サモンナイト4 本編後ライがフェア世界に逆行   作:ライフェア好き

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誤字脱字報告ありがとうございます、本当に助かります。


第11話 この子どこの子、迷子の子?

「眠い……」

 

 結局朝まで警戒を続けたが、新手がやってくる気配も無かった。

 

「さすがに考えすぎたかな、ふわぁ……っ」

 

「よっ、随分と早いじゃないか。昨日のうちにこっちに戻ってたんだな」

 

「あぁ、グラッドの兄貴か。おはよう……」

 

 欠伸を噛み殺しながら、早朝の町を歩いていると

 巡回中の駐在兵士さんと出くわした。

 

「何だ随分と眠そうだな、朝ちゃんとしているお前にしては珍しい」

 

 習慣で朝の市場に顔を出すからか、朝の見回りをしている兄貴とはしょっちゅう顔を合わせる仲だ。

 

「寝てねーんだよ、夜から歩きっぱなしでついさっき町に入ったばかり」

 

「無茶な事をしたな、お前でも夜の外は危険だってのに」

 

 旅人の鉄則として、夜は休むもの。

 月明かりだけを頼りにするには、町の外はあまりにも危険だからな。

 

「剣と鎧で武装した奇妙な連中を見かけてさ、顔合わせ無いように迂回したんだよ」

 

「なんだって!?」

 

 兄貴に伝えることで今日来るはずの剣の軍団の介入を阻止できるかもしれない、そんな期待を込めて伝えてみることにした。

 

「遠くからしか見てないけど、町とは逆の方に向かっていたぜ」

 

 正確に言えば逃げていたんだが、それをオレが言うのもおかしいし誤魔化しておく。

 

「そうか……、この近辺で怪しい連中の活動が無いか調べてみないとな。

 ご協力感謝します!」

 

 駐在兵士としての仕事を増やしてしまった気がするのは、何か悪い気がする。

 駆け出していった兄貴を見送りながら、このあとのことを考える。

 

「確か、夕暮れ頃に剣の軍団が来るんだよな」

 

 お昼の後だったはず、今からかなり時間があるのは助かった。

 

「ちょっと寝とかねとーな……少し、だけ……」

 

 朝まで起きているのは流石に応える、この後戦闘が起こるかもしれないなら尚更だ。

 オレは眠気で鈍った頭を掻きながら、宿へ向かって歩き始めた。

 

 途中、聞き慣れた声の悲鳴が聞こえてきた気がする。

 

 宿に戻るのも面倒になってきて、オレは水道橋公園の原っぱに寝転がる。

 思ったより疲れていたのか、すぐに深い眠りへ落ちていった。

 

 ────────────────────────

 

 昨日の夜、流れ星から産まれた竜の子を拾って帰りました。

 朝起きたら知らない女の子がベッドに潜り込んでいました。

 その子に腕を思いっきり齧られました。

 齧られた時に大声で叫んじゃいました。

 

「……っていうことがあって」

 

 その悲鳴を聞きつけ、慌てて駆けつけてきてくれた

 巡回中のグラッドお兄ちゃんにありのまま説明した所。

 

「ねぼけたな、お前?」

 

 と呆れた顔でばっさり切り捨てられた。

 

「なんでよっ!?」

 

「そもそも話の始まりからしておかしいだろう、竜の子供を拾ったなんてまさしく夢の話しじゃないか?」

 

 冷静に指摘されてしまい、わたしはムキになる。

 確かに夢みたいな話だけど、わたしはそこまで寝ぼけたりしないやい! 

