真・恋姫†無双異聞 皇龍剣風譚     作:YTA

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 どうも、YTAです。
 利用規約をよく読み返していたら、ハーメルンさんでは設定資料集を単独で投稿するのはダメと言う事でしたので、前回ラストに持ってこようか、次回の冒頭にしようかと悩んでいた部分を3.5話として構成し直し、そのオマケとして設定資料を付属する事にしました。
 設定資料に関しては、物語の展開に合わせて随時、更新予定です。
 最新話の投稿と合わせて更新情報をお届けします。



第参・伍話 Ride on Time & 設定資料集

 あの日から、どれだけの時間が過ぎ去ったのだろう?

 訓練の日々が始まって早々に、『精神衛生の観点から良くない』と悟った北郷一刀は、日数なるものを数えるのを止めてしまったので、全く分からない。

 そもそも、この時間の流れない場所で時間を計るなど、ナンセンス以外の何物でもない。

 始まりの日に師である姬大人が口にした様に、この外史の狭間では、一日も百年も変わらないのだ。

 

 あれから、何度か貂蝉が帰って来た程度で、一刀は姬大人と卑弥呼以外の存在の顔など見た事も無かったが、少なくとも二人が何も言わないという事は、焦らなければならない事態が発生していないと言う事だと思い直し、与えられた目標を淡々と(こな)す事に従事して来た。

 幸か不幸か、そんな或る意味の不気味さを伴った平穏な日々は、姬大人から座学を受けていた所に卑弥呼が足早に割って入った事で、唐突に終わりを告げたのだが。

 

「大人さま、揺らぎが大きくなっております。最早、今までの場所に錨を下ろしておく事もままなりませぬ」

「ふむ、いよいよ動くか。今少し時を掛けて鍛えたくはあったが……」

「戦と言うのは、思った通りには始まらぬものですからな」

「まったくじゃ。ま、是非もあるまい……一刀よ」

 

「はい、師匠」

「最早、時は無い。旅立ちの――いや、帰還の時じゃ」

 一刀は、唐突に告げられたその言葉に、一瞬、思考が停止し、そして直ぐに、体中の血が沸騰する様な興奮を覚えた。

 

「帰れる?皆の所へ――帰れるんですか!!?」

「声がデカいわい……」

「す、すみません……でも、あの」

「うむ。本来であれば、もう少し“石”の扱いと巫術を教えてやりたかったが、卑弥呼の方は粗方は済んだようじゃし、聞いておった通り時も無いようじゃ。致し方なし」

 

「じゃあ、えぇと――どうすれば?」

「年甲斐も無く狼狽えるでないわ、ご主人様。ワシと貂蝉が用意しておいた装備がある故、それに着替えよ。さ、こちらだ」

「おう!――って、ひのきのぼうと100Gとかだったりしないだろうな?」

 

「流石にそんな鬼畜な所業はせぬ。ほれ、早く来ぬか」

 姬大人は、卑弥呼に連れられた一刀が部屋を出て行くと、静かに溜め息を吐いた。

「ふむ。儂の時よりは準備をさせてやれたとは思うが、それでも……」

 栓無き事か、と呟いて、姬大人は二人を追うように部屋を後にするのだった。

 

 

 

 

 

 

「ふむ、寸法(サイズ)は合っておったか。何よりだ」

 卑弥呼がそう言いって、着替えを済ませて自室を出て来た一刀に微笑みを向けた。

「合い過ぎてて気持ち悪い位だけどな……」

 一刀は照れ臭そうにそう言って、卑弥呼と貂蝉が来るべき日に備えて用意していたと言う衣装を見下ろした。

 

「厄災を払う神虫の殻を魔法銀(ミスリル)の鎖で補強した胸当て、最高級の水牛(バッファロー)革を(なめ)して作った特製剣帯、そして5.12タクティカル社製ハイエンドモデルのタクティカルブーツ!どうだ、ご主人様、完璧なこーでぃねいとであろう!」

 

「百歩譲って剣帯までは兎も角、何でブーツだけやたらと最新技術詰め込みました感が出てるんだよ……」

「うむ。色々と吟味した結果、靴と言うのはご主人様の時代の物が一番だと言う結果になってな。丈夫で軽く、しかも通気性も良い。ご主人様とて、欲しいと言っておったではないか?」

「いやまぁ、確かに履き心地は抜群だし、俺も欲しいって言った記憶があるけどさ、なんか釈然としないなぁ」

 

「水虫覚悟で古式ゆかしい本革の半長靴が良いと言うなら、直ぐに用意してやろうか?」

「いや、これが良いですマジですみません文句とかじゃないですから」

「棒読みなのは気になるが、まぁ良かろう」

「しかし、この剣帯もすげぇな」

 

 一刀はそう言って、自分の腰に巻いた剣帯を弄った。

 今は左の腰に神刃が、右のホルスターにワルサーP99がそれぞれに収まっているが、左右にもう一ヵ所づつ剣を納められる様になっているだけでなく、腰の裏には予備の弾倉(マガジン)を最大で3本も差し込めるようになっており、ポシェットも左右に二ヵ所も付いていて、最早、剣帯というよりユーティリティベルトと言った方がしっくりくる程だ。

 

「うむ。ワシも状況が落ち着けば一度そちらに赴いてご主人様の支援体制を整える心算(つもり)だが、何分、暫くは動けぬ。そうなると、単独で後方支援も無く動かねばならぬ事も増えようからな。出来るだけ武器弾薬を携帯できる様に作ってみた。そら、これも差すが良い」

 卑弥呼はそう言うと、姬大人が何時も寛いでいるテーブルの上に置いてあった大小二振りの刀剣を手にして、一刀に差し出した。

 

「短刀の方は、ご主人様が持って来た井上真改を直しに出したものだ。折れた残りはな、ワシに少し考えがあるのでもらい受けるぞ」

「そりゃ構わないさ。俺が持ってても仕方ないし――おぉ、本当に真改だ。ありがたいよ。何せ、先祖代々の持ち物だからさ。戦で折れた訳だし怒られやしないだろうけど、心残りだったからなぁ」

 

 最早、『直しに出した』などとシレっと言われても、一々反応したりはしない。

 卑弥呼がふらりと居なくなって帰って来ると、何処からか姬大人と一刀の煙草やら、時たま射撃訓練をして目減りしていた筈の銃弾や食料やらが補充されているのにも、すっかり慣れ切ってしまっているからだ。

