サモンナイト4 本編後ライがフェア世界に逆行 作:ライフェア好き
それを支えてくれる仲間達の存在も。
心地よい風が草木を揺らす、
寝転がってるオレの横に、いつの間にか慣れ親しんだ気配を感じた。
「……おはよう」
何だお前か、起こしてくれてよかったのに。
「お父さんは自分で起きる、早寝早起き……だから」
そうかよ、子供に起こされるってのも憧れるんだけどな。
「……起きてほしい、かと」
ははっ、律儀だなお前も。
……。
なぁ、コーラル。
オレちゃんとやれるかな、昔と違う今のオレに。
「大丈夫、あの時とは違っても……お父さんなら問題ない、かと」
そうか?
「だって、ボクのお父さんだから。小さかったボクをどんなに辛くても、
絶対に助け出すって決めて、色々な事を教えてくれたから」
「だから、自分の正しいと思ったことを……いつもみたいに、すれば大丈夫……きっと」
ああ、そうだな───。
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太陽の眩しさに目が眩む、あまりの眠さに途中で寝たんだった。
「ふわぁ……、ん?」
脚に何だか重さを感じる、昔あったような状況に下を見ると。
「すぅ……」
桃色の髪の小さな女の子が、脚にしがみついて眠っていた。
(……おいおい、どういうことだよこれ)
一瞬呆然としたが、この魔力は長年一緒にいたコーラルと似ている。
「フェアと一緒に居た、こっちの竜の子か……」
外見から性別の判断が出来ないコーラルと違って、女の子らしさを全身で表しているような姿。
もしかしたら、フェアを真似て姿を変化させたのかもしれない。
(しかし、なんでオレの所に……っ!?)
疑問を感じる暇も無く女の子の異変に気がついた、
よく見ると呼吸が荒く、全身が震えている。
(そうか、この時期はまだ遺産継承をしてないから。無理して変身しているのか!)
変身の負荷による魔力切れ、あの時もオレを追いかけて飛び出したコーラルが同じように倒れてしまった。
このままでも死ぬということはない、変身が解けて、それから……
女の子の苦しそうな顔が、コーラルと重なる。
「ああくそっ、目の前で苦しんでるのを見てられるかよ!」
女の子へ手をかざし、自分の中の枷を外す
オレ手のひらが光り溢れ、その光が雨のように女の子へ降り注ぐ。
暖かい光に包まれた女の子の表情は段々と穏やかになり、呼吸も落ち着いていく。
「……よしっ、久しぶりだけど何とかなったな」
古き妖精である母さんの血を継いだ、響界種としての力を使った祝福がうまくいって胸をなでおろす。
力が制御出来るようになってからは、抑える事ばかりしていたので自信がなかった。
「これで苦しく無いだろ、お騒がせ娘」
穏やかに眠る女の子を起こさないように背負って、ゆっくりと宿へ向かって歩き出す。
「今ごろお前を探して大騒ぎだぞきっと、早く安心させないとな」
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「わたしのせいだ……」
オーナーに呼び出された用事が済んだわたしは、
急いでブロンクス姉弟と一緒に宿へ戻った。
けどあの子は消えてしまっていた。
悪者に連れ去られたんじゃないかと焦るルシアンを落ち着かせて、手分けして街へ探すことにしたものの全く見つからず。
そんなところをグラッドお兄ちゃんに見つかり、事情を話して探してもらう事になっちゃった。
リシェルやルシアンも、ポムニットさん、ミントお姉ちゃんに事情を話したみたいで、
結局は皆を巻き込んだ大騒動になって……それでも、まだあの子は見つからない。
「わたしが、あの子を置いていったから」
置いて行かれる気持ちは、痛いほど知ってるはずなのに。
(これじゃ、お父さんと……)
リシェルやルシアンも同じように考えてるのか、暗い顔で座り込んでいる。
沈んだ空気の中、扉をノックする音が聞こえるも対応する元気は無くて体が動かない。
それを見かねたポムニットさんが、代わりに扉へ向かってくれる。
「申し訳ございません、ただいま準備中でござい……って、ライさん!? どうしたんですかその子は!」
「悪いポムニットさん、どうやら迷子みたいで具合を悪くして道で倒れてたんだ。
フェアに言って部屋を一つ用意してもらえないか?」