 

「ほんとだってば! 疑うなら今から連れてきても……」 

 

 必死に訴えるわたしを、どうどうと落ち着かせるお兄ちゃん。

 

「残念ながら、俺には見回りの仕事が残っててな。

 ライの奴が町の外で妙な連中を見かけたらしい」

 

「えっ!? それってもしかして……」

 

「ん? どうした」

 

「う、ううん。なんでも無い」

 

 慌てて誤魔化しながら、昨晩大暴れしたことを考える。

 

(それってもしかしてわたし達が倒した……)

 

 あの大立ち回りをライが見てたのだろうか……。

 

「まぁ、町とは反対の方に向かってたらしいけどな。

 お前も外に出る時は気をつけろよ」

 

「うん、わかった」

 

「じゃあな、夢の話しなら後で聞いてやるよ」

 

 手を振って町へ戻っていくお兄ちゃんを見送りながら

 わたしは宿の自分の部屋の方を眺め……。

 

「戻って確かめるのも、何かイヤだなぁ……。

 先に野菜を取りに行こう、そうしよう!」

 

 とりあえず確認を後回しにすることを決めた。

 

 ────────────────────────

 

「おっそーい!」

 

 食材を抱えて宿に戻ってきたわたしを出迎えたのは、朝から騒がしいお嬢様。

 

「まったく、どれだけ人を待たせるつもり?」

 

「だから来てなんて頼んでないし……」

 

「ぶつぶつ言わないの、さっさと戻ってあの子のご飯作ってあげなきゃでしょ?」

 

 珍しく食材運びを率先して手伝ってくれながら、リシェルは待ちきれないのか落ち着きがない。

 

「そうだ、じつはね──」

 

 食材を厨房へ置きながら、今朝のことをリシェルに相談してみる。

 やはりというか、反応はグラッドお兄ちゃんとほぼ同じで……。

 

「それは間違いなく、あんたが寝ぼけたのね」

 

「リシェルまでそんなにあっさり否定しないでよぉ?!」

 

 部屋に向かいながら、リシェルは「やれやれ困ったお子様ね。

 」と言わんばかりの呆れ顔を向けてくる。

 

「そりゃ否定するわよ、ほら」

 

 リシェルが手招いてるので、恐る恐る自分の部屋を覗き込むと。

 

「あ、おかえりなさいフェアさん」

 

「クゥー……」

 

 気持ち良さそうに眠っている桃色の子竜を、ルシアンが撫でているのどかな光景が広がってました。

 

「そんなぁ……」

 

(わたしそんなに寝ぼけてたのかな……)

 

 悪い奴らをやっつけた高揚感で変になってたのかもって、

 とりあえず納得することにした、しよう、うん。

 

「ほら、おチビちゃんが目を覚ます前にご飯作っちゃいなさいよ」

 

「はいはい、仰せのとおりにしますよーだ……」

 

 まだ平和に眠りこけてるこの子が、ちょっとだけ恨めしくなった。

 

 ────────────────────────

 

 全員分の朝食を作るついでに、竜の子の分として一人分多く作ってみたんだけど、

 よっぽどお腹が空いていたのか、わたし達のご飯まで食べる勢いで完食してくれた。

 

「ケプッ……!」

 

「お腹いっぱいになったかしら」

 

「ピィ!」

 

 途中から竜の子にあーん、ってしてあげるのが楽しくなってついあげすぎたかもしれない。

 

「小さいのによく食べたね……」

 

「それにしてもフェア、あんたよく竜が何を食べるか知ってたわね」

 

 竜の子の膨れたお腹を撫でながら、リシェルにそんなことを聞かれた。

 

「ライに聞いたことあるの、竜は雑食だからオレらの飯と同じでいいんだぜーって」

 

(まさか役に立つ日が来るなんて思わなかったけど……)

 

「そうなんだ、いっぱい食べて大きくならないとね」

 

「そうねぇ、広場にある門くらいの大きさはほしいところね」

 

 姉弟が大きい竜を想像してるのか目を輝かせてる、こういう所はそっくりなんだからもう……。

 

「てゆーか、マジメな話。

 この子のこと、この先どうしようか?」

 

 嬉しそうに指に頭を擦りつけてくる可愛い子だが、その先を考えなくちゃいけない。

 

「拾った以上、先のことまで考えなきゃダメだと思うの、

 この子はまだ生まれたての赤ん坊なんだから……」

 

(それに、ダメ親父みたいに、放ったらかしになんて絶対したくない)

 

「ピイィ……」

 

 わたしの気持ちを察知したのか、竜の子の不安そうな瞳と目が合う。

 どうするべきか、三人で悩んでいると……。

 

「お邪魔いたしまーす!」

 

 元気のいいポムニットさんの声が入り口から聞こえてきた。

 