「それなら何よりだ。そら、こちらの打刀も見てみるがいい。神刃に人の血を吸わせるのは気が引けると言っておった故、手頃な物を見繕っておいたのだ」

 一刀は言われるまま、真改と揃いの肥後拵(ひごごしらえ)が詫びた風情の打刀の鯉口を切り、ゆっくりと抜刀した。

「――おいおい、相伝備前の三作帽子とか……つーか沸も冴え過ぎだろこれ……一財産とかの話じゃなくねぇか?」

 

「なに、本人は習作だと言って手頃な値で譲ってくれたぞ?」

「は?本人?」

「うむ。長船兼光だ」

「おぉ、もう……」

 

 慣れているなどと思った自分が馬鹿だった、と一刀は心底思った。

 言われてみれば確かに、肯定者としての力を使って“長船兼光の存在する外史”に飛べば、本人から直接、打刀の一振りも買う事など造作もない事なのだろうが。

「まさか、兼光なんか腰に差す日か来るとは……」

 

 如何な名工とて生活がある以上、今に伝わって居ない様な剣を鍛えて売っても居たろうが、それでも。

「まぁ、無銘であるし、流石に折り紙付き程ではあるまいが、実戦で振るうならば惜しくもない分、手頃ではあろう」

 そう宣う卑弥呼に、一刀はソウデスネと相打ちを打つくらいしか出来なかった。

 世の刀剣の関わる人間が聞いたら戦争ものの発言である。

 

「ほっほっ、似合っておるではないか、一刀」

 手に何やら白い布地らしきものを持った姬大人が、一刀の後ろから声を掛けた。

「あれ、師匠どちらに?」

「ん?いや儂もな、其方が此処を出ていく時には餞別(せんべつ)くらいはやろうと思って、昔の品を直しに出しておいたでな。それを持って来たのよ」

 

姬大人はそう言って、手に持っていた布地を一刀に渡す。

 一刀が実際に受け取って広げてみると、それは白い革の外套(ロングコート)で、襟には金の生地で縁取られ、下衿と袖口は青に染められていて、両の腰から背中に掛けられているベルトも同じ色だ。

 背中部分の中央には、丸に十文字をあしらった黄金のメダリオンが縫い込まれていた。

 

「これって、聖フラの制服っぽいような……」

 そう。それは、一刀にとって思い出深い聖フランチェスカ学園の制服を、そのまま外套にした様な意匠だった。

「うむ。あちらでは、天の御遣いの服と言えばこの意匠だと卑弥呼が言うておったでな。白龍の脱皮した皮で作った陣羽織が仕舞ってあったのを思い出したんで、仕立て直したのじゃ。いやぁ、流石に派手過ぎて数回しか着ておらなんだが、貴重な品ゆえ捨てるのも忍びのうてな。いい引き取り先が見つかって良かった良かった。ほっほっほ」

 

「ひぃみぃこぉ……!」

「♪~」

「ったく、わざとらしい……」

 一刀は、そう言いながらも、素直に外套に袖を通した。

 

 実際の所、あの制服は確かに天の御遣いのシンボル的な位置づけではあり、同じ意匠の変えを幾つも作られて(もっぱ)らそれを着せられていた事を思えば、他の色の服など着て帰っても、当時の服を引っ張り出されて着ろと言われかねない。

 

 当時は楽で良いなどと思って気楽に構えていたが、三十路も半ばに差し掛かって高校時代の制服で日常を過ごせなどと言われては、堪ったものではない。

 同じ派手な装束なら、学生服より外套の方が万倍マシと言うものである。

「うむ、少し大きいかと思ったが、丁度じゃのぅ」

 

「はい、胸当ての厚みもありますし。ありがとうございます、師匠」

「うむ。見た目に違わず、質も良いぞ。そこいらの金物(かなもの)程度では傷も付かぬし、風通しも中々悪くない。役に立とうて」

「さて、ご主人様よ」

 

 卑弥呼は表情を引き締め、改めて一刀を見る。

「其方には、巴郡に向かって貰いたい」

「巴郡……都じゃなくて?」

 一刀は、以外そうな顔で卑弥呼に尋ねる。

 

 巴郡は蜀の領土で、厳顔こと桔梗が治めている領地であり、山岳地帯の多い蜀にとっては貴重な穀倉地帯でもある。

「そうだ。(かね)てよりの調査で、巴郡に僅かな時空の歪みが発見されていてな。我らが関知しておらぬ以上は罵苦のものと考えて注視していたのだが、先刻、その歪みが強くなったのと同時に、我らが外史の時間の流れに対して干渉出来なくなったのだ」

 

 

「つまり、俺たちの外史には、もう好きな時間に戻ったり出来ないって事か?」

「左様」

 姬大人が言葉を継ぐ。

「儂らが外史の時間の流れに干渉出来るかどうかの可否を決めるのは唯一つ、その外史を“観測者”が観測していない事じゃ」

 

「シュレティンガーの猫ですか」

「左様。“観測者が観測していない、事象が重なり合った状態の箱の中”にのみ、儂らは自由に干渉出来るのよ」

「成程。実験前提としての時間経過を観測する観測者すら居ないなら、箱の中の時間が経ってるかどうかすら観測は出来ないもんな」

 

「うむ。即ち、ご主人様たちの外史を例にするなら、“ご主人が世界に存在しない状態”であれば、原則的に儂らは自由に外史に干渉出来る訳だな。だが、罵苦どもが入り込んだせいで、そうもいかなくなった。何故なら、“奴らは外史の外から外史を観測している”からだ」

「俺の代わりにって事か?」

 

 一刀が、卑弥呼の言葉に不安げな問いを返すと、姬大人が緩々と首を振った。

「そこまでの力は、今はないな。今までもそうだったからこそ、儂らはある程度、外史とこの狭間との時間の流れを調整できていたのじゃ。下級種が多少の数入り込んだ程度では、“物語”の行く末を決定する様な事は出来ぬし、相手が罵苦である事を鑑み、卑弥呼や貂蝉が赴いて密かに討伐した事もあるしの」

 

「大人さまがご存命で在れせられた事も大きいでしょうな。大人さまと蚩尤は、ある意味で対として語られる存在でございますれば、蚩尤の方でも、大人さまの存在を察知し、警戒もしておりましたでしょうから」

