそちらにも教えた筈では?」

「住所だけはな。こうして実際に見たのは初めてだ」

「そうだったんですね」

 

 てっきり、監視衛星かドローン的なので把握しているとばかり思っていました。

 

「もしも、よろしかったら…少し上がっていきませんか? 送っていただいたお礼もしたいので」

 

 …………はっ!? わ…私は一体何を言いだしてるんですかッ!?

 

「いや、その気持ちは嬉しいが、すぐに戻って仕事を……」

 

 ここで弦十郎さんのスマホが鳴った。

 私からもディスプレイが見えたのですが、どうやら了子さんからのようです。

 着信音から察するに、メールのようですが……。

 

【こっちは私達だけでも大丈夫だから、弦十郎くんは豪鬼ちゃんと一緒にいてあげなさいな】

 

 あの人はまた……しかも、この言い方から察するに、了子さんだけの独断じゃなさそうですね。

 少なくとも、あのオペレーターたちもグルと見ました。

 

「……急に大丈夫になってしまった」

「あの…どうします?」

「…………お邪魔します」

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

「ここが豪鬼くんの部屋か……」

 

 というわけで、弦十郎さんをお部屋に上げることに。

 ここで急に冷静になったのですが、家族…つまり兄上以外の男性を部屋に入れたのって、これが初めてなのではッ!?

 

「余り女性の部屋には入った事が無いからな…少し緊張してしまうな」

「翼さんのお部屋には行ったりなさらないのですか?」

「行った事はあるが…アイツの場合は……な」

「あぁ……」

 

 そうでしたね……。

 一年前までは、彼女の部屋は大凡、人間が住めるような場所じゃありませんでしたものね。

 因みに、あれから私や奏さんが定期的に彼女の部屋を訪れてから掃除をするように心掛けている。

 じゃないと、あっという間に元の部屋に逆戻りしてしまいますからね。

 最初はこれまでの防人としての人生がそうさせているのかと思いましたが、それは大きな間違いでした。

 翼さんは生粋の『片付けられない女』だったのです。

 一種の病気とも言えるかもしれません。

 

「お…お茶を淹れますので、適当な場所に座って待っててください」

「それは嬉しい限りだが、体はいいのか?」

「これぐらいならば問題ありません。こう見えても鍛えてますから」

「そうだったな……」

 

 伊達に『殺意の波動』を極めてませんからね。

 これぐらいなら、一晩ぐっすりと寝れば回復します。

 

 さて…と。弦十郎さんならばコーヒーの方が良いでしょうね。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 豪鬼がキッチンに向かってから、部屋には弦十郎一人になる。

 彼女とはもう長い関係になるが、こうして部屋のお邪魔したのはこれが初めてだった。

 だからなのだろう。彼は柄にもなく緊張していた。

 

(流石は豪鬼くんと言ったところか……。部屋の内装も落ち着きがあっていいし、家具の方も色んな物が揃っていて…って、女性の部屋をまじまじと見て何を考えているんだ俺はっ!?)

 

 弦十郎。人生で初めての自己嫌悪に陥る。

 

(……あの時、豪鬼くんが倒れたと教えられた時……俺は初めて怖くなった。同時に、自分自身に対して激しい怒りも感じた。どうして彼女の傍にいてあげられないのか……。どうして、あの体を支えてあげられないのか…と)

 

 己の拳を握りしめ、弦十郎はデュランダル輸送作戦が終わった直後の時を思い出していた。

 直接的な犠牲は誰も出なかったが、それと引き換えるように豪鬼がデュランダルを守って倒れてしまった。

 本当ならば、何事も無く任務を達成出来たことに対して喜ぶべき所なのに、自分は諸手で喜べなかった。

 それどころか、真っ先に豪鬼の事が心配になってしまった。

 これでは指揮官失格だと分かっているのに、なのに……。

 

「豪鬼くんが無事だと分かった途端…心から安心した……」

 

 あの時の気持ちは一体何なのか。

 初心な学生ではないのだから、それが何なのかは自分でも分かっている。

 

「俺は……」

 

 司令官としての自分と、男としての自分。

 まさか、自分が立場と気持ちの間で板挟みになる日が来ようとは。

 

