サモンナイト4 本編後ライがフェア世界に逆行   作:ライフェア好き

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次回本編開始です。


第7話 まだそこに居る、大切な人 【本編前】

 町での仕事が一段落して、何となく散歩をしていた夕暮時のこと。

 

「おーい、ラーイっ」

 

(フェアの声か?)

 

 通りから聞こえてきた声に振り向くと、

 こちらへ手を振るフェアと、そのフェアに支えられながら一人の男性が近づいてくるのが見えた。

 

(……えっ)

 

 オレはその男性から、目を逸らせなくなってしまった。

 

「先生この人がライ。

 わたしの宿の宿泊客なの」

 

「なるほど、昔の教え子が世話になってるようだね。

 私塾で先生をやらせてもらってるセクターです」

 

 握手を求められたことにすら一瞬気が付かず、慌てて応じる。

 

「よ、よろしくお願いします」

 

(セクター、先生……)

 

 オレやフェア、リシェルとルシアンが通っていた元軍人で今は私塾の先生。

 その正体は、敵の一軍"鋼の軍団"を率いる"教授"ゲック・ドワイトの手で改造された融機強化兵。

 

 そして……

(オレは先生の助けになれなかった)

 

 ────────────────────────

 

 あの日、あの時オレは先生を引き止めたくて

 

「なんでだよ先生! なんでそんなになっても復讐しなくちゃいけないんだよ!」

 

「ライくん退きなさい、私はヤツをこの手で……」

 

 何もできなかったんだ。

 

 ────────────────────────

 

 気がつくと、青い瞳が俺の顔を覗き込んでいた。

 

「……ライ、どうしたの?」

 

 先生と決別した日のことを思い出してしまい、固まっていたところをフェアに心配されてしまう。

 

「いや、なんでもない。昔の知り合いに似てて驚いたんだ」

 

 なるべく平静を装ってなんとか答えるライ。

 

(結局あの後、オレは先生を見つけることができなかった)

 

 あの時、オレは一体何ができたんだろう。

 

「……ごめん先生! ちょっと急用を思い出したからまた今度!」

 

「えっ?」

 

 そんな風に考えていたせいか、フェアの言うことが一瞬分からなかった。

 

 唐突な行動なのに、セクター……先生はすべてわかってる顔で見送り始める。

 

「ああ、行ってくるといい。私の用事はまた今度で構わないからね」

 

「うおっ、フェア、腕を引くなって!?」

 

 オレはそのまま引きずられるように町の外へ運ばれていった。

 

 ────────────────────────

 

「ここは……」

 

 荒れ果てた森林の奥に存在する、濁った水溜まり場。

 けれどオレには、別の意味を持つ大切な場所。

 

(忘月の泉、母さんがいる……)

 

 オレやフェアの母親、妖精メリアージュ

 あの人がいる世界へと通じる唯一の場所がこの泉だ。

 

「ちょっと見た目はアレだけどさ、ここに来ると落ち着くの」

 

 フェアはまだ知らない、母親が本当は生きていることを

 腕輪を通して見守ってくれていて、娘のことをいつも想っている事も。

 

 自分が妖精とのハーフである"響界種"であることもだ。

 

「みんなドブ池なんて呼ぶけどさ、本当は泉なのよ」

 

 ちゃんとした名前で呼ばれないことに腹を立てながら解説してくれる。

 

「ああ、知ってるよ」

 

 母さんとの思い出の場所、家族みんなで遊んだ思い出の眠る場所だから。

 

 だからこそ、フェアは無意識にここを選んでくれたのかもしれない。

 

「ねぇ、ライ。なんでそんなに悲しそうな顔しているの」

 

「っ!?」

 

 思わず顔に手を当ててしまう、顔に出てた? いつから、バレてる? 

 

「セクター先生を見てから、ううん。

 時折すごく悲しい顔をするの」

 

 もしかしたら、フェアはオレの事をよく見ているのかもしれない。

 以前までときおり訪れる寂しさや、これから起こる事への不安が強く残ってたから。

 

 だからこそ、オレはフェアに知っておいて欲しくなった。

 

「……昔さ、オレがお世話になった先生が居たんだ」

 

 話し始める、オレの事を。

 

「オレも親父がいい加減なやつでさ、色んな人たちのお陰でなんとかやってこれた」

 

 これからフェアへ起きること、その一つを。

 

「先生はその一人だった、本当に尊敬していたんだ。

 けど、当たり前な話だけど先生にも色んな事情があってさ」

 

 あの日の衝撃。

 

「最後に見た姿は、復讐に燃える姿だった」

 

 あの日の別れ。

 

「こんな話聞かされても困るよな、悪い」

 

 オレはお前に、知ってもらいたいのかもしれない。

 

 暫く考え込んでから、フェアはオレに聞いてきた。

 

「ライはさ、その先生のこと嫌いになったの?」

 

「いや、ただ……悲しかった。

 だからたまに思っちまうんだ、もう一度同じような事があったとしてら、オレは何ができるんだろうって」

 

 そしたらフェアは「何だそんなことか」と背中を叩いてきた。

 

「平気よ! だって沢山後悔して、どうすれば良かったのか考えたんだから! 

 ライはライらしく、また頑張れるでしょ?」

 

 あまりにも単純明快な答え、子供らしい真っ直ぐな答えに思わず笑っちまった。

 

「ははっ、何だよそれ」

 

「それに気になったり、思うことがあるならトコトン最後までやり通せばいいんだから!」

 

 答えは単純で、こんなにも簡単だった。

 

「そうだよな、やるからにはトコトンやらないとな!」

 

 あの日、一度決別してしまったポムニットさん。

 

 あの日、姿を消してしまったセクター先生。

 

 あの日、敵として散っていったクラウレ。

 

(今度こそ絶対に、みんなで笑ってみせる。

 ギアンもエニシアも、きっと道があるはずだから)

 

 

 

 星が降る夜は、すぐそこまで迫っていた───。




このライはポムニットさん未加入、セクター先生行方不明、クラウレ死亡という道をたどったという設定でお願いします。
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