サモンナイト4 本編後ライがフェア世界に逆行 作:ライフェア好き
翌朝、わたしたちは食堂に集まって今後の事を話し合っていた。
ミルリーフは朝食の片付けをしに行ったライの背中に張り付いて行ってしまったのが、ちょっとだけ寂しいけど……。
「じゃあ、リビエルはここで御使いを待つんだね?」
結論から言えば、リビエルはうちの宿に住むことになった。
どうせ泊まってるのはライだけで、部屋は有り余ってるし。
他の御使いはリビエルよりも強く、追手から逃れてこの街へ来る可能性が高いと、リビエルが主張したのもあって決めた事だ。
(しかし、なんでこの街に……、卵の飛んだ方向から探してるのかな)
なんとなく引っかかる事柄について考えていると、ミントお姉ちゃんが深刻な顔で話を切り出す。
「そうなると、問題なのは私達かもしれないね」
「えっ?」
「御使い達は自由に動けるからな、敵を避けたり隠れたり出来る。
けど、オレ達は待たなきゃいけないからな」
「ピィ♪」
言葉の意味を掴めないでいると、洗い場から戻ってきたライが答えてくれた。
ライからこちらへ飛んできたミルリーフを受け止めながら、みんなで逃げちゃえば……と一瞬思ったけど。
「かといって……、お店は放り投げられないし」
グラッドお兄ちゃんは駐在兵士、ミントお姉ちゃんは蒼の派閥から派遣されている。
リシェルやルシアンは言わずともだし、わたしだってそうだ。
(この子を助けるために、全てを捨てて……なんて言えないし)
そもそも、逃げ出すことが最善と決まったわけでもない。
「たぶん、相手はまだ様子見の段階だと思うの。
剣の軍団、鋼の軍団共に全力じゃないだろうし」
「もしかして……、その気になったら街ごと一気に攻撃するって事ですか!?」
ミントお姉ちゃんの考えにポムニットさんがゾッとした顔で慌て始める。
「いや、流石にそれはないだろう。
そんなことしたら、帝国そのものを敵に回すことになるしな」
グラッドお兄ちゃんが、帝国軍人としての視点から推測してくれてる。
帝国に正面切って戦えるような組織は殆どない。
無色の派閥や、紅き手袋といった犯罪組織も、帝国との全面対決は避けている。
相手の目的が竜の子だとしたら、
向こうはミルリーフを帝国に渡されるのが最も困るはず。
それはわたし達も同じだけど……。
「この事件を公にしたくないって事だけは、敵と利害の一致ってやつだな」
「よかったぁ……」
ポムニットさんが安心して胸をなでおろすが、隣のルシアンとリシェルは深刻に捉えている。
「ちっともよくないよ、
だって確実に目的を果たすために、少数精鋭を僕たちに差し向けてくるってことでしょ?」
「そうね、あの鋼の軍団はまだしも。
剣の軍団は統制が取れてて目立たず一気に街に入り込めるし」
「うん、それが正解だと思う」
姉弟の考えはミントお姉ちゃんが危惧していた通りのようで、
グラッドお兄ちゃんも顔が険しくなる。
「しんどそうよね……」
だからつい、そんなことを言ってしまった。
あのトゲ鎧のレンドラーに、まだ勝てる気がしないし。
教授のおじいちゃんも、底が見えない。
「だけどよ、一番マズイのは数で攻められる事だろ。
それがないだけまだマシだ」
「あ、なるほど……戦えるわたしたちはともかく。
ミルリーフは捕まっちゃったら、それでオシマイだし」
ライの言葉に納得する、足止めされてミルリーフから分断されたら、それだけで向こうの目的は達成されてしまうのだ。
(どうしよう、さすがにミルリーフを連れて街を歩いたりはできないし……)
その存在の珍しさは、街などで常に一緒に居てあげられない問題がある。
全員が頭を悩ませていると、リビエルが決意したよう顔を上げる。
「……その心配をなくす方法が、ひとつだけですが、ありますわ」
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御使いが追われている理由を、オレは知っている。
先代の守護竜は、クソ親父に自害のため介錯を頼んだ時にある物を遺した。
ウロコ、牙、角、瞳。
自らの身体の一部に、膨大な魔力と知識を封印した。
短期間でミルリーフに継承し、守護竜へと成長させるために。
モチロンそこまで便利ではなく、強大な存在の至竜ですら、
継承の際に身体と魂にかかる負担は想像を絶する。
