サモンナイト4 本編後ライがフェア世界に逆行   作:ライフェア好き

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第4話 流れコックと、弟と 【本編前】

「…………」

 オレが召喚されてからしばらく経った。

 

「………………」

 フェアの朝飯を作った後、町へ行き仕事を探すのが日課となりつつある。

 

「…………釣れねぇ」

 客なんだからと言う理由で宿を手伝うことは拒否されてしまい、荷物運びや護衛でなんとか宿賃を稼いでいる。

 

「全く、これっぽっちも……」

 その合間の息抜きにと水道橋公園に釣りに来たが、結果は空のバケツが物語る。

 

(前は入れ食いだったんだけどな、しばらくやってなかったから腕が鈍ったか?)

 

 糸を垂らしたらすぐにフィッシュ! して一気に釣り上げてた忙しい釣りと違う、ゆったりとした時間に退屈してきた頃。

 

「えいっ、えい! えーい!」

 元気のいい声と、剣を振るう音が聞こえてきた。

 

「ん……ありゃ、ルシアンか?」

 片手剣と盾を身に着け、教本に乗ってるような型を何度も試すルシアン。

 

(構えはいいけど、剣に振り回されて肝心の姿勢が崩れちまってる。

 アイツこんなに下手だったっけ、子供の頃の動きなんて全然覚えてねぇな)

 

 折角会えたんだし挨拶くらいしようと、釣れない釣りを切り上げて近づく。

 

「おーいルシアン、稽古中か?」

 

「うわぁ!? ラ、ライさん?」

 

「そんなに驚かなくてもいいだろ、そこでたまたま釣りしてたんだよ」

 

 ほら、と釣り竿を見せるが妙にルシアンの歯切れが悪い。

 

「まさかお前、まだこの間のこと気にしてるのか?」

 

「はい……フェアさんのお客さんとは知らずに、本当にごめんなさい」

 

「いいって別に、この前もポムニットさんと一緒に謝りに来てくれたろ」

 

 ブロンクス家のメイドであるポムニットさんは、こちらの世界でも変わらず姉弟に振り回されてるようだった。

 余談だが、お詫びにと菓子を貰ったが、相変わらずの美味さに料理人としてのプライドが傷ついた。

 

「でも……」

 

「気にすんなって、それより剣を振ってみろよ。

 暇してるし少しなら見てやるから」

 

「えっ? ライさんって、盾も使えるんですか?!」

 

「いや、仲間にうまいやつが居たんだよ」

 お前のことだけどな、ルシアン。

 

 ────────────────────────

 

「ど、どうですか……」

 

 一通りの練習を終えた後にルシアンは不安そうに聞いてきた。

 

「構えは悪くない、教えられた通りに動こうとするのは大事だからな」

 

「よかったぁ」

 

「けど、足場が悪くなると途端に駄目になってるぞ。

 小石を踏んだり、足の位置を間違えた瞬間剣に振り回されてる」

 

「うぅ……」

 

(コッチのルシアンなら絶対に姿勢は崩さねぇもんなぁ、お陰でつけ入るスキが殆ど無かったしよ)

 

 適当な木の棒を拾ってきて、落ち込むルシアンの盾を突く。

 

「ほら構えてみろ、ゆっくり打ち込むから姿勢を意識して受けてみてくれ」

 

「……はいっ! お願いします!」

 

 軽く打ち込んでいくと、直線的な動きなら問題なく受け流せている

(けどフェイントを交えると急に姿勢が崩れるな、盾に意識を集中しすぎている)

 

 疎かになっている剣を持つガントレットを強く叩く。

 

「盾はあくまでも手段の一つ、盾と剣を両方意識するんだ」

 

「っ、はい!」

 

 注意してからは不格好ながらも盾で防ぎ、剣で攻撃してくるようになった。

 

「いい調子になってきたな、けど今度は力の入れ過ぎだ!」

 

「えっ、うわぁ!?」

 

 力み過ぎで固まっていた盾を思いっきり蹴り飛ばす、未来のルシアンなら蹴りに合わせて力を抜き、完璧に受け流すだろう。

 しかし今のルシアンは力を抜いて衝撃を逃がすことができず、そのままふっ飛ばされて地面に転がる。

 

(やっべぇやりすぎた!)