「……いや、ダメだ。少なくとも今はダメだ。だが、全ての戦いが終わった時は、その時は……」

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

「お待たせしました」

 

 なにやら私の名を呼ぶような声が聞こえた気がしたけど、きっと気のせいだろう。

 私は、ちゃんとドリップを使って淹れたコーヒーを持って部屋まで戻っていった。

 

「ありがとう。うむ…相変わらずいい香りだな」

 

 漫画などでは、このような状況ではヒロインが失敗するのがお約束ですが、私はそうじゃありません。

 メイドたる者、自分の緊張も解せないようでは話になりませんから。

 ……ちょっとだけ危なかったけど。

 

「美味い! 豪鬼くんの淹れてくれたコーヒーはいつ飲んでも最高だな!」

「お…お褒め頂き光栄です……」

 

 いつもの事だが、ここまで派手にリアクションをされると、こっちの方が照れてしまう。

 それと同じぐらいに嬉しいんですけどね……。

 

「……豪鬼くん」

「はい?」

 

 急に真剣な顔になって、こっちを見つめてきた弦十郎さん。

 思わず、私はその瞳を吸い込まれるように見つめていた。

 

「今日は本当に助かった。君がいなかったら、デュランダルは無事では済まなかっただろう」

「私だけじゃありませんよ。響さんや翼さん、奏さん達。それと、あの場にいた皆が自分に出来る事を全力でやった結果です」

「確かにそうだが、君がいたからこそデュランダルの暴走を抑え込むことが出来た。もしも、あのまま暴走したエネルギーが爆発していたら……」

「被害は甚大な事になっていたでしょうね……」

 

 あの時、私達がいた場所は薬品会社の工場地帯…『もしも』の事なんて考えたくはないけど、本当にデュランダルが原作のように暴走していたら最悪の事態になっていた可能性もある。

 それを考えると、今回は本当に被害を最小限に押さえ込めたと言えるだろう。

 

「それに、また強い味方が増えた事ですしね」

「アイアンマン…トニー・スタークか。まさか、あのアベンジャーズの一員と共に戦える日が来るとは思わなかったな」

「彼らは、必要と判断すれば世界中のどこにでも向かって、色んな人々と共闘しますからね。リュウやケン、私や飛竜さんを初めとした非常に多くの戦士たちが彼らと共に幾つもの強大な敵と戦ってきました」

 

 この世界に蔓延っている脅威は、なにもノイズ達だけではない。

 それ以外にも、世界の裏に隠れている連中が山ほどいるのだ。

 

「それだけ、この世界は人々の知らない所で常に危機に瀕しているという事なんだな……」

「その危機から人々を守る為に、私達がいるのでしょう?」

「その通りだ」

 

 少し落ち込んでいるように見えたが、すぐにいつもの弦十郎さんの目に戻った。

 うん。やっぱり、この人はこうでなくちゃ。

 

「もしも宜しければ、夕飯も食べていかれませんか?」

「いや、流石にそこまで世話になるわけには……」

「私を心配してくれただけでなく、こうして送り届けてくれた…そのお礼がしたいのです」

「う…む……」

 

 ここで再び了子さんからのメールが届く。

 

【もしも食事に誘われたら、ちゃんと受けるのよ~? んでもって、そのままの勢いでいく所まで行っちゃえ~!】

 

 い…いく所までって……え? えぇぇっ!?

 

「「……………」」

 

 メールの文を見て私達は固まってしまった。

 気が付けば至近距離にいた私達は、思わず顔を見合わせてしまった。

 

「え…っと……どうしましょうか?」

「……是非とも御馳走になります」

「は…はい! この豪鬼! 全力で頑張ります!」

 

 了子さん……今だけはありがとうと言っていきます。

 にしても、どこまで予見しているのでしょうか……。

 って、それよりも今は夕飯の準備をしなくては!

 今日は腕によりをかけて作りますよ!

 

 

 

 

 

 

 




まだまだ二人の甘酸っぱい時間は続くんじゃよ。

そして、その後の『例の少女』や飛竜の話なんかも…?




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