ガンダムビルドファイターズ NEXT 作:よなみん/こなみん
彼の力に負けた一翔は教室に戻っても落ち込んでいた。
「・・・負けた」
一翔は教室の端、自分の席で半破壊されたガンプラを見つめていた。足、そして肩のシールドが破壊され、かち合った部分のパーツには亀裂が入っていた。
傍から見れば対したことがない。で済むのだろうが実際はそうはいかない。
(ガンプラ自体の修理はできるけど・・・基本の性能のどれだけ取り戻せるか・・・チューンしたとはいえ・・・面倒だ)
「何してるの?」
「ああっ!?」
放課とはいえ油断していたのかもしれない。この人の存在を忘れていた。油断していた一翔は驚き、大きく後ろに下がってしまう。
その人はアイドルでありながら高校生。しかも一翔より歳上の美少女。普通なら関わることなどないが・・・。
「・・・彩さん。驚かさないでください」
「やった!一翔くんのいい顔見れた!」
「・・・はぁ」
香澄系列の人は恐ろしい人が多いが、この人は特に一翔は苦手としていた。「まん丸お山に彩りを」それが口癖の周りを明るくするある意味の天才。Pastel*Palettesのボーカル。
「これってガンプラ?」
「ですよ。まぁ、やられちゃいましたけどね・・・」
「そっか・・・華楓くんかぁ」
同じ三年生だから名前を言わなくても分かるのか、彼女はその名前を呟く。同じ三年生だから接する部分もあるのだろう。分かって当然か
彩は一翔のガンプラを舐めまわすように見る。その目は好奇心こそあるが、何か足りないと言う目でもあった。
「一翔くんのガンプラなんか足りないね、こう輝いてる部分がないって言うの?」
「・・・え?」
「もうちょっと盛ろうよ!ぱーって!」
・・・たしかに彩の言うことも一理あるのかもしれない。一翔のガンプラは三機ベースではあるが、特別強いシステムやチート武装がある訳では無い。高性能な機体性能に後期GNシリーズが搭載したTRANS-AMシステム。さらにはドライというパーツが居なくても放てるようにしたGNロングキャノン。さらにはビギニング用の三連サーベルの改造・・・強気には改造したが彩の言う通り、何か足りないと思った。
「・・・確かにアリかもしれませんね」
「それとさ!明日ちょっと手伝ってくれない?」
「何をですか?」
「もちろんマネージャー業!いつもの人が倒れたから!」
少し嫌な予感がしたので、一翔が詳しく聞くために再び質問を返すと、彩はニコニコとした顔で一翔の机をバァンと叩いて強気に答えを返してくる。
「面倒・・・」
「ダメ!事務所には言ってるし!一翔くんなら信用できるって許可貰ってる!」
「織り込み済みかよっ!?自分の意見は!?自由権を!」
「それは無理!助けてね!一翔くん!」
一翔はこれまでの自分を呪っていた。と言うよりは後悔をしていたと言うべきか。
前に一翔はパスパレとのメンバーとは面識はなかったと言ったが、実際はさーくるのでの面識が無いだけと言うだけだ。それを除いた学校内、さらには彼女たちの仕事関係での面識はバリバリにあった。
ではなぜ面識がないのか。理由は簡単だった。
(・・・どうせ絡まれるから嫌なんだよ。この太陽のような人達の笑顔が・・・俺は嫌いなんだ)
数年前のこと。それを今でも引き摺っている自分にとって、アイドルという太陽のような位置にいる彼女たちは眩しすぎた。
それでも一翔は彼女たちに付き合うことは嫌ではなかったし、苦でもなかった。
彩は「よろしく!」と言うとそのまま嵐のように去ってしまう。それがまるで一難かのように一翔は頭を抱えて項垂れる。
全国大会まではあと1ヶ月もない。下手をしたらさーくるのバイトもあるし、学校もあるしで期間は大幅に減少する。さらにこのガンプラの有様では修理しただけでは前のような性能は取り戻せないだろう。
なら簡単だ。直す暇はない。新しいガンプラを作る必要があるのだが・・・。
「・・・残ったパーツでならギリギリ・・・いや、スローネ系で残ったパーツはロクなのがないな。バスターソードもキャノンもこっちで使ってるからな・・・」
残ったパーツはスローネヅヴァイの本体。ドライの本体。アインの武装。ビームライフルとサーベル。
ドライの肩パーツであるミサイルポッドも健在。バックパックも健在で一通りの機体は作れる。
だが、残りの武装では火力が足りないのは確かだった。その時、ちょうど良くスマホが鳴る。
「もしもし?」
『一翔!?今日は空いてるかしら!?』
電話に出た途端。耳には矢が刺さるような勢いで声が突き刺さった。声の主は弦巻こころだった。
彼女は少しだけ慌てる声でこの後の予定がないかを聞いてくる。おおよそご飯のお誘いか、遊んで欲しいのだろう。
だがあいにく明日はマネージャー業のバイトが入っている。アイドル直々の願いを断るわけには行かないし、それにこのままこころの家に行けば明日まで監禁されるのは確実だ。
「ごめん。この後はお仕事入ったんだ」
『じゃあ夕飯ね!決定!』
少しは話を聞いてくれ。その願いは彼女には届かなかった。静かに頭を抱え、机に疲れたかのように倒れ込む。しかし、こんなことを言っている暇はない。今、望んでいた人物をここで逃すわけには行かないのだ。
一翔は再び顔を上げると弱々しい声で電話の向こうでワクワクしているであろう、こころに話しかける。
「少しいいか?ちょっと相談が・・・」
『何?今から練習だったからこれだけで終わろうと思ったのに』
「いや。こころにしか頼めない相談で・・・」
『乗ったわ。その話』
彼女との話を進め、自分の意見を伝えきると、こころは納得したかのように応え、電話を切る。
伝えることは伝えた。そう思った矢先、授業の始まりを知らせるチャイムが鳴った・・・
「あっ・・・ご飯食べてない・・・」