「さて、どうかのぉ。いずれにしても、儂らは奴らが“物語の行く末を決定付けかねぬ様な行動を起こしておらぬ事”を理由付けとして、謂わば外史の時間の流れに錨を打ち込んでおったのだが、それが外れたと言う事じゃな。故に、今この瞬間にも、外史の扉が開かれたのと同様の状態、つまり――」

「罵苦たちが、物語の行く末を決めかねない行動を越そうとしている――だから、時間が無いって事ですか……」

 

 一刀が、(おとがい)に握った手を当てて考えながらそう言うと、卑弥呼が大きく頷いた。

「うむ。重々に気を付けよ。時と場合によっては、四凶が出張って来るやも知れぬ」

「脅かすなって。でも、それなら早いに越した事はないな」

「頼んだぞ、一刀」

 

 姬大人が一刀の二の腕辺りを掴んでそう言うと、一刀はその手を自分の手で包み込んだ。

「はい、師匠。師匠の名に恥じぬよう努めます」

「うむ。よう言うた」

「ご主人様。この袋に、当座の生活用品と路銀、それからご主人様が正史から持って来た物を全部積み込んである」

 

 卑弥はそう言って、帆布の大きなリミタリーバッグを一刀の前にどかっと置く。

「一応、出城か街の近くまで転送できる様に努力はするが、ここまで不安定な外史に、自分ではなく他人を送り込むのはワシも初めての事。座標はズレるものと思って貰いたい」

「分かった。多分、成都や都に援軍を頼みに行く時間もないんだろ?」

 

「十中八九、な。ご主人様ならば鎧装して走り抜ければ時も掛かるまいが、向こうの軍勢がそうは行くまい。ただ、巴郡に於ける下級種の動きは多少、活発であったろうから、運が良ければ、成都から纏まった戦力が駐屯しているかも知れん。それを期待するしかないな」

「まぁ、何と言っても伏龍鳳雛がいるからな。期待はしても良いと思うけどさ」

 

「うむ。何かあれば、これでワシらと連絡が取れるからな」

 卑弥呼はそう言って、子供用のトランシーバーの様な物を一刀に差し出した。

「また、古いもんを持って来おって……今日日(きょうび)、もちっと便利なのがあるじゃろ……」

「いっ、いや!これもまだ十分現役ですぞ、大人!」

 

「あはは……いや、ま、無いよりはマシだからさ、うん」

 一刀は、通信機を受け取るとミリタリーバッグを持ち上げ、勢いを付けて肩に担いだ。

「うへぇ。結構、重いなぁ」

「ワシの愛が詰まっておるからな!」

 

「置いて行っていいですか?」

「なんだと、泣くぞ!!」

「ほっほっ、最後まで騒がしい事じゃ。ほれ、見送ってやる故、さっさと行くぞい」

 姬大人はそう言って、やいのやいのと言い合っている二人を置いて、さっさと階段に向かって歩き出す。

 

一刀と卑弥呼は、姬大人の背中を眺めてから顔を見合わせると、互いに気まずそうな顔をして、その後を追うのだった。

 

 

 

 

 

 

「では、気を付けてな」

「はい。師匠もお元気で――じゃあ、卑弥呼。頼む」

「うむ。ご主人様であれば心配いらぬとは思うが、くれぐれも用心を怠るなよ」

「あぁ――二人とも、お世話になりました!」

 

 漆黒の闇に浮かぶ橋の一端に立った一刀は、そう言って頭を下げ、もう一度、上げる――と、微笑みを浮かべていた姬大人と印を結んで目を閉じている卑弥呼の顔が、光に包まれる。

 次の瞬間、冷たく頬を裂く風を感じて目を開けた一刀の目に涙が一粒伝い、それは直ぐに風に運ばれて何処かへと消えた。

 

 眼下には、遥かに果ての見えぬ雄大なる大地と切り立った山々と、翡翠の色を湛えた川が返す水面の煌めき。

 北郷一刀は、愛しい人々の住む悠久の大地の空を、風を受けて飛んでいた。

 

 

 

 

 

                 設定資料集

 

                  注意

 

 これからのページにはネタバレを含む恐れがあります。

 それでも構わないと言う方か、最新話まで読み進んで下さった方のみ、スクロールして下さい。

 

 また、本項は設定厨の特ヲタが考えた中二設定で溢れています。

 そう言ったものがお口に合わないと思われる方の閲覧はおすすめ致しません。

 尚。張り付けてあるURLはTINAMIさんで過去ニ絵師さんに描いて頂いたキャラクターイラストになります。

 興味を持って頂けた方は、是非ご覧ください。

 

 

                 主人公設定

 

〇北郷一刀

 

http://www.tinami.com/view/593478

http://www.tinami.com/view/669208

 

 恋姫†無双シリーズの主人公。

 この外史では、黄龍の器と呼ばれる者として皇龍王となり、幻想を食らう古の怪物、罵苦(ばく)と呼と戦う事になる。

 太古の昔に封印された筈の罵苦が復活し、一刀達の外史を侵そうとしている事を察知した姬大人(きたいじん)、卑弥呼、貂蝉ら外史の守護者からの要請により、“乱世を治める天の遣い”から、“怪物の侵略から世界を救う天の遣い”として再臨する為に正史の世界に戻され、そこで“捨てた筈の世界で、もう一度全てを捨てる事を覚悟しながら己を鍛える”と言う過酷な試練を課せられて十五年の時を過ごした。

 

 その間、防衛大学校を卒業し、同期生の伝手を頼って渡米。

 L.A.にて、アメリカ海軍特殊部隊Navy SEALsの元指揮官だったレイモンド・P・ミッチャムと元部下のジェイコブ・ベイカーが共同経営する私立探偵事務所『M&B探偵社』に、調査員として勤務。

 勤めていた三年間の間に二人から徹底的に戦闘技術を叩き込まれた他、ハリウッドのスタントスクール等に通い、多種多様な技能を身に着けた。

 

 帰国後、改めて鹿児島の祖父・北郷達人(たつひと)に師事した示現流、及び祖父の剣友である中村光雄氏に師事した小野派一刀流は、共に皆伝相当の腕前である。

 東京に戻ってからは、個人で私立探偵事務所を経営。

 交友を再開した高校時代の同級生である及川祐を半ば助手として、ペット捜索から浮気調査まで手広く仕事を請け負っていた。

 

