サモンナイト4 本編後ライがフェア世界に逆行 作:ライフェア好き
急に評価が増えたと思ったら日間ランキングに乗ったようですね驚きました。
第8話 星の降る日、二人の朝
お父さんとエリカが旅に出る日。
わたしはずっと泣きじゃくって、行かないでってお願いしていた。
「きっと、すぐに帰ってくるからよ!」
そう約束してくれたお父さんは、ずっと帰ってこなかった。
すぐに帰ってきてね、そう何度もお願いしたのに。
だからわたしは寂しくて、ずっと泣いていたら、
温かい手がわたしの頭を撫でてくれた。
驚いて振り返ると青い瞳と、目が合う。
優しい顔の男の人だった。
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「……っ!?」
「え……、夢??」
(今更なんであんな夢……、っていうか途中から変な夢になってたし)
悪夢というか、なんとも言えない夢を思い出してぼんやりしていると。
「おーい! おっきろー!!」
外から幼馴染の大きな声が聞こえてきて、窓から外を覗いてみる。
「やめなよねえさん。そんな大声出したら近所迷惑だってば」
「は? 何言ってんのよ、よーく見なさいルシアン。
こんな町外れのどこに、迷惑かけるご近所があるわけ?」
「ライさんとか……」
「いいのよライなんて、どうせこの町の誰よりも早起きしてるような奴なんだから」
「はぁ……」
「起きろ起きろーッ! フェアー!」
大声を出してわたしを起こそうとするリシェル、それを止めようとするルシアンの二人だ。
「やれやれ……、起きてるよーっ!
今から出ていくから、ちょっと待ってて!」
二人に向かって勢いよく返事をして、わたしは部屋を飛び出した。
軽く身だしなみを整えながら入り口へ迎えに行くと、
いかにも不機嫌ですって顔のリシェルと爽やかなルシアンが待ってた。
「おはようフェアさん」
「いつまで寝てんのよ、ライも居ないみたいだし」
「起きてたってば! ライは昨日泊まってなかったの」
この宿唯一の宿泊客の男性、ライは先日から護衛の仕事で町を出ている。
「えーっ! じゃあライとアンタの料理対決見れないじゃないのよ!」
「見るっていうか、食べに来てるんじゃ……」
ライの技術を盗むために朝食作りをお願いしていたのが、
何時からかわたしも隣で作るようになり、幼馴染の二人が食べ比べるのが日常になった。
「別に誰も審査してくれなんて頼んでないのに」
「い、いいじゃない! みんなが起きる前に抜け出してきてるんだから、朝ごはん食べられないのよ!」
ぐぅ~、と勢いのあるお腹が減ったアピールをしてくるリシェル。
「今日はライが居ないから、食材を取りに行ってからね」
呆れながらも約束すると、二人はハイタッチをして喜び始めた。
「やった♪ 味で言えば断然ライだけど、そうこなくちゃ」
「僕はフェアさんのご飯の方が好きだなぁ、慣れ親しんだ味って感じでさ」
「ほら、二人共行きましょ?」
おーっ! と元気のいい返事が帰ってきた。
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「いよっ、悪ガキども! 今日は珍しく三人で仕入れか?」
「悪ガキなんてひどいじゃないの、グラッドお兄ちゃん!」
三人でまだ静かな早朝の町を歩いていると、見回りをしているグラッドお兄ちゃんが声をかけてくれた。
「ははっ、お前はすぐにむくれるからな。
ついついそう言いたくなるんだぞ?」
「むー!」
わたしそんなにむくれてるだろうか、今度誰かに聞いてみよう。
「朝から見回りご苦労さまです、グラッドさん」
「ご苦労な事よね、この町じゃたいした事件なんて起きっこないじゃん」
リシェルは相変わらず、この平穏な町が退屈でしかたないって態度を隠そうともしない。
「それがそうでもないんだな。
あのライが行き倒れてたのだってちょうどこの時間くらいだったし、手は抜けないもんさ」
「へー、あたし初めて知ったかも……」
「あの時はびっくりしたなぁ、一年くらい前だよね」
わたしとお兄ちゃんは腕を組んであの時の事を思い返す、
こんな大事件が一年に一度起きていれば十分刺激的だと思うんだけどなぁ。
「そういや今日はライの奴居ないんだな」
「そうそう、今仕事で町から出てるんだって」
噂のその人は、行き倒れないためにもお金稼ぎに勤勉で宿の主としてはとても助かります。
そんな事を考えていると、グラッドお兄ちゃんが「そうだ」と手を叩く。
「なら今日はお前の宿の方も見回っておくか、
