サモンナイト4 本編後ライがフェア世界に逆行 作:ライフェア好き
書き溜めていた分があったので書き直して投稿しました。
ライが鬼の皇子とその友にに出会った頃、
コーラルはミルリーフを連れて町外れの草原を歩いていた。
「コーラル見てっ、ここお花がいっぱい咲いてるよ!」
「走ったら危険、かと」
無邪気に走り回るミルリーフの面倒を見ながら、コーラルは自らの立ち位置を考えていた。
コーラルにとって親はライであり、家族とは仲間達の事だった。
その中でも自分は庇護される側の子供だった。
だからこそミルリーフという子供へ複雑な思いを抱いている。
守護竜の生態は特殊だ。
自らの子は分身体であり、子育てとは自らの継承。
歴代の守護竜に多少の差異はあれど本質のみに限れば一匹で生まれかわり、一匹で受け継いでいく完結した存在。
環境的にも生態的にもコーラルという種に連なる存在は居ない。
「みてみて、お花で輪っかができたよ!」
「……うん、上手かと」
草原に横並びで座り、野花を摘み花輪を一緒に作る。
薄桃色の髪に白い輪を載せて微笑むミルリーフへコーラルは頭を撫でて応える。
最も自らに近しい存在に対しコーラルは自らを兄と定義して接していた。
そうした主な理由が実際に兄である父への憧れが多い事は否定できない。
「えへへ、コーラルあったかーい」
「お日様のおかげ、だよ」
体を寄せてくるミルリーフの背中をゆっくりと撫でる。
兄としてコーラルは時間が許す限りミルリーフに付き添い続けた。
もしもミルリーフが負けん気の強い男の子だったりしたら反感を買うかもしれないが、
ミルリーフは構われれば構われるほどに喜ぶ素直な性格なのも合わさり二人の距離は縮まっていった。
「ねえねえ、もっとあっちに行こうよう!」
「それはダメだよ。皆に遠くまではダメって言われたでしょ?」
今居る平原は街の外れにある場所であり、この場にはコーラとミルリーフの二人しか居ない。
(お父さんが信頼されてる、だけじゃないよね……)
本来なら護衛として付く他の御使い達がこの場に居ないのは、
別世界とは言え守護竜であるコーラルへのセイロンからの信頼と気遣いだろう。
(街の外までいいと言うとは思わなかったけれど)
守護する側として忘れじの面影亭から離れるのはあまり良くないと思ってしまうが、
かつての自分の面倒を見るにあたり、コーラルはワガママを聞く立場の苦労を知りつつあった。
「えー、どうしてもダメ?」
甘え上手な女の子、自分にはなかった子供らしさが兄心を刺激する。
こちらを信頼しきったミルリーフの立ち振る舞いにコーラルは弱かった。
「……分かった、ボクから離れないで」
「わぁい♪コーラル大好き!」
子犬がじゃれつくように近寄り小さな手を繋いでくる。
けれど締めるところは締め、ミルリーフへの警告を忘れない。
「危険と感じたらすぐに逃げる、それを約束して……」
「あ、ちょうちょさんだ!待って〜」
「ボク……良い子だったかもしれない」
かつての自分はここまで家族を振り回していただろうか、等と振り返っていると蝶々を追いかけていたミルリーフが足止める。
「あれ?」
何かを探すようにあたりを見渡してから、スンスンと可愛らしく鼻を鳴らし始めた。
「どうしたの?」
「なんだかフシギな匂いがする。
懐かしいような、初めてのような」
ミルリーフが匂いと称しているのは魔力のはず、
ライによればかつての自分のようにミルリーフも遺産の匂いを辿って御使いを見つけていたはずだ。
(そうなると該当するのは……)
時期的にズレてはいるがもしかしたらクラウレの可能性がある。
御使いの裏切り者であり、最強の戦士。
過去の世界では他の御使いを一人で相手取るほどの強者だった。
「もしかして、遺産の匂い?
それならお父さん達を呼びにいかないと……」
万が一クラウレがいた場合は一人では守り切れないかもしれない。
今の自分なら負けるつもりは無いし、ミルリーフを逃がしきる自信はあるけれど危険だ。
「ううん、ぜんぜん違う、でもすごくすごく気になるの。
見に行っちゃだめ?行きたいよう」
「あんまり遠くはダメ……だけど」
子供を預かってる身としては許すのは良くない、
ただ謎の魔力が気になるのは確かだ。
コーラルは自分を器用な方だと自負してる、
至竜として恥ずかしくない程度には武力と魔力の両面に精通しているつもりだ。
(ミルリーフが感じてる匂いをボクは感知出来ていない、
この子だからこそ感じれる何かがある?)
ミルリーフは過去のコーラルより魔力の扱いに特化していた。
今の力が制限されているコーラルより信頼できるのは間違いない。
「……分かった、案内して」
「うんっ!」
ならば確認すべきだ、世界の差異により何かが起きてる場合。
過去の経験からでは対処できない可能性がある。
ライとコーラルにとって最も警戒すべきはその差異だからだ。
(武具はある、召喚石も……うん、大丈夫。
竜としての力を隠してもミルリーフを守りきれる……かと)
頭の隅で状況を整理しながらミルリーフに手を引かれ、徐々に街から離れていく。
暫く歩き続けていくも、ミルリーフは一向に歩みを止めない。
「ミルリーフ、これ以上はお父さん達を呼ばないと……」
街から大きく離れていき、コーラルが流石に止めようとしたその時。
「あっ、あそこに誰か倒れてるよ!」
「!?、早く助けに行こう」
踏み固められた道から外れた所にうつ伏せで倒れている人影を見つけ慌てて駆け寄る、
近づけばすぐに分かったが一人……、しかも子供だ。
「ミルリーフ気をつけて、周囲に悪い人がいるかも知れない……。
ボクがこの子を診るから辺りを見渡してほしい、かと」
「うんっ、えっと、ママに持って行ってって言われたお薬出すねっ」
街外れで子供が倒れているなんて尋常ではない、はぐれ召喚獣に襲われた、賊に襲われた、もしくは罠……。
コーラルは警戒しながらも子供の手を取る。
(……え?)
そこまでしてようやく気がつくことが出来た。
幼い体に青い髮、旅装備はなく傍らに落ちている身の丈に合わぬ長い槍。
そして見た目からは想像が出来ない程の魔力、人にしか見えないように偽装された変身能力。
何よりも隣にいるミルリーフに近く、そして異なる馴染みある匂い。
(驚愕……かと)
周囲を再度見渡すも、他に人影も気配もない。
軍団が待機していることも、ギアンの策略でもない事を再確認した。
「……どうして?」
状況を整理すると取り巻きも居ない、何かの罠でもなく。
セイロンの話していた連れ去られたはずのミルリーフの片割れが手の届く場所で倒れていた事になる。
「その子大丈夫?怪我してない?」
不安そうに覗き込むミルリーフにハッとし、改めて体を確認するも怪我はないようだ。
ならば一体……そうコーラルが考え込む事数秒。
ぐぅ~~~、と間の抜けた音が響く。
「腹……へった……」
本来交わる事のなかった、三匹の竜の邂逅としてはあまりにも締まらない出会いだった。