ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか 外典 作:ミストラル0
一人は前回の内容から大体想像出来るかと思います。
初ダンジョンアタックから数日後。八雲達は再びガネーシャファミリアを訪れていた。
「怪物祭に協力してくれるという話だが、失礼ながら零細ファミリアのアフロディーテファミリアに出来るのか?」
そう言うのは話し合いに同席していた団長のシャクティである。彼女の言うのも最もではあるが、八雲は妙に自信ありげである。
「シャクティさん、祭って付くからには屋台とか出店もあるんだろ?」
「確かにあるが」
「出店の分布図ある?」
そう言われシャクティが出店する出店のリストを手渡すと、八雲が笑みを深める。どうやら八雲の想定通りもしくは以上のようだ。
「くくく、これは勝ったな」
「勝った?」
その時はその意味が分からなかったシャクティだが、怪物祭当日に彼女は思い知る事になる………食の魔改造大国日本育ちの八雲が振るうB級グルメの恐ろしさを。
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その後、ガネーシャファミリア経由で2つのファミリアに協力を取り付けた八雲はあっという間に怪物祭の出店に関わる人達を掌握し、出店の総指揮という立場を勝ち取っていた。兄や幼馴染に教わった交渉技術らしいがお目付け役として同行していたシャクティも思わず感心してしまう交渉だったようだ。
「これで準備は終わりだな」
「よくもまあこれだけ思いつくものだ」
「思いついたんじゃなくて俺の故郷のもんを広めただけさ」
今回八雲が広めたのは現在のオラリオでも材料が比較的入手し易い物で作るお好み焼きやちょぼ焼き*1等の粉物。綿飴やりんご飴、クレープにたい焼き、ベビーカステラ等の縁日の定番メニューである。
「だが、良かったのか八雲。デメテルファミリアにレシピを譲ってしまっても」
「いいんだよ、こういうのはすぐに真似する連中が出てくる。そもそもウチは探索系且つ零細ファミリアだ。独占市場を作る人手も暇もありゃしねぇ。そんなもんに目くじら立ててる暇があったら高く売れるうちに情報なんざ高く売りつけてしまえばいいのさ………これは幼馴染の受け売りなんだがな」
「その幼馴染は頭が回るのだな」
八雲が協力を要請したのはオラリオの食料事情の大多数の元締とも言われるギリシャ神話系のデメテルファミリアと、技術と鍛冶の神とされオラリオでは二大鍛冶ファミリアの一つゴブニュファミリアの傘下ファミリアで調理器具等も扱うケルト神話系のルフタファミリアである。八雲が依頼したのはレシピと引き換えにデメテルファミリアからは食材、ルフタファミリアには鉄板や屋台等の作成を依頼したのだ。
「それに当日は俺もこの屋台で稼がせて貰うさ」
「本当に君の故郷の発想には舌を巻く他無いな」
シャクティがそういうのも、八雲が"引く"屋台が原因であった。この数日、八雲が根回し以外に何をしていたのかというと、この移動式屋台の作成のための資金を集めに再びダンジョンでアサシンの如くモンスターの首を狩っていたからだ。
この屋台、出店に協力してくれるガネーシャファミリアやデメテルファミリアの団員や地域住民へ広めた料理の作り方の説明を行う際に利用する目的も兼ねて作られており、調理用の鉄板やクレープ用の円形の鉄板にたい焼き盤、タコ焼き盤まで完備した屋台だった。尚、製作費1万ヴァリス。その金を装備に回せば良かったのでは?とも思われるが、今後もこういう催し物にこの屋台で参加するつもりのようだ。
「さあて、稼ぐとしますか」
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そして迎えた怪物祭当日。
「うわぁ、八雲の読み大当たりだよ」
八雲の提案した屋台はオラリオでは物珍しいという事もあって飛ぶように売れていた。また、闘技場内でもポップコーンやソフトドリンクの売り子を提案したが、これも割と好評らしい。
「アフロディーテ様、喋ってないで働け」
「神使いが荒くない!?」
「立ってるものは親でも使え、それは神でも変わらん」
「最近ホントに遠慮が無くなってきたよね………このまま私をお姉ちゃんと呼んでm」
「呼びません」
「チッ」
その一方で、八雲達の屋台は作ってきた年季の違いか大勢のお客の対応に追われていた。
「や、ヤクモさん!事前に用意していたサカナ焼き*2が無くなりました!」
それも八雲は予想してガネーシャファミリアから一人助っ人を借りていた。元の世界で言えばゴールデンレトリバー種の耳と尻尾を持つ
「思ったより減る速度が早いな」
