幻想郷の普通な物語   作:メガネをかけた人喰い鬼B

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実は言霊の妖怪かなんかだったりしないよね、運星くん?


運はいいほうです

 人里。

 妖怪や魔法使いやその他諸々など粒揃いな幻想郷において、ここは人間の最も多く住む場所だ。

 人間に害をなす妖怪等はもれなく博麗の巫女にボコにされるということで幻想郷の中でもかなり安全な場所でもある。

 ここにはそれなりの数の人間が軒を連ね、商いや農耕に勤しんでいる。

 

 かく言う私も、ここ人里では料亭なんぞをやっておりまして、ありがたいことにそれなりに繁盛しております。

 一応は高級料理を出すということですので、無論一人でやっているわけではなく、さりとてそこまで大きなものでもないので、十人程の従業員で、うれしくも日々忙しなく店を回している次第です。

 料亭といっても、お座敷があったりだとか高級な料理を出したりするわけでもないので私としては食堂のほうが馴染みますが、名前に関してはここの大家さんが決められたことですし、あまり気にすることでもないので今度顔を見かけたらそれとなく言ってみましょう。

 ━━っと、お客様が参られましたので、この辺で失礼いたします。

 

「いらっしゃいませ。ようこそ、料亭『しろほし』へ」

 

 いつも通り少しだけ笑みを浮かべながら、私こと運星は本日も汗水流して働きたいと思います。

 

 

 ……一方その頃、博麗神社では……

 

 

「おっすー、遊びに来たぜ」

 

 黒いとんがり帽子にエプロン、私が持っているものより少しモノが良い箒、黄色い房々(ふさふさ)(この間本人に言ったら怒られた為、心の中だけに留めておく)な髪の毛。

 アイツとはどっこいどっこいなほど見た顔が、そこに立っていた。

 

「あぁ魔理沙、いらっしゃい」

「お邪魔するぜ」

 

 縁側に揃って腰を掛ける。

 いつも通り魔理沙が左、私が右だ。

 

「珍しく昨日は来なかったじゃない。何かあったの?」

 

 魔理沙は基本的に2~3日に一度くらいの頻度で遊びにくる。

 何か急用があったという話も聞いていないので、いつも通りの頻度であれば昨日くらいに遊びに来ていたはずなのだが。

 

「あー……別に何かあった訳じゃないんだ。ただ、近くまで来たところでアイツが見えたから……な?」

「そういうこと」

 

 アイツ、とは運星のことだ。

 魔理沙は運星があまり得意ではないらしい。

 といっても性格があわないだとか、ひたすら反りがあわないわけではない、むしろ話してる分にはとても仲良さげな二人なのだ。

 ただ、以前に運星がなにを思ったのか、ずっこけた拍子に魔理沙の上に覆い被さり、あろうことか魔理沙の胸元に顔を埋めるという好色漢紛いな事件があったため、それ以来近寄るのを躊躇しているようだ。

 一応両者ともそれなりに長い付き合いになるので、体質のことは魔理沙も知ってはいるはずなのだが、やはり近寄りがたいのは変わらないようだ。

 私はともかく、魔理沙の考えも当然だろう。

 というか、それが普通だ。

 

「そういや、今日は見せたいものがあるんだよ」

「なに? またとんでもないガラクタやらキノコやらじゃないでしょうね?」

「違うって。これなんだがな」

 

 魔理沙が手にしていたのは、今朝の新聞だった。

 なんとなくこの先の内容は察せたが、面倒になりそうなので黙っておく。

 

「これこれ! 『博麗神社に嫌がらせ!? 博麗の巫女への宣戦布告か!』だってよ!」

「……はぁ」

 

 新聞の内容はこうだった。

 

「『先日、何者かが博麗神社上空から魚を落とすという事件があった。犯人は未だ不明だが、上空ということと博麗神社という点から妖怪の仕業とされている。妖怪の中には、人間を擁護する博麗の巫女に対し不満をもっている者も少なくなく、それに向けた宣戦布告として今回のような嫌がらせじみた行為を行ったものと思われる』……だとさ」

「あの文屋、鳥目で物事も見えてないんじゃないかしら? 宣戦布告にしては地味にも程があるわよ、あんなの」

「どういうことだ?」

 

 私は事の詳細を魔理沙に話した。

 無論、追いかけ回した云々の話は省略して。

 途中で料理の話しが出てきた時に、滅茶苦茶身を乗り出して話を聞いていたのは恐らく気のせいではないだろう。

 運星自身のことは苦手でも、運星の振る舞う料理はそれを覆すほどの魅力なのだ。

 

「魚かー! あーあー変に考えずに帰らなきゃよかったなー! 私のバカ!」

 

