サモンナイト4 本編後ライがフェア世界に逆行 作:ライフェア好き
感想ありがとうございました、励みに頑張っていきます。
「「ごちそうさまでした」」
三人で食材を宿まで運んだ後、わたしが朝食を作ってる間に二人は宿の掃除をしてくれた。
そのお礼、って訳じゃないけど。朝食だからといって手を抜いたりはしない。
きれいに残さず食べてくれた二人にお茶を出しながら、食器を下げる。
「……どうだった?」
(それに、いつもはライと勝負してるしね)
リシェルは美味い、不味いをハッキリと言ってくれるし、
ルシアンは繊細な舌を持っているので、料理人としては食べさせ甲斐がある。
「おいしいですぅ」
「何だかんだ、アンタの料理が一番よね」
よしっ、と密かにガッツポーズをして喜ぶも、リシェルの言葉がちょっとだけ引っかかる。
「さっきはライのほうが美味しいって言ってたのに、調子いいんだからもうっ」
「ほんとよ、あんた元々料理上手だったのにまた美味しくなってない?」
「一年前に比べたら段違いだもんね、すごく美味しいよ」
姉弟揃って褒めてくれるので気分が良くなってデザートも出しちゃう。
「まぁ、ライの技術を盗もうとわたしも必死だからね」
「……にしては、泊まり客がライ以外居ないのよねぇ」
容赦ない攻撃にずっこけそうになった。
「うぐぐ……う、うるさいやい!」
「で、でもお昼はお客さんでいっぱいになるんだから」
ルシアンのフォローが優しい、優しいんだけど……。
(それってレストランとしての評価だよ……)
無自覚な追撃に肩を落としていると、入り口から慌ただしい足音が響き渡る。
(この足音はライじゃなくて……)
こんな朝早くに慌てて駆けつけるなら、一人しか居ない。
「見つけましたよっ!」
「げっ、ポムニット」
ブロンクス家のメイド、ポムニットさんが慌てた様子で駆け込んできて。
その勢いのままに説教を始める。
家を抜け出して~、名士のご息女らしく~と早口でまくしたてるポムニットさんへお水を用意する。
「〜〜〜でずがらじでっ!?ごほっ、けほっ」
「だ、大丈夫?」
(ほら、やっぱりこうなった)
「怒鳴りなれてないのに無理するからだよ……はい、お水」
「バパのことなんて気にしなくていいのに」
しかしメイドの健闘むなしく、おじょうさまはこの様子だ。
「リシェルあんたね……」
「む……、わかったわよ。パパにバレないうちに屋敷に戻ってあげればいんでしょ?」
ポムニットさんがあまりにも不憫なのでそれとなく助け舟を出すと、リシェルは素直に折れてくれた。
「そうです、そうです!今ならまだ内緒にして……」
(いや、やっぱりこの二人お似合いの主従だわ)
「そういうわけにはいかんぞ!」
バレなければセーフ、とばかりに悪行を重ねようとする二人へ天罰が下る。
声に驚いて扉を見れば、名士ブロンクス家の当主にして、幼馴染の父親
この宿「忘れじの面影亭」オーナーでもあるテイラー・ブロンクスが鬼の形相で立っていた。
「この私に隠し事とはどういう了見なのだポムニット?」
「だ、旦那さま……」
「まあ、お前にはあとでたっぷり説教してやる。
それよりもだフェア、お前何様のつもりだ?」
突然怒りの矛先が向いてきて、思わず姿勢を正す。
「雇われ店長の分際で、うちの娘らを手伝わせるとはどういうつもりだ?職務怠慢ではないのかね、ん?」
言ってることは正論なのだが、言い方にトゲがあるのが本当に苦手……。
わたしが何も言えずにいると、姉弟が慌てて間に割り込む。
「それは違うわ!」
「そうだよ父さん!僕たちが自分から勝手に手伝っただけで……」
「お前たちは黙っていなさい!」
しかし一蹴されてしまう。
重苦しい空気の中、意外にも最初に折れたのはオーナーだった。
「だが、最近は売上が伸びている事は認めよう。
あのライとかいう妙な宿泊客の影響だとしても、捕まえたのはお前だからな」
叱る所は叱り、評価すべき点は評価する。
それがこの人、テイラー・ブロンクスの尊敬すべき点なのだろう。
「それに免じて今日はこの位にしておくとしよう。
帰るぞリシェル、ルシアン!」
それだけ言うと、用は済んだとばかりに帰ってしまう。
「ごめん……」
悲しそうに謝る幼馴染に、わたしは笑いかける。
「気にしないで、早く行かないとまた叱られちゃうよ」
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仕事が一段落して、わたしは気晴らしのために宿の裏にある稽古場へと来ていた。
一年前まではダメ親父の作った道具しかなかったが、今はライが作って道具なども増えている。
準備運動を終えたわたしはライに比べたら小振りの剣を手に取り、
木人形へと向かって剣を振り始めた。
「えいっ、やぁ!せりぁ!」
威力よりも手数を優先した攻撃を繰り返し、
仮想敵にスキが出来た所で思いっきり斬りかかる!
「……駄目かぁ」
剣はわずかに木に刺さるも、深くは斬りつけられていない。
(いつか見た一刀両断、とはいかないなぁ)
「じゃあ、こっちだ」
わたしは同じ動きを繰り返し、最後の一撃だけやり方を変える。
「てりゃぁ!」
召喚術を練習するようにしてから密かに試してる魔力を剣に込めた攻撃、マジックアタック。
振り下ろした剣は小気味良い音と共に、剣は木人形を捉える。
わたしの一年の努力を表すように、剣は威力を増して先程よりも深く木に刺さっていた。
(やった、前より威力が出てる!)
