我が名は豪鬼! メイドを極めし者なり! 作:とんこつラーメン
と言っても、まずは例の一番最初の切っ掛けにあるイベントなんですけど。
街中でのノイズの襲来から暫くが経った。
あの後、響さんと未来さんともちゃんと会う事は出来たのですが、いつまで経っても私がシェルターに来ないものだから、凄く心配を掛けてしまっていたようだ。
まさか、殺意の波動でノイズを蹴散らしてました~、なんて言える筈も無いので、適当に『避難誘導が終わった直後に知り合いが車に乗ってやって来てくれて、そのまま別の場所に避難する事になった』と言っておいた。
一応、嘘はついていない……と思う。
で、今日の私は早朝の掃除を終えた後に食料や生活用品を買う為の買い物に出かけている。
バイトはお休みで、なんでもマネージャーが一日だけ出張に行かないといけなくなったらしく、それに合わせて店の方も休みにするとの事。
別に、それはそれで別に構いやしない。
暇な時間が出来たのであれば、いつも以上に奉仕活動に専念するだけだ。
その活動を始める前に、まずは買い物を先に済ませておこうと思ったのです。
エコバッグを持って街中を歩いていると、何やら見た事のあるような後ろ姿が。
一人は金髪のおさげ、一人は黒髪のショートヘア、もう一人は濃いめの金髪のボブカット。
はい。例の三人娘ですね。いつものハイレグな戦闘服じゃなくて完全な私服ですけど分かります。
「ん?」
あ。こっちに気が付いた。
「やっぱりそうか。なんだか知っている気配がしたと思ったら」
「こんにちわ。キャミィさん。ユーリさん。ユーニさん」
「「こんにちわ」」
この三人もシャドルーに所属している構成員の少女達。
見た目は幼く見えますが、並の連中なんて相手にすらならない程に強い子達です。
しかも、原作みたいに何か改造されたとか、そんなんじゃなくて、普通に訓練と戦闘を繰り返した結果、秘められた才能が開花した…らしいです。サガットが言うには。
「バイトはどうしたんだ? 私の記憶が正しければ、今日もシフトが入っていた筈では?」
「なんで私のシフトを知っているのか、なんてツッコみは後にするとして。実は……」
かくかくしかじか。かくかくうまうま。
「成る程な。それでは仕方あるまい」
「それで、お買い物に?」
「その通りです。お三方はまたどうして街に? 有給でも取ったのですか?」
「いや、そうではない。目的自体は豪鬼と同じさ」
「と言いますと?」
「ベガ様のお菓子が底をつきそうになっているのでな。散歩も兼ねて、こうして買い物に来たって訳さ」
「そうでしたか」
シャドルーには女性だけで構成された『ベガ親衛隊』なるものが存在しているのですが、その実態は幼女ベガちゃまの可愛さにノックアウトされて、勝手に自分達で作り上げたものだったりする。
ですから、実際には『ベガ
ベガ本人も認めてない非公式な部隊ですし。
「今頃はお菓子が無くて泣いているやもしれん。それもまたとても可愛らしいが、それ以上に笑顔でお菓子を頬張っている姿の方が何倍も萌える!!」
「まずは何を買いますか?」
「ペロペロキャンディーは必須。ベガ様はあれが大好き」
「そうだな。その後はミスドに寄って……」
いつの間にか私を無視して幼女ベガちゃま談義に花を咲かせるし。
それじゃあ、私はここらで失礼しましょうかね……ん?
「あれは……?」
私達の近くにあったCDショップの窓に、ツヴァイウィングのポスターが貼ってあった。
どうやら、コンサートが開催される予定のようだ。
「ツヴァイウィングのコンサート……? ん~?」
なんだろう……? 何かが引っかかる。
まるで、喉の奥に小骨が刺さったかのような気分になる。
「……あぁっ!!」
「うわぁっ!? いきなりどうしたっ!?」
お……思い出した!! ツヴァイウィングのコンサートと言えば、原作第一期の第一話の冒頭のイベント!!
よくは思い出せないけど、なんかの聖遺物の発動実験をする為にコンサートをして、その時に大量のノイズが発生、そして、それをなんとかする為に天羽奏が命懸けの絶唱をして命を落とすと同時に、その際に響さんの胸にガングニールの破片が突き刺さって……。
「なんという事でしょう……私としたことが……!」
メイド活動に勤しむあまり、原作のイベントをすっかり忘れていた!
別に私が行かなくても問題は無いし、下手に改変しても後々が大変なのもまた事実。
でも、だからと言って! 目の前で救えるかもしれない命があるのに、それを見捨てるなどと……メイドとしての私の矜持が許さない!!
バタフライエフェクト? 上等だ! もう既に有り得ない程におかしくなってるんだ! 今更、死ぬ筈だった人間を生かすぐらい、どうって事ないだろ!