 新宿中央公園を中心として起こったホームレス連続失踪事件を追う内、外史から一刀抹殺の命を帯びて正史に潜入していた中級罵苦・黒網蟲と交戦。

 戦いの中で、己の力を外史に示し、再び開かれた外史の扉から飛来した黄金の龍と一体となる事で皇龍王へと変身を遂げる。

 黒網蟲を撃破した後は、及川に後事を託して外史へと帰還した。

 

〇皇龍王

 

http://www.tinami.com/view/600338

 

 北郷一刀が自身の腹部に埋め込まれた“賢者之石”の力を開放し、賢者之石が生成した超金属・日緋色金(ヒヒイロカネ)の粒子と己の氣によって錬成した白黄金(ゴールドプラチナ)色の鎧を身に纏った姿。

 

 

・身体能力

 

 身長:約190cm

 体重:約120kg

 最大腕力:70t

 最大脚力:110t

 跳躍力:垂直跳びで60m

 走力(100m):5.3秒

 

・起龍体

 

 北郷一刀が“賢者之石”の力を活性化させ、本来持っていた黄龍の器の力を引き出した状態。

 一刀が皇龍王になる為の過渡期としての性質も持ち、正史の人間である一刀の肉体が、外史由来の幻想の力を受け入れられる状態にする為の役割も持っている。

 この状態になる時、賢者之石から現れる“救世の英雄の幻想”の化身である黄金の龍が一刀の身体に巻き付き、身体に満たされる膨大な量の氣の制御を補助する役割を担う。

 その様子は、一見すると黄金に発光する刺青に似ている。

 

 正史の基準で言えば超人と定義できる程の身体能力を有し、肉体の治癒能力を促進させる他、幻想の力を使う事が可能。

 その為、軽功、硬氣功、内氣功などの氣功術を始めとして、卑弥呼から教えを受けた陰陽道の源流とも言われる鬼道や、姬大人から教えを受けた道教の巫術なども扱う事が出来る。

 

皇龍具足(こうりゅうぐそく)

 

 皇龍王となった一刀が纏う白黄金(ゴールドプラチナ)色の鎧兜の総称。

 『鎧装(がいそう)』の言霊によって、賢者之石内部で生成された日緋色金の粒子と一刀の膨大な氣を超高密度に錬成する事で完成する。

 現代に至るまでに人類が生み出した白兵戦用兵器では傷を付ける事も叶わぬ程の硬度を誇るが、鎧の錬成に使用しているのと同等、もしくは以上の超々高密度の氣による攻撃を受けると結合を絶たれて破損の危険がある他、鎧を貫通して一刀の身体にダイレクトにダメージを与える衝撃などは無効化できない。

 

 皇龍皇の姿になると、各部関節の保護の目的で体内に日緋色金が注入され、補助関節を生成する為、一時的に身長が高くなる。

 また、鎧の色が黄金ではなく白黄金なのは、日緋色金の本来の色が白金に近い為である。

 

黄龍兜(こうりゅうとう)

 

 一刀の頭部を覆う、黄龍を模した兜。

 視覚・聴覚・嗅覚の強化を一手に担う他、あらゆる状況下での酸素の供給までをも管理する為、賢者之石そのものに次いで重要な武装であると言っても過言ではない。

 

・金剛角

 兜の側頭部より生える、一対の枝角。

 神聖の象徴であると共に、(わざ)の使用と共に皇龍王の体内に蓄積されていく余剰神氣の体外への放出を担う箇所である。

 神氣の放出機能が最大限にまで高まると白く発光し、並みの魔性であれば、その光を浴びるだけで存在を維持で出来なくなる程。

 

黄龍瞳(こうりゅうどう)

 

 バイザー部分である龍王千里鏡の奥にあるデュアルカメラ・アイ。

“相手を視る事で発動する原始呪術(魔眼、邪眼、憧術等)であれば、その全てを相殺できる”という凄まじい能力を持つ、言わば魔眼殺しの魔眼である。

 その対象は、神性を帯びる程の妖精や魔獣などの保有するものも例外ではなく、また、“魔眼に捉えられた”と言う事実を遡って術式が起動する為、皇龍王が直接、相手を視る必要すらない。

 

 しかし、その絶大な能力に構成術式のほぼ全てをつぎ込んでしまっている為に、視覚情報の強化に於いては広視界化と画像の鮮明度の強化の二つに留まっており、その他は龍王千里鏡に依存する形になっている。

 能力使用時や、エネルギーが全身に行き渡っている時には、龍王千里鏡を通して発光する。

 

黄龍千里鏡(こうりゅうせんりがん)

 

 黄龍瞳を保護する緑色のバイザー。

現実拡張(AR)機能を内蔵し、望遠、敵性対象のマルチロック及び特性と惰弱性の検知、暗視、赤外線解析(サーモグラフィ)などの他にも、魔術的痕跡の検知及び情報分析、戦闘の状況に応じた武装選択補助システムなどを有する、多目的型視覚情報管理デバイス。

 スタンドアローンでの戦闘の機会が多い皇龍王にとっては、ある意味で最大の武器ともいえる部位である。

 

黄龍耳(こうりゅうじ)

 最大で(およそ)八里四方(一里500m換算)の音を聞き取る事が出来る聴覚強化装置。

 

黄龍顎(こうりゅうがく)

 

 皇龍王の顔面下部を保護する装甲。

 あらゆる環境下に於いて、一刀に適切な濃度の酸素をもたらすことが出来る。

 水の中から酸素を取り出す事も可能で、その際の活動限界時間は凡そ20分。

 

黄龍鎧(こうりゅうがい)

 皇龍王の胴を護る鎧。

 黄龍鎧と一刀の身体の間には、常に内氣功が満たされており、戦闘で受けた傷を癒し続けている。

 しかし、体力そのものを回復する事は出来ず、許容範囲を超えるような大怪我も瞬時には治療出来ない。

 また、四肢に宿った四神の力を循環させて相克し、均衡を保つ役割を担う。

 

・皇龍魂生甲

 一刀が皇龍王になった際には、下腹部に埋め込まれた賢者之石』が露出する。

それを護り、全身への氣の循環を補助するのが魂生甲の役割である。

 また、その性質上、皇龍具足の全ての部位の中で最も硬度が高い。

 

・雀王翼

 

