サモンナイト4 本編後ライがフェア世界に逆行 作:ライフェア好き
「つまり、あなたは旅の途中に迷って町にたどり着き。
そこで行き倒れてと……」
「そうとしか言えないんですよ、自分でも怪しいと思うけど」
朝食に駆けつけたグラッドの兄貴に取り調べを受け、
再び怪しい言い訳を繰り返すしかできなかった。
(リシェルなら口が回るし、ルシアンなら誠実すぎて誤魔化せそうなんだがなぁ)
幼馴染二人の事を思い出して、この町にいるんだろうかと気になってしまう。
「名前はライ、流れの料理人で帝都で活躍した経歴有り…………ねぇ」
警戒を隠さないままにオレの事を観察してくる兄貴、
旅人なのに手荷物はなく、料理人なのに一人旅と言う所に引っかかってるのかもしれない。
「けどお兄ちゃん、この人が凄腕の料理人なのは確かだよ。
というか、多分この町で勝てる人がいないくらい」
「お前がそこまで言うほどなのか?」
「うん、今のわたしじゃ手も足も出ないくらい」
「それはちょっと食べてみたいが、それとこれとは別の問題だ」
フェアの助け舟で警戒が少し緩んだように見えるけど、
兄貴はまだ納得はしてないようだ。
(オレだってコーラルがこんなやつ拾ってきたら警戒するし、気持ちはわかる)
兄貴が警戒しているのはフェアや町に害するかどうか、それを証明する一番いいのはオレがクソ親父の関係者だと説明すりゃいい。
(兄貴だってコイツの事情は知っているはず、けどクソ親父の名前を出したら。
多分オーナーの耳にも入っちまう、あの人を相手に腹の探り合いはしたくねぇしな……)
この町の顔役である、金の派閥の召喚師テイラー・ブロンクス。
幼馴染二人の父親であり、フェアの雇い主であり、クソ親父の親友……ってより腐れ縁かもしれない、会うたびに喧嘩してるってポムニットさんに聞いたことがある。
ある意味誰よりも一人残されたオレの事を気にかけてくれた恩人で、
この子の事情を知っている数少ない一人。
(だからこそ、クソ親父の関係者と知られたら多分ボロを出しちまう。
別世界から召喚されましたなんて言っても信じてもらえないだろうし、
他の召喚師の耳に入ったりしたら最悪実験体にされかねない)
黙り込んで考えていると、フェアが心配そうにこちらを見ているのに気がついた。
(どうしてこの子はこんなに警戒心が薄くなってるんだ?
料理を作ったとはいえ、オレだったらもっと警戒して……)
「フェア、悪いけど奥の客室を借りてもいいか?
ここで続けてたんじゃ店の邪魔になるだろうし」
そんな中、グラッドの兄貴の提案によって二人きりで仕切り直すことになった。
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「これで二人だけ、あの子に聞かせ辛い話もできます」
(マズイな、子供を外したってことは……)
オレが寝ていた客室に場所を移すと兄貴が話を切り出してきた。
真剣な目で、腹の底を覗くような兵士の目で。
「もしかして……、なんですが。
貴方はあの子の血縁者なんでしょうか?」
「へっ?」
思いもよらない兄貴の言葉に気の抜けた返事をしてしまう。
「はじめに貴方を見た時は驚きました、兄妹かと思ってしまうほど似てましたから」
(……あ、そうか)
別の世界とはいえ、クソ親父と母さんの子ってことはオレとも特徴が似てる事になる。
そんな単純なことにも気が付かなかった。
(けど、向こうから言ってきたなら乗るしかない。
オーナーに言わないように、クソ親父のロクデナシっぷりを利用するしかない!)
「……正確には、あの子の父親の知り合いってだけですよ。
貴方がどこまで事情を知ってるか分かりませんが、あの子にそれを言う訳にもいかなくて」
「あぁ……それは確かに」
こういう時に口のうまい友人が羨ましくなる、
オレは苦手なんだよ! セイロンとか呼んでこい!
