サモンナイト4 本編後ライがフェア世界に逆行 作:ライフェア好き
そろそろ、骨休み的な話もやっていきたいんですね、グルメ爺さんとか。
先日の怪我から、数日たったある日。
オレは腕の骨折は治してもらえず、固定したまま町を散歩していた。
ちょうど、初めて会った時のアルバみたいにセイロンに止められている。
「え、ルトマ湖からの仕入れがない?」
「ああ、何故か知らんが、ついこの間から入ってこなくてよ」
この腕では仕事も出来ずに、暇を持て余していたオレは、
散歩していた朝の市場で重要な情報を手に入れることが出来た。
(おいおいマジかよ、まだアルバと出会ってないってのに……)
ルトマ湖の氷漬け事件。
オレの記憶だと、この事件の発端は魚釣りだった。
暗殺者に襲われていた、自由騎士見習いのアルバを助けたあと、
彼の骨折の療養の為、骨にいい魚を求めてルトマ湖に向かい。
偶然、ルトマ湖にてある作業をこなっていた鋼の軍団と遭遇した。
「あいつら、こんな早くから作業していたのか……」
つまり今行けば、必ずゲックの爺さんがあそこにいる。
(これは、チャンスかもしれないぞ!)
相手が来るのを待つしか出来ないこの戦いの中、滅多にないチャンスにオレの足は町の外へ向かっていた。
ゲックの爺さんには、どうしても話す必要がある。
オレの恩師、セクター先生のことで、どうしても話さなくちゃいけない。
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「……腹減った」
勢いで来たのは失敗だった、いくらルトマ湖が近いとはいえ、
町から歩けば、昼頃に到着するくらいに距離はある。
朝飯抜きで、しかも怪我した状態で来るもんじゃなかった。
(痛みはストラで誤魔化せるけど、疲れだけはどうしようもねえ……)
新しく買った剣を杖代わりに、歩き続けて数時間。
段々と肌寒くなっていき、吐く息が白くなって来た。
「ついた……」
目の前に広がる氷漬けのルトマ湖、鋼の軍団がここにいる証拠だ。
(前はどうやってあの基地を見つけたんだっけ……)
確かあの時は、魚をとろうとして……穴あけようとしたんだ。
そしたら急にミリネージが話しかけてきて。
「ねえねえ、一人で何してるの〜?」
「そうそう、こんな感じで……ってうお!?」
突然現れた機械人形に、思わずのけぞって氷の上を滑って転ぶ、
「きゃははははっ!かっこ悪ーい♪」
(久しぶりに見る顔だけど、変わんねぇなコイツも……)
人形姉妹の三女、ミリネージ。
姉の二人と違って好奇心旺盛、自由な性格をしており度々トラブルメーカーとなる機械人形だ。
「いっつつ、急に出てくんなよ……」
「えー、つまんなーい」
文句を言っても全く反省しないミリネージ、
勝手に飛び出したであろう彼女を追いかけ、次女のアプセットが現れた。
「EMERGENCY……、敵ト接触……。
反省要求、みりねーじ……」
「大丈夫だよー、だって一人だけなんだし、
排除しちゃえばおんなじだってぇ」
「……」
あの無表情なアプセットが、明らかに呆れた顔をする。
今回の鋼の軍団の仕事は採取で、いかにオレ達に見つからないかが重要だ。
それをわざわざ自分から飛び出して台無しにするんだからな……。
排除だとか言ってるが、ゲックの方針はよく知っている。
だからオレは、堂々と頼んでみることにした。
「久しぶりだなアプセット、ちょっと頼みがあるんだけど」
「断固拒否……」
即却下された。
「……頼むよ、ゲックのじいさ……教授に連絡してほしいんだ」
「なになに、ミリィにも教えてよー。
どうせあなたをここで排除しちゃうんだし♪」
こういう時は興味を持ってくれるミリネージの存在がありがたい。
(一か八かだ、これに興味を持ってくれれば……)
緊張を隠して、ゲックの核心に触れる。
「融機強化兵のことで話がある、そう伝えてくれ」
「……!」
機械人形二人の動きが止まり、通信しているのか沈黙が続く。
もし逆鱗に触れた場合、逃げ出すことが可能か考えを巡らせていると……。
「……COMPLETE、教授ガ許可を出シマシタ」
アプセットの言葉に、緊張を解く。
「えっ嘘!このダメダメおじさんを連れて行くの!?」
「誰がおじさんだ、オイ」
「だって白髪じゃん」
「銀髪だこれは!」
本題を忘れてミリネージに反論する、さすがにまだおじさんと言われる歳じゃねぇぞ!