いつもはライが居るから、奥まで回っていないからな」
こういう時の気配りが、町で人気の駐在兵士になる秘訣なのだろうか。
わたしはお兄ちゃんの気遣いに感謝しつつ、手を振って先へ急ぐことにした。
「ありがとう、グラッドお兄ちゃん。また後でね!」
「ああ、またな」
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「さてと、朝の水やりはこれで終わりだね」
「ムイッ!」
畑の見回りが終わったらしいミントお姉ちゃんとオヤカタが、空に向かって体を伸ばしていた。
調子良さそうな一人と一匹に、わたし達は元気よく挨拶する。
「おはよう! ミントお姉ちゃん!」
「おはようございます」
「オヤカタもおっはよー♪」
「おはようフェアちゃん、リシェルちゃん、ルシアンくんも」
「ムイッ、ムイッ!」
勝手知ったる他人の家って感じで、
わたしはお野菜が置いてある場所に向かい、
ルシアンは畑の手伝いを進んで始めるし、
リシェルなんかオヤカタとハイタッチしている。
「お野菜は今日も冷やしてあるからね」
「どれどれ……、今日のすっごいいい感じかも!」
これでも一人の料理人、食材の目利きにはそれなりに自信がある。
そんなわたしから見ても中々お目にかかれない良さなのだ。
「でしょでしょ? それライさんに手伝ってもらった畑で採ったの。
土を研究した成果が出てきたみたいなのよね」
「ライって、畑の手伝いまでしてたんだ。あの人も暇よねー」
リシェルはそんな風に言うが、料理に手伝いに仕事とあの人も意外に忙しいのは黙っておく。
「あはは、お仕事の一環としてね」
「色々の世界の植物を育てるのが、ミントさんの研究課題ですもんね」
「同じ召喚師なのに、あたしのパパとはぜんぜん違うんだもんなぁ。
口を開けばお金だ、利益だもん、ほんとサイテー!」
リシェルは昔からお金の勘定ばかりしているオーナーと仲が悪い。
ルシアンが間に入るとは言え、反抗娘は筋金入りだ。
「仕方ないわよ。私のいる「蒼の派閥」は召喚術で知識を探求する組織だけど。
リシェルちゃんのパパのいる「金の派閥」は召喚術でお金を稼ぐのが仕事だもん」
「それは分かってるけど、あたしはキライだもん。何かとお金お金ってさ」
「ねえさん……」
話すのはいいんだけど、手伝ってくれるって言ってくれたのに
わたしは一人で重い野菜を抱えていることにちょっと腹が立ってきた。
「二人共手伝ってよー!」
「今やるってば!」
リシェルはプンスカ怒りながらも少し持ってくれる。
「もう、喧嘩しちゃだめだぞ?」
「わかってるって」
「そうだ、畑のこと、ライさんによろしく伝えておいてくれるかな?」
「うんわかった、じゃあねミントお姉ちゃん!」
美味しそうな野菜を三人で分担して持ち、宿への道を急ぐ。
……仕方ないんだけど、やっぱりわたしが一番力持ちなんだよなぁ。
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夢を見た、暗い海の中を漂うような夢。
その中から声が聞こえてくる。
『……を、助けて』
誰かの名前を必死に呼んで、誰かに助けを求める、悲痛な叫び。
オレはなんとかしてやりたいけど、ココでは何も出来ない。
『任せて……』
けれどその声を助けるようにして、別の声が聞こえてきた。
忘れもしない、この声は、オレの……。
その時、視線を感じた。
獲物を見定めるような、舐めるような視線を。
『お願い、お父さん……』
おぼろげな黒闇の中、異物がオレを視た。
狭間から覗き込むように現れた、白い怪物が。
『アイツを、やっつけて……!』
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「コーラルっ!?」
オレは寄りかかっていた大樹から飛び起きるように目を覚ます。
「え……、夢、か?」
あたりを見渡して頭を落ち着かせる。
(そうだ、オレは護衛の仕事の帰りに野宿して……)
今はトレイユの町へ帰る途中の道だ。
「今の夢、ただの夢じゃないよな……」
助けを求める声も、コーラルの声も、怪物の視線も。
すべてが生々しかった。
「アレなのか、コーラル……」
青空を見上げ、夢を再度思い返す。
「オレをこの世界に召喚された理由は、これなのか?」
晴れ渡る空は、今日の夜空が美しいものになると予感させた───。
分かる人には分かるアレのためクロスオーバータグをつけさせていただきました。