 皇龍王の背部、肩甲骨の周辺を覆う装甲に隠された二基のバーニアスラスター。

 朱雀の力を宿し、一刀の『飛雲雀』の言霊を受けて装甲が開放され、瞬時に噴射口を展開する。

 名称に翼と付いてはいるものの、高圧縮した氣を動力源とする推進装置である為に単独での飛行までは出来ない。

 しかし、皇龍王の跳躍力を飛躍的に向上させる他、空中での姿勢制御や陸戦に於ける瞬発力の強化、水中での推進力の確保など、非常に汎用性の高い性能を持つ。

 発動の際は、白金色のフレアを放射する。

 

〇虎王甲

 

 皇龍王の右腕部を保護する手甲で、白虎の力を宿している。

 内蔵兵装として輝光拳、及び天縛鎖の射出機構を持つ。

 

天縛鎖(てんばくさ)

 

 一刀の言霊によって、掌の下にある射出口から射出される日緋色金製の鎖。

 直径こそ1.5cmほどだが、材質が材質であるだけに極めて強靭で、単純な剛性だけなら400t以上の超重量にすら耐え得る。

 素材となる日緋色金は賢者之石で生成された物を使用している為、一刀が賢者之石を起動状態に保っている限りは無限に錬成が可能。

 

 中距離戦闘に於ける敵性体への牽制や行動の抑制に使われるのは勿論、日緋色金が持つ氣に対する高い伝導性を利用して氣を注入し、軟鞭としても使用する。

 また、射出口から発射される際の最大初速は5.56x45mmNATO弾に匹敵する920m/秒にも達する為、発射シーケンスそのものを武器とする事も可能である。

 

 皇龍王の身体から切り離しても実体を維持できるが、その際は1時間ほどで日緋色金の結合が解けて消滅してしまう。

 

・輝光拳

 

 一刀の言霊と同時に起動する虎王甲の内蔵兵装。

 虎王甲の表面に神氣を集中させて力場を形成し、超振動を発生させる光の拳。

 打撃と共に敵に対して一気に神氣を叩き込む打の型、超振動によって敵を切り裂く斬の型、神氣を振動波と共に広範囲に放出する破の型の三つの用途が存在する。

 

 打の型は最大衝撃力が50tにもなり、斬の型は厚さ10cmの鋼鉄すら両断し、破の型の衝撃波は最大射程が30mにも及ぶ。

 

武王籠手(ぶおうのこて)

 

 皇龍王の左腕部を保護する手甲で、玄武の力が宿る。

 皇龍王の『武王甲』の言霊で術式が起動し、皇龍王を中心として薄墨掛かったドーム状の防御障壁を展開する。

 その防御力は絶大で、光学から物理(実弾・質量)に至るまで、あらゆる攻撃を防ぐ事ができ、極限まで硬度を高めれば、10TNTトンの爆発の直撃にすら耐え切れる。

 

 ただし、発動には皇龍王の言霊を必要とする関係上、皇龍王が感知し得ない攻撃方法には対応できない。

 また、展開している間は常に大出量の神氣を必要とされる為、お世辞にも燃費が良いとは言えず、長時間の展開は不可能である。

 最大で5m程にまで拡大する事が出来る。

 

青龍脛当(せいりゅうのすねあて)

 

 皇龍王の両脚を保護する装甲で、青龍の力が宿る。

 右足が龍の頭を、左足が龍の尾を現した意匠になっている。

 脛部分には龍の背鰭(せびれ)を模した刃があり、クロスレンジでの戦闘に於いては攻防に使用される。

 『青龍脚』の言霊で力を開放した際には、右脚が淡い緑の神氣に包まれ、そこから放たれる蹴りの衝撃力は110tにも到達する。

 これは徒手空拳に於ける皇龍王の武装の中では最大の物理破壊力を誇っており、四神の中で最も高位とされる青龍の名を冠するに相応しい威力と言えるだろう。

 

 

 

 

                    アイテム

 

賢者之石(けんじゃのいし)

 

 地・水・火・風の四大元素を全て内包する第五の元素であり、中世の錬金術師達がその製造を悲願とした、数々の神秘を内包する奇跡の石。

 一説には、錬金術の名の由来である卑金属を黄金に変えると言う秘儀は、この石を製造する為の研究の副産物であり、同時に、賢者の石の精製に至る為の研究資金を捻出する為のものであると言う。

 

 また、万能の霊薬として知られるエリクサー』は賢者の石を液体化した物であるとされ、ルネサンス時代の錬金術師の中には、これを用いて医療行為を行った者も実在する。

 姬大人は、この石の持つ“多くの神秘を内包する”と言う特性に着目し、一刀に罵苦と戦う力を与える為の依り代とした。

 

 その為、本来の不老不死と富を(もたら)すと言う存在からは在り様が変質している。

 以下が主に変質した内容である。

 

・黄金を無限に生み出せる→日緋色金の無限生成

 

・不老不死→驚異的な自己回復力・あらゆる毒物への耐性・死病の克服

 

・究極の知識の獲得→人間の脳が耐えられる内容量では無かった為、不必要なものをオミットした上で皇龍王の武装を成立させる幻想術式の構成に割り当て

 

・姿を消せる → 消失

 

・空を飛べる → 消失

 

 また、“完全な賢者の石の色は紅い”とされており、一刀の持つ賢者之石が紅なのも、“幻想の力”によって生み出された完全な賢者之石だからである。

 

日緋色金(ヒヒイロカネ)

 

 古代の日本に存在したとされる神秘の超金属。

“金より軽く金剛石(ダイアモンド)より硬く、永久不変の輝きを保つ”とされ、一説には日本皇室に伝わる王権の象徴“三種の神器”も、この日緋色で作られているという。

古代ギリシアのアトランティス大陸に存在したとされる神の金属オリハルコンと同一の物であるされる事もある。

また、命ある金属とも呼ばれ、日緋色金そのものがオーラ(生命エネルギー=氣)を放っているとも。

 

宝貝(ぱおぺえ) 神刃(しんば)

 

 宝貝とは、中国の仙人達が使うマジックアイテムで、人間が使用する白兵戦用兵器に超常的な力(自動追尾等)を付け足した物から精神に働きかける物、天変地異を操る物など、その性能は多岐に渡る。

 神刃は、卑弥呼が宝貝作りの得意な旧知の仙人に依頼し、神珍鐵(しんちんてつ)と賢者の石から精製された日緋色金を材料として作られた、一刀専用の宝貝である。 

 

 神刃には攻撃対象や森羅万象に働きかける力は無く、言わば“切れ味が良くて高硬度なだけの刀”であるが、材料とされた日緋色金と神珍鉄の特性を生かし、“人間の生み出した白兵戦用兵器”と言う条件であれば、殆どの物に形を変える事が出来る。

