サモンナイト4 本編後ライがフェア世界に逆行 作:ライフェア好き
夜遅くの自室で、眠れずにいた。
「はぁ……」
眠ってる竜の子を撫でながらため息をつく、もう会えなくなるのかもしれないから。
(みんなに知られちゃったからね、ルシアンの言う通り、取り上げられちゃったり……)
明日、改めて話し合おうとみんなと別れたあと、ずっと部屋に閉じこもってる。
あのヒゲの人……将軍が言っていたダメ親父のこともあって、とにかく一人になりたかった。
(エリカも一緒なのに、何やってんのよあの人は)
妹の病気を治すために旅をして、わたしを置いていった癖にやってる事が悪者退治なんて……。
どうせまた、好き勝手に剣を片手に大暴れしてるんだろう。
わたしはそのとばっちりを受けたんだし、絶対心配なんてしてやらないんだから。
(……明日からが、嫌だな)
ダメ親父の事を考えて、気を紛らわせようとしても駄目だった。
夜の静けさも合わさって気分が沈んでいると、部屋の扉がノックされた。
「フェア、起きてるか?」
「ライ?」
扉を開けると、コップを2つ持ったライが立っている。
「あんな事の後じゃ、眠れないだろうと思ってな、ほら」
湯気が立ち、甘い香りがするコップを渡してくる。
「温めたミルク? それとこの匂い、蜜かな」
「当たり、疲れてるときはこういうのに限るだろ」
「お前甘いモン好きだろ?」と手を振って出ようとするライの背中を見て。
服の裾を、思わず掴んでいた。
「ん、どうした?」
「あ、いや、なんでもないっ」
(わたし何やってるんだろう!?)
慌てて手を離し笑って誤魔化す。
無意識にとはいえ、服の裾を掴んじゃうなんてまるで子供みたいな……。
ライは少しの間考え込む素振りを見せてから。
「少し部屋に入るぞ」
「え、えっ?」
部屋に入ってくると、わたしをベッドに座らせて、
自分は椅子を持ってきて、向かい合って座る。
「おつかれさん」
「お、お疲れ様でした……?」
コップ掲げてから一口飲んでみる。
温かいミルクに、甘い味がじんわりと染み込んでてホッとする。
甘い香りに混じってお酒の匂いがして、ライが飲んでいる物をじっと睨む。
「ねぇ、それまさかお酒?」
「いいだろ別に、オレだってたまには飲むさ」
「おじさんみたいでやだなー」
その時「うげぇ」って言ったライの顔が面白くて少し笑ってしまう。
……けれど、何を話せばいいか分からなくなって、黙り込んでしまう。
「…………」
「明日のこと、考えてるんだろ」
「えっ……」
たまにだけど、この人は怖いくらいわたしの心の内を当ててくる。
「……うん」
「お前たちの素直な気持ちをぶつけりゃいいさ、
グラッドの兄貴も、ミントねーちゃんも、ポムニットさんだって。
お前たちの意見を蔑ろになんて、したりしない」
「……それは、わかってるんだけど」
ちゃんと話せばきっと分かってもらえると思ってる、
けど、わたしが一番気にしてるのは……。
「……親父のことだろ」
驚いて思わず顔をあげる、どこかお父さんに似てるライが困ったように頭を掻いてる。
「すごいや、なんでも分かっちゃうんだね」
本当にこの人は不思議な人だ。
「たまたまだよ、オレも似たような経験があるしな」
「ライが?」
ライが深くため息をつく、ここまで嫌そうに話すのも珍しい。
「イヤになっちまうよな、自分で決めたはずなのに。
結局親父の思うとおり、いいように使われてるんじゃないかって不安になる」
お父さんとよっぽど仲が悪いのだろうか、ちょっとした共通点に少し嬉しくなる。
「オレの親父もそんな感じだったんだよ、昔の話だけどな」
「そういえば、ライの話って全然聞いたことないかも」
一年くらい前に突然現れた旅人で、凄腕の料理人で剣の腕も立つ。
あたしが知ってるのは、結局それくらいでしかない。
「良い子にしてたらいつか話してやるよ、なんてな」
「もうっ、こういう時ばっか子供扱いするんだから」
はははっ、と笑ってからあたしの頭をぐしゃぐしゃに撫でてきて。
「今日ぐらいゆっくり寝とけ、朝の仕込みはしておくからさ」
