ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか 外典   作:ミストラル0

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ヘスティアファミリアの事情が原作と少し異なりますが、原作の初めの頃とかを考えると、ベル君の年齢であの食生活は色々ヤバいですよね?


三十三話 ヘスティアファミリア

ヘスティアを雇い入れて数日が経過した。

窯の女神と言うのは伊達ではなかったようで、店の窯の扱いはお手の物。更には屋台での調理も直ぐに覚えて即戦力として活躍していた。

そして、その愛され系の容姿からウエイトレスとしてもすっかり人気になっていた。

そんな彼女ではあるが、自分のファミリアを持つという願望はあるらしく、時間を見つけては自身の眷属になってくれる冒険者を探して回っている。

 

「うぅ………今日もダメだった」

 

「新規ファミリアって結構厳しいんだよなぁ」

 

「そうね、ウチもまだ八雲しかいないもの」

 

そう、大半の冒険者は家族や伝手で既にファミリアが決まっているか、大手のファミリアに入ったりするのが普通である為に新興のファミリアに入りたがる者はほとんどいない。中〜大の規模のファミリアとなれば新人へのサポートも充実しているし、仕方のない事ではあるのだが………

 

「ヘスティア様って常識的なんだが、割とマイナーだしな」

 

「他の神があんなんばっかだしね」

 

ヘスティアはギリシャ神話でも割とマイナーな部類に入る女神。他の兄弟がゼウスとかポセイドン等の濃い面々である為、必然的に常識的な感性を持つヘスティアは影が薄くなりがちなのだ。

 

「弱気になってちゃダメだ!明日こそはボクの眷属になってくれる子を見つけてみせる!」

 

それでもへこたれないヘスティアを見て八雲は先日出会った少年(ベル)の事を思い出していた。

 

「(あれから見てねぇけど、無事にファミリアに入れたんだろうか?)」

 

八雲がオラリオに来た当初よりも幼い少年であった為に侮られたり、いい様に使われてはいまいかと心配になる八雲。

 

「(エイナ嬢の言うとおり、ウチで引き取っておくべきだったかもな………)」

 

そんな風に思っていたが………それが思わぬ形で再会する事になるとは、八雲も思ってもいなかった。

 

***********************

 

その翌日、昼間の勤務時間を終えたヘスティアがいつものように勧誘に出掛けて1時間程が経った頃の事だった。

その日、八雲はダンジョンへは行かず、夜の営業の為に店内の清掃をしていたのだが、そんな店の扉を勢いよく開きヘスティアが戻ってきた。

 

「八雲君!聞いてくれ!ボクにも眷属が出来たんだ!」

 

そう言ってヘスティアが連れてきたのは数日前に比べて少しやつれた顔をしたベルであった。

 

「えっ?ベル?」

 

「………八雲さん?」

 

「あれ?2人は顔見知りだったのかい?」

 

その後、八雲はベルから今までの経緯を聞いた。

あれから多くのファミリアの門扉を叩いた事。

その多くが門前払いか無理な条件を言ってあしらうような事ばかりであったこと。

エイナから勧められたファミリアも同様だった事。

そして、路銀が尽きて宿を出る事になり、縋る思いでファミリアを回ったものの全滅し、途方に暮れていたところをヘスティアから勧誘されて眷属になると約束した事。

ここまで聞いて八雲はやはり自分のところで入れてやるべきだったと後悔していた。

 

「………ところで、大手のファミリアには行かなかったのか?ヘスティア様には悪いが、ロキファミリアとか訪ねていれば試験ぐらい受けさせてもらえたと思うんだが」

 

ロキと聞いてヘスティアがムッとした顔をするが、その後のベルの発言でその場にいた者が絶句する事になる。

 

「いえ、エイナさんから紹介された1つだったので訪ねてみたんですけど………門番の人に『お前なんてヒョロヒョロしたガキがロキファミリアに入ろうなんておこがましいんだよ!』と門前払いされまして」

 

そう、ベルはロキファミリアからも門前払いされていたのだ。

門番からすればヒューマンにしては小柄で、如何にも田舎から出てきた装備も何も無い元農民と思われるベルがロキファミリアに入ろうというのが気に入らなかったのだろう。

だが、ロキファミリアの面々とそれなりに交友がある八雲からしたら門番の独断専行にも程がある行為であった。

 