 これだけ聞くとあらゆる戦況に対応できる夢の万能兵器の様に思えるが、使用者である一刀がその存在を知らない(夢想できない)兵器にはなれず、また当然ながら、神刃が姿を変えた兵器の扱いに熟達していなければ、そもそも姿を変えられる意味がない。

 

 その為、必然的に使用者である一刀には、それだけ多くの兵器に対する知識と戦闘技能が要求さられる。

 また卑弥呼いわく、神刃を託された時点の一刀では、内部機構が複雑な近代兵器には姿を変える事は不可能であり、それが叶うとすれば、賢者之石の力を完全に引き出せる様になってからだろうと忠告されている。

 

 卑弥呼は、使用する際には生命力を消費する宝貝の特性を相殺する為、“一刀以外には重くて扱えないが、一刀が手に持つと羽の様に軽くなる”という、仙人の武器としての汎用性を完全に潰す呪法を施す事で宝貝が持つ神性を意図的に格落ちさせて(それでも、使うと腹が減る程度には体力を消費するらしい)その問題を解決したが、結果としては安全対策と軽量化を両立した強化に等しい結果となった。

 

打刀(うちがたな)

 

 一刀が普段から携帯している状態。

 全長は全長は2尺3寸(約73cm)で、一般的に言う所のオーソドックスな日本刀。

 柄頭(つかがしら)(ふち)、鍔は艶を抑えた金色(こんじき)で、柄巻は白の糸巻、刀身は美しい(のた)れの刃文と冴え渡った沸で彩られ、棒樋に沿うように龍の彫刻が施されており、鞘のは白石目で下緒は深紅。

 また、柄頭から刀身にかけて計五体の龍の装飾が組み込まれており、これは四神を全て龍の化身であるとする説(つまり所有者の一刀がその身に五体の龍を宿している事)と、最高位にして一刀の宿星の守護者である黄龍は、五指を持つとされる事の二つを象徴する意匠である。

 

千鳥十文字槍(ちどりじゅうもんじそう)

 

 千鳥が飛び立つ時の、翼を広げた姿に似ている事を名の由来とする、上向きの太く大きな湾曲した枝刃を持つ十文字槍。

 全長は6尺6寸(約2m)。

 

井上真改(いのうえしんかい)

 

 16世紀の刀匠、井上真改作の打刀で、当主から皆伝を受けた北郷家の嫡子に代々相続されて来た。

 真改は別称を真改国貞(しんかいくにさだ)とも言い、朝廷から許されて銘に十六葉菊花紋を刻む事が許された名工である。

 正宗の作風に挑み、その特徴的な湾れ刃文を得意とした事から、出身地に因んで“大阪正宗”とも称えられる。

 

 一刀の持つ刀は、最も秀作が多いとされる国貞から真改に改銘した時期の作で、最上作業物の折り紙が付いていた。

 黒網蟲率いる罵苦の軍勢との遭遇戦では、多くの下級種を切り捨てる活躍を見せるも、皇龍王が黒網蟲に放った光刃剣の威力には耐え切れず、自壊する形で二つに折れてしまう。

 

 

〇ワルサーP99

 

ドイツのワルサー社が開発した名銃P38の後継モデル。

38口径で装弾数は16発、9mmパラベラム弾を使用する。

 一刀が使用するトリガーバリエーションはQA(クイックアクション)モデルであり、この銃はグリップ後部のパーツが取り換え可能で、使用者の手の大きさに合う様に調節出来る為、総じてアメリカ人の手の大きさに合せて作られている他の銃より一刀の手に馴染んだ事から使用するようになった。

 

 一刀の持つP99は、アメリカ在住時代にジェイコブ・ベイカーに選んでもらったもの。

『ギャングじゃあるまいし』とのジェイコブの意向により彫刻(エングレーブ)などの装飾こそ施されいない普通の見た目をした拳銃だが、中身は彼の旧知の名銃工(ガンスミス)の手で一つ一つのパーツから選りすぐられ、更には一刀の射撃の癖までをも計算に入れてカスタムされた逸品である。

 

 尚、一刀は正式オプションのレーザーサイトと消音機(サプレッサー)も所有している。

 

 

 

 

                    キャラクター

 

・レイモンド・フィリップ・ミッチャム

 

 アメリカ合衆国 Navy SEALsチーム7に所属していた退役軍人で、最終階級は大尉。

 アイルランド系の白人男性で、年齢は45歳。

 現在は、元部下のジェイコブ・ベイカーと共にM&B探偵社を設立し、軽犯罪者の逮捕引き渡し(賞金稼ぎ)業務や身辺警護などを主な収入源としている。

 

 伝手を辿って連絡を取って来た一刀を受け入れ、SEALs仕込みの訓練を施した師でもある。

 実直で誠実な軍人然とした人物であり、ジャンルは問わず80年代の音楽を好む。 

 妻と娘が一人おり、家族仲は良好。

 

・ジェイコブ・ベイカー

 

 アメリカ合衆国 Navy SEALsチーム7に所属していた退役軍人で、最終階級は上等兵曹。

 アフリカ系アメリカ人の男性で、年齢は40歳。

 現役時代は百戦錬磨のスナイパーとして活躍していたが、チーム3への転属後、脚に大怪我を負い名誉除隊となる。

 

 その後、元上官だったレイモンドに誘われて共同経営者として独立。

 普段は主に経理と事務を担当しているが、時には現場に赴く事もある。

 レイモンドに代わって一刀の指導を行う機会も多く、現場一筋であった為、一刀の成長を認めてからは、より実践的な戦場での知識を教えていた。

 一刀に煙草の悪癖を教えた張本人でもある。

 

・及川祐

 

 一刀の高校時代の同級生で、同窓会の幹事を引き受けた際に、アメリカから帰国して鹿児島で修行中の一刀に連絡を取って以降、SNSなどを通じて旧交を温めていた。

 一刀が状況して探偵事務所を立ち上げた時に物件探しや広報活動への助言を行い助けた縁もあって、親しく付き合う様になる。

 

 勤めていた新聞社を退職してフリーのウェブライターに転職後は、一刀の半生を自身のルポルタージュ処女作にすると言う名目の元、取材も兼ねて調査の手伝いなども行っている為、殆ど住み込み助手の様な生活を送っており、一刀が外史に帰還する際には、家族への説明や事後処理などの後事を託された。