おやすみ、と部屋から出ていくから文句を言う暇もなかった。
(ライ……)
気を使ってくれたんだろう、疲れてるならしっかり休めって。
(寝坊していいなんて言われたの、一体何時ぶりだろう)
横になったあたしは竜の子を抱きしめる、
温かい飲み物のおかげか、わたしはすぐに夢へ落ちていった。
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静かな夜の宿を、一人歩きながら……今日の戦いを思い出す。
「やっぱ向いてねぇのかなオレ」
フェアは大丈夫だと、思いこんでた。
オレと同じなら……そう、思ってしまっていた。
だからアイツが、レンドラーのオッサンにふっ飛ばされたとき、頭が真っ白になっちまった。
(まるっきり同じな訳ないのにな、この先が全部オレが覚えてる通りに行く、なんて保証はない)
きっと頭の良いやつなら
いい方法が浮かぶのかもしれないけど……。
「あーくそ、どうすりゃいいのか全然わからねぇんだよな」
気に入らないやつをぶん殴ればいいなら、ギアンを殴りゃいい。
けど、アイツはそれじゃ止まらない、止まれない。
オレとアイツが戦った果てにあったのは、犠牲とエニシアの涙だった。
フェアに差し入れに行ったのは、オレも誰かに相談したい気分になっていたからかも知れない。
「オレにできる事って、なんだろうな」
譲れぬ想いをぶつけ合う戦い、その終え方をオレはまだ見つけられていない。
(そろそろ寝るか、フェアの代わりに朝の仕込みするって約束したし……)
「……ん?」
胸元が淡く光った気がして、首飾りを取り出す。
(護りの腕輪が……反応した?)
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「って、えぇーっ!?」
眠った次の瞬間、わたしは夢の中で落ち続けていた。
どっちが上で、どっちが下なのか。
落ちているのか浮いているのか、区別がつかない。
「なんなのこれぇーっ!?」
巡りましく移り変わる景色、雪原、泉、天空の城、そして花園。
おとぎ話に出てくる妖精の国のような、どこか儚い花園の空を落ちていき───。
「きゃん!?」
花畑の中へそのまま落下した……。
「あいたた……痛くない?」
(もしかして夢だから?)
お尻をさすりながらあたりを見回す、
キレイなお花畑に圧倒されていると、何処からかすすり泣く声が聞こえてきた。
「ひっく……うぅ、ひっく…………」
(泣いてる、近くで誰かが泣いているの?)
「おいてかないで……。ひとりぼっちだなんて、イヤだよぉ……あかあさ、ん……」
親に置いていかれて、一人泣いている女の子の声。
それは、まるで……。
(まるで、わたしと同じ……)
思わずわたしは、大声で呼びかけた。
「……泣いてちゃダメだよっ!」
「だれ……あなたは、誰なの……。どこにいるの?」
まるで花畑全体から聞こえてくるような声に、その子の場所がわからない。
「あなたこそ何処にいるの!?」
泣いている子を放ってなんておけない、その一心で花畑を当てもなく走り続ける。
「ねぇ、いるのならおねがい……顔をちゃんと見せて!
ひとりはイヤ……。私だって、泣いてるだけはもうイヤなの……っ」
「待ってて、すぐに! すぐに見つけてあげるから!」
その時強風が吹き、花が散って巻き上がる。
まるで花が雪のように降り注ぐ中に、お姫様が見えた。
儚げで、今にも枯れてしまいそうなお花のような女の子。
その子に手を伸ばし、伸ばして……。
(大丈夫だよって、言ってあげたいんだから!)
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派手な音を立てながら、わたしはベッドから転がり落ちた。
「ピィ……?」
窓からは光が差し込み、竜の子が心配そうにベッドから覗き込んでいる。
「……夢から、起きても……落ちるって何なのよぉ」
今度はしっかりと痛かった。
これでようやく本編二話が終わりました、次はデコ天使&鋼の軍団へ