サモンナイト4 本編後ライがフェア世界に逆行   作:ライフェア好き

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このあたりから段々とライが行動していきます。
そろそろ、骨休み的な話もやっていきたいんですね、グルメ爺さんとか。


第32話 先に来ました、秘密基地

先日の怪我から、数日たったある日。

 

オレは腕の骨折は治してもらえず、固定したまま町を散歩していた。

ちょうど、初めて会った時のアルバみたいにセイロンに止められている。

 

「え、ルトマ湖からの仕入れがない?」

 

「ああ、何故か知らんが、ついこの間から入ってこなくてよ」

 

この腕では仕事も出来ずに、暇を持て余していたオレは、

散歩していた朝の市場で重要な情報を手に入れることが出来た。

 

(おいおいマジかよ、まだアルバと出会ってないってのに……)

 

ルトマ湖の氷漬け事件。

 

オレの記憶だと、この事件の発端は魚釣りだった。

 

暗殺者に襲われていた、自由騎士見習いのアルバを助けたあと、

彼の骨折の療養の為、骨にいい魚を求めてルトマ湖に向かい。

 

偶然、ルトマ湖にてある作業をこなっていた鋼の軍団と遭遇した。

 

「あいつら、こんな早くから作業していたのか……」

 

つまり今行けば、必ずゲックの爺さんがあそこにいる。

 

(これは、チャンスかもしれないぞ!)

 

相手が来るのを待つしか出来ないこの戦いの中、滅多にないチャンスにオレの足は町の外へ向かっていた。

 

ゲックの爺さんには、どうしても話す必要がある。

オレの恩師、セクター先生のことで、どうしても話さなくちゃいけない。

 

────────────────────────

 

「……腹減った」

 

勢いで来たのは失敗だった、いくらルトマ湖が近いとはいえ、

町から歩けば、昼頃に到着するくらいに距離はある。

 

朝飯抜きで、しかも怪我した状態で来るもんじゃなかった。

 

(痛みはストラで誤魔化せるけど、疲れだけはどうしようもねえ……) 

 

新しく買った剣を杖代わりに、歩き続けて数時間。

 

段々と肌寒くなっていき、吐く息が白くなって来た。

 

「ついた……」

 

目の前に広がる氷漬けのルトマ湖、鋼の軍団がここにいる証拠だ。

 

(前はどうやってあの基地を見つけたんだっけ……)

 

確かあの時は、魚をとろうとして……穴あけようとしたんだ。

そしたら急にミリネージが話しかけてきて。

 

「ねえねえ、一人で何してるの〜?」

 

「そうそう、こんな感じで……ってうお!?」

 

突然現れた機械人形に、思わずのけぞって氷の上を滑って転ぶ、

 

「きゃははははっ!かっこ悪ーい♪」

 

(久しぶりに見る顔だけど、変わんねぇなコイツも……)

 

人形姉妹の三女、ミリネージ。

姉の二人と違って好奇心旺盛、自由な性格をしており度々トラブルメーカーとなる機械人形だ。

 

「いっつつ、急に出てくんなよ……」

 

「えー、つまんなーい」

 

文句を言っても全く反省しないミリネージ、

勝手に飛び出したであろう彼女を追いかけ、次女のアプセットが現れた。

 

「EMERGENCY……、敵ト接触……。

反省要求、みりねーじ……」

 

「大丈夫だよー、だって一人だけなんだし、

排除しちゃえばおんなじだってぇ」

 

「……」

 

あの無表情なアプセットが、明らかに呆れた顔をする。

 

今回の鋼の軍団の仕事は採取で、いかにオレ達に見つからないかが重要だ。

それをわざわざ自分から飛び出して台無しにするんだからな……。

 

排除だとか言ってるが、ゲックの方針はよく知っている。

だからオレは、堂々と頼んでみることにした。

 

「久しぶりだなアプセット、ちょっと頼みがあるんだけど」

 

「断固拒否……」

 

即却下された。

 

「……頼むよ、ゲックのじいさ……教授に連絡してほしいんだ」

 

「なになに、ミリィにも教えてよー。

どうせあなたをここで排除しちゃうんだし♪」

 

こういう時は興味を持ってくれるミリネージの存在がありがたい。

 

(一か八かだ、これに興味を持ってくれれば……)

 

緊張を隠して、ゲックの核心に触れる。

 

「融機強化兵のことで話がある、そう伝えてくれ」

 

「……!」

 

機械人形二人の動きが止まり、通信しているのか沈黙が続く。

もし逆鱗に触れた場合、逃げ出すことが可能か考えを巡らせていると……。

 

「……COMPLETE、教授ガ許可を出シマシタ」

 

アプセットの言葉に、緊張を解く。

 

「えっ嘘!このダメダメおじさんを連れて行くの!?」

 

「誰がおじさんだ、オイ」

 

「だって白髪じゃん」

 

「銀髪だこれは!」

 

本題を忘れてミリネージに反論する、さすがにまだおじさんと言われる歳じゃねぇぞ!

