サモンナイト4 本編後ライがフェア世界に逆行 作:ライフェア好き
差し込む朝日で目を覚ます。
あくびを噛み殺して背伸びをしてから、ようやく気がついた。
「オレ、食堂で寝ちまってたのか……」
(頭がぼーっとして、眠い……)
動く気が起きなくて、しばらく椅子に寄りかかっていると。
「おはよう、よく眠っていた……かと」
テーブルにお茶が置かれ、向かいにコーラルが座ってくる。
いつも見ている顔なのに、金の髪と金の眼妙に懐かしかった。
「おはよ、起こしてくれりゃ良かったのに」
「ん……、次はそうする」
お茶を手に取り、飲もうとして……ある疑問を思い出した。
「しかし、考えてもわかんねーんだよな……」
何だか、こんな風に過ごすのが久しぶりな気がする。
考えに行き詰まったら、よくコーラルにこうやって愚痴をこぼしていたんだ。
「今度は、どんな悩み……ボク、聞きたい」
「ガキの頃の話なんだけど、あんときはギアンのやろーがコーラルを連れ去ることに必死だったじゃないか」
「うん、あの時ギアンが狙っていたのは至竜と古き妖精だった……」
ラウスブルグを用いて、界を超える為の条件。
「だったら、今回は何で遺産を狙うのかわかんねーんだよ。
確かに遺産はすごい力を持ってるけど、受け入れられる竜の子がいなくちゃ意味ないってのに」
確かに単体でも価値があるものだが、ギアンの目的とはズレるはず。
「何でミルリーフより、遺産を狙うんだ?」
それだけが、分からないままだ。
「考えられるのは、前と目的が違う……、もしくは」
コーラルは、首を傾げる。
昔は大人びてたのに、今じゃ少し子供っぽく見える。
「竜の子より、遺産が必要……かと?」
「その理由がわかんねぇ……、こういうの苦手なんだよ」
頭を抱えるてると、コーラルが手を叩く。
「知っている人に、聞いてみる……?」
誰にだよ……、とコーラルに目で問う。
「……セイロンなら、きっと知ってる」
「何で?」
確かにあいつは、いつだって情報を握っていたけど……。
「お父さんの話だと、牙の儀式をする間を空けた理由が……不明、
こっちと同じだとしたら、すぐにでもミルリーフを戦えるようにしたい……かと」
コーラルは指を立てて、びしっと決める。
「だけどそれを後回しにしたのは、きっとセイロン……そこにはきっと、何かある」
「……コーラル、オレの代わりに来てくれね?」
「残念、無理……」
思わず出た感想は、すぐに却下された、残念。
本当に頼もしくなったよな、コーラルは……。
「あー、お前の飯が無性に食いたい」
「……帰ってきたら、たくさん作るよ?」
自信有り気な様子に、思わず昔を思いだして笑ってしまう。
「昔みたいに、パンケーキに卵の殻とか野菜の芯を入れるなよ?」
「一年間、お店を繁盛させてる……。自信あり、かと」
「そうか、そりゃ……楽しみ、だ……」
急に眠たくなってきた、
また机で寝ちまうけど……、いいか。
────────────────────────
目を覚ますと、この一年で見慣れた宿部屋の天井が見える。
(あれ、何でここに……さっきまでコーラルと……)
「いっだぁ!?」
起き上がろうとした瞬間、激痛が走り動けない。
歯を食いしばって耐えてる時、笑い声が聞こえる。
「……首は動かせねぇけど、声でわかるぞセイロン」
「おお、これは失礼した。思ったよりも元気そうなのでつい、な」
はっはっは、とおどけてみせるセイロンが今はすげぇ腹立たしい。
「体中を強く打ったようだ、腕は完全に折れているので動かしてはいかんぞ。
何があったか、覚えてはいるか?」
「確か、獣皇と戦って……」
段々と思い出してきた。
「そうだ、フェアが見えて。そこで油断しちまったんだ……」
「記憶の混濁はないようで何よりだ、いま店主殿を呼んでこよう」
部屋から出ようとしたセイロンを呼び止める。
「いや、先にお前から話してくれ、
オレが寝かされてるってことは、何とかなったんだな?」
「よかろう、そなたが気絶したあとの事だが……」
────────────────────────
「グォ、ォ…………ォ…………」
「はぁっ、はぁ……。やっつけた、なんとか……」
「ママぁ……、こわかったよぅ……! ぐすっ……」
「よしよし、怖いのにがんばってくれて、えらいね……」
うつ伏せに倒れた獣皇を前に、力が抜けて座ってしまう。
抱きついてきたミルリーフを受け止めるのにも必死だ。
「なんとか切り抜けたな」
「あたしもうヘトヘト……」
もう、みんな限界だった。
結局二人だけじゃ、足止めが精一杯で、
亜人たちを退けた皆が駆けつけて、何とか倒すことができた。
「しかし、ここで休んでるわけにはいかないだろう。
鋼の軍団も迫っているし、何よりライ殿が危険だ」
「応急処置だけは終わりましたわ、運んでも大丈夫」
セイロンとリビエルの意見に賛成とばかりに、みんなが同意する。
「なら、今すぐ町に避難しよう。
俺が殿を務めるから、皆は早く……」
グラッドお兄ちゃんがみんなへ指示を出したその時。
ドクン……。
「何、この音……」
「グ、ルオオォォォォオオオ!!」
呆然とするわたしを巨大な影が覆う、
獣皇が再び立ち上がり、わたしの前へ立ちふさがった。
狂える獣が大きく吠えて、拳を振り上げる。
「フェアさんっ!?」
ルシアンの声がゆっくりと聞こえる。
目の前の獣皇の動きもゆっくりに見える中、わたしは……。
「……っ!」
「ママっ!?」
咄嗟にミルリーフを庇って、後ろに突き飛ばし……そこで力が入らなくなった。
(……ごめんね、みんな)
覚悟して、腕が振り下ろされる瞬間に備えるしか出来なかった。
……そして、それは同時だった。
「えっ……?」
わたし事を、誰かが押し倒して庇う。
銀の髪に、わたしより大きな身体の男、ライだ。
押し倒されて、手に持っていた遺産の袋がこぼれ落ちる。
混乱する意識の中、腕はなかなか振り下ろされない。
みんな、この音に呆然としていた。
「これは、笛の音色……?」
ミントお姉ちゃんの呟きは、誰もが思っていた事だ。
戦いの場とは思えない、清らかな音色が響き渡る。
「…………」
(獣皇から、狂気が抜けた……?)