確かな手応えに満足していると、拍手が聞こえてくる。
「すごいすごいっ、フェアさんはやっぱりすごいや!」
「店が休みの時間とはいえ、剣の稽古だなんて呆れるわね」
今朝叱られたばかりの二人だった、立ち直るの早くない……?
「リシェル、ルシアン……また来ていいの?」
「いいのよ、どうせいつものお説教なんだから」
「あはは……、ポムニットさんまでこってり叱られたもんね」
「それにしても、召喚術の練習を初めたのにまだ剣の練習してるんだ」
道具を片付けていると、リシェルからそんな質問を投げられる。
「うん、足りない威力を補う方法を見つけたから。杖よりこっちの方が性にあってるしね」
「フェアさん身軽だもんね、僕も頑張らなくちゃ」
「ルシアンだって最近は姿勢が安定してるじゃん」
この間まで見ていて不安になる振り方だったのが、今ではしっかりとしている。
「そうなのよ、コイツ剣に振られなくなってるのよ。生意気よね」
「姉さんひどいよ……」
口ではこんな事を言うリシェルも誇らしげで、相変わらず姉弟仲は良い。
「それより稽古が終わったなら付き合いなさいよ、散歩しましょ散歩。町の外まで星を見に行くの」
「いや、わたしこれから仕事が……」
突然そんな事を言われても困る、仕込みは終わってるとは言えディナーは稼ぎ時なのだ。
「ポムニットさんが店番しててくれてるよ、朝のお詫びだってさ」
「ポムニットさんなら任せられるけど、それにしても散歩って……」
この田舎町には娯楽がほとんど無いけど、他に何かないのだろうか。
「わかってないわね、年頃の乙女にはそういう時間も必要なのよ」
「そうかなぁ……」
「仕事に稽古、そんな事ばかりしてたら、
素敵な時間を過ごさないままあーっという間におばちゃんになっちゃうわよ」
(それは、イヤすぎるかも……)
料理して稽古して料理して稽古して……、
平凡な生活が夢とはいえ、乙女的にソレは駄目!
「わかった、けどポムニットさんに仕事の引き継ぎしてからね!」
「そうこなくちゃ!」
それはそれとして、ディナーの営業はちゃんとしないとね。
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暗くなった草原を、冷たくなってきた風が撫でるように吹いている。
星見の丘、町外れにある昔からの遊び場の一つだ。
「いい風が吹いてるね」
「うん、気持ちいい」
散歩で暖まった体に、冷たい風が心地よく、うーんっと伸びをする。
「ちっちゃかった頃はこの時分でも遊び回ってたよね。
暗くなってもお構いなしでさ」
リシェルが昔を思い出したのか、はしゃいで草原に寝転ぶ。
「そうだったね。店を任されてからはそっちで必死だったから」
リシェルの隣に寝転ぶ、冷たい草が気持ちいい。
「でもライが来てからかな、昔みたいな時間が増えたよね」
わたしの隣にルシアンが寝転ぶ、姉弟に挟まれてサンドイッチの気分。
「そうかな?」
「前は仕事ばっかりであんまりじゃないって、思ってたくらいよ。
あたしといっこしか歳変わんないのにーって」
「しかたないわよこればっかりは。ぜーんぶダメおやじのせいなんだから…まったく」
夜空へ向かって手をのばすと、薄緑の腕輪が月の光を受けて輝く。
「この腕輪を見るたび、つくづくそう思うわ」
「前から気になってたんだけど、その腕輪いつも身につけてるよね?」
これがおしゃれとかだったら、いいんだけどさ。
「好きでつけてるワケじゃありません。はずれないの……」
「えぇっ!?」
「たしかそれ、あんたのパパが旅に出る前にくれたものよね?」
そう、ダメ親父が出ていったちっちゃい頃からずーっと外れない、
にも関わらず、何故か常にぴったりの大きさのまま……。
「不気味ね……おかしな呪いとかだったりして」
「お守りとかいってた気がするから、しょぼいなりに魔力があるとか思わせておいてよ……。
呪いかもって、真剣に考えたことあるんだから」
あははは、と三人で困ったように笑いあった。
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「すっかり遅くなっちまったな」
旅人の為にある、町へ続く道を歩きながら空を見上げる。
空が澄み切っていて、月と星が夜空を輝かせている。
「確か、こんな夜だったなアイツと出会ったのは」
こんな夜、リシェルとルシアンとの三人で星を眺めていたんだ。
励ましてくれた二人に礼を言って空を見上げたら、流れ星が見えてさ。
どこだどこだって騒いでたら、滅茶苦茶いっぱい流れてきて……。
「……ん?」
思い返していた流星雨の光景が、目の前に広がっていた。
その中にあるひときわ大きな輝きが遠くへ向かって落ちていくのが見えて───。
「今日、だったのか……?間に合うかくそっ!」
オレは星が落ちた方へ向かって走り始める、
流れ星を拾った日、召喚獣達の隠れ里「ラウスブルグ」で内乱があった日。
そして、クソ親父が先代の守護竜の介錯を手伝った日。
(だとしたら、あの場所にフェアたちが居るはずだ!)
子供たちが竜の子供と出会う日。
すべての物語が、今始まる。
ついに物語が始まりました、テイラーさんは星をちゃんと集めると評価してくれるのでいい人だと思っています。