サモンナイト4 本編後ライがフェア世界に逆行   作:ライフェア好き

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誤字脱字、感想ありがとうございます。
物語的には序盤を終えて御使いも揃い、ここの辺りからライが動き始めます。


第31話 冒険者の夜

トレイユの町から遠く離れた森の中に、その男は居た、

冒険者であり、フェアの父親であるケンタロウ。

 

「いちちち……、ったく最近ロクな目に合わねぇな」

 

「お父さん……、大丈夫?」

 

焚き火の前で肩を回す中年へ、心配そうに声をかけたのは娘のエリカ。

 

「平気よエリカ、あんたのお父さんに心配するだけ無駄よ」

 

「おいナイア、そりゃどういう意味だ」

 

そんなケンタロウへ雑な反応を返すのは、召喚術を用いるケンタロウの仲間にして、

フェアの母親の親友、ナイア。

 

「そりゃ、何とかにつける薬は……あら、戻ってきたみたいね」

 

「みたいだなナイア、エリカの事を頼む」

 

ケンタロウは重い腰を上げ、空から帰ってきた仲間を迎えに行く。

森の中に降り立つは機界の機械兵士、トライゼルド。

 

「偵察任務、完了デス。きゃぷてん」

 

「そうか、ありがとよ」

 

「シカシ、アノ者ガ。マサカ追撃者トナッテヤッテクルトハ」

 

先程の戦闘データを振り返り、トライゼルドは素直な意見を述べる。

御使いの一人クラウレが、敵であるギアン・クラストフと肩を並べて襲撃してきたのだ。

 

「モウ一体ノ、竜ヲ含メ想定外ノ事態デス」

 

しかも、その横には至竜の幼生体も並んでいた。

 

「さぁな、野郎も野郎なりに腹をくくって決めたことなんだろ。

それに巻き込まれているあのガキは、少しばかり気の毒に思うけどよ」

 

槍を手に襲いかかってきた竜の子の必死さといい、心情的にやりづらいったらありゃしねぇ。

 

「ナラバ、強引ニデモ引キ剥ガスベキデハ?」

 

「そいつぁ無理な話だ、クラストフの野郎とクラウレがきっちりマークしてやがる。

心情的にも、あのガキが俺らにつく事もねぇだろ」

 

「あの子からしたら、私達は悪者だものね」

 

「ま、クラストフの野郎がいくらでもいいように言えちまうだろ」

 

エリカを見ていたはずのナイアが、会話へ入ってくる、

彼女の言う通り、事実だけなら青の竜からしてみたら、ケンタロウは親を殺した張本人だ。

 

「ナイア、エリカの様子はどうだ」

 

「熱は何とか下がってきたみたい。力の方は相変わらずだけれど……」

 

響界種としての力に身体が耐えきれない結果起こる発作、

様々な形で命を脅かす、どうしようもない力ってやつだ。

 

「やっぱ、一年前からのままか」

 

「ええ、あの時からずっと。

急な発作が増えている、身体のほうが追いついてないのね」

 

一年前から、それが急激に強まっている。

元々多かったとはいえ、ココ最近は少し異常だ。

 

「ソレニシテモ、何故幼生体ハアソコマデきゃぷてんト、戦エルノデショウ。

クラウレガ持ツ遺産ハ、戦イニ関係ナイハズデハ?」

 

トライゼルドの疑問は尤もだ、

クラウレの持つ遺産は記憶、継承したとしても直接的な戦闘能力には関係がない。

 

「それに関しちゃ推測しか出来ねぇが、

遺産の継承つっても、別に全部が必要な訳じゃねぇはずだ」

 

魔力、身体能力、知識、記憶。

その4つは、今すぐに成体にするために必要なだけだ。

 

「本当に大事なのは知識と記憶だろう、言っちまえば力自体は鍛えりゃいいことだ」

 

魔力と身体の制御は、練習をすればいい、

本来は親が教え、成熟した所で記憶の継承をするのが本来の継承方法だろう。

 

「それに……あの姫がいるからな」

 

「月光花の妖精に愛されしものが得る祝福は、秘めたる才能を開花させる……」

 

月光花の妖精の響界種の少女、エニシア。

戦っている最中に、何度か彼女を「母さん」と呼んだ子供の目は真剣だった。

 

「妖精の寵愛を受けている上、才能に関しちゃ竜の子以上の器もねぇって話だ。

ったく、嫌になる組み合わせだぜ」

 

世界最高峰の才能の持ち主が、限界まで引き出す祝福を受けているんだ、

何をやってもスポンジのように即座に吸収しちまうほど、早熟の天才かもしれない。

 

「それがわかってるから、クラストフの野郎も竜の子をオレ達にぶつけてきてるんだろう、

親の仇なりゃ、倒すために死ぬ気で鍛えるだろうしな」

 

「きゃぷてんガ、手心ヲ加エザルエオ得ナイノモ計算済ミト」

 

そこにギアンが目をつけるのは当然だろう、

奴にはケンタロウ達は邪魔者でしかないが、本腰を入れて追撃する理由は薄い。

 

そこに勝手に憎んで、倒そうと努力してくれる竜の子がいるのだ。

 

「いいように使われてるわね、私達も」

 

「ったく、オレは練習用のサンドバッグじゃねぇんだぞ」

 

そりゃもう、便利な練習相手として使うしか無いだろう。

 

「この様子だと、貴方が残してきたあの子も少し不安ね」

 

ナイアは、ケンタロウが置いてきたフェアの事がずっと気がかりだ、

親友の娘だし、何よりケンタロウによって御使いを町へ向かわせている。

 

巻き込まれていることは間違いがない。

 

「あいつなら大丈夫だろう、身体の頑丈さはオレ譲りだしな……ただ、少し気になることもある」

 

「気になること?」

 

いつもは無駄に自信満々のケンタロウが、珍しく歯切れが悪い。

 

「ああ、あいつの戦い方がどうも引っかかってな、

動きは悪くねぇんだが、クセが読みやすいんだ」

 

竜の子と戦っている時から違和感を感じていた。

 

確かに拙い槍さばきだし、力任せな所はある、

だが、基本的な動きはしっかりしていた……昔、あいつに教えたような動きで。

 

「昔、フェアの奴に特訓させてた時を思い出したよ」

 

幼い頃の娘の顔を思い出す……というより、今の顔を知らないだけだが。

 

「しかも、あいつが持ってた槍に見覚えがある」

 

記憶違いじゃなければ、あの槍は昔自分が使っていたものだ。

 

あまりにも奇妙な事が重なる。

 

「あんまり戻りたくねぇんだが、トレイユに行くしかねぇかもな、

……エリカの体調もあるし、時間がかかっちまうが」

 

だからこの男は、もっとも行いたくない決断を下した。

 

「素直に行くのが気まずいって言えばいいのに、手紙の一つ送らないから」

 

ナイアにしてみれば、バカの自業自得でしかない。

 

「うっせぇ!」

 

こうして男は、トレイユへ戻ることを決めた。

 

人生の中で最も気まずい里帰りが、今始まる。




この親父さん、何で裸にライダースジャケットなんでしょうね。
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