サモンナイト4 本編後ライがフェア世界に逆行 作:ライフェア好き
朝露が木々を湿らす早朝、宿屋の主人であるフェアは、
裏庭にある倉庫で道具を探していた。
「えっと、釣り竿どこかな……」
「ママー!こっちに針があったよ!」
「ほんと?ありがとうミルリーフ……うわっ!?」
「えへへ♪ミルリーフ偉い?」
仕掛けの入った箱を持って飛び込んできた娘を受け止め、頭をなでてあげる。
「まったくもう、甘えん坊なんだから。
釣り竿も見つかったし、用意して待ち合わせ場所に行こうか」
人型になっても軽いミルリーフを片腕でだっこしながら、片手で釣り竿を持って倉庫を出る。
これから出かける事を考えて、店の戸締まりもしっかりしないといけない。
「それじゃあミルリーフ、手分けして閉めていこっか」
「うん!」
段々と頼もしくなってきたミルリーフの背中を見送り、
荷物を纏めてから彼の部屋へと向かう。
「入るよ」
反応はないが、一応ノックしてから部屋へ入る。
ベッドで眠っている銀髪の青年へ、報告するために。
「これから釣りに行ってくるね、アルバの治療に魚がいいって聞いたからさ」
怪我をしている少年剣士、アルバの為に何か出来ないか。
料理の師匠である、グルメ爺さんに聞いてみたら医食同源という料理で身体を癒やす考え方を知った。
仲間に相談してみれば、セイロンやアロエリがオススメの魚を教えてくれて、
いざ市場に買い出しに言ったら、何故か最近入荷していないとのことだ。
「ってなわけで、ルトマ湖に行ってくるから。気にしないで休んでいて」
「ママ……」
声に振り返ると、ミルリーフが遠慮がちにドアを覗いていた。
「あ、ごめんミルリーフ今行くから」
「うん……、パパ、まだ起きないの?」
「そのうち起きるわよ、だってライなんだから」
寂しそうに俯くミルリーフの頬を撫で、手をつないで部屋を出ていく。
あのレンドラー、剣の軍団との戦いから数日。
ライは、ずっと眠っていた。
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ライがレンドラーを殴り倒し、勝利宣言で戦いは決着した。
元より下は、自由騎士二人の圧倒的な強さで優勢だったところに指揮官が倒れ、
一気に士気が落ちた所を、一気に制圧出来たから。
戦い終わり、急いでライの元へ駆けつけようとした時。
黒い影が立ち上がった。
『なんだよ、起きるの早すぎんだろ……』
『ふん、貴様の拳でいつまでも眠る程ヤワな鍛え方はしていない』
剣を杖代わりにしてやっと立っているライと、一度倒れたとはいえ余力のあるレンドラー。
『ライっ!』
最悪の結末を想像し、皆で駆けつけようとした時。
レンドラーの一声で終りを迎えた。
『剣の軍団!引き上げるぞ!』
指揮官の言葉に従い、素早く撤退していく軍団。
『……レンドラー、アンタ』
『勘違いをするな小僧、今回は確かに貴様の勝ちだ。
だが次はない、貴様の生意気な鼻っ柱をへし折ってくれるわ』
そう言い残し、背を向けるレンドラーへ。
『待てよ』
ライが声をかけた。
『オレが勝ったんだから、聞かせてほしいことがある』
そこからの話は、遠くにいるわたし達には聞こえなかった。
見えたのは、驚いた顔をするレンドラー、不敵に笑うライ。
二人が何を話していたのか、それは知ることが出来ない。
なぜなら剣の軍団が去った後、ライは倒れた。
『パパっ!パパぁ!』
あの時のミルリーフの必死な顔を、わたしは忘れられない。
急いでミントお姉ちゃんの家に運んで、
リビエルと二人で診察をしてもらった結果、極度の疲労状態なのだという。
体内の魔力が枯渇し、衰弱しているとのことだ。
セイロンはあの奇妙な治癒能力が原因ではないかと睨んでいたが、結局わからないままだ。
その後は宿まで運んでもらい、ライの部屋で寝かせている。
ミルリーフが『パパの看病するもん!』と張り切って体を拭いたりしているんだから。
ちょっとだけ、頼もしく成長してくれたのは複雑だけど誇らしかった。
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「ねぇねぇママ、みんな来るまで時間あるんだから。