 

────────────────────────

 

「……遅い」

 

「パパ大丈夫なのかな……」

 

ミントお姉ちゃんに外出の許可をもらってから、ライは毎朝散歩している。

 

体力が落ちないようにとの事で、いつもすぐに戻ってくるはずなんだけど……。

 

「もうお昼過ぎちゃってるのに、どこをほっつき歩いてるんだか」

 

「ママ……、探しに行っちゃダメ?」

 

ミルリーフが心配そうにわたしの服を引っ張ってくる。

 

(これだけ遅いと、さすがに何かあったのかもしれない……)

 

「仕方ないか、ちゃっちゃと仕事を片付けて皆に声をかけよっか」

 

「うんっ、ミルリーフも手伝うねっ!」

 

こうしてみんなの手を借りてライを探すことにした、

その結果、ある出会いをする事になるなんて思いもしなかったけど。

 

────────────────────────

 

ルトマ湖近くの地下に設けられた秘密基地、

詳しい原理は知らないけれど、マグマとかいう大地の血液で人工サモナイト石を作る施設らしい。

 

ようするにすげぇ暑い場所なんだけど、オレは別の理由で冷や汗をかいていた。

 

「なぁ、ローレット……頼むからさ」

 

オレを囲むようにして、ローレットとアプセットが監視している。

遠くに見えるあの青いのは、グランバルドかな……懐かしい。

 

(ってそれよりも……)

 

「頼むから、骨折してるところ銃で突くのやめろよ!痛ってーんだ!」

 

「あら、気が付きませんでしたわ」

 

地味な嫌がらせを延々と受けていた、

ここに居ないミリネージはオレを連れてきた責任を取って正座させられてる。

 

「ミリィ、悪くないもーん……」

 

「うおっほん!」

 

教授こと、ゲック・ドワイトが呆れたように咳払いし、話を始める。

 

「よせお前たち、こやつは小癪にも話し合いに来たと言うではないか」

 

ようやく離れたローレットをにらみつつ、オレは素直に教授へ頭を下げた。

 

「まず先に、話し合いに応じてくれてありがとう。

アンタが応じてくれなきゃ、どうしようもなかった」

 

これから頼み事をする相手だし、なおのこと。

 

「ふん、貴様が融機強化兵などと言わねば、応じるつもりなどなかったわい」

 

融機強化兵という言葉を、懐かしむように、あるいは憎しみを持って吐き出す教授。

 

「貴様、どこでそれを知った」

 

オレを睨む目は、エニシアの為に力を振り絞る教授じゃない、

かつて秘密裏に研究を行っていた、召喚師ゲック・ドワイトのそれだ。

 

「そのことを含めて、あんたにしか頼めないことがある」

 

だけど、オレが会いに来たのは召喚師としてのゲックだ。

彼の持つ、超人的な機械知識、それしかオレには方法が浮かばない。

 

「頼む、オレの恩人を直してくれ……!」

 

「そうか、なるほどな……そういう事じゃったか」

 

まだ詳しい説明をしていないのに、全てを悟ったようにゲックはつぶやく。

 

「特殊被験体v-118、融機強化式特務兵士セクター」

 

「なっ!?」

 

そして聞こえてきた単語に、オレは驚愕した。

 

「そうか……、貴様が奴の知り合いだったとは」

 

「まてよ、何でセクター先生の事だって……」

 

「ワシが手がけた融機強化兵のうち、稼働しているのはヤツだけじゃ。

そして、直せるかという質問じゃが、当然修理することは可能だ」

 

その言葉は、オレが一番聞きたかった事だ。

 

「なら、頼む!先生を直してやってくれ!

もう、いつ倒れるか…わからないくらいなんだ」

 

「小僧、詳しく聞こう」

 

オレはすべてを話し始める、先生の状態。どこでどう暮らしているかそのすべてを。

 

────────────────────────

 

「ママ、ママ!多分こっち、パパの匂いはこっちだよ!」

 

「こっちって、もう町からだいぶ離れてるんだけど……」

 

町の外に広がる草原を、みんなで探索していた。

 

「アイツ、腕を骨折してるのに何だってこんな遠出してるのよ」

 

「全くですわ、治癒も終わってないのに危険過ぎます!」

 

リシェルとリビエルの怒りはもっともで、ミントお姉ちゃんなんか無言で怒ってる。

 

(それにしても、何で怪我してるのに……)

 

せめて一言くらい言ってほしかった、なんて考えてると前を歩いていたアロエリが立ち止まる。

 

「待てッ!」

 

「ど、どうしたのアロエリ……?」

 

周囲を警戒し始めるアロエリにつられて、辺りを見渡してみるも何も見えない。

 

「血のニオイだ、かなりの深手らしいな」

 