「多分父親、ケンタロウ……さんの話を出したら、
あの子は話を聞いてくれなくなる、
この町の顔役である、テイラー・ブロンクスさんにもいい印象を与えないと思いまして。
あの人たち仲がいいんだか悪いんだか分かりませんし」
ペラペラと半分嘘を並べながら、服の内に隠してるペンダントを兄貴に渡した。
「これは……フェアの腕輪?」
(オレとフェアを繋げる唯一のお守り、これで駄目だったらオーナーに
驚きながらお守りを調べる兄貴の答えを、祈るように待つ時間はとても長く感じ───。
「ライさんの事情はわかりました、
だとしたら一つ、答えてもらいたい質問があります」
「なんですか?」
「あの子の、フェイの親父さんは一体どこで何をしているんだ」
兄貴は怒っていた。
軍人としてではなく、兄貴分としてフェアのために。
そのことが泣きたくなるくらいに嬉しかった。
オレはいい人たちに囲まれていたんだと、改めて教えてくれた気がしたんだ。
「アイツは今もフェアの妹を助けるために世界を飛び回ってる、
約束を破りたくはないとか言って、娘の顔を見に来やしないロクデナシだけどよ」
ペンダントを強く握り、大きく息を吐く。
「今更ムシのいい話だって分かってる、フェアが貴方達に支えられて成長してるのも感謝している」
(オレは泣いている
「けれど、オレはあの子の力になりたい。
クソ親父がしてこなかった分まで、
アイツがやりたい事の手助けをしてやりたいんだ!」
オレは頭を下げた。
(ガキの頃に考えていた、早く大人になる、一人前になるって……それを邪魔することかもしれない。
それでもオレは───)
「頼む……!」
(フェアに、明るい未来にたどり着いてほしいんだ)
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結論から言うとグラッドの兄貴は納得してくれた。
オーナー、ではなくテイラーさんに黙ってほしい理由も
「あのクソ親父の尻拭いはしたくない」と言って理解してくれたあたり、
普段フェアがどれだけ悪く言ってるかよくわかる。
変わり者の料理人ってことで口裏を合わせてくれる事となり、
手持ちの金がないことを伝えると少しではあるが貸してくれた。
兄貴マジ兄貴、この世界だと年齢は近いはずだがそれでも背中が大きく見えてしまう。
お礼に駐在所近くの荷物を運んだりと手伝ってるうちに、日が暮れて町が夕暮れに染まっていく。
その時、なんとなく実感してしまった。
歩き慣れているはずの通り。
今はもうないなずの店、ときおり見かける常連客の若い顔。
誰にも声をかけられず、知らないよそ者として町に居る。
ライではなく、フェアが生きてきた世界に居る。
途端に心細くなり、オレはあそこへ向かって歩き始めていた。
ここには居ない大切な家族の「おかえり」という声を求めて。
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「今日もあんまりお客さん来なかったなぁ、泊まり客は相変わらず一人もいないし」
背伸びしながら今日の収支を頭で計算する、
うげ、また赤字だ……オーナーにそのうち呼び出されそう。
(ランチは人来てくれるんだけど、ディナーはあんまり。
夜になってまでこんな町外れに来たくないって気持ちはわかるけどさぁ)
宿の立地に文句を考えているとドアベルが鳴った。
「いらっしゃいませーお好きな席にどう……」
「よっ、まだやってるみたいで良かった」
本日最後のお客さんは、朝に現れた謎の青年ライだった。
彼は一番安いディナーセットを注文してきたのには
なんとなく腹が立ったが、今は置いておくべきだ。
(メニューが安かろうが、今朝のリベンジをするなら今しかない!)
わたしは全力で取り組んで、良い仕上がりに納得もした。
けれどライは懐かしむような顔で食べ終えてから 「思ったよりうまかった」なんて言い出してカチンときてしまった。
「思ったよりってどういうことよ! そりゃライよりは未熟だけど、それなりに自信あったのよ!」
「悪かったよ、そういう意味で言ったんじゃないんだって」
わたしは向かい側に座り腕を組んでやった、弁明を聞いてやろうじゃない。
「オレもお前くらいの年頃で店をやってたんだよ、その時のオレの料理にそっくりで……その時より美味かった」
「センスあるよ」なんて褒めてくれたのは嬉しいが、納得いかなかった。
「ライ、貴方宿は決まってるの?」
「いや、まだ決めてないけどよ」
「じゃあウチに泊まりなさいよ!」
絶対に逃さない、料理でギャフンと言わせてやるんだから!
それに、食べてるときのライの背中が
すごく寂しげに見えたのが気になっていたのだ。
次回は幼馴染ズの出番