サモンナイト4 本編後ライがフェア世界に逆行 作:ライフェア好き
ミルリーフが人の姿になった騒動から、少し落ち着いた後、
わたしが出かける準備をしていたら、ミルリーフがしがみついてきた。
「ねぇ、ねぇ。お願いつれてってよぅ」
「駄目だって、遊びに行くんじゃないから」
これからブロンクス邸にて、オーナーへ業務報告に行かないといけない。
わたしだって行きたくはないけど、行かなきゃ後が怖いし……。
「だって、せっかくママたちと同じ姿になれたんだもん。
一緒におでかけしたいよう」
確かに竜の姿で出かけたことはほとんどない、
袋に入ってもらったりして、隠しながらの移動しか出来なかったから。
「だからってホイホイ出歩いていたら危ないじゃないの、
敵はアンタのこと狙ってるんだから」
「ね、いい子だから聞き分けてよ?」
一緒にブロンクス邸へ向かう、リシェルとルシアンも説得している。
人の姿になったとはいえ、ミントお姉ちゃんみたいにわかる人にはわかるのかも知れない可能性はある。
「でも、でもぉ……」
「うっ……」
今にも泣き出しそうなミルリーフの姿に、心の奥がきゅーと締め付けられるけど、ガマンガマン。
「後で連れて行ってやればいいじゃないか、オーナーからの呼び出しが終わったら行けるだろ?」
「パパ……!」
そんな戦いを続けていると、見かねたライがミルリーフの肩を持ち始めた。
「ライまで……、もうっわかったわよ」
「ほんとに?」
一度折れたんだから、もう仕方ない。
「ほんとに。けど、それまでおとなしく待ってるのよ?」
「うん、ママだぁーいすき♪」
これで悪い気がしないんだから、この子はおねだりが上手なんだなぁ。
────────────────────────
「んじゃ、のんびりフェアを待とうぜ」
「うんっ」
三人組を見送ったあと、食堂でミルリーフと二人っきりになった。
兄貴とねーちゃんはそれぞれ仕事に戻ったし、リビエルは今までの疲れを部屋でゆっくり癒やしている。
(しかし、こう見るとやっぱ別の存在なんだな……)
ミルリーフを観察すると、コーラルとの違いがよくわかる。
コーラルは生まれた時から、どこか割り切った性格をしていた。
確か「宿から出さないつもりでしょ」みたいな事を当時言っていた気がする。
(それに比べると、凄く分かりやすく子供だなミルリーフって)
いかにも女の子って姿、甘えん坊で泣き虫で、そのくせおねだりが上手い。
「パパ、ミルリーフのことじっと見てどうしたの?」
「いや、なんでもない」
こういう子の相手はしたことないから、正直結構戸惑ってる。
大体、オレがパパ呼ばわりされるのは……。
「ねぇ、パパ。コーラルってだぁれ?」
「……えっ」
何でミルリーフから、その名前が出るんだ?
「……ミルリーフ、その名前をなんで」
冷静を装って聞けたかわからない。
(まさか、守護竜の遺産にコーラルに関する何か入っていたり…………)
「?」
ミルリーフは首を傾げてから、答えてくれた。
「昨日、パパが言ってたよ?」
「あっ」
そういやつい言っちまった気がする、シルターンの茶に反応された時に。
「あっちゃぁ〜……」
「ねぇねぇ、教えて教えて?」
知識がついた今なら、オレが自分のことをほとんど話さない事に気がついているんだろう。
そんなオレが口を滑らせたもんだから、気になって仕方ないって顔だ。
(……ま、至竜ってこと話さなきゃ平気だろ)
出そうと思って用意していた、甘く味付けしたミルクをミルリーフへ渡して、
オレも茶を用意して、椅子に腰掛ける。
「アイツがこっちにいたら、そうだな……ミルリーフの兄か姉になっていた奴だよ」
「そうなの?」
「ああ、自慢の子供だったよ」
思えば、コーラルの事をこうやって話すのは初めてだな。
「パパ……ママ以外と結婚、してたの……?」
「えっ」
今にも泣き出しそうな顔で聞いてくる、
まてまて、なんでそうなる。
(そもそもフェアと結婚してねーんだけどさ……)
子供の思い込みは恐ろしい。
「オレがガキの頃に、世話することになったんだよ。
まぁ、色々あってさ……」
本当に、色々あった。
「ミルリーフの前の……子供……」
「それでも兄っていうのはとはなんか違ってな、あいつも『お父さん』なんて呼んできたし。
兄弟ってより、やっぱ親子なんだと思う」
「コーラルさん……いなくなっちゃったの?」
そんなに仲良さそうなのに、とミルリーフが不安そうにしているから。
「いいや、むしろオレが家から追い出されたな」
笑って頭をなでてやる。
「この話、皆には内緒な?
