ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか 外典   作:ミストラル0

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明けましておめでとうございます(今更)

遅くなって申し訳ありません。
今年から更新曜日は金曜に変更となります。


十一話 特訓と強化

ユーリヤが八雲に武器の扱いを習い始めて1ヶ月が経過した。

最初はちょっとした自衛手段のつもりで始めたこの特訓だが、今ではユーリヤ1人でもダンジョンリザードくらいは倒せる程に成長していた。

 

「はぁ、はぁ………やった!」

 

「うんうん、もうこの階層は大丈夫そうだし、もう少し段階上げても大丈夫かな?」

 

槍を使い1人でダンジョンリザードを撃破したユーリヤに、他のモンスターを露払いしていた八雲は感心しながら特訓の段階を上げると告げる。

 

「え?」

 

その言葉にユーリヤは1人でダンジョンリザードを倒した事への喜びを忘れて顔を強張らせる。

この1ヶ月、ユーリヤが行なった特訓はと言うと………

 

・早朝、外壁の上で素振り、型稽古で武器の扱いを身体に叩き込む。(たまに模擬戦)

・外壁の上をランニングで一周し、基礎体力を上げる。

・ダンジョン帰りに浅い層でモンスターと1対1の戦闘。

 

これを週2の休み以外ずっと続けていたのだ。

と言っても、八雲の経験からユーリヤの体力を見極めており、過度な特訓はせずに適度に体力の限界まで疲弊させてから休息と必要な栄養バランスの取れた食事を摂取させており、この1ヶ月でユーリヤのアビリティは一般の冒険者と比較しても早い勢いで上昇しているそうだ。

ユーリヤが顔を強張らせたのは特訓の段階を上げる前に行われる模擬戦の事を思い出しての事である。

訓練用の木製の武器とはいえ、現在のユーリヤの実力を測る為に放たれる鋭い一撃をモロにもらい朝食を吐いた事は苦い思い出だ。尚、その日以降、朝食は朝練後に取るようにしている。

 

「という訳で明日は休息日だから明後日の朝は模擬戦な」

 

「ふぇ〜」

 

手にした槍を杖のように持ってへたりこみそうなを抑えてユーリヤはその日も何とか地上へと帰還したのであった。

 

******************

 

「それでユーリヤちゃんがグロッキーだったのね」

 

「そういう事です………そろそろ飯できるんで皿用意してもらっていいですか?」

 

「は〜い」

 

ダンジョンから出て魔石の換金を済ませた八雲達はそのままアフロディーテファミリアのホームへ向かい、アフロディーテにその日の報告をしつつ八雲はその日の夕食を作っていた。そこにはユーリヤの姿もある。

 

「いつもすみません………」

 

「2人分も3人分も大して手間は変わらねぇから気にすんなって、これも特訓の内なんだからさ」

 

そう、先程も説明した通り食事も特訓の内という事でここ1ヶ月程はユーリヤもアフロディーテファミリアのホームで夕食を食べているのだ。

 

「今日は市場でデメテル様から戴いた白菜と豚肉で作ったミルフィーユ鍋と胡麻入り米粉パンだ」

 

「ミルフィーユ鍋?」

 

「白菜と豚肉を交互に挟んで層にした鍋さ。味付けも薄めにしたから必要ならポン酢なり何なりでお好みで」

 

「わかりました」

 

「は〜い」

 

******************

 

その翌日、休息日ということで八雲は武器屋でメンテを依頼していた武器を受け取りにバベルを訪れていた。

今はユーリヤの特訓がメインの為、メインウエポンになりつつある脇差等の武器をメンテに出している。

 

「おーい店主、メンテに出してた武器は戻ってるか?」

 

「おぉ、お前さんか。いくつかは戻っておるが、一部の武器はここでは出来んので製造元に頼んであるからそろそろ戻ってくると思うが」

 

「そっか、なら待たせてもらうか」

 

そう言ってカウンターの前で待つ八雲に店主が声を掛ける。

 

「それにしてもお前さんがあの“首狩り族”とはな」

 

「ここまで噂になってんのかよ」

 

「あの脇差を使っておる上にここの常連なんじゃ、職人共の情報網に引っ掛からぬ訳がなかろうて」

 

「それもそうか」

 

そんな事を話していると、新たに人が店にやってきた。

 

「おう店主、頼まれていた物の修繕が済んだぞ」

 

「来たか………それにしても、お前さんが持ってくるとはな」

 

「ハッハッハ!なんとなく今日は手前が行った方が良い気がしてな」

 

その人物は褐色の肌に黒の長髪で和装の眼帯を着けた女性であった。持っている包みの紋章から彼女がヘファイストスファミリアの者である事は判ったが、残念ながらオラリオに来て日の浅い八雲にはそれが誰なのかまではわからなかった。

 

「うん?そこの少年は?」

 

「お前さんが持ってきた包みの品の持ち主じゃよ」

 

「おー!お主が例の!」

 

店主から八雲の事を聞くと、女性は自身の直感が八雲の事を指していたと察する。

 

「目利きの良い面白い奴がいるとファミリアでも噂になっているぞ」

 

「それはどうも」

 

「色々と訊いてみたい事はあるが、せっかく本人がいるのだから直接渡すとしよう」

 

そう言うと、女性は包みから八雲がメンテを依頼していた武器を取り出し八雲へと手渡した。

それらを受け取った八雲はその1つ1つを手に取りちゃんと修繕されているかを確かめていく。

 

「ほぅ、整備した者の前でそれを確かめるか」

 

「ええ、自分の命を預ける武器ですからね。失礼かもしれませんが、自分の目で確認しないと安心出来ませんから」

 

「本当に噂通りの面白い奴だな」

 

そして、八雲は脇差を手に取ると妙な違和感を感じて直ぐ様刀身を抜き放つ。

 

「俺が頼んだのは修繕であって、強化じゃないんだけどなぁ………金払えって言われても困るぞ、これ」

 

素人目には以前のものと寸分の違いも判らないが、八雲の目にはそれが打ち直し、強化がされているのが判ったのだ。

一方、店主の男は驚いていた。おそらくは目の前の女性、椿・コルブランドが、地上に降りてきた神々の次に並ぶ鍛冶師である彼女が行なった悪戯を手にした時の違和感だけで見抜いたのだから無理も無い。

 

「ぷっはははは!お前は本当に面白い奴だな!」

 

それは椿も同じで、ちょっとした悪戯のつもりで以前と寸分違わぬ造りで強化し打ち直したものを八雲に一発で見抜かれたのだ。これが笑わずにはいられない。

 

「ああそれと、それを打ち直した者からの伝言だ。『打ち直しは勝手にやった事だから代金は不要だ』と」

 

「それは良かった。今の稼ぎじゃこいつに釣り合う代金は払えねぇって」

 

椿の伝言と称しての言葉に八雲は安堵する。

その後、八雲と椿は武器談義に花を咲かせ、しばらく話した後に別れたのだが………

 

「あっ、名前訊くの忘れてた」

 

八雲はあれだけ意気投合した椿の名を訊ねるのを忘れていたのであった。




椿が名乗らなかったのはワザとです。
次回からお話が色々と動き始めます。
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