サモンナイト4 本編後ライがフェア世界に逆行   作:ライフェア好き

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PSP仕様だと何でも使えるようになるフェアとライの器用さは恐ろしい、
銃+ダブルアタックのドラゴンライダーにはお世話になりました。


第3話 素敵なお嬢様、大暴走! 【本編前】

「すぅー、はぁー……」

 まだ日が登らぬ早朝、オレは宿裏の稽古場で準備運動をしていた。

 夜露を吸った冷たい空気が身体に流れ、心身ともに落ち着かせてくれる。

 友人であるセイロンに教わった呼吸法「ストラ」、武術における身体強化の技術だ。

 

「よし、こんなもんかな。コーラル軽く手合わせでも───」

 

 いつも隣で準備運動していた、大切な家族は今はいない。

 

(……ったく、いつも一緒にいたからだよな)

 

 別の世界に来たと分かっていても、どこかで姿を探してしまう。

 

「あーくそ、こういう時は思いっきり身体を動かすに限るぜ!」

 

 置いてあった剣を勝手に拾って振るってみる

 ヒュ、と軽く風を斬る音が心地よく響きわたる。

 

 使いやすさを重視した剣は軽く、子供でも自在に扱うことができるだろう。

 

(大剣とか槍ばっか使ってたから、こういうのは久しぶりだな)

 

 あの頃からの自分の成長を実感しつつ、木人形へと剣を構え、

 オレは昨日のことを思い出していた。

 

 ────────────────────────

 

「じゃあウチに泊まりなさいよ!」

 

「はぁ!?」

 

 フェアが突然言い出した提案に、オレは冷静に手持ちの金を計算して断ることに決めた。

 

「無理だって! オレ今手持ちがほとんど無いんだ」

 

「じゃ、じゃあその分は働いてよ! その、ほら、朝ごはん! 今朝みたいに作ってくれればいいから!」

 

「なんでまた急に……」

 

 こっちが混乱していると、フェアが怖い顔で睨みつける。

 

「昔のライになんかじゃない、わたしは今すぐアンタをギャフンと言わせてあげるんだから!」

 

「毎日でもライの料理食べて勉強してやる!」と、こっちの都合もお構いなしの言い分

 グルメじいさんに啖呵切った時のオレそっくりでつい笑ってしまい、更にフェアに火がついてしまい。

 

 オレはそのまま、忘れじの面影亭の宿泊客となってしまった。

 

 ────────────────────────

 

「ふっ、はぁっ! せぇい!」

 

 頭の中で仮想敵を作り出し、目の前の木人形へ剣を振るう。

 

 あの事件以来、荒事に巻き込まれる事は減ったものの

 至竜を巡ったトラブルや、クソ親父絡みの厄介事。

 半ば日課となっていた、コーラルとの手合わせのお陰で剣の腕は鈍っちゃいないのは助かる。

 

(オレの世界みたいに事が進むなら、多分後一年と少しで"あの日"が始まる)

 

 深く傷つけるのではなく、浅く切り裂き敵の戦闘力を奪うことを目的としたモノへと技を修正していく。

 

(戦いは避けられない、ギアンのやろーが暴力的に奪いに来るんだから。

 フェアはきっと、それに最後まで立ち向かう)

 

 流れるような連続攻撃を試し終わり、敵を切り替える。

 剣の軍団「将軍」レンドラー。

 頑強な鎧を纏う大男を打ち倒すため、呼吸を整え剣を深く構える。

 あの時は一人じゃ手も足も出なかったが、今ならきっと。

 

(あの時みんなに助けてもらったように、今度はオレが皆を助けるんだ!)

「でりゃぁぁっ!!」

 

 構えた剣を木人形に向かって解き放つ、

 一瞬の静寂が訪れ、木人形がゆっくりと真っ二つにくずれる。

 

 切れ味に満足していると、後ろに気配を感じ振り返って見ればそこにはフェアが居た。

 

「脅かすなよフェア、剣を勝手に使ったのは謝るから」

 

「え、いや、それは別に良いんだけど……」

 

「なんだよ歯切れが悪いな」 

 

「ライって、本当に料理人?」

 

 呆れたようなフェアの物言いに、オレは肩をすくめて答えるしかできなかった。

 

 ……

 

「さてと、さっさと朝飯作っちまうか。

 それから日雇いの仕事とか探して日銭を稼がねぇとな」

 

 あの後仕入れの時間が近いこともあってフェアは市場に出かけて行ったおかげで、質問攻めから逃れることが出来たのはラッキーだな。

 