「………ベル」

 

「は、はい」

 

「とりあえずヘスティア様の眷属になるんなら恩恵を刻んでもらって明日はギルドでファミリアの発足と冒険者登録をしてこい。ヘスティア様も明日はこっち休んでいいのでベルと登録に行ってきて下さい。いいですね?」

 

「はい!」

 

「わかったよ」

 

「その後は戻ってきて1日休む事………絶対に1人でダンジョンには行くな」

 

「ど、どうしてですか?」

 

「ベル、お前はこの数日ろくにちゃんとした飯も食ってないだろ?」

 

「うっ………」

 

そこで丁度ベルの腹の虫がグーと鳴く。

 

「飯はヘスティア様と一緒に食っていけ」

 

「そ、そこまでしてもらう訳には………」

 

「代金はヘスティア様のバイト代から天引きだから心配するな」

 

「うぐっ………でも、可愛い眷属の為か、仕方ない」

 

天引きという言葉に苦い顔をするも、かつての屋台のバイトの時であればジャガ丸くん一色の食卓になるであろうと思い、ヘスティアは八雲の提案を受ける事にした。

 

「明日ゆっくり休んだら明後日には俺がダンジョンに同行して色々レクチャーしてやる」

 

「ど、どうしてそこまでしてくれるんですか?」

 

「ヘスティア様の眷属なら御近所様だし、こうなると知ってたらウチに入れていたっていうちょっとした罪滅ぼしみたいなもんだ」

 

という訳で、その日はベルにもヘスティアと一緒に夜の営業も手伝ってもらい、営業後にはヘスティアファミリア結成を祝って少し豪華な食事を作り、少しはしゃいで眠ってしまったベルとヘスティアをあの廃教会まで運ぶのは手間だと言って店の奥で寝かせた。

一方、後片付けをする八雲にアフロディーテはある事を訊ねる。

 

「で、明日はどうするの?八雲」

 

「そりゃあ、ロキ様に色々お話に行くに決まってるでしょ」

 

「そうなるわよねぇ」

 

そう、八雲はロキファミリアの総意とは思えない門番の所業についてロキやフィンに報告するつもりなのだ。

 

「ギルドがファミリアの入団や勧誘にあまり関与しないとはいえ、問題の門番はなぁ」

 

それにロキファミリアは後進の育成にも力を入れているのを知っている八雲からすれば、試験も受けさせずに門前払い等したと知ればロキ達がどうするか等は目に見えている。

 

「って訳で一応ベルが1人でダンジョン行かないように見といてやってくれ」

 

「わかったわ………私もベル君は気になるしね」

 

「気になる?」

 

「うん、何というか、あの子からはヘスティア以外の神の気配を感じるのよ………それもギリシャ圏の」

 

「でも、恩恵はまだ刻まれてなかったんだろ?」

 

お祝いの前にヘスティアがベルに恩恵を刻んだのを確認している為、ベルが他の神から恩恵を受けていないのは確認済みのはずである。

 

「恩恵とは違う………何と説明したらいいのかわからないけど、女神としての勘がベル君には何かあると感じるのよ」

 

というのでベルはヘスティアとアフロディーテに任せれば良いということで、八雲は明日ロキファミリアを訪ねる事が決まった。

 

***********************

 

次の日、ギルドへと向かうベルとヘスティアを見送った八雲はその足でロキファミリアを訪れた。

 

「珍しいね、君が遠征以外の件でここ(ロキファミリア)を訪ねてくるなんて」

 

「ちょっとあってね」

 

八雲がフィンやロキに用があると伝えれば、フィンの執務室へと通され、そこでフィンとロキが待っていた。

 

「それで、話っちゅうのはなんや?」

 

「それがですね、これはウチでバイトしてるヘスティア様に関する話なんです」

 

「はぁ?ドチビに関する話?」

 

ヘスティアと聞いてロキが顔を顰めるが、八雲は気にせず話を続ける。

 

「ヘスティア様がウチでバイトしながら眷属の勧誘をしてるのは知ってますよね?」

 

「ああ、僕らも1度会っているしね」

 