腕をゆっくりと下ろした獣皇は、落ちていた遺産の入った袋を拾うと軍隊と共に帰っていった。
それを止められる余力がある者は、誰一人としていなかった。
────────────────────────
「全然、覚えてねぇ……」
オレがフェアを庇った……?
「なるほど、無意識だったのか、
ならば責めるわけにもいかぬな、あっはっはっは!」
遺産を取られたことは気にするな、言ってくれているが、
今は聞かないといけないことがある。
「……なぁ、セイロン」
まず、話を聞いてまっさきに気になったことから。
「何で遺産をフェアに渡したんだ」
リビエルからフェアに渡された遺産、それを決めたのは間違いなくセイロンだ。
「継承を終えた遺産にも、それなりの加護がある。
あの場で最も戦うことが可能だったフェア殿に託すのが最善と判断したまでよ」
「全部じゃないだろ、オレにも何となくわかったんだ」
意識を失う前にはっきりとわかった。
「アイツらは、最初から遺産を目当てに来た。
そしてセイロン、アンタはそれを半ば確信していたんじゃないか?」
だとしたら、渡した理由はもう一つあるはず。
「だから2つの遺産ってエサをぶら下げたんだ、アロエリの持っていた遺産を守るために」
当たりかどうかはわからないが、セイロンは扇子で口元を隠す。
「……それで、我に何を聞きたい」
「確信に至った理由を知りたい、
相手の狙いが竜じゃないなんて、全部がひっくり返るだろ」
セイロンはしばらく沈黙し、重い口を開いた。
「……すまぬ、言えぬのだよ。
確かに我には、そう考えるに至る理由がある」
笑うのではなく、寂しげな顔をしていた。
「しかし、それを認めるわけにはいかんのだよ、御使いの一人として」
「……そうかよ、悪かった」
こういう時のセイロンは、本当に話せないって長い付き合いでウンザリするほど知ってる。
「我からも一つ聞かせてもらおう、ライよ」
「なんだよ?」
「何故、先代が自害だと知っている」
今度はオレが口を開けなかった、
多分、アロエリから聞いたんだろうな……。
「……言えねぇし、言っても不審に思われるだけだ」
この答えが既に不審でしかないが、
セイロンは肩をすくめるだけで止めてくれた。
「やれやれ、我らは互いに胸に秘める事が多いな」
「悪かったな……ミルリーフを守りたい気持ちだけは、信じてくれ」
「そこに関しては疑うつもりもない、
そなたが間者だとしたら、とっくにアロエリから遺産を奪い取っているだろう」
ある程度は信じてくれると言うことなんだろう、
逆に言えば、警戒はしていると言われた気がするな……。
「では失礼する、目覚めたら店主殿に伝えねばならぬのだ」
セイロンが部屋から出ていく音が聞こえて、息を深く吐き出す。
(本当にセイロンは何か知ってる、敵が遺産を求める理由を……、コーラルのやつ、本当にこっち来てくれねぇかな)
頼れる子供のことを思い浮かべ、やっぱりあいつの飯が食いたくなった。
────────────────────────
「……認めるわけにはいかんのだ」
男は知っている、敵が遺産を求めるかもしれない理由を。
「それを認めてしまっては」
御使いのみが知っている、もう一人の竜の子の存在。
「我らが長が、敵の手に落ちたと認めることになる」
彼の持つ最後の遺産と、もう一人の御子。
それが事実と考えるには、あまりにも絶望的だった。
ここでのセイロンさんは、敵の動きによりある程度の疑念を抱いています。
本編での信頼っぷりを考えるに、それでも考えたくない程クラウレという人物への尊敬があると思うのです。