サモンナイト4 本編後ライがフェア世界に逆行 作:ライフェア好き
「せーのっ!」
「ムーイムイッ!」
ミントねーちゃんの護衛獸、オヤカタの掛け声に合わせて鍬を振り下ろす。
青空が広がる快晴の昼時、オレは畑を耕していた。
「ふぅ、とりあえずこんな感じかな」
「ムイッ!」
「おう、オヤカタもお疲れ様!」
飛んできたオヤカタとハイタッチを交わし、首から下げていたタオルで汗を拭う。
(まさかオレがミントねーちゃんの畑を耕す事になるなんてなぁ)
たまにフェアの代わりに野菜を取りに行ったり、差し入れの野菜料理を届けている内にこちらの世界でも親交を深めることとなった。
蒼の派閥所属の召喚師、ミント・ジュレップ。
研究の一環で野菜を育てており、あっちではずっと世話になりっぱなしの頼れるねーちゃんだ。
「ライさんお疲れ様です、オヤカタもお疲れ様」
「ありがとな、ミントねーちゃん」
「もうっ、そんなに年齢が離れてるワケでもないんですから。
お姉ちゃん呼びはちょっと……」
照れくさいのか、困った顔で笑うねーちゃん。
(そう言われても長年のクセが抜けねぇんだよな)
「フェアとかに聞いてるせいか、ついな……気になるなら直すよ」
「大丈夫ですよ、手伝ってもらってますし、楽な呼び方で構いません」
冷たいお茶を手渡してくれたミントねーちゃんに、気になったことを聞いてみた。
「そりゃ助かる。
でも畑の手伝いって、耕しただけでいいのか?」
「はい、この後の作業は私の研究一環でもありますし。
オヤカタも手伝ってくれますから」
「ムーイッ♪」
「ねー♪」とオヤカタとアイコンタクトをするねーちゃん。
この世界でも相変わらずベストパートナーって感じだ。
そんな時、ふと思い出したように聞かれた。
「そうだ、ライさんはこの町に慣れましたか?」
「あー、慣れたっていうか、元々馴染んでると言うか……」
「元々?」
「あ、いやこっちの話。何だかんだで長くいるからそれなりにはな」
元々ずっと住んでました、なんて言えないので慌ててごまかす。
「それもずっと、フェアちゃんの宿に泊まってますしね。
この間グラッドさんとも話してたんですよ、家を借りたりしないのかなって」
グラッドの兄貴そんな事話してたのかよ、
会話のきっかけにされてるのは何だかムッとする。
「オレも考えてはいたんだけど……、
稼いだそばから宿に消えていくからな、金が貯まらねぇ」
「そうなんですか……」
いつかのグルメ爺さんみたく、町に家を構えて。
今度の課題はこれじゃぁー! とかしたい気持ちはあったが、
フェアによる宿代の徴収で一向にまとまった金が貯まらない。
「それに、出ていったら出ていったでフェアの奴がうるさくなりそうだしな。
毎日家まで来られたりしたら大変そうだ」
「ふふっ、あの子達ならやりかねないですね」
町外れだから許されてるものの、町中で毎日あの騒がれ方をしたらご近所に大迷惑だろうな。
そんなことを二人同時に考えたのか、
どちらからともなく、笑い始めた。
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「……ってな話があったんだけどよ、オレをダシにしてミントねーちゃんと話すのってどうなんだよ兄貴」
たまたま非番だというグラッドの兄貴に誘われ、町中の安飯屋で先日の恨みをぶつけていた。
「ぐ……。その件に関しては俺が悪いかもしれないが、お前こそねーちゃん呼びはなんなんだよ、ミントさんに失礼じゃないか」
「オレはいいんだよ、ねーちゃんに直接許可もらったんだから。
それに兄貴こそ聞いてみりゃいいじゃん「今日からミントと呼んで良いでしょうか?」ってさ」
「おっ、俺はべ、別にそんな事は!?」
「相変わらず分かりやすいな、ミントねーちゃんに気が付かれてないのが奇跡だって」
骨の付いてる肉を手に取り齧り付く、
野菜っ気のない男同士の飯が目の前の卓に広がっている。
「俺の事はいいだろ! お前こそ兄貴呼びはやめろよ、そこまで年齢離れてるわけじゃないし
お前みたいなデカイ弟分を持った覚えもない」
「無一文で流れ着いたオレに親切にしてくれたからな、尊敬と感謝を込めてる」
態とらしく深々と頭を下げ、敬いを主張してみる。
それを見たグラッドの兄貴は呆れながらため息をついた。
「はぁ、まぁそれはいいとして。本題に入るぞ」
「おう」
姿勢を正して気合を入れ直す、
オレにとってはボロの出せない話し合いだ。
「お前がこの町にいる理由は理解してるし、これまでの生活を見てそれが本当だって事も信じてる」
(そりゃよかった)
綱渡りでしかなかった初日、兄貴が納得してくれなきゃ追放されててもおかしくはない。
「しかし何でそれをフェアに直接伝えないんだ?
