ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか 外典   作:ミストラル0

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八雲の初ダンジョンアタック開始です。




色々調べながらの投稿なので不定期になるかもしれませんが、よろしくお願いします。


三話 初ダンジョンアタック

八雲達がオラリオに到着した翌日。『何をするにもやはり金』ということで、八雲はダンジョンに潜る事にした。

 

「さて、初めてのダンジョンアタックになる訳だが………」

 

ギルドのアドバイザーからはギルドが仲介する他のファミリアの冒険者を雇う事を勧められたが、八雲の所属するアフロディーテファミリアは稼ぎ手が八雲しかいない零細ファミリア。そんな彼らがそんなお金を払えるはずもなく、八雲はソロで挑む事にした。

 

「ソロプレイとなりゃ、無理は禁物だな………そう思うと、これはありがたい」

 

先程、バベルの前でミアハという神に出会い、今日が初ダンジョンだと言ったら餞別にと回復薬(ポーション)を二つも貰ってしまった。ギルドの職員に確認したところ、神ミアハは頻繁に無料でポーションを配り歩いており、とある理由で借金を抱える彼のファミリアの財政は火の車なんだとか。無論、ポーションの効果は本物で、ミアハの施しに救われた冒険者も決して少なくは無いのだとか。

 

「ホント、神話並みに慈悲深いのに不用心な神様みたいだな」

 

八雲が知る神話では神ミアハはその優れた医療の力で父であるディアンケヒトの嫉妬から殺された神である。これもギルドの職員に聞いたのだが、やはりディアンケヒトファミリアの主神であるディアンケヒトに嫌われているらしい。

 

「俺の知る神話の登場人物が似たポジションでその神様のファミリアにいるって事か」

 

調べてみればもっと面白い事がわかるかもしれない、と八雲はダンジョンアタック以外の面白味を見つけたところで長い螺旋階段を降り切り、ダンジョンの一層目に到達した。

 

「まずはこの一層の把握から始めますか」

 

まず八雲が行ったのはダンジョンの把握だ。このダンジョンはRPGのような地形が変化するランダムダンジョンでは無いそうなのでマッピングとモンスターの出現傾向などの確認が重要となる。

 

「おっ、早速か」

 

八雲が見つけたのはダンジョンの定番であるゴブリン。

見た目は尖った耳と角をした緑の小人のようだが、長く伸びた爪や牙を持ち恩恵を持たぬ大人程度ならばアッサリ殺してしまう残忍さを持つ。恩恵を得たばかりの眷属が油断して複数体に挑み殺される事も珍しくはない。幸い、八雲の前に現れたのは一体だけであった上に、まだ八雲に気付いた様子も無い。

 

「上層で出る最初のモンスターが人型ってのがやらしいよな」

 

人間は自身に近しい形をしたものへの攻撃を躊躇い易い。いくらモンスターとはいえ、それを殺す事を躊躇う冒険者も少なくは無いだろう。

そんな事を考えつつも、八雲は地上で拾っていた小石を壁に向かって投げて音を立ててゴブリンの気を逸すと、ゴブリンの背後から一気に距離を詰めてその喉をナイフで切り裂きゴブリンを仕留め、その魔石を回収する。

 

「うん、思ったよりは気分は悪くならないな」

 

一度死んで眷属として蘇生したせいか、それともゲーム等でそのようなモンスターを倒していたからか、八雲はそういう嫌悪感は感じなかった。

 

「これならとりあえずは問題無さそうだな」

 

その後も八雲ははぐれのゴブリンや二足歩行の犬のようなモンスターであるコボルトを倒し魔石を回収していき、余力のあるうちにダンジョンから帰還した。

 

******************

 

その日の八雲の魔石の換金額は1,000ヴァリス程であった。ギルドの職員に聞けば初めてにしては多い額だと言われた。その際、アドバイザーにはどうやってそんな額を大した怪我も無く稼げたか聞かれたのだが、素直に八雲が背後から暗殺者ばりの方法で狩っていたと言えば絶句された。尚、レベル1の冒険者の平均収入は五人パーティーで一人頭5,000ヴァリスなんだそうな。

ホームへの帰り道、八雲は少し考え事をしていた。

 

「やっぱ武器は早めにちゃんとしたのを買った方が良さそうだな………いざとなれば双銃を使うけど、あれは絶対に目立つ」

 

人目が無い事を確認した上で八雲は何度か双銃を試してみたのだが、ギルドで支給されたナイフが所詮は支給品であると思い知らされた。支給品のナイフではゴブリンを仕留めるにも背後から組み付いて喉を切り裂く必要があったにも関わらず、双銃は付属するブレードで斬ればゴブリンの身を容易く切断し、魔力弾に至っては一発でゴブリンの頭部が吹き飛んだ。そのあまりのオーバーキルっぷりには流石の八雲も浅い層での双銃の使用は自重しようと思った程だ。また、帰りに武器屋を覗いてみれば、今使っているナイフより少し上等なもので3,600ヴァリス、防具は一式揃えようとすれば5,000ヴァリスは下らない。

 

「今日より長く潜っても拾える魔石には限界があるしな、かと言って質のいい魔石は下の層まで行けないと無理だしなぁ」

 

そんな事を考えていると、屋台が立ち並ぶ通りでとある貼り紙が目に付いた。

 

怪物祭(モンスター・フィリア)?」

 

「なんだいにいちゃん、怪物祭を知らないのかい?」

 

「ああ、先日このオラリオに来たばかりで………教えてくれると助かる、あっ、そのジャガ丸くんとかいうのも二つ貰うよ」

 

「毎度あり!」

 

ジャガ丸くんの屋台をしている女性から買い物ついでに怪物祭について聞き出した八雲はジャガ丸くんを齧りながら一度ホームへと戻った。

 

******************

 

「お帰り」

 

「ただいまっと、これお土産」

 

「おっ、これはジャガ丸くんではないか!」

 

帰った八雲はアフロディーテに帰還を伝えると、先程屋台で買ったジャガ丸くんをアフロディーテに渡す。

 

「もぐもぐ………ところでダンジョンはどうだった?」

 

「上の方じゃ安全マージンを取りながらだと装備の更新や手入れで稼ぎはほとんど消えそうだよ………装備はいざとなればアレを使うが、アレはかなり悪目立ちしそうだし」

 

「だね、私も少しオラリオを回ってみたけど、その双銃の価値は最低でも5億ヴァリスは下らないだろうね」

 

不壊属性(デュランダル)だったか?そんなもん付いてたら当然だろ」

 

気になって立ち寄った武器屋で他の武器を色々調べてみれば不壊属性付きの武器なんてレアモノは高値で取引されており、使った感覚からあの双銃は相当ヤバイ値打ちが付きかねない代物だった。それをレベル1の初心者が持っていたならば狙われるのはまず間違い無い。

 

「という訳でしばらくは装備の更新のために金策をしようと思うのだが」

 

「何か策があるの?」

 

「ああ、近々ガネーシャファミリアが怪物祭ってのを開催するらしいんだが、そこで一儲けしようとね」

 

「一儲け?」

 

八雲の言葉に首を傾げるアフロディーテだったが………

 

「その鍵はそのジャガ丸くんだ」




怪物祭が始まったのが原作の五年前なので今回の怪物祭は二年目のものと仮定しております。

次回、八雲がやらかします。

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