「えっ!?」

 

「よもや、クラウレではあるまいな」

 

「いや、恐らくニンゲンのものだ」

 

御使いでなかった事は安心だけど、ニンゲンと聞いて真っ先に浮かぶのは……。

 

「まさかっ……!」

 

「うむ、急ぐぞ店主殿!」

 

急いでニオイの元へ向かう、

怪我をしている可能性がある、ライの事を心配して。

 

そこで出会ったのは暗殺者に襲われる、少年剣士だった。

 

────────────────────────

 

一通りの事情を話した後、ゲックは口を開く。

 

「……では、お前はわしに何を支払える」

 

「ミルリーフや、遺産を渡すなんてことは出来ない……、この秘密基地について黙っている事くらいだ」

 

オレにはゲックへ渡せるメリットは殆どない、断られたら……そう、最悪の予感がよぎる。

 

「わしが、やつを修理すると見せかけて手を加え。

貴様達を攻撃する手駒に変えたら、どうする?」

 

らしくない質問に、オレは少し首を傾げる。

 

「アンタはそんな事はしない、少なくともオレの知っている教授なら。

それに、もしそんな事をしたら、アンタをぶっ飛ばして直してもらうさ」

 

「くっくっく、あの娘と同じく愉快な男よ。

単純明快、極まりない……」

 

ひとしきり笑った後、ゲックは語り始めた。

 

「報酬はいらぬ、わしにとっても奴は心残りなのだから」

 

「教授……」

 

ローレットが心配そうに声をかける、教授は何を話そうとしているんだ。

 

「どういう事だよ?」

 

「セクター、ヤツの修復はわしのやるべき事の一つ。

いわば、過去に犯してしまった罪への償いなのだよ」

 

そこに居たのは、過去を悔いる老人だった。

 

「……昔の事じゃ、強化兵士の実験に夢中だったわしはあるきっかけから、

己のしてきた事への異常さを気づいてしまった」

 

ニンゲンを機界の技術で改造し、兵器とする悪魔の実験。

 

「じゃが、そこから抜け出すにはあまりにも遅く、実績という罪を重ねすぎた」

 

研究所長であった男に肩にのしかかるものは、オレには想像が出来ない。

 

「良心の呵責に苦しんだわしは、せめてもの償いとして、

血塗られた技術を、失われていく命の為に用いようとした」

 

「まさか、アンタが先生を改造したのって……」

 

「奪った生命の帳尻を合わせるためだけに、強引に命を救った……、

当人の意志を無視した、実に身勝手な自己満足じゃった」

 

死にゆく兵士の、治療を兼ねた改造……。

それが、血塗られた技術を持った男が選んだ贖罪だった。

 

「いずれ国に隠し解放するつもりで、意識を封印した……、

じゃがその時は訪れなかった」

 

その前に、全てが終わってしまった。

 

「研究所への襲撃と崩壊。わしは逃げた、全てをかなぐり捨てて自分のためだけにな」

 

過去を悔いていた男は、結局逃げてしまったから。

 

「セクターや、機械達を修復したいというのも、結局はわしが一方的に償いたいだけの事」

 

何度も過去の罪に苛まれた老人は、オレに頭を下げた。

 

「故に、恨まれていようと、命を狙われようと。

わしは償わねばならぬ。頼む、わしに……機会をくれ、ライよ」

 

オレの答えは、決まっていた。

 

────────────────────────

 

「いいのかよ、敵であるオレをわざわざ町まで送るなんて」

 

セクター先生を修復に同意させることが出来たら、連絡をしてくれ。

そう渡された小さな通信機を、オレを懐へ仕舞った。

 

「当然です、これで貴方が野垂れ死んだりしては、教授の懺悔が無意味となりますから」

 

隣を歩いて支えてくれるローレットのおかげで、帰りはかなり早くなりそうだ。

 

「お優しいことで」

 

「そんな事より、特殊被験体v-118の説得は可能ですわよね」

 

ローレットがものすごい形相で睨んでくる、コイツとこんな距離で話すこと初めてだな。

 

「いかに教授の贖罪する相手とは言え、教授に復讐を目論むのであれば私は……!」

 

「ああ、阻止するってんだろ。わかってるよ」

 

セクター先生が、ゲックに復讐することが生きがいであり、

それに固執することで何とか生き延びられている。

 

(だから、伝えるタイミングは慎重に決めないとな……)

 

もしミスって、光学迷彩で透明に逃げられては、その時点で探す方法はなくなる。

 

(しかし、それにしても……)

 

「お前ら、教授大好きだよな」

 

「当たり前ですっ!」

 

案外、オレの周りで親子仲が一番いいのはコイツらなのかもしれない。




ライは外伝を経由していないイメージです。
なので、ゲックの後悔について詳しく知らなかったということで。
もちろん、この話ではすべての外伝を踏んでいく予定。
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