あの子達、特にリシェルによく聞かれるから誤魔化すの大変なんだぞ?」
町中でたまに視線を感じると思ったら、フェアだったりリシェルだったりする。
ルシアンは稽古をつけ始めてたから減ったが、
リシェルは特にオレへの興味を隠そうとしない。
「あー、明確な理由があるって訳じゃないんだけど、
あの子に親父関連の話を振りたくねーんだよなぁ」
「それはなんとなくわかるが……」
「今フェアの親父が何してるかオレも知らないけど、覚えてる限りだとめぼしい結果は出てないんだ。
親父さんはまだ探してる最中で、妹もまだ苦しんでる……なんて遠回しに伝えることになっちまう」
「特に今は親父への反発心が原動力の一つだ、
そんな女の子にデリケートな家族の話をするわけにもいかないだろ」
そもそもクソ親父についてあまり知らない、
向こうでも相変わらず関わりがほとんど無いままだ。
(あの親父は今頃どこを旅してるんだろうか、
もう『ラウスブルグ』で守護竜と会っていたりするんだろうか)
聞いた話だとエリカのために、万病に聞く守護竜の生き血を求めてラウスブルグに向かい、そこで……
(考えなかった訳じゃない、オレがラウスブルグに行って。
ギアンのやろーを止めるのにクソ親父に加勢するってのを)
一人で倒せるなんて自惚れちゃいないけど、
デタラメに強いクソ親父となら、コーラルの……本当の親を救えるんじゃないかって。
しかし、それを実行するには大きな問題があったのだ。
(場所を知らねーんだよな……、いつ頃にクソ親父が来るかも知らねーし)
オレが知ってるラウスブルグは、船としての機能で町の上空に来た時だけ。
色々あって動かすのを手伝ったりしたが、この時点の場所は知らないままだ。
「オレも大人になったって事なのかねぇ、はぁ……」
「急に何言ってるんだよ、子供たちが羨ましくなったのか?」
「ちょっとな、昔は出来るかどうか考える前に行動してた気がしてさ」
昔だったら「コーラルの親を助けられるかもしれないんだぞ!」って啖呵切って飛び出していたかもしれない。
けど、今はまず失敗した時を考えちまう。
オレが旅をしている間にこっちが襲われて、フェア達が……とかさ。
深くため息をつくオレに、兄貴は肩を叩いてくれた。
「それが子供の出来ることって事じゃないか?
俺らは大人として、子供たちができない事をすればいいさ」
(グラッドの兄貴……)
この人はずっとこうだ、オレが迷ったりした時
いつも背中を押してくれ、無謀であれば止めようとしてくれる。
「兄貴……やっぱ大人だな」
オレがしみじみと尊敬の眼差しを向けていると。
「その尊敬の眼差しをやめてくれよ……」
兄貴困って呆れていた、
よく考えりゃ同年代にこんなこと言われても困るってことにオレは帰ってから気がついた。
次回で過去編を終える予定です、
このライが助けられなかったあの人たちが登場。
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