子供に家から追い出されたなんて恥ずかしいしさ」
「うんっ、パパとの秘密!」
どこかミルリーフに、コーラルの面影を探してしまうのは、
やっぱ寂しいからかもしれない。
しばらくして帰ってきたフェアが、
オーナーからの援助金で、妙な薬を買って来たのには頭を抱えたが。
────────────────────────
「おさんぽっ、おさんぽっ♪」
わたしは今にも逃げ出したくなってきた。
楽しそうに歩くミルリーフの左手には私の手、
そして右手にはライの手が握られている。
つまり、あれです……仲のいい親子がやるような。
「楽しいねっ、パパっ♪ ママっ♪」
わたしはまだ良いのかもしれない、小さい子の面倒を見るのは嫌いじゃないし。
街の人に見られても姉妹みたいに見えるかもしれないから。
(ただ、ねぇ……)
ライの様子が気になってみると、
我慢を通り越して悟ったように朗らかな笑みを浮かべてる。
「そうだなミルリーフ、あっちの店も見てみるか?」
「うんっ♪」
誰も泊まらない宿に、一年も滞在している男としてそこそこ有名な男が、
突然子供と手をつないで買い物をしている。
街の顔見知りからの視線はなかなか強烈だった。
(最初は気まずいから見ていられなかったのに、なんか笑顔だし……)
もしかして慣れてるのだろうか、やけに子供の相手が手慣れてるし。
(わたしが買い物するときとか、ミルリーフから目を離さないようにしてくれてるんだよね)
最初はどうなるかと思ったけど、ライが上手くミルリーフの面倒を見てくれてる。
途中、犬に吠えられて泣かされる竜とか、
甘い匂いに釣られてお店のお菓子を勝手に食べちゃう竜とかハプニングはあったけど、
今のところ順調なお出かけだ。
だからちょっとだけ、油断してたのかもしれない。
「っと、悪いフェア。
オレも買うものがあるから、ミルリーフを見ててくれるか?」
「えー、パパと一緒に行きたいよう……」
用事があるライに、ミルリーフがわがままを言うのをなだめる。
「パパーっ! はやくしてねっ!」
ライに向かって手を振るミルリーフが、
振り返らずに手を振って応えるライが。
いつかのわたしと、お父さんに重なって見えてしまった。
(わたしも、こんな風に……してたんだっけ)
お父さん、お母さん、エリカにわたし。
生まれた頃に死んだはずの母さんを含めた、家族四人で遊んだ記憶。
(お母さん……、お母さんって、どうやればいいんだろう)
「ねぇミルリーフ、ライが来る前に……ミルリーフ?」
物思いにふけった後に、ミルリーフとお店でも覗こうかと声をかけるけど。
あの子の姿が見当たらない。
「ミルリーフっ!? どこ、どこに行ったの!」
慌てて辺りを見渡す、人混みの中で特徴的な桃色を探すと、
少し遠くだがすぐに見つけられた。
(あの子、また勝手に動いて……!)
少し怒りながら、無事なことにホッとして駆け寄る。
近づくにつれて、ミルリーフが何かをしようとしてるのが見えて。
わたしは、一気に走り出した。
「ミルリーフ、だめっ!」
咄嗟に小さな手を掴んで、ミルリーフを止める。
この子が居たのは、つながれている召喚獣達のところ、
手綱を勝手に解いて、逃がそうとしていた。
「っ!? ま、ママ……?」
なんで止められたのか、分からない顔でわたしへ振り返る。
(やっぱりこの子、逃がそうとして……!)
他人の所有する召喚獣を逃がすことは、重罪だ。
「ちょっとこっちに来て!」
「ママ…………」
召喚獣から離れたところまで連れて行ってから、しゃがみ込んで目線を合わせる。
「どうして、あんな事しようとしたのよ?」
「…………」
「もしやってたら、どうなるかくらいは分かるでしょ?」
「…………」
ミルリーフはずっと黙っていた、
泣きそうな顔で何かを我慢するように。
「黙ってるばかりじゃ、わからないでしょ!」
それなのに何も話してくれないから、つい腹が立って怒鳴ってしまった。
「う、ぅ……いや、がってたから……」
涙をこらえながら、理由を一生懸命に話そうとして。
「つながれているみんなが、いやがっていたから……たすけなきゃって……」
その理由に、わたしはだんだん頭が真っ白になってきて。
「人間に命令されるのはもうイヤ……っ、自由になりたい……、生まれた世界に帰りたいって……だから」
それは、勝手に召喚されてきた異世界の住人の正当な理由かもしれない。
「泣いてる子もいたの……、だから助けて、あげたくて」
子供の、純粋な願いなのかもしれない。
「だから、ミルリーフ……悪いことなんてしようとしてないもんっ!」
けど、この世界じゃ許されない理屈で。
「……言いたいことはよくわかったよ。
けどね、そういうことは」
子供には許されない、わがままなんだ。
「ちゃんと自分で責任が取れるようになってから、それから言いなさい!」
わたしに許されなかった、ワガママなんだ。
「あなたのワガママに振り回されるのは……、うんざりだって言ってるのよ!」
「フェアっ!」
ライの声で我に返る、気がつくとミルリーフを庇うようにして、ライが間に立っている。
ミルリーフは、大泣きしているのにも気がつけなかった。
「ラ、イ……」
初めて見る眼だ、悲しんでるような、私を責めてるような。
「先に宿に戻ってる」
「まって、わたしが悪いわけじゃ……」
ミルリーフを抱えたライに、説明をしようと……。
「分かってる」
ライの声で止まってしまう。
なんでそんな声で、わたしに怒るの。
「お前は頭を冷やせ、いいな」
混乱したまま、帰っていく二人を見ている事しかできなくて、
一人ぼっちになったわたしは、思いっきり叫んだ。
次回、ライにとって難関のよきかな。