「あるものは使っていいとか言ってたし、オムライスを作って野菜のスープと……」

(そういや、グルメじいさんに会った時に作ったのもこれだったな。

 重ねた経験によって料理の欠落を埋める……なんてな)

 

 昔を懐かしみながら鍋を振るっていると、扉が開く音が聞こえてきた。

 

「早かったなフェア、今仕上げてるからもーちょい待っ」「誰よあんた!!!」

 急な大声に慌てて鍋をひっくり返しかけるも何とかこらえてみせる。

 

 ご近所迷惑を気に求めない大声、やけに偉そうな物言い。

 こんな朝早くにこの宿に来るやつは、アイツらしかいないよな。

 

「お前たちか……リシェル、ルシアン」

 

 幼馴染の昔の姿に思わず感極まってると、お嬢様は指を突きつけて宣言してきた。

 

「どっ、泥棒よ! 捕まえるわよルシアン!」

「危ないよねえさん、グラッドさんとか呼ばないと……」

「そんなもん待ってられないわよ! 突撃ーっ!」

 

(ああ、お前はそういうやつだよな……)

 

 どこから出したのか縄を持って突撃してくるお嬢様に、どうすることも出来なかった。

 

 ────────────────────────

 

「今日もありがとね、ミントお姉ちゃん、オヤカタもーっ!」

 

「いってらっしゃい、フェアちゃんお仕事頑張ってね」

「ムイッ!」

 

 蒼の派閥所属の召喚師、ミント・ジュレップ。

 いつもお店で使う野菜を頼んでいるお姉ちゃんと、

 その護衛獣、オヤカタに手を振って宿へと戻る道を歩いていく。

 

 ミントお姉ちゃんお手製の野菜に胸を躍らせ今日の予定を振り返る。

(今日の野菜ばっちり美味しそうかも♪ 

 これなら考えてた新メニューに使ってみて、それからあのライをぎゃふんと言わせて見せるんだから!)

 拳を強く握りしめリベンジに燃え上がっていた。

 

(……それにしても、今朝のアレ)

 

 

 ……

 朝早くのこと、

 初めての泊まり客が気になって早く起きてしまい。

 折角だから起こさないように掃除していたら、窓から外に出て裏へ行くライの姿が見えたのだ。

 

 気になって後をつけてみれば、よくわからない呼吸をしながら準備運動しているのが見えた。

 

(あれなんだろ、もしかしてストラのための息吹……?)

 

 なんで料理人がそんな事知ってるんだろ、一人でうんうん唸っていると。

 今度は置いてあった剣を拾って素振りを始めたのだ。

 

(あっ、それわたしの剣!)

 

 人の剣を勝手に使われたこともそうだが、剣を振るうなんて危なっかしいことを止めようとして……わたしは言葉を失った。

 

 流れるような剣捌きは力強く、それでいて滑らかだ。

 時折フェイントを交え、不意を突くように足で木人形を蹴り飛ばす。

 

 極めつけはわたしが全力で斬りかかっても刃が埋まるだけの木人形を、わたしの剣で真っ二つにしたのだ。

 ……

 

 

(仕入れの時間が迫ってたから追及出来なかったけど、あの常識外れっぷりは何なんだろう)

 

 なんだかどんどんダメ親父にダブって見えてきた、ライもやっぱり滝を切れるんだろうか、と

 答えの出ない考えを巡らせていたら宿についていた。

 

(考えてても仕方ないよね、まずはライの朝ご飯を食べて技術を盗むことから)

 気を取り直し宿への扉に手をかけ……

(そういえば、ただいまって誰かに言うのいつぶりだろ)

 

 変なことで緊張しながら扉を勢いよく開く。

「たっ、ただいま! 朝ご飯出来て……えええ──っ!?」

 そこには驚愕の光景が広がっていました。

 

「ルシアン止めるんじゃないわよ! あたしはこの泥棒をとっちめてフェアを助けるんだから!」

 いつも持ち歩いてる杖を振り上げ、襲いかかろうとしている幼馴染のリシェル。

 

「だから変だってねえさん、泥棒だったら無抵抗で縛られたのはおかしいと思うんだ!」

 その姉を止めようとしている、その弟のルシアン。

 

「昨日からこんなんばっかだなオレ……」

 何故か縄でぐるぐる巻きにされて床に座る、宿泊客のライ。

 

 しばらく呆気にとられた後、慌てて止めに入った。

 

 けどその時リシェルの言い放った「こんな所に泊まり客が来るわけないでしょ!」という台詞はあんまりだと思う。

 わたしは少し泣いた。




後5話くらいで本編開始予定です、続けられれば。
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