「コンサートはいつなんですか……! このポスターに日程ぐらいは……」
「アイツはさっきから何をしてるんだ?」
「さぁ?」
「ツヴァイウィングのファンなのかも」
外野の言葉は無視無視。
え~っと……コンサートの日時は~……。
「げ」
今日じゃないですか! しかも、もう始まってるし!
そうか……今日は土曜日。休みの人も多いから、午前中から大々的に行っているのか……。
「こうしてはいられません! 急がなくては!」
阿修羅閃空でダ―――――――ッシュ!! 間に合え~~~~~!!
「お…おい? 豪鬼っ!?」
「行ってしまった……」
「いつもながら、凄い速さ……」
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
会場に到着すると、コンサートはかなりの盛り上がりを見せている事が分かった。
だって、外にまで歓声が聞こえてくるんだもん。
「この感じだと、まだノイズは発生してないようですね」
それならそれで一安心。
ここで突入のタイミングを計る事が出来るから。
「確か、今日のコンサートは本来は響さんと未来さんの二人で来る予定だったんですよね……」
だけど、未来さんの方が家の用事で来られなくなり、それで仕方がなく響さんだけで行く事にした。
けど、その事が後々の悲劇に繋がる事になろうとは、誰が予想するだろうか。
(私は基本的にバットエンドも鬱展開も嫌いだ。多少のシリアスは許容出来るけど、それ以上は見ているだけでも辛い。どんな事があっても、やっぱり皆で笑いあえる事が一番だろ)
その気になればいつでも会場に突撃は出来るから、それまでは取り敢えず待機って事で。
少し喉が渇いたから、近くにある自販機で何か買いましょうかね。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
「はっ!?」
ハンバーガー片手にコーラを飲んでいると、突如としてコンサートホールから爆発音が。まさか……来たのかっ!?
「あむあむあむあむ……ごっくん。よし! ふんっ!!」
急いで残ったハンバーガーを口の中に放り込み、それをコーラで流し込む。
それをゴミ箱にシュートしてから、会場に向かってのダッシュからのスーパージャンプ!
「これは……」
ホールは天井をオープンしているらしく、上からもよく中の状況が見て取れる。
案の定、ノイズが大量発生していて、観客の人達が逃げ惑っていた。
あの二人も既にシンフォギアを纏って迎撃しているようだが、いかんせん敵の数が多すぎた。
まだ犠牲者は出ていないようだが、このパニックでは時間の問題だ。
「この数を一気に葬るには……アレしかない!」
私の知っている豪鬼の技でも、最もチートな奥義!
あれを放って一網打尽にするしか方法は無さそうだ。
「はぁぁぁぁぁぁぁ………!!」
全身に殺意の波動を巡らせてから一気に燃やす!!
技を放つ瞬間のみ、私はメイドではなく『格闘家 豪鬼』になろう!!
さぁ……ゆくぞ!!
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
それは、本当に一瞬の出来事だった。
「覚悟はよいか……! 愚か者共め!!!」
究極奥義『禊』!!!!!
究極的な力の一撃が会場全体に広がり、落下個所にいたノイズは当然のように消滅。
離れた場所にいたノイズ達も、その余波だけで次々と倒されていき、大小の関係無く、その場にいたノイズだけが全て一撃で葬られた。
「「「「ええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!!!」」」」
「あ」
パリン
「え? ゴックン」
少しだけ目を動かして様子を確認。
よし。無事にノイズは全滅しましたね。
しかも、ちゃんと人々には一切の被害が無し。
これでいじめられっ子ルートを回避完了です。
「お掃除完了!!」
「「いやいや待て――――――――!!」」
折角、人がいい気分に浸ってるのに、いきなり何なんですか?
全く……少しは空気を読んだ方がいいですよ? ツヴァイウィングのお二方。
「なんなんだよ!? さっきの超絶的な一撃はっ!?」
「あれだけの数のノイズを一瞬で倒すなんて有り得ない!!」
「さっきのは私の最大の奥義である『禊』です。それと、有り得ないなんて事こそが有り得ないんですよ。何故なら、私はメイドであり、メイドに不可能は無いからです」
「「そんな訳有るか!!」」
なんなんですかもう……。
誰も犠牲が出なかったんですから、それでいいじゃないですか。
ほら、逃げる途中だった観客の皆さんも今の状況がよく分からなくて呆然としてますし。
「あ…あの……豪鬼さん……」
「響さん。御無事でしたか」
どうして響さんがこの二人の近くにいるかは分かりませんが、見た感じ怪我は無さそうでよかったです。
少なくとも、これで彼女の御家族や未来さんを悲しませるような事はありませんね。
「なんでいきなり空から降ってきてノイズをやっつけたのとか、色々とツッコみたい事は山ほどあるんですけど……」
「どうしました?」
本当にどうしたのだろうか? なんだか彼女の様子がおかしい。
「さっき……豪鬼さんが落ちてきた時……なんだか『鋭くて硬い物』が飛んできて、それを思わず飲み込んじゃったんですけど……」
「「「えぇっ!?」」」
す…鋭くて硬い物……? それってまさか……。
「か…奏……ガングニールの一部がほんの少しだけ欠けてる……」
「さっきの技の余波だけで壊れちまったのか……? って! まさかっ!?」
「響さんが飲み込んだのって……」
ガングニールの欠片っ!?
