サモンナイト4 本編後ライがフェア世界に逆行 作:ライフェア好き
「あー……」
すっかり日も暮れた食堂で、わたしはテーブルに突っ伏していた。
あの戦いの後、お兄ちゃんやお姉ちゃんにこっぴどくしかられたからだ、
そりゃもうすごい剣幕で、今後一人で飛び出すのは禁止とまで言われちゃった。
「こっぴどく叱られたわね」
「お疲れ様、フェアさん」
「リシェル……、ルシアンも」
顔を上げると「やれやれ」って顔のリシェルと、飲み物を持ってきてくれたルシアンが居た。
「ま、今回はあんたが全部悪いんだから仕方ないわよねー」
「ねえさんってば、そんな言い方しなくても」
「だってホントじゃない、一言声かけてくれればあたしも行ったのにさ」
確かに声をかければ、理由も聞かずに着いてきてくれそうだけど……。
今回に限って言えば、わたしにだって言い分がある。
「それはリビエルを見失わないように……」
「甘いわね!」
その言い分は真っ先に却下されてしまう。
「どんな理由があろうとも、このあたしを置いていく時点で言語道断よ!」
「久しぶりにでたわね、リシェル理論……」
最近はよく遊ぶから、前みたいに無茶な事を言う機会が減ったので、
実は結構久しぶりなリシェルの王様っぷりが懐かしい。
「ねえさんはフェアさんが心配なんだよ、
今回もすごく無茶な戦いしていたし」
なるほど、言われてみればそうか。
心優しいおじょうさまの顔が、みるみる真っ赤に染まっていき。
「こらルシアン!」
「あだっ」
ばらした弟を粛清する。
「とにかく!今度から必ずあたし達を連れていきなさいよね!」
人差し指をまっすぐに向けてくるリシェルに。
「フェアさんにはお世話になってるし、僕たちも助けになりたいんだ」
真っ直ぐな瞳で訴えかけてくるルシアン。
(今のままでもすごく助かってるんだけど……)
けど、ここでそう言ったらダメだもんね、
二人がどれだけわたしの事を心配してくれているか、ちゃんとわかってる。
「うん、わかった。次からちゃんと頼るから」
「ドーンとまっかせておきなさい!」
胸を張っていたリシェルが、ふと思い出すようにして話し出す。
「……にしても、ライに呼び出された時はもっと大ピンチかと思ったんだけど」
「へ?」
「ライさんが皆を呼びに来た時、すごく慌ててたんだよね」
(ライが慌てて……?)
確かにリビエルと飛び出したけど、そんなに心配するような事があっただろうか。
普通だったら町外れもそんなに危なくない場所だし……。
「そうそう、なのにアンタってば結局一人で勝ってたじゃない」
まるで猛獣を見るようにしてくるリシェル。
「あれはたまたまだってば!それに、リビエルのおかげだもん!」
でも、確かにあの時のわたしはちょっと変だった。
(なんでか凄い動けたんだよなぁ、火事場のなんとかってやつ?)
「リビエルちゃんも、明日に改めてお話してくれるみたいだし、フェアさんのおかげだよ」
うーんと唸っていると、ルシアンがまとめに入る。
「そうね、あたし達は帰るわ。あんまり出歩いてるとパパがうるさいから」
オーナーの事を思い出しただけで嫌な顔になるリシェル、わたし程じゃないけど、
リシェルもお父さんの事嫌ってるなぁ……。
「うん、また明日」
帰っていく兄妹を見送ってから、わたしは寝る準備を始めた。
────────────────────────
そして、また泣いている声が聞こえてきた。
目を開くと、まばゆい光と共に花畑が見えてきて。
昨日、夢の中で手を伸ばしたあの子が居た。
「あ……」
ピンクの髪、薄く輝くヴェールを身にまとった女の子が、
こちらに気がついて振り向く。
「あなたなの?わたしの夢の中で泣いていたのは……?」
どこか懐かしい気配のする女の子に近づく。
「……貴方、なの?
夢の中で、私をはげましてくれたのは貴方なの?」
すると、彼女もおかしなことを言ってきた。
どっちの夢で、どっちが来たのか。
「あはははっ」
それがなんだか可笑しくって、二人で笑いあった。
「わたしはフェア、あなたの名前は?」
「エニシア…、エニシアっていいます」
夢の少女、エニシアと名乗ったその子は優しく微笑み、自己紹介をしてくれた。
────────────────────────
それから花畑に一緒にお座りして、お話を初めてみる。
(夢の中で会った人に話すなんて、初めてだけど……)
「ここは、やっぱり夢の中なの?
前も眠ってから、この場所に居たし」
「私にも、よくわかりません。
こんなことは初めてだし……」
エニシアは少し考えてから。
「貴方の方は?他の人の夢に行ってしまったり……とか」
ないない、とわたしは首を横に振って。
「わたしだってこんなの初めてだけど、まぁいいかなって」
「え?」
特に気にしていない事が、エニシアには少し意外だったようで。
「だって、約束したから。顔を見せる、すぐに見つけてあげるって」
にーっ、と笑ってピースしてみる。
エニシアはくすくすと、鈴のように笑った。
「ありがとう、夢の中でも……寂しかったから。
気にかけてくれていたのが、嬉しくって……」
(この子はよく笑うなぁ、泣いてる印象が強かったけど……)
コロコロと表情が変わるのが、子供みたい。
……いや、わたしもまだ子供か。
そんな時間はすぐに終わるようで、妙な感覚がしてくる。
寝ぼけながら目を開けるような、そんな感じ。
「やっぱり夢なのかな、目覚める感覚がする……」
立ち上がって体を伸ばすと、エニシアも立ち上がった。
「あ、あのっ!お願い、しても……いいですか?」
「え?」
可愛らしくお辞儀をして。
「私と友達になって!夢の中で出会えた時だけでもいいから
ひとりぼっちは、もう嫌だから……」
なんて事を言ってくる、だからリシェルみたいにちょっとだけ悪戯心が湧いてきて。
「え、今まで友達じゃなかったの?」
「えっ!あ、その……」
なんて言うと、慌ててるような嬉しいような顔をしてくれる。
「泣いているより、楽しそうな顔の方がいいよエニシア……っと、
本格的にそろそろ目覚めそうね……」
まだ慌ててるエニシアに手を振って。
「じゃあねエニシア!また会いましょう!」
「ええ、またここで必ず……約束しましたからね、フェア」
わたしは、夢から目覚める。
────────────────────────
「ふわぁ……。おはようミルリーフ」
「キュウ……」
一緒のベッドで眠っていた小さな竜を起こさないように、そっと起き上がる。
「さて、今日こそ朝の仕込みはわたしがやるんだから」
昨日ライに仕事を取られた事、ちょっとだけ根に持っていた。
続いて口調が大変なあの人が来ますね、よきかなさんは一番思慮深く御子を第一に考えるので今のライには苦手そうな相手です。