幻想郷の普通な物語   作:メガネをかけた人喰い鬼B

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あーゆーレディ?


アユの塩焼きって川で食べるイメージ

「霊夢が男を引っ掛けてきた~!!?」

 

幼い体躯に立派な角を携えた、瓢箪をもって見るからに酔っ払っている『萃香』と呼ばれた少女は、元よりパッチリしていた目を大きく見開いて驚愕に染まっていた。

口もあんぐりとまではいかないまでも、塞がらないといった様子。

 

「霊夢さん、説明ぷりーず」

「その位自分で聞きなさい。ついでに誤解も解いてきて」

「俺が言って信じてくれるかね?」

「話せばわかるわよ。じゃ、よろしくー」

 

話せばわかるって、どーゆーこっちゃ?

いまいち説明になってないような気がするのだ。

なんにせよ、言葉にしなきゃ伝わらないので話してみましょう。

片や妖怪、片や普通の人間、死ななきゃいいけど。

神社向かってパンパンと手を合わせ、殺されませんようにと強く願う。

今は手持ちが無くお賽銭が出来ないので届くかどうかはわからないが、この際無いよりはマシだと自分に言い聞かせる。

 

……お賽銭って後払いできるかな?

 

「あのー……」

「……はっ!ん?あ?あぁ。この私に何の用だ、人間」

「用と言いますか、何か誤解されているようなので訂正したいと思いまして。あ、申し遅れました。私、運星と申します」

「誤解ねぇ…じゃあ何か、この私が間違っているとでも?」

「いや、間違ってるから訂正に来たのですが」

「くくっ……人間風情にしては馬鹿正直なヤツだ。だが……」

 

萃香(?)がそう前置きをすると、急に背筋に寒気が走った。

野生の勘か意図してか、首は否応なしにその原因へと向いた。

今の私の状況を説明するには『蛇に睨まれた蛙』という言葉が最適でしょう。

そんな私を尻目に、妖怪萃香は不適に嗤う。

 

「この私が山の四天王、鬼の萃香と知ってのことか?」

「…なんですと?」

 

鬼?ONI?

鬼ってあの鬼?英語でいうところのオーガ?

何時だったか、霊夢から聞いたことがある。

曰く「その昔、妖怪が住む妖怪の山の中でも頂点に立つ種族があった。それこそが鬼であり、その中でも飛び抜けて強い力を持つ者を『山の四天王』と呼び怖れられた」とかどうとか。

今はそのほとんどが地下にいるそうだが、まぁ妖怪の頂点の種族で四天王なんて呼ばれてる常識はずれに常識なんて通用しないだろうと。

そっと考えることを地平線の彼方へ誘った私、こと運星はそんなことを思いながらも必死に言葉を選んでいます。

 

「霊夢とは腐れ縁なんですよ。今日は料理を振る舞っていただけで」

「だそうだが、どうなんだ霊夢ー?」

「まぁ、だいたいソイツの言った通りよ」

 

萃香さんは顔を再びこちらへ向けると、今度はジーっとこちらを睨み付けてきた。

怖い、なにこの幼女ちっこいのに怖い。

「殺されそうになったらどうか命だけでもお助け下さいお願いします何でもしますから」という長文を視線に込めて霊夢に放つが、当の宛先はいつの間にか食卓に戻って味噌汁を啜っていた。

くそぅ、借りにも当事者なのに全部こっちに放り投げやがったな。

 

「…嘘はついてないようだな。もしついていたら、塵殺していたところだ」

「塵殺!?」

 

可愛らしい笑顔を浮かべながら私が塵と化す平行世界を語る少女萃香、私はどうやらまた一人頭の上がらない人が増えたようです。

と、話が一段落ついたところで重要なことに気がついたのです。

 

「「そうだ、アユ!」」

 

被ってしまって一瞬ヒヤッとしたのはどうかご内密に。

 

「アユどこ行った?」

「あ、それなら確かそこに…」

 

私は縁側に置いてあるタライを指差しました。

我々が話してる間に霊夢がアユをタライに入れてくれたのです。

おおかた不言実行を見せて後で分けて貰おうという魂胆でしょう。

しかし中身を見るとまだ元気に泳いでいて、新鮮で美味しそうなアユだと考えてしまう私は生粋の料理人だと自負したい。

 

「そうだ、これ幾つか譲ってやるよ。誤解した詫びってことでさ」

「いえいえ、お気持ちはう「美味しそうなアユね、大根おろしもいいけどやっぱりアユは塩焼きが一番よね♪」…ありがたく受け取っておきます…」

 

それにしてもこの紅白巫女、やけに食い意地はってることで。

こないだの一品抜きダイエットに失敗して少し体重増えたことをお忘れなのでしょうか?

 

「どうせならここで塩焼きにします?」

「おっ、いいねぇ!アンタらの話しも肴に一杯やろうかね!」

 

ということで、鬼の萃香さんと食事を共にすることに。

私がアユの下準備をしながら火の番をしていると、ふいに霊夢が横に腰掛けた。

…魚の生臭さで女の子の匂いとか全然わからん。

 

「どした?」

「別に、手伝うことあるか聞きに来ただけ」

「…そう言って取り分奪われる未来が見えたんだが?」

「…覗き魔

「一本献上するのでチャラにしてくれ!いや、してくださいお願いします!」

「で?私は何を手伝えばいいのかしら?」

「台所の調味料よろしく」

「ん」

 

『そんなの分かってたわよ』と言わんばかりにノータイムで塩諸々を取り出す霊夢さんマジ幼なじみ。

先ほどまでは風が強くて外で焼けるか怪しいところだったが、現在は肌を撫でる程度でむしろ心地よい。

一通り串を指し終えて、あとはしばらく見守るだけとなり、軽く日が傾いた中、二人で焚き火を囲んでいた。

愚にもつかない無駄話をしているうちに、話題は先ほどの出来事へ。

 

「つかアンタ!腐れ縁ってなによ腐れ縁って!説明するにしてももっと他の言い方あったでしょう!?」

「良いだろ腐れ縁!縁側が腐るくらい長い付き合いって意味だぞ!別に悪いことないぞ腐れ縁ー!!」

「アンタが言うとなんかこう…響きがバカにしてんのよ!」

「理不尽!霊夢さんすっごく理不尽!」

 

「はぁ…今日もいい月見酒が飲めそうだ」

 

萃香さんは私たちを優しい目で見守りながら、そう(こぼ)しました。

独り言にしてはやけに大きいそれは、私と霊夢の耳に確かに入った。

 

しかし、本当の意味を知るのはまだ先のお話。




うんせーのせってー その2
霊夢から妖怪のことに関して(主に酔ってる時の自慢話として)聞かされてるので、他の一般人よりは知識がある。
しかしあるだけ、対処方法とか聞いても出来ないもの。


『今宵は月が綺麗だね』
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