先代の死によって、途絶えることを阻止する為の最後の手段。
四人の御使いが所持する、四つの遺産。
(リビエルの持つウロコは、ミルリーフへと魔力を譲渡することができたはず……)
正直これで無理やり大人へと育てるのは、未だに抵抗はある。
コーラルですら、あの大人しい顔の下でずっと我慢していた、無理やり大人になる事を。
『大人になるのが……、こわいんだ……』
竜だからといって、全てを受け入れられるわけでもない。
だからオレは……オレ達は、今でもアイツを子供だと思ってる。
(それが無理やり大人にさせちまった、オレ達の償いだって……皆考えていたのかもしれない)
……なんて、柄にもなく昔の事を考えながら継承の儀を見守っていたら、どうやら無事に終わったようだ。
「女の子に、なっちゃった……」
「それだけじゃないよ、強い魔力が体から溢れてる。
これでも、力の一部でしかないなんて……」
皆が姿を変えたミルリーフに驚いている、
桃色の髪をした女の子、あの日背負ったあの姿だ。
人の姿になったミルリーフは、ぼんやりとフェアを見つめている。
(そうそう懐かしいな、オレん時もコーラルがあんな感じで……)
「ママっ♪」
「……は?」
(いや、あんな感じじゃなかった)
ミルリーフはフェアに抱きついて、嬉しそうにママと呼んでる。
フェアはもちろん、オレ達も固まったまま動けなかった。
「ママっ♪ だーいすきっ♪」
(ママ、ママかぁ……お母さんじゃないのか、呼び方)
コーラルとの違いに何だか寂しい思いをしてると、急にミルリーフがフェアから離れて……。
「パパっ♪」
「……は?」
ミルリーフがオレに抱きついてきて、パパと可愛らしく呼んできた。
(パパ……パパって、あれだよなお父さんで、親父で…………)
コーラルがこんな風にべったり甘えてくれたこと殆どないなとか、あーこりゃリシェルの影響でパパだな……とか。
色々ありすぎて、オレは思わず叫んでいた。
「はぁぁぁ!? お父さんじゃないのか!」
やっぱり、お父さんと呼ばれたい気持ちはあった。
「フェアさんがお母さんだと思われてるのは、なんとなくわかったけど……」
「ライのやつ、すっとんきょんな反応してるわね。
真っ先に気になるのが、そこって……」
なるほどな〜って顔でニヤついてる姉弟とメイドさん。
「すり込み現象ってやつでフェアがそうなるのはわかるんだが、ライもなのか」
「気になりますね、ライさんもお世話をしてたのは見てましたけど……」
二人で不思議そうに見てくる兄貴とねーちゃん、おい助けろよ!
「ロマンスの一つもないまま、お母さんって……それもライと……、いくらなんでもあんまりじゃない!?」
よくわからない悲しみを叫んでるフェア、なんだよロマンスって!
自分の甘えに対しての反応がない事に気がついて、じっと見上げてくるミルリーフと目が合う。
「ママとパパは……、ミルリーフのことキライなの???」
「「え……」」
言葉が出なかった、そんな流れだっけ……。
「キライなんだ…………、うっ、うぅ……」
今にも泣き出しそうなミルリーフに、フェアに目で合図する。
(やばい、この子泣くぞ!)
(わかった、わかったやるから!)
オレの意図を汲み取ったフェアが、しゃがみ込んでミルリーフと目線の高さを合わせる。
「違う違う! キライじゃないって!」
「そうだぞミルリーフ、オレとフェアが嫌うはずないじゃないか!」
とりあえず全部肯定することにした、こういう子とは思わなかったので子育てへの自信が音を立てて崩れていく。
「……じゃあ、好き?」
首をちょこんとかしげて、とんでもない事を聞いてくる。
チラッと横を見れば、フェアの笑顔が引きつってる、オレも同じ顔してるだろう。
「お、おう……もちろん、好きだぞ?」
「あ、うん……もちろん、好きだよ?」
多分……言い切れた、という事にしてくれ、頼む。
「わーいっ♪ ミルリーフもねっ、ママとパパだぁーいすき♪」
フェアの助けてくれって視線を、オレは無視した。
(こっちが助けてほしいくらいだ……)
「誤解を招きそうなほど、お二人とも懐かれまくってますねぇ……」
「二人ともさっきから同じ反応するわね、ある意味お似合いなんじゃない?」
「はははは……」
だから聞こえてるからなブロンクス一派、メイドさん共々後で飯の量減らしてやる……。
次回親子喧嘩、ライがどういった対応をするのか悩みます。