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「……遅い」
「パパ大丈夫なのかな……」
ミントお姉ちゃんに外出の許可をもらってから、ライは毎朝散歩している。
体力が落ちないようにとの事で、いつもすぐに戻ってくるはずなんだけど……。
「もうお昼過ぎちゃってるのに、どこをほっつき歩いてるんだか」
「ママ……、探しに行っちゃダメ?」
ミルリーフが心配そうにわたしの服を引っ張ってくる。
(これだけ遅いと、さすがに何かあったのかもしれない……)
「仕方ないか、ちゃっちゃと仕事を片付けて皆に声をかけよっか」
「うんっ、ミルリーフも手伝うねっ!」
こうしてみんなの手を借りてライを探すことにした、
その結果、ある出会いをする事になるなんて思いもしなかったけど。
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ルトマ湖近くの地下に設けられた秘密基地、
詳しい原理は知らないけれど、マグマとかいう大地の血液で人工サモナイト石を作る施設らしい。
ようするにすげぇ暑い場所なんだけど、オレは別の理由で冷や汗をかいていた。
「なぁ、ローレット……頼むからさ」
オレを囲むようにして、ローレットとアプセットが監視している。
遠くに見えるあの青いのは、グランバルドかな……懐かしい。
(ってそれよりも……)
「頼むから、骨折してるところ銃で突くのやめろよ!痛ってーんだ!」
「あら、気が付きませんでしたわ」
地味な嫌がらせを延々と受けていた、
ここに居ないミリネージはオレを連れてきた責任を取って正座させられてる。
「ミリィ、悪くないもーん……」
「うおっほん!」
教授こと、ゲック・ドワイトが呆れたように咳払いし、話を始める。
「よせお前たち、こやつは小癪にも話し合いに来たと言うではないか」
ようやく離れたローレットをにらみつつ、オレは素直に教授へ頭を下げた。
「まず先に、話し合いに応じてくれてありがとう。
アンタが応じてくれなきゃ、どうしようもなかった」
これから頼み事をする相手だし、なおのこと。
「ふん、貴様が融機強化兵などと言わねば、応じるつもりなどなかったわい」
融機強化兵という言葉を、懐かしむように、あるいは憎しみを持って吐き出す教授。
「貴様、どこでそれを知った」
オレを睨む目は、エニシアの為に力を振り絞る教授じゃない、
かつて秘密裏に研究を行っていた、召喚師ゲック・ドワイトのそれだ。
「そのことを含めて、あんたにしか頼めないことがある」
だけど、オレが会いに来たのは召喚師としてのゲックだ。
彼の持つ、超人的な機械知識、それしかオレには方法が浮かばない。
「頼む、オレの恩人を直してくれ……!」
「そうか、なるほどな……そういう事じゃったか」
まだ詳しい説明をしていないのに、全てを悟ったようにゲックはつぶやく。
「特殊被験体v-118、融機強化式特務兵士セクター」
「なっ!?」
そして聞こえてきた単語に、オレは驚愕した。
「そうか……、貴様が奴の知り合いだったとは」
「まてよ、何でセクター先生の事だって……」
「ワシが手がけた融機強化兵のうち、稼働しているのはヤツだけじゃ。
そして、直せるかという質問じゃが、当然修理することは可能だ」
その言葉は、オレが一番聞きたかった事だ。
「なら、頼む!先生を直してやってくれ!
