サモンナイト4 本編後ライがフェア世界に逆行   作:ライフェア好き

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少しでも逆行物っぽくなればいなと思います。


第35話 翠と父と

一生忘れることはない最終決戦の場。

 

堕竜ギアンが降臨した、浮遊城ラウスブルク。

けれど、目の前に広がる光景は記憶と違っていた。

 

城全体が糸で絡め取られたように、白い繭に覆われている。

その中で皆が倒れていた。

幼馴染も、頼れる大人たちも、異世界からの友も。

そして、フェアも。

 

ミルリーフだけが、その中で泣いていた。

 

(やめてくれ…)

 

コーラルに頼まれたんだ、助けてって。

ミルリーフはオレのこと父親だと慕ってくれてる。

 

(頼む、誰か…)

 

フェアだって、もし家族で暮らせてたらこんな感じなのかなって思わせてくれた。

 

(オレじゃ、分からないんだ。

どうすればよくなる、どうすればみんなを助けられるんだ)

 

白い怪物が、オレを見る。

 

「……っ!」

 

ベッドから飛び起きたライは、慌てて周りを見渡す。

見慣れた部屋には、あの暗い光景などありはしなかった。

 

「夢、か……」

 

こっちに来てから、度々こんな夢を見る。

弱気になってんのかなと少し情けない。

 

(どれくらい寝てたんだオレ、確かレンドラーのおっさんと話して……)

 

思い出すのは、気力を振り絞ったあの戦い。

レンドラーにある提案をし、そこで力尽きてしまった。

 

「そっか、あの後オレ倒れちまったのか」

 

顔に手を当てて深く息を吐き出し、ベッドから降りようとした時。

 

「……ん?」

 

布団の中に妙な、それでいて懐かしい感触がする。

恐る恐る捲ってみると、いつか見た光景がそこにあった。

 

「………すぅ」

 

「コー、ラル?」

 

────────────────────────

 

この世界にたどり着いて、真っ先に探したのはお父さんの匂いだった。

一年以上離れていても忘れることのない、優しい匂い。

宿は鍵が閉まっていたけど、お父さんと一緒にずっと暮らしてきたボクには問題がなかった。

 

「……お父さん、ただいま」

 

人気のない宿屋へゆっくりと裏口から入る。

宿の廊下は元の世界より真新しく、一瞬心細くなるけど匂いをたどっていく。

 

「……。」

 

そうして見つけたお父さんの部屋の前で、少し緊張してしまう。

久しぶりに会うのが楽しみで、ちょっぴり怖い。

 

「お父さん、いる……?」

 

それでもと勇気を振り絞って声に出すも、返事はない。

 

だから思い切ってドアを開けてみた。

 

「お父、さん……っ!」

 

ライは部屋で眠っていた、

その姿を見たら自分を抑えきれなくなって、子供みたいに駆け寄って頬に触れる。

 

手と頬が触れ合った時、ある事に気がついて喜びが冷めた。

代わりに湧き上がるのは不安。

 

「魔力が、少ない」

 

長年一緒に居たからすぐに体調不良だとわかった。

よく見れば顔も険しく、うなされている。

 

「……大丈夫、だよ。ここにいるから」

 

ライの手を握り、一緒に横になってそばに寄り添う。

大人になってから一緒に眠ることなんてなかった。

 

「今くらい……いいよね、お父さん」

 

久しぶりの安堵感に、気がつけば自分も眠ってしまっていた。

 

目を覚ました時、抱きしめられているのを感じた。

 

「コーラル……っ!コーラル!」

 

目を開けなくても分かる、お父さんだ。

 

「おはよう、お父さん」

 

「おはようっ、コーラル……お前なんだな!お前なんだよな?」

 

「うん、お父さんの……子供だよ」

 

力強く抱きしめるライの様子に少し戸惑い、すぐに理由がわかった。

ボクは向こうで皆と一緒に居たけど、お父さんはそうじゃない。

 

嘘が苦手で、いつだって真っ直ぐで優しい人。

 

 

ボクだってこの世界に来た時、不安を感じた。

お願いしたとはいえ、一人でこの世界にずっと居たお父さんはきっと……。

 

「……お父さん」

 

優しく抱きしめ返し。

 

「ありがとう、ワガママを聞いてくれて」

 

素直な気持ちを、親に告げた。

 

────────────────────────

 

「わりぃ、取り乱した」

 

「大丈夫、ボクもだから……気にすること無い、かと」

 

しばらく抱き合って、我に返ったライは恥ずかしさに頭を抱える。

あんな夢の後に家族に再会したとはいえ、大人のやることじゃないと反省する。

 

「……♪」

 

そんなライを嬉しそうに見つめてくるコーラルに、なんとなく居心地が悪かった。

 

