ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか 外典   作:ミストラル0

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今回からロキファミリアとの遠征編となります。
それなりに独自解釈が含まれますのでご了承下さい。


二十六話 遠征と小竜

遠征………それはパーティー単位ではなく、小隊*1から連隊*2の規模でダンジョン下層攻略に挑む事をオラリオでは遠征と呼んでいる。

大手のファミリアならこの人員をほぼ自前で用意するのだが、零細ファミリアや中堅ファミリアだと複数のファミリアで遠征隊を編成するんだとか。

大手ファミリアでも場合によっては専門職のファミリアから人員を借りる事もあるらしく、ロキファミリアの場合、必要ならヘファイストスファミリアの協力を借りる事が多いそうだ。

 

「今回はまだレベルの低い団員達に中層以降の遠征に慣れさせるのが目的の遠征だから最下層までは行くつもりは無いよ」

 

「つまり遠征訓練って事ですか」

 

「そうなるね」

 

ロキファミリアは人員育成にも力を入れているらしく、時々低レベルの団員達と監督役の高レベル団員での簡易遠征等もさせて経験を積ませているんだそうだ。

 

「今回は君が協力してくれるから多くの団員を連れて行ける。本当に感謝しているよ」

 

「それでも下級の団員にはキッチリ荷物持たせてるのは俺に頼った遠征を覚えて楽させない為ですよね?」

 

「君がロキファミリアに改宗してくれるなら別だけどね」

 

「うん、ほんとアンタ結構スパルタだな」

 

「はは、よく言われるよ」

 

フィンとそんな話をしていると、各員の準備が整った様だ。

 

「コホン………では諸君、今回は本格的な遠征では無いが、このような大規模な遠征に不慣れな者も多い遠征だ。経験のある者はフォローを、無い者は今回の遠征での経験を糧として欲しい。それと今回は彼の協力もあって荷物に余裕のある遠征となった。このような恵まれた環境で遠征が行える事にまず感謝の意を示したい」

 

遠征開始前のフィンの演説で改めて八雲の紹介が入り、今回遠征に参加する団員達の視線が八雲に集まる。

 

「では遠征を開始する!」

 

遠征が始まると、事前に決められた班毎に順次ダンジョンへと向かっていく。八雲も自分の班員達と共に自分の班の順番を待つ。

 

「そういえばちゃんと自己紹介してなかったッスね。自分はラウル・ノールド。2つ名は【超凡夫(ハイ・ノービス)】ッス」

 

「私はアナキティ・オータム。2つ名は【貴猫(アルシャー)】。よろしくね」

 

2人とも17歳でレベル3に到達したロキファミリアの2軍の中枢メンバーとフィンから聞いており、八雲もその人柄から信用できる人物だと思った。

 

「こちらこそ、村上八雲だ。極東の出だから八雲の方が名前になる。【首狩り族】なんて呼ばれてるが好きに呼んでくれ」

 

他にも八雲と同じレベル2のメンバーが数人おり、それが八雲の班である。

種族はヒューマン、猫人(キャットピープル)、エルフと中々に多種多様な種族が集まっている。

 

「(他の班には犬人(シアンスロープ)兎人(ヒュームバニー)にドワーフもいたな)」

 

これだけの多種族を束ねるフィンのカリスマに改めて感心していた。

 

「あっ、自分達の順番ッス」

 

「行きましょう」

 

こうして八雲の初めての遠征がスタートした。

 

******************

 

流石にトップファミリアの遠征とあってその進行はかなりスムーズであった。

 

「もう10層か。最短ルートを使ってるとはいえ速いな」

 

「危険なモンスターは先に行った1軍の人達が処理してくれてるからね」

 

どうやら先遣隊が間引きや天然武器(ネイチャーウェポン)を処理してくれているらしい。

 

「今日は18層で野営して、翌日からは大樹の迷宮で狩りだったか?」

 

「今回の遠征は遠征に慣れる事と、中級冒険者に経験値を貯めさせる事が目的ッスからね」

 

ここまでの道中で班員達とある程度打ち解けた八雲は時々襲ってくるオークをラウル達に抑えてもらっている間に背後から首を刎ねたりしていた。

 

「それにしても手慣れてるッスね」

 

「伊達に【首狩り族】なんて呼ばれてるだけあるわ」

 

「ソロだとあんまし1体に時間掛けられないからな。効率考えてたらこういうスタイルになったんだよ」

 

「自分は鎧があるッスからあんな軽業師みたいな事は出来ないッスよ」

 

「それにあのスキルもあるしね」

 

「武器も持たずに組み付いてどうするのかと思えば、その場でロングソード取り出して首をズバッと、だもんね」

 

「ヤクモが声かけてくれなかったら噴き出した血で血塗れだったぜ」

 