そう、ロキファミリアもたまに八雲達の店に来る事があり、先日偶々ヘスティアとロキが鉢合わせしてしまった事があったのだ。その時は喧嘩を始めようとした2柱を八雲が睨んで止めたのだが。

 

「そのヘスティア様に眷属が出来ましてね」

 

「それがウチらと何の関係があるんや?」

 

「まあまあロキ、話は最後まで聞こうじゃないか」

 

ここまではロキファミリアのロの字も出ていない為ロキの機嫌が悪くなるも、フィンは何かを察して八雲に続きを促す。

 

「で、その眷属になったベル・クラネルという少年なんですけど、オラリオに来てから数日間、冒険者になりたくてずっと色々なファミリアを回っていたそうでして」

 

「………続けてくれ」

 

ここまで聞けばロキも話の全容が見えてきたようで、次第にヘスティアに関する事とは別の意味で表情が険しくなっていく。フィンも笑みを消して真剣な表情である。

 

「彼は大手ファミリアは恐れ多いと思って最初は訪ねなかったそうなのですが、ギルドのエイナ嬢からの勧めもあってロキファミリアの門扉も叩いたそうなんです………ですが」

 

そこからベルから聞いた通りに門番が門前払いした事を伝えると………

 

「フィン」

 

「わかっているさ、ロキ」

 

フィンは机の引き出しから呼び出しベルを取り出し、チリィンチリィンと鳴らす。すると、ドドドドという音を響かせながらアマゾネス姉妹の姉であるティオネが執務室に飛び込んできた。

 

「お呼びですか!団長!」

 

「………ああ、悪いけどこの1週間程門番の担当だった者を連れて来てくれないかな?」

 

「わっかりました!」

 

そして、フィンのお願いを聞くなり、直ぐに飛び出していった。

 

「………相変わらず苦労してますね」

 

「そう言ってくれるのは君ぐらいだよ」

 

その後、呼び出された担当者はロキやフィン、それとフィンに要らぬ手間を掛けさせた事にキレたティオネにこってりと絞られて真っ白になって執務室を去っていった。

 

「今日はすまなかったね、八雲。どうも組織が大きくなると僕らの目の届かないところが出てくる」

 

「いえ、早い内に見つかってよかったと思いますよ」

 

もし、ベルがヘスティアに拾われずに疲弊したところをガネーシャファミリアの警邏隊にでも見つかって事が露呈していたらロキファミリアが被った風評被害は大きかったであろう。

 

「そのベルっちゅう子にも今度ちゃんと謝らなあかんな」

 

「そうだね。その時は仲介をお願いしてもいいかな?」

 

「それくらいで良ければ………そういえば近い内にまた遠征に出るんでしたっけ?」

 

「ああ、君が来てくれないのは残念だがね」

 

八雲は1度遠征に同行してから度々ロキファミリアの遠征に呼ばれる事が増えたのだが、この時期はタイミングが悪く別の指名依頼が入るので同行はできないと話を通しているのだ。

 

「確かガネーシャんとこの手伝いやったか?」

 

「はい、【怪物祭】が近いので」

 

その手伝いとは怪物祭で調教するモンスターを運搬する際に使う檻等の大型物資の運搬である。八雲がこれを手伝い出してからは作業が楽になったとガネーシャファミリアからは感謝されている。

 

「あれはギルドの肝入りのイベントやからなぁ」

 

「仕方ないさ。それに八雲に物資の運搬を任せるのに慣れるといざという時に困るからね」

 

「せやな、それにいくら前に世話したってゆうても他のファミリアの“レベル4”を毎回呼ぶんもヴァリスがかかるもんな」

 

そう、八雲はつい先日レベル4へとレベルアップしたのだ。と言っても既にレベルアップ出来る状態から繰り越し分のアビリティの為にレベルアップを保留していただけなのだが。

 

「まあ、俺が付き合えるときは同行させてもらいますよ」

 

「その時は頼りにさせてもらうよ」

 

こうして今回の件の話し合いは終わり、後は後日の謝罪だけだとフィン達は思っていた。それがあのような事件に発展するとはこの時は誰も思ってはいなかった。




今回の門番やらかし問題がどう発展するのか………原作読んでる人ならきっとすぐわかるよね?

という訳で次回からやっと原作入れそうです。
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