 

姬大人(きたいじん)

 

 大人とは目上の者や高貴な者に対する敬称で、本名は姬軒轅(きけんえん)

 その正体は、正史での時間の流れに沿うこと約4500年前、蚩尤と戦い打ち破った伝説上の大英雄・黄帝その人。

 熾烈な大戦争の末、多くの犠牲を払って蚩尤を含む罵苦の軍勢を次元の狭間に封印した後、帝として中華の始まりと称えられる程の功績を残し、人間としての生を全うした黄帝は、外史の守護者となる道を選び、姬大人と名乗って正史と外史を繋ぐ中洲とも言える“外史の狭間”にて隠遁生活を送る様になった。

 

 伝説では、黄帝は中華原初の帝王である伏羲(ふっぎ)以外では唯一、龍の身体を持っていたとされるが、その伝説の由来は、若き日の姬大人が伏羲の力が封じられた龍玉の力を使い、黄龍王と名乗って戦っていた事に起因する。

 姬大人によると、罵苦との最終決戦の折にその力を使い果たしてしまったとの事で、現在は黄龍王にはなれないらしい。

 

費禕(ひい)

 

http://www.tinami.com/view/701105

 

 字は文偉、真名は、聳孤(しょうこ)(青い麒麟)。

 幼い頃に実の両親と死別した為、縁戚を頼って益州に来た。

 義理の両親から深い愛情を受けて育っていたが、近隣で神童と評判になっていた聳孤の才能を聞き知った朱里と雛里の意向により、一刀の治世を支える次代の人材育成計画の一端を担う若手の一人として、都に召し出される事になる。

 一刀が正史に戻った後は、内政に向くと判断されて主に朱里に預けられ、その才能を磨く毎日を送っていた。

 初めて会った時に優しく接してくれた一刀に一方ならぬ畏敬の念を抱いており、その忠義は篤い。

 

 普段は人好きのする性格で、親交のある各国の重臣たちから同僚、庶人に至るまで多くの人にその人柄を愛されており、本人も人をもてなすのを好み、その為に料理に励んだりもしている。

 贈り物を考えるのも好きで、相手に気を遣わせない様に贈り物をしたいと考えた結果、手芸や縫製にも手を出したが、今ではそれが半ば趣味になってしまった。

 役職は門下侍郎だったが、朱里の計らいで、恋や音々音の協力の元で臨時の後軍師として巴郡に着任、司令官の任を経験する事になる。

 

 

 モデルは、諸葛亮、蔣琬(しょうえん)に続いてその地位を継いて三代目の宰相となった人物(役職としての丞相位は諸葛亮の永久欠番であった為、実際には大将軍・録尚書事・益州刺史の兼任)。

 呉への使者に立った時には、孫権と重臣たちから挑まれた論戦に(いささ)かも礼節を崩すことなく、またそれでいて一切屈しなかった事から、孫権は『天下の善徳の士』として激賞し、腰に佩いていた剣を下賜した上、『もっと話したいが、君は直ぐに出世するだろうから、そう何度も会う事は出来ないだろうな』とまで言って称えられたり、能力はあるが性格と口が最悪の楊儀と、現場一徹の魏延の関係が殺し合い一歩手前まで行った後も、二人から信頼されていた費禕が仲裁し続けたなど、人格と博愛精神を称える逸話が多い。

 人の数倍の速さで書物を読了し、その内容をよく理解し、また決して忘れなかったとされる。

 人をもてなすのが大好きだった費禕は、政務の合間に客と宴や食事をし、賭け事に興じたりもしたが、凄まじい事務処理能力だった為、仕事が遅れる事は一切なかったという。

 また、しきりに北伐したがる姜維をよく抑え、(いたずら)に国庫が消耗する事を防いだが、決してただのハト派と言う訳ではなく、魏が大軍を率いて侵攻して来た際には、鉄壁の守りを敷いてこれを撃退するなど、軍略にも優れていた。

 

・高順

 

 真名は誠心(せいしん)

 四十代半ば、虎髭が自慢の偉丈夫で、双戟の達人。

 副官としてまだ若い恋や音々音を支える呂布隊の屋台骨である。

 恋の武威に惚れ込んで臣従し、洛陽から落ち延びた後も各地を転戦して献身的に支えた。

 一刀と桃香に帰順してからは、半ば一刀の親衛隊扱いとなっている呂布隊の実務担当として辣腕を振るう。

 下戸である為、酒が一切飲めない。

 武勇に優れ、用兵の巧みさもさる事ながら、清廉で義理人情を兼ね備えた人格者で、桃香や幕僚たちからの信任も篤い。

 

 モデルは、呂布軍で張遼と共に二枚看板を張った勇将で、相対した敵軍を必ず打ち破る勇猛振りと用兵の巧みさから陥陣営(かんじんえい)と綽名され、夏侯惇が指揮する精鋭部隊を打ち破った事もある。

 呂布への忠義は篤く、呂布が裏切りに次ぐ裏切りで疑心暗鬼に陥り、高順に対しても冷淡な態度を取る様になっても、その忠誠心が揺らぐ事はなかったという。

 最後は、一切の弁明をせずに呂布と共に曹操に首を斬られた。

 

臧覇(ぞうは)

 

 字は宣高(せんこう)、真名は武悦(ぶえつ)

 副官である高順を除いた呂布隊の部将たちの筆頭格。

 武勇の誉れ高く、道義を弁え非道を嫌う熱血漢。

 私的な場では、一刀に対しても軽口を叩いたりなどする爽やかで取っ付き易い人柄である為、一刀に気に入られ、出掛ける時には請われてよく供をしたりもしている。

 余談だが、そのせいで朱里や雛里、蒼などから腐った視線を向けられており、界隈で攻め受け論争が白熱しているものの、本人は全く気付いていない。

 

 モデルは、呂布に加勢して曹操に敗れた後、気に入られて臣従し、魏で出世を重ねた驍将。

 武勇と人格を兼ね備えた人物で曹操の寵愛も篤く、曹否の代には、曹氏と夏侯氏以外で唯一の都督州諸軍事(複数の州を跨いで刺史を兼ねた権限を持つ都督)に列せられる程だった。

 

成廉(せいれん)

 