最初はそのアサシンばりの戦法にドン引きしていたものの、慣れというのは怖いもので、この1日で彼らも八雲の戦闘スタイルに慣れてしまっていた(毒されたとも言う)。

そんな時であった。

 

「い、インファントドラゴンだ!」

 

12層を通り掛かった際に他の班の班員からインファントドラゴンの出現の報が響く。

 

「私達も加勢に行きましょう!」

 

アナキティの一声で一同が現場に駆け付けると、既に数名の負傷者が出ていた。

 

「ナミは負傷者の救護を!他はインファントドラゴンを引き付けるッス!」

 

「了解よ!」

 

「わかった………でも、引き付けるだけじゃなく別に倒してしまっても構わんのだろう?」

 

ラウルの指示に八雲が某赤い弓兵のように軽口を言えば一瞬だけポカンとした顔をするが、直ぐに他のメンバーも獰猛な笑みを浮かべる。

 

「言うじゃない」

 

「負けてられねぇな!」

 

それはその場にいた他の班のメンバーも同じようで、負傷者を運んでいる以外の無事な団員がそれぞれの得物を構える。

 

「たかがトカゲ1匹で俺らを止められると思うなよ!」

 

この時の事をこの戦闘に参加したメンバーは後にこう振り返る。「あの戦闘は妙な安心感があった」「指示に従って動いてたら戦闘が終わってた」「インファントドラゴン相手にあの損害で済んだとかビックリ」等と突発的な階層主級との戦闘だったにも関わらず余裕のある勝利だったと。

 

******************

 

フィンside

 

インファントドラゴンの出現。その報を聞いて念の為に後方に控えていた僕が現場に駆け付けた時にはその戦闘は既に佳境を迎えていた。

 

「これは………」

 

問題のインファントドラゴンは四肢から血を流し、右眼をロングソードで穿かれ失明しており、ボロボロになっていた。

 

「ラウル!ブレス来るぞ!」

 

「ならもう一度!」

 

インファントドラゴンがブレスを吐こうとすればラウルが手に持った瓶をその口に放り込み、それがブレスと反応して口の中で爆発する。後に聞いた話では、アレはヤクモが持っていた火炎瓶というもので、ドワーフの火酒を詰めた瓶を布で栓をし、火を着けて投げて火酒の酒気に引火させて爆破するものだそうだ。ガレスが聞けば嘆きそうな道具だ。

口の中でそんなものが爆破すれば如何にドラゴンと言えどただでは済まず、割れた瓶の破片で口の中を切ったのか血を流しながらよろめく。

 

「そのまま寝てろっ!」

 

そこにヤクモが飛びかかり、【宝物庫】から取り出したと思われる大型のハンマーで殴りつけ転倒させる。

 

「今だ!かかれ!」

 

「「「「おう!」」」」

 

それを逃さず、団員達が次々とインファントドラゴンの頭部を攻撃し起き上がる暇を与えない。

 

「コイツで止めだ!」

 

そこにハンマーをしまい再び飛び上がったヤクモが空中で新たな武器を取り出した。それは斧のような形をしているが、柄は短く、その代わりに斧の先端までの部分も分厚いまるで大剣のような不思議な形状をした武器だった。それを降下する勢いに合わせてインファントドラゴンの首に叩き付け、両断してしまった。

 

「やっぱ質量×高さ×速さだな」

 

「おいおい!インファントドラゴンの首まで斬っちまったぞ、コイツ」

 

「【首狩り族】の2つ名は伊達じゃないね」

 

「いや、これは偶々狙い易いとこに首があったからで」

 

インファントドラゴンという強敵を共に倒したせいか、多くの団員達から賞賛を受けるヤクモを見て、彼を先にロキファミリアにスカウト出来なかった事を悔やみつつも、縁を結べた事を幸いだと思う。

そして、浮かれている団員達を引き締めるべく声を掛けた。

 

「喜ぶのは良いけど、ここはまだダンジョンだというのを忘れてないかい?」

 

「「「「団長!?」」」」

 

「見てたなら手を貸してくれても良かったろうに………」

 

僕がいた事に今更気付いた団員達が驚く中、ヤクモだけはそれに気付いていたようで、そんな抗議をしてくる。

 

「いや、僕が来た頃にはほとんど決着が着いていたからね………手柄を横取りしたくないしね」

 

その後、幸いにも今回の遠征を脱落するような負傷者は出なかったので、負傷した団員達の手当てをしてから僕が引率として彼らを率いて皆の待つ18層へと向かった。

 

side out

*1
30〜60人

*2
500〜5000人




インファントドラゴン、お前は良い奴だったよ………

という訳で後半はインファントドラゴン戦でした。
最後に八雲が使ったのは椿が試しに作った試作品のスラッシュアックスモドキです。
作ったは良いが、重量が重量なので普通の冒険者では持てず、八雲も力が足りないのであのように空中で取り出して降下の勢いで叩きつけるぐらいしか使い道が今の所ありません。
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