戦国乱世を現代兵器チートが行く。   作:トマホーク

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城とは言っても山の頂上に建てられた少し立派な館を中心に塀や堀、土塁、柵で周りを囲んだだけの簡素な黒羽城。

 

そんな黒羽城の中をカズヤは駆けずり回っていた。

 

「軽傷者はそっちに!!重傷の者はこちらに連れて来い!!」

 

「「「「は、はい!!」」」」

 

単に鬼の来襲によって発生した負傷者達を救うためにである。

 

「うぅ……ッ、……お、俺は死ぬ……のか?」

 

「安心しろ……この程度なら大丈夫だ!!」

 

……多分。

 

衛生キットを召喚し負傷者達の処置に当たるカズヤだが、当然の如く高校生が医療行為を行った経験があるはずもなく、全ては神に与えられた能力頼みだった。

 

「じゅ、重傷者はこの者で最後にございまする!!」

 

「よし、分かった」

 

酷いな。内臓が飛び出してる。

 

腹を裂かれ小腸が外に飛び出してしまっている男がカズヤの所に運ばれて来た。

 

幸いな事に小腸や他の臓器に傷は無し、傷口からの出血もそれほど酷く無いか……念のため生理食塩水で小腸を洗浄した後、腹に戻して縫合だな。

 

呻き声しか上げない重傷者にモルヒネを投与しカズヤは小腸を生理食塩水で丁寧に洗浄した後、傷口を縫合し作業を終えた。

 

「はぁ……つ、疲れた」

 

「「「「……」」」」

 

緊張の糸が途切れ、満身創痍になったカズヤがへたり込んでいると周りから伺うような視線が集中する。

 

「何か?」

 

「い、いえ!!何も!!」

 

それに気が付いたカズヤが問うと視線を寄越していた者達は蜘蛛の子を散らすようにどこかへ消えて行った。

 

次は軽傷者の処置をしてから……あっちの城下町の怪我人の手当てだな。

 

気合いを入れ直し立ち上がったカズヤは成すべき事の順序を決めると、行動に移った。

 

「――ほれ」

 

少なくない被害を受けていた城下町の怪我人の手当てを完了し黒羽城に戻ってきたカズヤが塀にもたれて座り込んでいると突然、ズイッと水が入った湯飲みを渡される。

 

「え、あぁ、ありがとう……ございます」

 

少し驚きながらもカズヤは礼を言ってから湯飲みを受け取り一息に水を飲み干す。

 

「ふぅ……」

 

「一息つけたかな?」

 

「えぇ、助かりました」

 

「……こう言ってはなんじゃが、先程までのお主とは随分と差があるのう。もっと無礼者かと思っていたが」

 

「ハハッ、さっきまでは緊急時でしたからね。平時と口調は違いますよ」

 

「ふむ……所で名乗るのが遅れた。儂は黒羽康隆様の家臣で家老の厳島源蔵じゃ。よろしくな」

 

武人の気配に満ちた好々爺が、そう名乗る。

 

「長門和也、ただの旅人です」

 

「ただの旅人……か」

 

「ハハハ……」

 

嘘をつけと言わんばかりの視線にカズヤは苦笑する事しか出来ない。

 

「まぁ……それの方が都合がいいかも知れんのう」

 

「?」

 

源蔵の言葉に首を傾げるカズヤだが、この言葉の意味をすぐ後で理解する事となる。

 

 

 

黒羽城の一室でカズヤと源蔵は向かい合って言葉を交わしていた。

 

「えっと……話を纏めると、俺に黒羽城を治めろということでしょうか?」

 

「そうじゃ……さっきもいったが鬼を倒す力に、民草を気にかけ救う心、そして何より雪様に気に入られているお主にしか頼めん。なに対外的には康隆様の隠し子ということで押し通しておくから安心せい」

 

「いや、ちょ、ちょっと待ってください。俺にそんな責任は負えません。というか行きずりの男にそんな……」

 

「ふむ……では正直に言おう。お主の力が目当てじゃ」

 

正直って……モロ本音を……。

 

頬をひきつらせるカズヤに源蔵は言葉を続ける。

 

「何もない場所から次々と無尽蔵に道具や物を取り出す妖術に、最早助からぬ怪我人を救う技量、何より強力な武器を要するお主が儂らには必要なのじゃ。どうか頼む」

 

「頼むと言われても……」

 

「お主に要らぬ物を背負えと無理を言っているのは理解している。じゃが、それでもお主の力が、お主が儂らには必要なのじゃ。どうか、どうか頼む」

 

「……」

 

畳の上で土下座を決め込む源蔵にカズヤは悩む。

 

この場合のメリットは……居場所が出来ることと、曲がりなりにも権力を手にすること。

 

デメリットは目立つ事に……他多数。

 

どうするか。

 

「どうか……どうか……」

 

「……悪いですが――」

 

悩むカズヤが判断を下し、断る旨を告げようとした時だった。

 

「カズヤはここにおるのか?」

 

襖を開き雪が部屋の中に入ってくる。

 

「雪?」

 

「雪様!!お体は大丈夫なのですか!?突然気を失われたと聞きましたが」

 

「うむ……少し休んだら良くなった」

 

「そうでございましたか」

 

「それはそうと……爺とカズヤは何を喋っておったのじゃ?」

 

「それは――かくかくしかじかでございます」

 

「……」

 

当たり前のようにカズヤの隣に腰を下ろした雪が源蔵の話を聞いていく内に顔をしかめる。

 

「のう、カズヤ」

 

源蔵の話を聞き終わり顔を伏せた雪はカズヤの服の一部を掴むと口を開いた。

 

「……なんだ?」

 

「ここから……出て行くのかえ?」

 

「……」

 

「ここで……暮らさぬか?貧しい所じゃが、暮らしやすいぞ?」

 

「……」

 

「のう……カズヤ。妾と共に暮らしてはくれんか?もう……もう……1人は嫌じゃ……」

 

終いにはしがみついて泣き始めた雪と、鬼の形相でこちらを睨んでいる源蔵にカズヤは折れた。

 

「はぁ……この話……慎んでお受けします」

 

……逃げられないってこれは。

 

泣きながらすがり付いてくる少女を振り払う事が出来る程、腐ってはいなかったカズヤはこうして黒羽和也となり一国一城の領主になった。

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