 真名は知拳。

 呂布隊の最古参の一人で、部将の中では随一の騎馬巧者。

 生真面目で一本気な為、融通の利かない部分もあるが、『蜀に帰順してからは大分(だいぶ)柔らかくなった』とは誠心の談。

 

 モデルは呂布に古くから仕えた猛将で、呂布が袁紹の元に身を寄せていた際には、同僚の魏越と共に数十騎の騎兵を率いて呂布に付き従い、一万数千にもなる山賊を散々に蹴散らしたという逸話を持ち、その事から、演義に於ける呂布軍八健将のモチーフになったと言われる人物。

 呂布が曹操に敗北してからは一切の記録が無い為、共に討ち取られたのだろうと言う説が有力。

 

 

 

 

〇罵苦

 

 かつて剪定者の過激派が、“外史をより簡単かつ合理的に滅ぼす為”に創造した魔導生物兵器。

 人々の強い“想いの力”を受けた外史を喰らう内に自我が芽生え、進化、暴走し、自らの創造主達に牙を剥くに至る。

 事態を重く見た剪定者と肯定者が超法規的に手を組み、黄帝を中心とした大同盟を結成して戦いを挑んで一度は封印に成功するも、4500年の時を経て復活。

 一刀達の暮らす外史に強い夢想の力を感じ取り、三国志の物語に於いて永遠の敵対者として位置付けられている五胡の存在に自分達を重ねる事で封印された次元から外史に介入、侵略を開始した。

 

蚩尤(しゆう)

 

 中華史上最凶最悪の怪物として伝わる存在。

 その実態は、外史の存在を否定する“剪定者”達の中でも過激派に属する者達よって作り出された、“対外史”に特化した殲滅能力を持った魔導生物兵器・罵苦のオリジナルである。

 単独で外史に介入し、その外史の人々を吸収する事で力を蓄え、その外史に最適化した下位個体を産み出して増殖するという機能を与えられた蚩尤は、創造主たちの期待以上の働きを示して数多の外史を文字通り喰らい尽くしてきた。

 

 正史以外の世界、即ち人々の“夢想”の世界に生まれた存在であれば、例え神の如き力を有していようとも関係なく捕食の対象として来た蚩尤は、数多の外史を吸収し滅ぼしていく過程で突如として自我に目覚める。

 蚩尤は、忠実に創造主たちから与えられた任務を実行するよう装いながら、自身の配下を産み出して軍勢を増やし続け、遂には、創造主たちが蚩尤の支援機として創り出した他の罵苦たちまでをも支配下に置き、創造主たちに牙を剥いて正史の世界にまでその食指を伸ばそうと画策した。

 

 長い戦いの末、黄帝とその仲間たちに次々と配下の邪神たちを討ち取られた蚩尤とその軍勢は、剪定者と肯定者の力を借りた黄帝の手によって、あらゆる時間と次元から隔絶された牢獄空間にその本拠地ごと封印され、未来永劫、表に出て来る事はあり得ない筈だったが、原因不明の事態が発生し、封印の一部が破れてしまった。

 

 尚、蚩尤を含めて創造主たちに直接生み出された罵苦たちは“超級”の位を冠しており、絶大な力を誇ったが、蚩尤を除いた超級種は全てが先の大戦で倒されたとされている。

 

 

 

〇四凶

 

 蚩尤に次ぐ実力を持つと言われる、四体の上級罵苦。

 中原の四方に流されたと伝えられる四柱の悪神の名を冠しており、それぞれが罵苦の一軍を預かる 軍団長達である。

 

饕餮(トウテツ)

 

http://www.tinami.com/view/649782

 

 あらゆるものを喰らい尽くす暴食の魔獣の名を冠した剣士で、獣を元にした罵苦で構成される魔獣兵団の長。

 西洋風の意匠の漆黒の鎧兜に身を包み、常に面当てと頬当てを閉じている為、その素顔を窺い知る事は出来ない。

 

〇中級罵苦

 

 各軍団長の元で作戦遂行を担う怪物たち。

 その素体とされた生物によって、饕餮率いる魔獣兵団、檮杌(トウコツ)率いる魔蟲(まちゅう)兵団、窮奇(キュウキ)率いる魔鳥兵団、渾沌(コントン)率いる魔水兵団の四軍団に別れている。

 また、各軍団長がそれぞれの軍勢の中から八体ずつ選出した個体は“八魔(はちま)”と呼ばれ、四凶に次ぐ軍事指揮権が与えられている。

 

黒網蟲(くろあみむし)

 

 檮杌配下の魔蟲兵団に所属する八魔の一体。

 肯定者たちの監視の目を掻い潜って正史への潜入を行える程の優れた隠形(おんぎょう)の力を持ち、檮杌から北郷一刀抹殺の命を受けて正史に赴くが、獲物を嬲って愉しむ性格が災いし、皇龍王へと覚醒した一刀の一太刀で両断されたが……?

 

黒狼(こくろう)

 

 人狼の姿をした中級罵苦で、饕餮の八魔の一体。 

 饕餮に次ぐ実力者で、副官として主に忠節を尽す。

 誇り高く、武人に近い感性を持っており、柄頭(つかがしら)を組み合わせて一振りとして使用できる雌雄一対の双刀を自在に使いこなす達人でもある。

 吸収の力を使い恋を追い詰めるも、最後の最後で敗北を喫し、瀕死の重傷を負った。

 

魔魅(まみ)

 

 狸の姿をした中級罵苦で、饕餮の八魔の一体。

 魔術や呪術の力を擁する外史の存在との戦いを想定して生み出された魔術戦闘に特化した罵苦で知性も高く、その為、流暢に人語を解する。

 巨大な火球を作り出して、呂布軍の二千の兵士たちが敷いた堅牢な陣形を一瞬で瓦解させるなど戦闘能力も高いが、乱入した皇龍王に右腕を切り落とされた。

 大きな尻尾が密かな自慢。

 

 

・下級罵苦

 

 それぞれの兵団に大量に割り振られる、罵苦の尖兵達。

作戦の性質や規模によっては、他の兵団に貸し出される事もある。

 各名称は以下の通り。

 

 魔獣兵団主力 猿ヒト型 『マシラ』

 魔蟲兵団主力 蚤ヒト型 『アカスイ』

 魔鳥兵団主力 鳥ヒト型 『アンズー』

 魔魚兵団主力 魚ヒト型 『トラウト』

 

 この中でも猿ヒト型のマシラは、高い汎用性と知性を持つ為、各軍団に頻繁に使用される。

 

 

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