サモンナイト4 本編後ライがフェア世界に逆行   作:ライフェア好き

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声が可愛い竜三人組はずるいと思います。


第36話 決断の夜

「つ、疲れた……」

 

「ママだいじょうぶ?」

 

 魚を釣りに行ったはずが、

 湖は凍ってるわ、機械人形に襲われるわ。

 挙げ句の果てに、鋼の軍団と戦う羽目になったピクニックの帰り道。

 宿への坂道を、フェアは肩を落として歩いていた。

 

「魚を釣りに行っただけなのに……」

 

「でも皆無事で、目的の魚も手に入ったからいいんじゃないかな?」

 

「そうだけど、なんかすっきりしないもん」

 

 慰めてくれるルシアンに返事しながらため息をつく、最近ため息が増えた。

 今日くらいは平穏で真っ当な生活を送る気だったのに、

 まさか向こうからトラブルがやってくるなんて思いもしなかった。

 

(それに……)

 一つ気になることもあった。

 

 

 秘密基地に突入し、険しい顔のゲックと対峙した時のこと。

 

『フェアよ、なぜここがわかった』

 

『何故って、湖に釣りに来たらその子に襲われたのよ』

 

 ミリィ悪くないもん! と言ってる機械人形を指差すと、

 なにかに安心したようにゲックの顔が和らいだ。

 

『そうか……、あ奴は約束を違えなかったか』

 

(あれ、結局どういう意味なんだろう)

 

 その後すぐに戦いになったから聞き出すことは出来なかったけど、

 何故か喉に刺さった魚の骨のように引っかかっている。

 

「あたしだって消化不良よ! あの装置について何も分からずじまいなのが悔しくて仕方ないわ」

 

「なんでよ、結局壊れたんだからいいじゃない」

 

「良くないわよ! いい? 召喚師は専門職なのよ、

 別の属性ならまだいいけど、同じ機界の分野でここまで差を見せつけられたんだから、あたしの気が収まらないの!」

 

 人工サモナイト石生成装置の操作方法すら解明できなかったのが余程悔しかったのか、リシェルは帰り道でずっとご機嫌斜めだ。

 

「あはは……。それにしても、僕たちだけで歩くのも久しぶりだね」

 

「言われてみれば、この三人で歩くのってあの日以来かも」

 

 御使いの三人は軽く見回りをしてから帰るそうだし、ポムニットさんは屋敷の家事に、ミントお姉ちゃんとグラッドお兄ちゃんはアルバの見舞いにと別れてきた。

 

「ミルリーフは? ミルリーフもいるよ?」

 

「アンタはいいの! ほら、宿まで競争するわよ!」

 

「わーいっ♪」

 

 リシェルとミルリーフが笑いながら走っていくのを見送ると、ルシアンが微笑んでるのに気がつく。

 

「どうしたのルシアン、嬉しそうだけど」

 

「うん、こういう時間がずっと続けばいいなって」

 

「……うん、そうだね」

 

 星を見に行った日も、こんな感じだったな。

 大人になろうと自分を追い詰めていたら、この二人が息抜きさせてくれる。

 

「それに、僕はフェアさんと一緒なら……」

 

「えっ?」

 

 ルシアンが何かを言いかけたその時。

 

「ママ────ーっ!」

 

「大変よ二人とも! 宿に灯りがついてる!」

 

「嘘、待ってすぐ行く!」

 

 慌てた様子で戻ってきた二人の話を聞いてすぐに駆け出す、

 宿屋に灯りがついてるってことは……! 

 

「……また今度でいいかな、うん」

 

 取り残されたルシアンは、諦めたように肩を落とした。

 

「ほら、誰かいるみたいよ」

 

「料理のいい匂い、きっとパパが起きたんだよ!」

 

 宿の前につくと物音と料理の香り。

 

「まさか病み上がりで料理してるわけ? どんだけ料理バカなのよアイツ」

 

「でもライさんだし、やりそうだよね」

 

「ママ、はやくはやく!」

 

 はしゃぐミルリーフに急かされて扉を開けると取り付けられた鈴が鳴り響き、調理の音が止まる。

 

「ライ、目が覚めてよかっ……た?」

 

「……パパ?」

 

 厨房から出てきた姿は、見知った銀髪じゃなく絹のように柔らかい金髪、凛々しい金の眼。

 小さな身体にライの大きなエプロンを付けてるので、より幼さが強調されている少年……少女? だ。

 

「……いらっしゃいませ?」

 

 つまるところ。

 