「わ、私も試食したから判りますけど、サカナ焼きは絶対にジャガ丸くんに匹敵するものになると思います!」
「相当気に入ったみたいだな、ユーリヤ」
オラリオは見た目通り魔法やダンジョン等の要素を抜けばファンタジー世界によくある中世ヨーロッパ風の街だ。そのオラリオで屋台の主力商品と言えばジャガ丸くんというコロッケに似た………いや、完全にコロッケである。但し、小豆クリームや抹茶クリーム等のバリエーションが存在する事から通常のコロッケだけでなく、所謂スイーツコロッケと呼ばれるものも含まれていると考えられる。八雲の屋台でもサカナ焼きの具材バリエーションの選考の際に見つけたサツマイモ、カボチャ、枝豆の3種を使ったジャガ丸くんを作り並べている。そして、このオラリオでは未知のジャガ丸くんを並べていた事が原因で八雲はある人物と知り合う事となる。
「すみません、このジャガ丸くん3種類、それぞれ20個ずつ下さい」
「はいよ………ん?20個ずつ?」
「うん、20個ずつ」
それは金髪金眼というオラリオでも珍しい容姿をした美少女。腰には素人から見ても判るレベルの逸品である細剣を帯剣している事から冒険者だと判り、そんな特徴的な容姿の冒険者等オラリオには一人しか存在しない。
「
「やっぱ噂に聞く剣姫様か」
アイズ・ヴァレンシュタイン。ロキファミリアのレベル4にして、たった1年でレベル2に昇格したという
「アイズ!ここにいたか」
そこにアイズを追って若草色の長髪のエルフがやってくる。
「あっ、リヴェリア」
「あっ、ではない!目を離したらこの娘は」
そのエルフの名はリヴェリア・リヨス・アールヴ。
「お話中のところすみませんが」
「うん?」
「営業の邪魔なんでせめて屋台の前から退いて貰えませんか?」
「す、すまない!」
「ジャガ丸くん………」
「ええい!店主、いくらだ!」
「3種20個ずつで、2,800ヴァリスです」
「ほら」
「毎度あり」
釣り銭と共にジャガ丸くんを入った紙袋を渡すとリヴェリアはアイズを引き摺るように店の前を離れた。
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「くははは、ボロ儲けだな、これは」
夕方、その日の売上を見て八雲はそう口にする。それも仕方のない事だろう。原材料費を差っ引いてもその日の売上は5万ヴァリスを超えていたのだから。ちなみにこれにレシピを教えたいくつかの屋台から売上の1割を礼金として貰っているので合計は7万ヴァリス程になる。
「まだ物珍しいから少し割高でもお客さんは何の疑問も無く買ってしまうからね」
「それに、ヤクモさんの屋台は他より美味しいですから割高でも売れちゃうんですよね………それにあの鉄板で焼ける匂いはダメです。特に私達のような犬人族には抗いようがありません!」
「うん、あれは匂いの暴力よ」
「実演の時もそうだが、ああいう魅せる調理で視覚を、匂いで嗅覚を刺激して注目を集める方法は有効なのだな」
「それにこういう祭り時ってのは財布の紐が弛み易いのさ。そこに普段はお目にかかれないものが並べば人は好奇心から注目せざる得ない。そこにシャクティさんの言うように視覚と嗅覚を刺激してやればこの通りって訳さ」
「なるほど」
祭りも終わり、皆が後片付けをしている中、ユーリヤや祭りの成功を感謝しにきたシャクティを加えて本日の成果を話し合っている八雲達。
「今回は本当に助かった。こちらには来れなかったが、ガネーシャ様も大層お喜びだったぞ」
「感謝するのはこっちの方さ。アイディアがあれどそれを実現させるには各方面への根回しが必要だった。ガネーシャ様がデメテルファミリアとルフタファミリアを紹介してくれなきゃここまではやれなかったさ」
「そうか」
その後、シャクティは改めて感謝を告げると後片付けの指揮のために戻っていった。
「ユーリヤも今日はありがとな」
「うんうん、ユーリヤちゃんがいなかったら多分私も倒れてたよ」
「お、お役に立てたなら、幸いです」
八雲とアフロディーテに礼を言われ尻尾を揺らしながら照れるユーリヤ。
「そ、そういえば、ヤクモさんは一人でダンジョンに潜ってるんですよね?」
「ああ、うちは他に団員もいないし、他のファミリアのメンバーを雇う余裕もねぇからな」
それに野良パーティーは色々とリスクが大きいと八雲は推測しており、結果八雲はソロのままダンジョンに潜っている。ユーリヤはそれを知って八雲にある提案を持ちかけた。
「でしたら私をサポーターとして雇ってくれませんか?」
という訳で原作からアイズとリヴェリアに登場していただきました。
ジャガ丸くん大好きなアイズが未知のジャガ丸くんを見逃すとは思えないのでw
新キャラのユーリヤは犬人族の少女(14)です。彼女が何故八雲のサポーターに立候補したのかは次回で。