「大丈夫かルシアン!?」

 

 仰向けに倒れてるルシアンへ慌てて駆け寄る。

 

「イテテ……、大丈夫です」

 

「悪い、やりすぎちまった。立てるか?」

 

 目を回してるルシアンの腕を掴んで起き上がらせると、ルシアンは見るからに落ち込み始めた。

 

「フェアさんの言ってたとおりだ、ライさんって強いんですね」

 

「本当に悪かった、ついアイツを相手にしてる気分になっちまって」

 

「アイツって、さっき言ってた盾の上手な人の事ですか?」

 

「あー……、その通りだよ」

 

「ライさんの知り合いで、盾が上手ってことはきっと凄い人なんですね」

 

 その誰かさんを浮かべてるのか、尊敬の眼差しを浮かべてるルシアン。

 その姿を見ていたら、つい口が滑っちまう。

 

「アイツもお前と同じ年頃の頃は、同じように剣に振り回されてたんだよ」

 

「そう、なんですか?」

 

「おう、その後オレのせい……というか、色々大変な事件に巻き込まれてな」

 

 その中でアイツは強くなっていって、四方から囲まれても敵の攻撃を捌き確実にカウンターを決めていった。

 

「軍学校に行っちまった後はあんまり会えてないけど、今も元気にやってんのかなぁ」

 

『軍学校で学びながら。

 もう一度確かめてみようと思うんだ、

 この気持ちが、現実に負けないくらい強いものなのかどうか』

 

 軍学校に行く前のルシアンの言葉を思い出す、一番強くなったのはアイツなのかもしれない。

 

「ライさん……」

 

「悪い湿っぽくなったな、続きをやるなら付き合うけど。やるか?」

 

 空気を変えようと木の棒を一度振り、ルシアンに向き直る。

 

「はい! お願いします!」

 

 力強い返事と真っ直ぐな瞳、

 夢見る少年を思わせる瞳だった。

 

 ────────────────────────

 

「大丈夫かルシアン、傷んだりしたらすぐに言ってくれよな」

 

「だ、大丈夫です」

 

 結局ルシアンが動けなくなるまで練習は続き、気がつけば夕暮れ時になってしまった。

 

「頼まれたからってやりすぎたな、すまん」

 

「ライさんは止めてくれたのに、僕がお願いしたせいですから……、こうして背負ってもらってますし」

 

 擦り傷と泥まみれの服装でブロンクス邸に帰しては、テイラーさんが雷を落とすのは想像に難しくない。

 わざわざ虎の尾を踏むこともないだろうと、一度「忘れじの面影亭」に寄って手当てをする事にしたのだ。

 

(まだ子供だからかもしれないけど、ルシアン軽いな)

 かつて背中を預けあった仲間がこんなにも軽いってのが、妙に気恥ずかしい。

 

 ルシアンも疲れからか、道中話すわけでもなくあっという間に宿へ続く田舎道へたどり着いた。

 

「ねぇ、ライさん」

 

「ん、どうした?」

 

 あとは登るだけ、息を整えたところに声をかけられる。

 

「いつまでトレイユに居るんですか?」

 

「いつまでって、そりゃ……決まってないな」

(事件が終わるまでって決まってるわけでもねぇし)

 

 よくよく考えればなんでコーラルが送り出したのか、正確にはわかっていない。

 オレが勝手に事件が終わるまで、フェアたちを助けようと決めただけなんだ。

 

「じゃあ、もしライさんが良ければなんですけど。

 町にいる間、時間があればまた稽古をつけてもらっていいですか……?」

 

「…………」

 

 思わず呆気に取られてしまった、

 こんなにもボロボロになっても熱意が冷めたりしてない。

 強くなることひたむきで、一生懸命チャンスにしがみつこうとする。

 普段は弱気なのに土壇場では根性を見せる、頼もしい親友の姿をルシアンの中に見た。

 

(いや、そうだよな……)

 

 誰もオレを知らない世界だと勝手に思い込んでた。

 それこそ子供みたいに寂しがってた。

 

(お前はそこに居るんだよなルシアン)

 

 たとえ世界が違うとしても、皆が居る。

 

「あ、あのライさん……やっぱり駄目ですか?」

 

「っ……、悪い悪いちょっとぼーっとしちまってた。

 モチロン、お前のやる気が続く限り付き合うぜ。親友(ルシアン)

 

 思えばこの日、俺はようやくこの世界の一人になれた気がする。

 忘れじの面影亭の変わった客「ライ」として。




ルシアンは絶対に諦めないし、守ろうとしたらひたむきなキャラだと本編15話や、相談イベントで感動した思い出があります。
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