努力は報われる。
そんなものは幻想に過ぎないが、成功したものは須く努力している。
「まぁ、その努力をしたところで人には限界がある訳ですよ」
「そうですね」
俺の愚痴を聞き、特に興味を示すわけでもなく頷くスーツの男。こんな事を何百何千……いや、何億と聞いてきたのだろう。
俺の目の前に居る男は自分を死神と名乗った。当然信じられる訳もなかったが、暗いのに男と自分の姿のみがくっきりと認識出来る謎空間に居るのだから受け入れる他無かった。「死神」と名乗る割りに覇気もおどろおどろしさの欠片も無いことに不思議に思った俺がその事について聞くと、主な権能は死んだ生き物の魂を新たな形に造り直して配置し直す、中間管理職のようなものであるらしかった。
親近感を覚えた俺は、気付けば色々な事を話していた。生まれてから死ぬまでの楽しかったこと、悲しかったこと、怒ったこと、努力したこと……その努力が一切報われなかったこと。
「一定の事はまぁ出来ましたよ。けどですね?上には上がいくらでも居るわけで、でも下をバカに出来るほどの強くもないし、そんな事をするほど弱くも無かったんですよ。だからこそ苦しかった」
「あー分かりますよ」
気の抜ける相づちが耳を打つ。
恵まれてはいたのだろう。友達は少ないながら居たし、仕事にもありつけた。
そこで、はたと気付く。
「しかし……初対面なのにこんな事をはなすなんて、もしかしてこれもあなたの権能で?」
「あ、気付かれましたか。そうです」
「はぁ~どおりで、もしかして……その見た目も?」
「えぇ、その者にとって受け入れやすい形をとっているのですよ」
スーツ姿が黒いモヤのような物に覆われた。深く暗い…それこそ、宇宙のような……。
「おっとこれ以上はいけませんね」
「はっ!今何が?」
「今あなたの存在が消えかかっていましたよ」
「えぇっ!?」
あ、待てよ?どのみち死んでいるのだ。消えても関係無いのでは?
「それが、そういうわけにもいかないのです」
長い説明に入りそうなので手で制する。
「はぁ、つまりこれは例のアレで?良いですよ。別に」
「はやっ、もの分かり早すぎません?そうです。例のアレです」
「人間、諦めが肝心ってね」
「貴方ほど諦めの良い人も居ないでしょうがね。では、あなたの努力が報われますように」
俺の視界は徐々に暗くなっていく。
「次の生では諦めなければ良いことがあるかもしれませんよ?」
薄れゆく意識のなかそんな声が響いた。
ヒント:努力マン