「そういうことでしたら、私がご用意させていただきます。フェアさん、今少し落ち込んでいまして」
(迷子……)
「ムイィッ!?」
あの子のことを考えていると、リシェルがミントお姉ちゃんから「その竜の子の匂いを辿れるんじゃないかな」と託されてきたオヤカタが急に騒ぎ出す。
「ど、どうしちゃったのよオヤカタ!?」
文字通り入り口の方へ飛んでいったオヤカタを追って三人で飛び出す。
「ひゃわっ!? どうかなさいましたか?」
「ムイッ、ムイィ!」
そこにはポムニットさんが女の子を抱っこしていて、オヤカタはその女の子を指……指? 手で指す。
桃色の長い髪、わたしはそれに覚えがあった。
「あっ……!?」
今朝、わたしの腕を思いっきり齧った女の子に間違いない。
「この子、リシェルこの子だよ! ほら、わたしが今朝話していたの!」
「あんたがまる齧りにされたってあの?」
「そう!」
事情が飲み込めないルシアンとポムニットさんにもわかるように、今朝の出来事を説明する。
そんな中、例の少女がゆっくりと目を覚ました。
「……」
「目が覚めましたか? 今お休みができる場所を用意しますよで……えぇっ!?」
きょろきょろと周りを見渡す女の子にポムニットさんが優しく声をかけていると眼があった。
あの竜の子みたいに桃色の瞳がわたしを見つめると、急に暴れだしてポムニットさんの腕から抜け出す。
その勢いのまま、わたしに一直線に走り出して。
「きゃっ!」
女の子を受け止めるも、そのまま後ろに倒れ込んで頭を打っちゃう、け、結構痛い……。
「ピギュゥ……」
そんな事はお構いなしに抱きついたまま離れない女の子の頭をなで、あることに気がついた。
「この声、あなたまさか!?」
特徴的な鳴き声、すぐに胸元へ飛び込んで来る、桃色の髪、何より今朝わたしの部屋にいたこと。
これだけあれば、もしかして……と考えてしまう。
「ピィ……♪」
その答え合わせのように女の子が光り輝くと、わたしの腕の中で小さな竜の子へと変化し、そのまま寝息を立て始める。
「ええ────ーっ!?」
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竜の姿に戻ったあの子をつれて、わたし達は報告を兼ねてミントお姉ちゃんの家へ向かうことにした。
この子について分からないことばかりで、専門家の意見を聞くべきという、リシェルの判断は正しく、ミントお姉ちゃんはすぐに竜の子の診察を始めてくれた。
「だけど驚いたわ、まさかあの子が人間の姿に変身してたなんて……」
「ライさんにお礼言わないとね、あの後すぐにまた出かけちゃったらしいけど」
結局あの子を連れてきたライは、部屋を取らないままどこかへ出かけてしまった。
もしかしたら、また町の外に出るのかもしれない。
「ふぅ、もう大丈夫」
「さすがはミントさん、蒼の派閥の召喚師なだけなことはあります!」
「グラッドさんってば、おだてないでください」
診察を終えて竜の子を抱えて来たミントお姉ちゃんを褒めちぎる、グラッドお兄ちゃん。
これで好意に気が付かれてないんだからひどい話だと思う。
「その子、一体どうしてまた眠っちゃったんだろ」
「多分ちょっと魔力を使いすぎただけだね」
机の上に寝かせられた竜の子は、穏やかに眠っている。
「うん、この子が人間の姿になってたって聞いたけど。多分それが原因かな?」
「きっとそうだよ、そんなに大変なことをしてまで追いかけてきたんだ……」
でも……と、ミントお姉ちゃんは続ける。
「それにしては、あんまり疲れてそうに見えないのはこの子が至竜だからかも、それかどこかで魔力を補給出来たのかも知れないわね」
「至竜?」
そう、とミントお姉ちゃんが指を二本立てる。
「そう、竜という生き物にはものすごく沢山の系統があるんだけど。
大雑把に分けると、"亜竜"と"至竜"の二つになるの」
亜竜、肉体的に竜の特性を備えているモノ。
空を飛んだり、炎や氷吹いたりする一般的に考えられる竜。
至竜、肉体的な特性に加えて高い知性や魔力を備えてるモノ。
人間では真似ができないような、不思議が現象を引き起こす事もできる竜。
「つまり、この子が人の姿に変身していたのも至竜の力ってこと?」
「この子、そんなにもすごいんだ……」