もう、いつ倒れるか…わからないくらいなんだ」
「小僧、詳しく聞こう」
オレはすべてを話し始める、先生の状態。どこでどう暮らしているかそのすべてを。
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「ママ、ママ!多分こっち、パパの匂いはこっちだよ!」
「こっちって、もう町からだいぶ離れてるんだけど……」
町の外に広がる草原を、みんなで探索していた。
「アイツ、腕を骨折してるのに何だってこんな遠出してるのよ」
「全くですわ、治癒も終わってないのに危険過ぎます!」
リシェルとリビエルの怒りはもっともで、ミントお姉ちゃんなんか無言で怒ってる。
(それにしても、何で怪我してるのに……)
せめて一言くらい言ってほしかった、なんて考えてると前を歩いていたアロエリが立ち止まる。
「待てッ!」
「ど、どうしたのアロエリ……?」
周囲を警戒し始めるアロエリにつられて、辺りを見渡してみるも何も見えない。
「血のニオイだ、かなりの深手らしいな」
「えっ!?」
「よもや、クラウレではあるまいな」
「いや、恐らくニンゲンのものだ」
御使いでなかった事は安心だけど、ニンゲンと聞いて真っ先に浮かぶのは……。
「まさかっ……!」
「うむ、急ぐぞ店主殿!」
急いでニオイの元へ向かう、
怪我をしている可能性がある、ライの事を心配して。
そこで出会ったのは暗殺者に襲われる、少年剣士だった。
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一通りの事情を話した後、ゲックは口を開く。
「……では、お前はわしに何を支払える」
「ミルリーフや、遺産を渡すなんてことは出来ない……、この秘密基地について黙っている事くらいだ」
オレにはゲックへ渡せるメリットは殆どない、断られたら……そう、最悪の予感がよぎる。
「わしが、やつを修理すると見せかけて手を加え。
貴様達を攻撃する手駒に変えたら、どうする?」
らしくない質問に、オレは少し首を傾げる。
「アンタはそんな事はしない、少なくともオレの知っている教授なら。
それに、もしそんな事をしたら、アンタをぶっ飛ばして直してもらうさ」
「くっくっく、あの娘と同じく愉快な男よ。
単純明快、極まりない……」
ひとしきり笑った後、ゲックは語り始めた。
「報酬はいらぬ、わしにとっても奴は心残りなのだから」
「教授……」
ローレットが心配そうに声をかける、教授は何を話そうとしているんだ。
「どういう事だよ?」
「セクター、ヤツの修復はわしのやるべき事の一つ。
いわば、過去に犯してしまった罪への償いなのだよ」
そこに居たのは、過去を悔いる老人だった。
「……昔の事じゃ、強化兵士の実験に夢中だったわしはあるきっかけから、
己のしてきた事への異常さを気づいてしまった」
ニンゲンを機界の技術で改造し、兵器とする悪魔の実験。
「じゃが、そこから抜け出すにはあまりにも遅く、実績という罪を重ねすぎた」
研究所長であった男に肩にのしかかるものは、オレには想像が出来ない。
「良心の呵責に苦しんだわしは、せめてもの償いとして、
血塗られた技術を、失われていく命の為に用いようとした」
「まさか、アンタが先生を改造したのって……」
「奪った生命の帳尻を合わせるためだけに、強引に命を救った……、
当人の意志を無視した、実に身勝手な自己満足じゃった」
死にゆく兵士の、治療を兼ねた改造……。
それが、血塗られた技術を持った男が選んだ贖罪だった。
「いずれ国に隠し解放するつもりで、意識を封印した……、
じゃがその時は訪れなかった」
その前に、全てが終わってしまった。
「研究所への襲撃と崩壊。わしは逃げた、全てをかなぐり捨てて自分のためだけにな」
過去を悔いていた男は、結局逃げてしまったから。
「セクターや、機械達を修復したいというのも、結局はわしが一方的に償いたいだけの事」
何度も過去の罪に苛まれた老人は、オレに頭を下げた。
「故に、恨まれていようと、命を狙われようと。
わしは償わねばならぬ。頼む、わしに……機会をくれ、ライよ」
オレの答えは、決まっていた。
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「いいのかよ、敵であるオレをわざわざ町まで送るなんて」
セクター先生を修復に同意させることが出来たら、連絡をしてくれ。
そう渡された小さな通信機を、オレを懐へ仕舞った。
「当然です、これで貴方が野垂れ死んだりしては、教授の懺悔が無意味となりますから」
隣を歩いて支えてくれるローレットのおかげで、帰りはかなり早くなりそうだ。
「お優しいことで」
「そんな事より、特殊被験体v-118の説得は可能ですわよね」
ローレットがものすごい形相で睨んでくる、コイツとこんな距離で話すこと初めてだな。
「いかに教授の贖罪する相手とは言え、教授に復讐を目論むのであれば私は……!」
「ああ、阻止するってんだろ。わかってるよ」
セクター先生が、ゲックに復讐することが生きがいであり、
それに固執することで何とか生き延びられている。
(だから、伝えるタイミングは慎重に決めないとな……)
もしミスって、光学迷彩で透明に逃げられては、その時点で探す方法はなくなる。
(しかし、それにしても……)
「お前ら、教授大好きだよな」
「当たり前ですっ!」
案外、オレの周りで親子仲が一番いいのはコイツらなのかもしれない。
ライは外伝を経由していないイメージです。
なので、ゲックの後悔について詳しく知らなかったということで。
もちろん、この話ではすべての外伝を踏んでいく予定。