「コーラル、お前どうやってこっちに来たんだ。

それにその姿、何か出会った頃みたいだし」

 

「……説明が難しい、がんばった」

 

「お、おう」

 

自慢気に胸を張るコーラルに対し、ライはとりあえず頭をなでて誤魔化す。

 

「……こっちに無理に来たから、色々と影響が出てる。

至竜としての力、今は殆どない……かと」

 

「そうなのか?」

 

「うん、多分……こっちの御子と同じくらい」

 

申し訳無さそうにするコーラルだけど、ライは気にならなかった。

 

「来てくれただけで嬉しいから気にすんなって、正直心細かったんだ」

 

ライにとって、ずっと抱いていた悩みを打ち明けられる家族。

この異世界において、何よりも得難い存在だから。

 

「うん、そのために来た……。

お父さん、ボクも力になる」

 

「おう、一緒に何とかしてやろうぜ」

 

拳をぶつけ合い、コレまでの事をコーラルへと話し始めた。

 

────────────────────────

 

「……ってなわけで、かなり参ってる。

何すりゃいいのか分からないし、ギアン達の動きが妙なんだよな」

 

「……とりあえず、今わかってることを纏めてみるべき、かと」

 

「わかっていること?」

 

「うん」

 

コーラルは少し目を閉じ、話し始める。

 

「まず、あの光景について。ボクもお父さんと同じくらいしか知らない。

けれど、分かることは二つある」

 

コーラルは指を立て。

 

「一つ、場所は堕竜と戦ったラウスブルグ。二つ、ボク達しか倒れてなかったって事」

 

「……悪い、もっと分かりやすく」

 

「あれが来るのはギアンが儀式をする時か、もしくはあの日って事。

それと、ボク達以外の仲間がいれば……なんとかなるかもしれない」

 

「なるほどな……」

 

「エニシア達、それに……お父さんは嫌だと思うけど。

お父さんの、お父さん……とか?」

 

「うっ、それを言うなって……。考えないようにしてんだから」

 

自分の親のことになると途端に誤魔化すライに、楽しそうにコーラルは微笑む。

 

「だから、お父さんの考えは合ってると思う。

セクター先生とか、ポムニットさんもそうだし……。

お父さんが考えていた、エニシア達との和解を早めるって所。

そのために、レンドラーに約束を取り付けたのはすごいと思う」

 

「そんなんじゃねーって、ただ……エニシアがやったんだから、オレもやろうってさ」

 

コーラルが最も驚いたのは、

あの日、レンドラーに打ち勝った時の事だ。

 

────────────────────────

 

『オレが勝ったんだから、聞かせてほしいことがある』

 

『何だ小僧、吾輩に話すことなどない』

 

立ち去ろうとしたレンドラーへ、あるものを見せる。

 

『貴様、それは!?』

 

『ゲックの爺さんから借りてる無線機だ。

ちょっと頼み事をしててな』

 

通信機を懐へ仕舞い、以前から考えていた事を告げる。

 

『なぁレンドラー、アンタは筋の通った話なら聞いてくれる武人と信じて聞く』

 

オレの時、姫が最も望んでいた終わらせ方。

 

『姫と話し合いがしたい、戦わなくったって姫の願いを叶える方法がある』

 

誰の犠牲も出さずに、終わらせる方法。

 

『正気か貴様?それが不可能な事は御使い共を見れば知れたことよ』

 

『だからオレ一人でいい、武器も持っていかない。

話し合いの場を設けてもらうなら最低限の礼儀だろ?』

 

レンドラーが少しだけ悩んだところに、畳み掛ける。

 

『決裂したならオレを人質にでもなんでもすりゃいい、

ギアンの野郎ならそれくらい平気でするだろ』

 

『貴様、何故奴の名前を……』

 

『頼むレンドラー、アンタにしか頼めないんだ!』

 

しばしの沈黙の後、レンドラーは答えを口にする。

その返答を聞いたライは、安心したように意識を失った。

 

────────────────────────

 

「ギアンを外した、エニシアとの話し合い。

もしうまく行けば、戦わずにアレに備えられる……」

 

「まぁ、問題があるとすりゃ……」

 

今一番頭が痛い問題が、身内に残っている。

 

「御使いのみんなをどう誤魔化すか……かと」

 

「あぁ、特にセイロンだな……」

 

二人で一緒にため息をつく。

 

最も頼れる男は、

最も敵に怒りを燃やす一人なのだから。




和平の際に最も恐ろしいのは、ギアンとセイロンだと思います。
話し合いなどありえないと一蹴する程の怒りは、結局ギアンの行いが原因なので……この二人は何があっても気が合いそうに無いですよね。
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