ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか 外典   作:ミストラル0

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お待たせしました。十四話です。


十四話 食料庫の異変と対人戦

食料庫へ身を隠した八雲達は回復薬で回復したり、簡単な止血等の手当をしていた。

 

「念の為にと魔力回復薬(マインドポーション)買っといて正解だったわ」

 

「そろそろ説明して下さい」

 

先程の戦闘で魔力弾として消耗した魔力をディアンケヒトファミリア製の魔力回復薬で回復する八雲にユーリヤは説明を求める。

 

「………こいつは俺の持つスキルを効率的に運用する為の装備みたいなもんだ」

 

「スキル、ですか?」

 

「【魔力放出】って言って、読んで字の如く魔力を指向性を持たせて放つスキルだ。こうやってな」

 

そう言って八雲は手を銃のように構えて指先から魔力を飛ばして壁に小さな穴を空ける。簡単に言うならレ○ガンをイメージである。

 

「こんな風に指や掌からも出せるんだが、威力や消費する魔力が安定しなくてな。それをコントロールする為の道具がこの双銃って訳」

 

「なるほど、今まで隠していたのは双銃(それ)を狙ってくる人を避ける為ですね?」

 

「それもあるが、双銃(これ)だけあっても弾は出せなくとも付属してるブレードが不壊属性(デュランダル)で切れ味もやべーんだわ………だから上層で使うのは色々悪目立ち過ぎてな」

 

「あ〜、確かにそれは目立ちますね」

 

魔力弾を放つ光景に、先程の戦闘でオークをあっさり切り裂いた切れ味に不壊属性とくれば上層で活動するルーキーが持つには目立ち過ぎる。もし先のスキルの説明を受けていなければユーリヤとて魔力弾を撃てるのでは?と勘違いした事であろう。ユーリヤですらそうであるならば、他の同業者(冒険者)に狙われても無理は無い。

 

「改宗したらユーリヤにも教えるつもりではあったんだが、緊急事態とはいえこんな風に教える事になるとはな」

 

「仕方ありませんよ、普通は他ファミリアの人間にステータスやスキルを明かすなんてしませんから」

 

そうこう話している間にある程度回復した2人は改めて現状の確認をする。

 

「にしても随分と悪辣な怪物進呈だな、これは」

 

「そうですね。普通ならその群れを全滅させれば済む筈なのに次から次へとモンスターが集まってくるなんて」

 

「例のモンスター寄せの道具を使われた訳でも無いんだろ?」

 

「あんな悪臭がする物を使われたのなら犬人族の私が気付かない訳無いじゃないですか!」

 

「となるとスキル、魔法の線か」

 

「多分【呪詛】ですね。おそらくモンスター寄せの」

 

「となると、効果切れを期待するのは無理だな。上に戻るルートに張ってやがる事も考えると、連中は俺達を確実に始末したいみたいだな」

 

「けれど、食料庫(ここ)があって助かりましたね」

 

「ああ、でも………」

 

「何故モンスターは食料庫に入って来ないのでしょうか?」

 

「もしかしたら俺達が受けた依頼(クエスト)と関係があるのかもな」

 

まるで何かを恐れているようなモンスター達の姿から異変の原因は食料庫(ここ)にあると推理し、一応調査してみようと思ったその時だった。

 

「ユーリヤ」

 

「はい、人の気配です………臭いから推察するにさっきの人達かと」

 

「ちっ、痺れを切らして自ら来やがったか」

 

食料庫に自分以外の気配を察知してそれぞれ武器を構える。そこに現れたのはやはり先程の冒険者4人であった。

 

「おやおや?随分と殺気立ってるじゃないか。せっかく様子を見に来てあげたってのに」

 

「怪物進呈仕掛けておいてそれはねぇだろ?」

 

「だから悪いと思って来てやったんじゃないか」

 

