ファンタジー作品は初めて手を出しますができる限り頑張りたいと思います。
第一話「始まりは遠い昔」
最初はほんの気まぐれだったのだと思う。
研究のために必要な植物や菌類を採取した帰り道、たまたま道の脇の草むらの中に白い何かを見つけたことがきっかけだった。
当時の好奇心に満ちていた私はただほんの一瞬視界に入っただけのそれが気になってしょうがなかった。我慢できずに近づいていった私の目に写ったのは、傷つき倒れた白い子犬だった。
後脚と腹から血を滲ませ、不規則で荒い呼吸をしながら苦しみ悶えるその子犬を、私は羽織っていた外套を脱いで包み込み、我が家へと連れて帰ることにした。
私の目の前で苦しむ、小さく儚い命をこの時の私は見捨てられなかった。
私は家に帰るとすぐに子犬を自室に連れ込んで寝かせ、即席の犬用の傷薬を今あるもので調合して傷口に塗った。
他にも不足した血を回復させるもの、治癒力を高めるもの、体についた有害な寄生虫を殺すもの、その他簡易的な栄養剤、などのいくつかの薬を作り、与えた。
しばらく様子を見て、子犬の呼吸が安定しだすと、もう山場は越えただろうと判断してようやく普段の研究へと戻った。
この子犬を保護したした時、まだ日は高かったのに気がつけば辺りは暗くなっていた。
●
僕は未熟だった。
生まれつき体が弱く、母さんの乳を飲む時だって他の兄弟姉妹に散々押しのけられ、踏み潰されて育ってきた。
だから6匹いた他の兄弟姉妹たちの誰よりも小さかった僕は当然体力もなく、母や群れの仲間たちから見捨てられ、置いて行かれた。頼るべき家族を失った僕は一人で森を、草原をあてどなく彷徨っていた。
ある時、ふと母さんがネズミやウサギを食べていたのを思い出して、それらを探すために草原へと向かった。
僕が目をつけたのは自分に背を向けてもぞもぞと動いているウサギのような小動物だった。長い間まともに母乳も吸えてなかった僕は腹が減って仕方のなかったせいもあったのか、ただ何かにありつきたい一心で、狩りの仕方も分からないのにそのウサギ目掛けて飛びかかった。
そこから先は記憶も曖昧だった。
足で蹴り飛ばされて、後脚を噛まれて返り討ちにあった僕は怖くなってただひたすらに逃げた。逃げるしかなかった。とにかく必死で、どこにどのくらい逃げたかなんてもう覚えてなかった。
次第に自分が何を考えているのか分からなくなって、体に力が入らなくなって、何もかもがどうでも良くなって、ただ漠然と「僕はここで死ぬんだ」と思いながら倒れたところで、僕の意識は途切れてしまった。
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体を包み込む暖かさを感じながら、僕は目を覚ました。
まだ頭が働いてなくて、目もぼんやりしていて、それでも鼻だけは草原や森のものとは違う少し変わった匂いを感じ取っていた。
(ここは、どこだろう……?)
母さんか他の群れの仲間が僕を拾いにきてくれたのだろうか、それとも……。
ようやく馴染んできた目を凝らして辺りを見渡す。
そこは、未知の世界だった。
僕の周りを毛皮ではない薄くて柔らかい何かが覆っていて、体を起こすとそれは音も立てずに背中からスッと落ちた。
気がつけばあんなに痛くて辛かった傷もなくなっていて、赤く染まっていたお腹も後ろ足も白く戻っていた。
上を見上げれば空が木の香りがほんのりとする茶色い何かに塞がれていて、太陽ではない白く光る大きい何かが僕のいる場所を照らしていた。
周りを見ればどこもかしこも、何もかも知らないものばかりで。そんな中に自分は一人ぼっちでいるんだと思うと、心の中にじわじわと不安と恐怖が湧いてきた。
ちょうどその時だった。
「ガチャッ」という聞いたこともないような音と共に、何かが入ってきた。
いきなりのことで驚いた体がピクリと一瞬震え、恐る恐る振り返った。
そこには、綺麗な銀の毛をした人間が立っていた。
動物視点っぽく描くの難しいですね。
タオルとか照明とか、あとは木材の天井とか、動物にはなさそうな概念をなんとなく雰囲気それっぽく表現する文章を考えて、なんとか形にするだけで一晩かかりました。
ただ、少しの間は肝心の東方要素が薄いかもしれません。
あと、僕っ娘は作者の趣味です。