原作なら胸に痛々しく突き刺さる所を、あろうことか飲み込んでしまったんですかっ!?
「こ……これって……どうなるんだ?」
「いや…私に聞かれても。シンフォギアを飲み込んだ事例なんて聞いた事ないし……」
でしょうね。少なくとも、原作じゃ誰もシンフォギアを口から摂取なんてしてませんよ。
「あ…あの~……」
「どうした?」
「会場のこの空気……どうするんですか?」
「「「あ」」」
この場にいる全員の視線が私達に集まってる……。
私の事は別に見られても問題無いけど、彼女達シンフォギア装者たちはヤバいんじゃ?
これ……どう言い訳すればいいんだろうか……?
あ、いい事思い付いたかも。
「と言う訳で、サプライズ&ハプニングな演出はいかがでしたでしょうかっ!?」
こうなったら、さっきのノイズもシンフォギアも私の技も、全部コンサートの演出だったことにしてしまえ!
ほら! そこの二人もボ~ッとしてないで何か言って!!
「え……あ…そ…そうなんだ!! 楽しんで貰えたかなっ!?」
「驚かせしてすみませんでした!」
その調子、その調子。
そっちが一番に合わせてくれないと、すぐに嘘だってバレちゃうじゃない。
どうやら、観客たちの方は信じてくれたみたいだし。
「えっと……ありがとな? 正直、今回ばかりは本気でヤバかった。あたし達だけじゃ沢山の犠牲者が出ていたに違いない」
「私からもお礼を。ありがとうございます。どうして素手でノイズを倒せるかは疑問ですが、それでも、その拳に私達も人々も助けられました」
「どういたしまして。私はメイドとして当然の事をしたまでですから」
なんか、初めてこの二人からお礼を言われたかも。
それだけ危なかったって証拠かもしれませんね。
「響さん。念の為、帰りに病院に行った方がいいですよ。私も一緒に行きますから」
「わ…分かりました」
彼女を連れてその場を後にしようとすると、いつものようにツヴァイウィングの二人が私の事を呼び止めた。
「ま…待ってくれ!」
「お願いがあります。後でいいので、私達と一緒に来てくれませんか?」
「はぁ……」
今までは積極的に関わらないように心掛けていましたが、今回ばかりはそうもいかないようです。
私自身、そろそろ潮時かもと思い始めていたですしね。
「いいでしょう。緊急事態だったとは言え、今回は流石に派手にやり過ぎましたから。でも、その前にまずは彼女を病院に連れていかなければいけません。その後でよろしいですか?」
「構わないよ。そっちの方が重要だしな」
「ご理解頂けて何よりです。では響さん。行きましょうか」
「は…はい。あ、その前に……」
響さんが天羽奏と風鳴翼の方を向いて頭を下げてお礼を言った。
「奏さん! 翼さん! 助けてくれて、ありがとうございました!」
「いいってことよ。当たり前の事をしただけだしな」
「防人として当然だ」
二人共、立場上仕方がないとは言え、普段からお礼を言われ慣れてませんね?
さっきから照れくさそうにしてるし。
私達が去った後もなんとかコンサートは再開して、コンサートとしては大成功だったらしい。
シンフォギアに関しては、今まで秘密にしていた新曲用の衣装って事で落ち着いたみたい。
いや~……意外となんとかなるもんですね。言った私が一番驚いてますよ。
因みに、突然乱入した私の事をそれなりに話題になっているようで、色んな噂がネット上に飛び交っている。
中には、私が『近日参入予定の三人目のツヴァイウィングじゃないか』なんて言う輩もいる始末。
いやいや、三人じゃ『ツヴァイウィング』にはならないでしょうに。
響さんを病院に連れていき、彼女を家に帰らせた直後、二課の人間達と思わしき黒服の男達が私の事を待っていた。
私は一切の抵抗をせずに、彼等についていく事にした。
色々とヤバい事になる前に、力技で全て解決!
それがメイド豪鬼の生き様だ!(気を付けろ!)
そんな訳で、奏は普通に生き残って、メイド豪鬼さんは二課に連行。
やっと装者たちの出番が増えますね。(活躍するとは言ってない)