 結局、新聞の話題は運星へと移る。

 

「長い付き合いなんだし、いい加減慣れなさいって」

「でも新聞には、お前がアイツのこと追っかけ回してたって書いてあるぜ?」

「……やっぱり一回とっちめておこうかしら」

 

 そんな事を話している内に、空腹が気になり始める時間となっていた。

 そろそろお昼に、と思って腰を上げると、鳥居の向こうから階段を登ってくる人影があった。

 こんな時間に神社に来る人物など、私の知るなかでは一人しかいない。

 

「げっ……」

「やっぱりアンタも来たのね」

「うん、来たよー。あ、魔理沙! なんか久しぶり。最近あんまり会ってなかったような気がするよ」

「そうか? 私はあんまりそんな感じはしないんだがな」

 

 もちろん嘘である。

 なるべく悟られない程度に誤魔化してはみたが……

 

「前の事もあったから避けられてるんじゃないかって思ってたんだけど……まだ怒ってる?」

 

 流石にこれで騙されるほど馬鹿ではなかった。

 今この時だけは馬鹿でいてくれたほうが幾分かマシだった。

 

「怒ってる」

「ですよねー……何かお詫びさせていただけないでしょうか?」

「そうだな、じゃあ責任取って付き合って貰おうか?」

「言葉が足らないよねー? ()()()()()()()付き合って貰うだよねー?」

「なんだ、男のクセして二言か?」

「やだー! 死にたくなーい! この世の全てが白菜に見えたりとか左手だけ不定期に肥大化とかしたくなーい!」

 

 なお、これら全てに(実証実験済み)がつくが、同時に改善されているとは言っていない。

 魚を白菜と見間違えた時は本当に心配されて、早々に暖簾(のれん)を下ろすのはもう勘弁だと本人が言っていたが、関係ない。

 乙女の清き身体は高いのだ。

 

「まぁそれは冗談として……そんじゃあ、その手に持ってるモノを出して貰おうか?」

「乙女がそんな言葉使うんじゃありません。ほら、中身はお弁当」

「……? 霊夢とお前ので2つは分かるが、なんで弁当は3つもあるんだ?」

「お昼だし、こっちで誰かお客様が来てるようだったらいるかなーって。魔理沙に会えたらお詫びもしなきゃだし」

 

 コイツの飯は文句なしに旨いし、お詫びするという気持ちは評価できるが、それだとなんだか私が食べ物で簡単に釣れる軽い女と思われているようで癪だ。

 癪だったので、箒で一発殴っておいた。

 

いってぇ──!! うごごご……せ、せめて竿の部分はやめて竿は!!」

「ふん! ……私は寛容だから、これと弁当で許してやるぜ」

「殴るなら殴るって言って欲しかった……お弁当崩れちゃうでしょうが」

「おう! これからは一言断ってから殴るぜ!」

 

 案の定弁当は寄っていて、その事で霊夢と魔理沙はそれはそれは壮絶な弾幕勝負を繰り広げ、その後は疲れた二人にお茶を淹れました。

 とても綺麗で美しくはあるのですが、お弁当を食べる気分にはなれないのは何故でしょうか? 

 きっと、稀にこちれへ流れ弾が飛んでくるせいでしょう。

 

「そういや、アンタはなんで来たのよ? 店は?」

「大家さんが少し用があるからって、今日は朝の内だけ。それで暇だったし遊びに来た」

 

 帰り際に河童のにとりさんと会ったので、おおよそ工事か改装でしょう。

 きゅうりを使った料理を物凄く美味しそうに食べてくれる姿はなんとも癒されると言いますか、料理人冥利に尽きると言うものです。

 

 さて、後れ馳せながら今回の食事はこれ! 

 

「ナスの煮浸し、副菜にきゅうりの漬物でございます」

 

 うん、しっかりと味が染みていて、美味しく仕上がっています。

 休みになるのは前々から聞いていたので、皆さんも煮浸しを作る際には予め準備しておくとよいでしょう。

 急拵(きゅうごしら)えではあまり味が染み込まず、美味しいものが作りづらくなってしまいます。

 

「なぁ……」

「うん?」

「……昼間から煮浸しって重くないか?」

「………………」

 

 あっ。

 

「何か言いなさいよ、ほら」

「えぇと……その……

 

 

それじゃあ二人ともまたね! 

 

 後日、博麗の巫女に宣戦布告した妖怪が退治されたという報道がされたという。




うんせーのせってー その3

普段から注文受けたものを作っていくことが多いので、たまに気分で時間帯にあわない料理作っちゃうことがある。
でも食べたいなら仕方ないよね。

あ、この作品は少々飯テロも含んでるから夜中に読むのはオススメしないぜ!(遅い)
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