「誰……?」

 

 知らない子供が、フェアの宿で調理していた。

 

「あーっ! 今朝の子だよママ!」

 

「知ってるのミルリーフ?」

 

「うんっ、迷子になったの助けてくれたの!」

 

「……元気そうで何より、かと」

 

 ミルリーフが嬉しそうにその子の手を取る。

 うんうん、こういう光景って心が穏やかに……。

 

「何にお年寄りみたいな顔してんのよフェア! アンタの店なんだからシャキっと対応しなさいよ!」

 

 リシェルが思いっきりフェアの頭を引っ叩く。

 

「そ、そうだった! 君一体どこから」

 

「……じー」

 

「フェアさん、なんだかあの子ずっと見つめてきてるみたいだけど」

 

「ミルリーフがベタベタくっついてるのに無表情、あの子やるわね」

 

 抱きついてるミルリーフを全く気にせず、こちらをじっと見ているあの眼は何処かで……。

 

「晩の仕込み終わったかコーラル?」

 

「ライ!?」

 

 子供、コーラルについて考えていたら声がした。

 久しぶりに聞くライの声は思ったより元気そうで、

 ミルリーフは早速「パパ!」と抱きついていった。

 

「うん、全部終わったよ……お父さん」

 

「「「お父さん!?」」」

 

 コーラルによって爆弾が落とされたような騒ぎになった。

 フェアは何度もライとコーラル見比べ、リシェルはライに掴みかかり、ルシアンは慌てて止めに入った。

 中でも一番混乱したのはミルリーフで、受け入れられなかったのか大泣きして止まらず、

 落ち着いたのは御使いの皆が帰ってきてやっと泣き止んだ。

 

 その大騒ぎを、コーラルが楽しそうに見ていたのに気がつけたのはライだけだった。

 

 ────────────────────────

 

「えっ、オレそんなに寝ていたのか?」

 

「ああ、何日も目を覚まさなかった」

 

「何にせよ、目覚めたなら目出度い。

 店主殿、御子殿も気を取り戻すというものよ」

 

「はは、悪い。ストラやりすぎたかな」

 

 今日までの経緯を御使い達に聞きながら、笑って誤魔化す。

 

「しかしコーラルさん……でしたっけ、あの子に随分慕われているのですねアナタ。

 旅に出たのを追いかけて、この宿までたどり着くなんて」

 

 リビエルは感心したように頷く。 

 

「それにあんなに楽しそうな御子さまを久しぶりに見た気がしますわ」

 

 厨房とテーブルを行ったり来たりしているコーラルにくっついてるミルリーフ、

 見た目が同年代なのも手伝い、仲のいい双子に見えなくもない。

 

「コーラル……お姉ちゃん? お兄ちゃん?」

 

「どっちでもいいよ、そのお皿を運んで……」

 

「はーいっ♪」

 

 先代に近しい気配を無意識に感じているのか、ミルリーフはすっかり懐いてコーラルの手伝いをしている。

 コーラルもコーラルで、妹みたいな子に手伝ってもらうのが楽しいみたいだ。

 

 一方ライの妹みたいな存在は、運ばれてくる料理にショックを受けていた。

 

「中々やるわね、ライの弟子なだけあるわ」

 

「すっごく美味しい……、わたし修行が足りないのかも」

 

「僕はフェアさんの料理好きだよ、ホッとする味でさ」

 

 コーラルの料理を美味そうに食べるリシェル、悔しそうにするフェアを慰めるルシアン。

 この三人も最初こそ騒いだがコーラルの事を「旅に出た親代わりの師匠を追いかけてきた弟子」と言うことで納得してくれた。

 

(コーラルのやつが言ってた通り、気が付かれないもんだな)

 

 至竜の力を失っているコーラルは、どちらかと言えば亜竜に近しい存在だ。

 元々人間そっくりに変身できるからのもあるし、御使いにも気が付かれないと踏んだ。 

 

 ただ一人を除いて。

 

『でもきっと、あの人だけは気がつく……最も警戒し、最も竜について詳しいから』

 

 穏やかな会話の中、一人だけライとコーラルを監視するように視線を外さない。

 

『だから、全部話していいと思う。

 聞いて、考えて、受け入れてくれるとボクは信じてる』

 

「……あとで話すよ、セイロン」

 

 この先の戦いを終わらせるため、二人は大きな賭けに出る。

 




ついに現地の一人に大きく踏み込みます。
ライだけでは恐ろしくて踏み出せなくても、親子一緒なら。
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