「(チッ、見るからに軽剣士2人に盾役(タンク)1人、それに術師1人か………術師の女が【呪詛】の使い手だろうな)」

 

相手の装備からパーティー構成を割り出し、改めて自分達の不利を察し密かに舌打ち八雲。

 

「(おそらくレベルも全員格上(レベル2以上)………最悪だな)」

 

「姐さん達、もういいッスよね?」

 

「ええ、構いませんわ、リークル。そこの泥棒猫の娘(・・・・・)諸共やってしまいなさい」

 

「ヒャッハー!」

 

メリエルの許しを得て湾曲した刃を持つショーテルのような双剣を手に八雲達に襲い掛かってくるリークル。それに続くようにヴェルガー、グロンも得物を手に向かってくる。

 

「ああっ!そういう事かよ!」

 

八雲はメリエル達の言葉から何故ユーリヤが狙われたのかを知り、苛立ちながらもショーテルを受けようとせず躱しつつ、ヴェルガーの茨のような片手剣は確実に弾き返し、岩を削って作ったような斧剣を振るうグロンには足元へ投擲用のダガーを投げて足止めを行う。その立ち回りは彼らの持つ武器を理解しているようであった。

 

「ショーテル、フランベルジュに斧剣………厄介な武器ばっか揃えやがって」

 

「コイツ、私らの武器の特性を理解してやがる」

 

「それでも!レベル差!人数差!そして経験の差!それは覆しようがねぇだろ!」

 

3対1でも辛うじて戦闘になっているのは八雲が3人の武器の性質を知っているからであり、ユーリヤとも分断されている事からもより不利な状況に立たされているのは明らかだ。

 

「ヤクモさん!っ!?」

 

「余所見とは随分と余裕ね、貴女の相手は私でしょ?」

 

一方のユーリヤはメリエルと1対1で相手は後衛ではあれどレベル差は2もあり、槍の間合いに踏み込む前に短文詠唱の魔法によって足を止められていた。

 

「くっ」

 

「こうして見ると益々あの泥棒猫………いえ、泥棒犬を思い出しますわ」

 

八雲との特訓のおかげで何とか魔法の直撃は躱しているものの、回復薬で傷は治したが体力は回復しきっていないユーリヤの息は次第に乱れていく。

 

「ぐあっ!」

 

それは八雲も同じで、連戦での疲労からか動きが鈍ったところをグロンの一撃でガードこそしたものの食料庫の壁へと勢い良く叩きつけられてしまう。

 

「これで追いかけっこも終いだな?」

 

そう言ってリークルがトドメを刺さんとゆっくり八雲に近付いていこうとしたその時………

 

「ぐっ」

 

突如、起き上がりかけていた八雲が胸を押さえて蹲った。

 

「(何だ、これ………まるで何かが俺の内側(・・・・)から生まれ出そう(・・・・・・・・)としているような………っ!?)」

 

「何だ?こいつ、勝手に苦しみ出したぞ?」

 

その様子にリークルも何かがおかしいと歩みを止めた。だが、異変は八雲だけではなかった。

 

「………皆、あれ」

 

滅多に声を出さないグロンが何かを察知して食料庫の奥を指差す。暗がりで見えはしないものの、そこには明らかに何かが(・・・)蠢いている気配がする。そして、それは食料庫の地面を突き破り姿を現す。

 

「あれは………植物型のモンスター?」

 

「で、でもこの階層にそんなモンスターいたかよ!?」

 

「モンスター達の異常………食料庫に近付かないモンスター………」

 

その原因とも言える謎の植物型モンスターの出現と八雲の異常。

 

「一体、何が起こっているの!?」




食人花が何故この階層にいたのかはまた何れ解説します。

敵パーティーの武器
ヴェルガー→茨状のフランベルジュ
リークル→ショーテルの双剣
グロン→斧剣(Fateのヘラクレスの武器のイメージ)
メリエル→紫の魔宝石がついた杖

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