「でもね、どんなに凄くてもまだ小さな子供。
力を使っても体が追いつかないんだと思う、しっかりと休ませてあげてね」
ミントお姉ちゃんから竜の子を渡されて抱っこしてあげる、
こんな小さな体に、そんな大きな秘密があるなんて。
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トレイユは田舎町とはいえ、その規模はかなりデカい。
宿屋町として発展していったので物流が盛んであり、人の出入りも激しい。
目標は集団で動いている軍団なのに、見つけることができなくてオレは苛ついていた。
「くそっ、もうそろそろ夕暮れになっちまう。
竜の子が見つかる前に接触しないといけないのに」
市場にある壁に寄りかかり、息を整える。
(可能性があるとしたらここが最初なんだ、
"将軍"レンドラー、あの人なら真っ直ぐだから誠意さえ見せりゃ悪いようにはしないはず)
卑怯な手段を嫌い、正々堂々真っ向からぶつかることを望む武人だ、
竜の子が見つかる前なら、話を聞いてくれる余裕があるかもしれない。
(あの夢の白い奴がヤバイなら、こんな戦いしたくないってのが正直なところなんだ。
確かにオレらとあいつらは、戦う必要があったのかもしれないけど、始めっから敵と決めつけてた部分だってある!)
うまく姫と話せれば、もしかしたら最初から戦わずに済むかもしれない。
ギアンのことだって相談して、取り返しがつかなくなる前に終わらせることも───。
「って、どこだよあのオッサン! あんなに目立つトゲトゲ鎧なのに見つかんねーじゃねぇか!!!」
問題はオレの考える和解計画が、早速頓挫しかけている事だった。
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ミントお姉ちゃんの家を出て、三人で竜の子を見つめる。
「至竜……か」
今更だけど拾っちゃったこの子の重大さを思い知らされた気持ちだ。
「後悔してるの……?」
リシェルが不安な顔で尋ねる、拾う事になった原因の一人として負い目を感じてるのかもしれない。
「ううん、きっとこの子がなんであっても。
わたしはおんなじ事をすると思うから」
気にしないで、と笑ってみせる。
「この子が狙われてた理由、ちょっとわかった気がする。
そんなにもすごい力を持ってるんなら、悪者だって欲しがるよ」
ルシアンが予測を述べるけど、わたしもそれに同感だ。
「ねぇ、そのことなんだけど……、
あんた達はこの子が……狙われてたってこと、もう話しちゃった?」
リシェルの質問に、わたしとルシアンが同時に首を横にふる。
「話してないよ、だって話したら、きっとこの子のこと取り上げられるよ!」
「わたしも話してないけど……」
二人と違って、先のことを考えてしまう自分がいる。
「黙ったままでいいのか、それは気になってる」
子供だけで、決めていいことなのだろうか。
「ライがね、あいつ等を町の外で見かけたらしいの。
ルシアンの言うとおり、この子がそんなにもすごい存在なら、簡単に諦めたりするのかな」
竜の子を抱きしめる、こんなにも暖かいのに産まれただけで狙われるなんて。
「そんなのっ、またあたし達で守ればいいじゃない!」
「朝のことだって、わたし達だけじゃどうにも出来なかったんだよ。
結局迷惑かけて助けてもらってさ……。
それなのに、絶対守れるって言える? 出来なかったじゃ、済まされないんだから」
「わかってるわよ! そんな事くらい、あたしにだって!」
本当はお互いにわかってる、キチンと話さなくちゃいけないって。
それでも言いたくないのは、意地もあるけど、
皆がこの子を優先してくれるか分からないから。
リシェルはオーナーのやり方を見ているせいで、
大人のやり方に対して人一倍臆病なところがある。
(それもわかってる、だけど……)
そして時間は、わたし達を待ってはくれなかった。
「ようやく見つけたぞ、守護竜の子よ」
昨日の無法者達なんて比較にすらならない、
圧倒的な存在感と、鎧に包まれた屈強な肉体。
大斧を担いだ歴戦の兵士が、わたし達に立ちはだかった。
ライは事の顛末を知っているからこそ話し合いで解決できる部分があると信じてます。
殴りかかってくる奴は殴っておとなしくさせるけど、戦いたいわけではないって性格はとても好きです。