ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか 外典   作:ミストラル0

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ようやく原作………と言いたいとこですが、正確には原作少し前になります。
一応、今回は円盤1巻の特典短編の辺りになるのかな?


三十二話 白兎とバイト神

「今回も大漁だったな」

 

あれからまた1年が経ち、レベルアップ目前となった八雲。その日はメレンでニョルズファミリアの依頼を受けた帰りで、御礼に貰った大量の海産物を【宝物庫】に入れてホクホク顔でオラリオの門までやってきた。

 

「ん?八雲じゃないか………メレンからの帰りか?」

 

「ハシャーナさん。ええ、また大量に魚とか仕入れたんで後でそちらのファミリアにもお裾分けにいきますよ」

 

「そいつは助かる!ガネーシャ様も喜ぶだろう」

 

門番をしていたガネーシャファミリアのハシャーナに挨拶をしてから門をくぐると、後ろからトスっと誰がぶつかってきた。

 

「すっ、すみません!」

 

振り向くと、そこには10代前半だろうと思われる真っ白な髪に真紅の瞳をした兎を彷彿とさせる少年が慌てた顔をして頭を下げてきた。

 

「別に構わないさ………その様子からしてオラリオは初めてか?」

 

「は、はいっ!先程来たばかりです!」

 

聞けば育ての親である祖父の遺言でオラリオに冒険者になりにやってきたとの事。

 

「そうか、ならギルドまで案内しよう。受付嬢に言えばオススメのファミリアを紹介してくれるだろうし、ギルドの紹介があれば門前払いはほとんどないはずだからな」

 

「いいんですか?」

 

「丁度俺もギルドに依頼の達成報告をしなきゃならんのでな」

 

そう言うと少年は申し訳無さそうに八雲の後をついてきた。

 

「ところで少年、名前は?」

 

「ベル、ベル・クラネルです!」

 

「ベルか、いい名だ。俺は村上八雲。極東の出だから八雲が名前になる。八雲と呼んでくれ」

 

「はい、八雲さん!」

 

ベルを連れてギルドに向かうと、丁度顔見知りのハーフエルフの受付嬢エイナ・チュールがいた。エイナは八雲に気が付くと声を掛けてきた。

 

「あら?村上氏、依頼の報告ですか?」

 

「ああ、それと、門のところで冒険者志望の少年を見つけてな。案内してきたところだ」

 

そう言って後ろのベルをエイナに紹介する。

 

「べ、ベル・クラネルです!」

 

「ベルに基本的な事とオススメのファミリアでも紹介してやってくれ」

 

「いいんですか?村上氏のファミリアに入れるという手もあるんですよ?」

 

「と言われてもウチも俺1人の零細ファミリアだからな………新人の教育までは手が回りそうにないし」

 

「わかりました。ではベル君、こちらに」

 

「はい!あっ、八雲さんもどうもありがとうございました!」

 

「ああ、何かあったらアフロディーテファミリアを訪ねてくれ、手が貸せる範囲でなら力になるから」

 

「はい!」

 

そうしてベルと別れた八雲は別の受付嬢に依頼の達成報告をしてギルドを後にした。

 

***********************

 

その後、今まで稼いだヴァリスで建物を改修し、本拠兼食堂となったアフロディーテファミリアの本拠へと帰ってきた。

 

「いらっしゃいませ〜、って八雲さんか。おかえりなさい、八雲さん」

 

そう言って八雲を出迎えたのは食堂の従業員として雇っている非冒険者の一般人であるミリスというヒューマンの女性だった。

 

「ああ、ただいま………アフロディーテは?」

 

「アフロディーテ様なら奥でお客様とお話してましたよ?」

 

「そうか………おっと、忘れるとこだった。これ、メレンからのお土産」

 

そう言って八雲は【宝物庫】からメレンで買ったアクセサリーをミリスに手渡した。

 

「ありがとうございます!」

 

ミリスは元々は屋台時代からの常連客で、八雲がダンジョンに行っている時や怪物祭等のお祭りの時にちょくちょく手伝ってくれていた縁で半年程前にこの本拠の改修が済んだのに合わせて正式に雇う事になった。

食堂は場所が場所なのでまだ客は多くなく、屋台の頃の常連客が来る程度で、今でも屋台でメインストリートまで出向く事も少なくはない。なので従業員はアフロディーテを除けばミリス1人しかいないのだ。

 

「で、これはどういう状況だ?」

 

来客の対応をしていると言う事で、八雲がアフロディーテを訪ねて奥の本拠スペースに入ると、そこにはアフロディーテに向かって土下座姿勢のまま動かない1人の………いや1神がいた。

 

「それがね」

 

「八雲君か!八雲君にも頼む!ボクをここで雇って下さい!」

 

その神は黒いツインテールに白い服、そしてよくわからない青い紐のようなものを身に着けた竈の女神ヘスティアであった。

実はヘスティアはこの本拠に程近いヘファイストスファミリアが所有している土地にある廃教会に住んでいるご近所さんなのだ。

また、椿の依頼でヘファイストスファミリアに出入りしていた頃からヘファイストスに養われていたヘスティアとは顔見知りである。

 

「雇ってくれって、一体どうしたんですか、ヘスティア様」

 

「実は………」

 

聞くと、ヘスティアがいつもバイトしているジャガ丸君の屋台のおばちゃんが腰を痛めてしばらく屋台を休業する事になり、働き口を失ったヘスティアは同じくバイトをしている神であるタケミカヅチに助けを求めたところ、タケミカヅチからアフロディーテファミリアを訪ねてはどうかと助言を受けたらしい。ちなみに土下座はタケミカヅチに教わったのとこと。

 

「なるほど………」

 

「同じギリシャ圏の神だから手を貸してあげたいけど、八雲に無断でって訳にはいかなくて困ってたのよ」

 

ヘスティアと言えばクロノスの娘にしてゼウス、ポセイドン、ハデス、ヘラ、デメテルの姉でもあり、3大処女神としても有名な神である。

まあ、アフロディーテとヘスティアは叔母と姪の関係になるが、ギリシャ神話という事で色々察してほしい。

 

「お願いします!」

 

そう言って再び土下座するヘスティア。

 

「ああもう!そんな事しないで下さいよ!雇いますから!」

 

「本当かい!」

 

神に土下座されては堪らないと、八雲がそう言えばヘスティアは勢いよく顔を上げる。

 

「休みは週1の賄い付きで雇いましょう」

 

「ありがとう!八雲君!」

 

「但し!雇うからにはみっちり仕事を覚えてもらいますからね?」

 

「は、はい………」

 

こうしてヘスティアはアフロディーテファミリアの屋台と食堂で働く事となった。




という事でベル君とヘスティア登場。

後一話挟んで本編スタートとなる予定です。
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