一緒に市場見ようよぅ……」
「ダーメ、これから遠出するのに荷物増やしちゃダメなんだからね」
フェアとミルリーフが門の前の広場についたのが少し早かったようで、
仲間はまだ誰も来ていなかった。
ミルリーフはつまらなさそうにぶらぶらしていて、フェアは道具の点検をしている。
「ねぇ、ママぁ~」
「帰りに甘いもの買ってあげるから、今はガマンしなさい」
服を引っ張ってくるミルリーフの甘えた声に、竿を握るフェアはぴしゃりと宣告する。
最近成長したのかと思いきやこれだから、まだまだ甘えん坊は卒業しなさそう。
「いいもん、今行かないならたっくさん甘いもの買ってもらうもん!」
「はいはい、そうねー」
フェアの前で思いっきり拗ねてみても、思ったような反応が返ってこなくてますます不貞腐れるミルリーフ。
そんな時、ふと妙な香りがした。
「ねぇ、ママ……あっちに」
「少しだけなら見てきていいから、すぐ帰ってきてね」
一緒に行こうと言う前に、竿の調整に本腰を入れ始めたフェアに断られてしまう。
悲しいし残念だけど、今のミルリーフには匂いの方が気になった。
「うん、わかった」
フェアに手を振ってから、匂いをたどって走っていく。
普段は通らない道や、入りづらい路地裏、知らない道を通って、通って。
自分でも何でこんなに急いでいるのか、何でこんなにも懐かしい気持ちになるのか。
頭の中がぐっちゃぐちゃになった時、ふと我に返る。
「……ママ、どこぉ」
ミルリーフはきょろきょろと周りを見渡す、町の何処にいるかわからない。
あんなに言われたのに、すぐ帰って来てと言われたのに。
女の子は、見知った町で迷子になっていた。
「ママぁ……、ひっく……」
今にも泣き出しそうで、でも帰らないとママが心配するから、
一生懸命歩き出そうとして、でもやっぱり不安で動けなくて。
いよいよ我慢出来なくなった時、その子が現れた。
「……君、迷子?」
金髪と金の眼をした、ミルリーフと同じくらい子供だった。
初めて会うのに、昔から知っているような。
とても安らぐ匂いをしている、不思議な翠色の服の子供だ。
「ひっく、うん……ママとね、はぐれ、ちゃって……」
「それは、大変……かと」
泣き出したミルリーフを宥めるように、翠の子供が優しく撫でる。
まるで兄か姉が、妹を宥めるように。
「……お母さんが、どこかは分かる?」
「う、うん……」
門の前で集まることを伝えると、翠の子が優しく手を握ってくれた。
「大丈夫、ボクが近道知っている……よ」
その手の温もりに安心し、ゆっくりと連れて行ってくれる。
まるで、パパみたいな子……ミルリーフは不思議とそう感じた。
安らぐような、ドキドキするような。
不思議な散歩はあっという間に終わってしまった。
「ここを行けば、すぐに門だから……。
よく泣かなかったね、偉い……かと」
「本当?ミルリーフ偉い?」
「うん、偉い偉い……」
翠の子に撫でられると、なんだかくすぐったくて。
でも、それが心地良い。
「ありがとうっ!まってて、今ママを呼んでくるから!」
この子をママに、仲間たちに紹介したくて道を飛び出す。
「あっ、ミルリーフ!何処に行ってたの!」
「ママっ、ママ!ねぇねぇ聞いてあの子が……」
心配していたフェアの言葉に耳も貸さず、服を引っ張って今来た道を指差す。
「あの子って、誰も居ないじゃない」
だけどそこには誰もおらず、ミルリーフは母と御使いにこってりと絞られてからルトマ湖へと向かっていく。
凍てついた湖にて、彼女たちは鋼の軍団と対峙する事となる。
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やっとここまで来れた。
とても難しくて、色々と枷も出来てしまった。
それでも、やっと会える。
ずっと考えていた、彼は今どうしているのか。
夢の中で会うたびに、胸が熱くなって、痛くなった。
ボクは大人なのに、こんなに会いたいのは変かな……。
幼い頃のように家に向かう道を歩きながら、翠の子は宿屋へとたどり着く。
「お父さん、待ってて」
ライの子供、至竜コーラルが忘れ時の面影亭へ足を踏み入れた。
展開がうまく浮かばなかったので、ゆっくりのんびり進めていきます。