「やばっ!?」

 

「ルシアン! あんたその子を隠しなさい!」

 

「ええっ!?」

 

 慌てて三人で四人前の食器を片付けながら、竜の子をカウンター裏に隠すことに成功。

 

「ああ、やっぱりここにいましたか。

 ……どうしたんです? なにやら汗だくになってますけど」

 

「お、おはようポムニットさん!」

 

「な、なんでもないよ。あははは……」

 

(っていうか思わず隠しちゃったけど、必要あったのかな)

 

 首を傾げるポムニットさんに、笑うことでなんとかやり過ごす。

 

「わかってるわよ。お屋敷に戻れっていうんでしょ?」

 

 リシェルがはいはい、と分かりきった質問をして流してくれた。

 

「わかっているのならば、最初からおとなしく」

 

「そんなの無理ね。ポムニットだって、わかってるでしょ?」

 

「開き直らないでくださいっ?! えうぅ……」

 

 あーあ、ポムニットさん泣ーかしたー。

 

「うぅ……。それはさておきといたしまして、

 フェアさん実は旦那さまがお呼びなのですよ」

 

「オーナーが?」

 

「お昼の仕事のあとで、お屋敷までおいでくださいまし」

 

 雇用主からのお呼び出し、正直行きたくない……。

 

「どうせまた利益がどーこーとか、ケチつけるつもりね」

 

 分かってるのでとどめ刺さないでくださいリシェルさん。

 

 ────────────────────────

 

「はあぁ〜……、行きたくないよう」

 

 お昼の仕事が終わった後、わたしはすごーく落ち込んでいた。

 叱られると分かりきってるのに元気よくは中々行けない。

 

(とはいえ無視したらそれこそ大変なことになっちゃうし……)

 

 子供みたいに駄々をこねる訳にはいかない、

 わたしは入り口の扉を開き気合を入れ直す。

 

「えーいしかたない! 覚悟決めて行ってきまーあぁっ!?」

 

 急に靴が引っ張られて前のめりに倒れた。

 

「ピィ……」

 

 原因は靴に噛み付いて引っ張ってる桃色の竜。

 

「どうしたのよ?」

 

「ピギッ! ピギィ!」

 

 立ち上がったわたしの胸をめがけて飛び込んで来た子を受け止める。

 

「もしかして連れてけーって?」

 

 肯定するように鳴くけど……。

 

「ダメっ!」

 

「ピイィ……」

 

「そ、そんな声出してもダメなものはダメ!」

 

 なんて良心に訴えるのが上手なんだろうこの子は。

 

「いい、あなたは悪者に狙われてるんだよ?」

 

 抱えあげて、目線を同じ高さにしてしっかりと教えてあげる。

 

「そんな格好のまま出歩いたりしたら、あっという間に見つかっちゃうでしょ?」

 

 不満そうに小さく唸る子の頭を撫でる。

 

「すぐに帰ってくるからおとなしく待ってなさい、いい子だから」

 

 そっと、床の上に下ろしてわたしは扉を閉める。

 

(うぅ、訴えかける鳴き声が聞こえるけどガマンガマン)

 

 扉の向こうから聞こえる鳴き声を振り切るように、わたしは走り出した。

 

 ────────────────────────

 

 女の子は走っていた。

 

 守ってくれたあのヒトに置いて行かれたくなくて。

 

 けれど、はじめての外はとても広くて。

 

 あの人の腕輪のニオイをたどってもたどっても、あのヒトは見つからなかった。

 

 この姿でいることにも疲れて、今にも倒れてしまいそうになった時。

 

 別の場所から、同じ優しいニオイがした。

 

 だからいっしょうけんめい、がんばってそこまで走ったら。

 

 ちがうヒトが、草むらで横になって寝ていた。

 

 ちがうけど、首飾りからおんなじニオイがする。

 

 疲れていた女の子は、その優しいニオイに引き寄せられるように一緒に寝転んで。

 

 その人にしがみついて、ゆっくりと眠っていった。

 

 




PSPでこの場面のCGが追加されたとき思わずガッツポーズしてしまいました、いいですよねここの絵。
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