ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか 外典   作:ミストラル0

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今回かなり原作ブレイクが発生しています。
もし、そういうのが苦手な方はバック願います。


四十六話 八雲とリリルカ

憧れのアイズに膝枕されていた恥ずかしさから拠点へと逃げ帰ったベルは翌朝未だかつて無い恐怖に震えていた。

 

「ベル、精神疲弊の危険は伝えていた筈だよな?」

 

「………はい」

 

それはベルが無断でダンジョンに行っていたのが八雲にバレ、朝食を取りに店に訪れたベルは明らかに激怒している八雲に「ベル、そこに正座」と言われて正座をさせられてお説教を受けているからだ。

 

「なら何で勝手な真似をした?」

 

「ごめんなさいっ!」

 

「何で勝手な真似をした?」

 

謝っても八雲は淡々と理由を訊ねるだけで怒声を浴びせてはこない。

だが、ベルからしたら怒声を浴びせられた方が楽であったぐらい今の八雲は怖かった。

 

「………早く魔法が使ってみたくて眠れず」

 

「気が付けば装備も無しにダンジョンに、か?」

 

「………はい」

 

「その挙げ句、魔法を発動出来た事に興奮して精神疲弊を考えずに魔法乱発してぶっ倒れて他のファミリアに助けられた、と」

 

「………あの、何で師匠がその事を………」

 

「お前がアイズに膝枕されてた現場に俺も居たからな」

 

「何だってぇ!?」

 

「ヘスティア、ステイ」

 

「へぶしっ!?」

 

アイズに膝枕をされていたと聞いてヘスティアが何処で知ったのか荒ぶる鷹のポーズでベルを問い質そうとするも、アフロディーテにチョップで止められる。

 

「あの2人が偶々通り掛からなかったらどうなってたか………今度礼を言っとけよ?」

 

「わかりました」

 

「あと、当面はベルが無茶してねぇか見る為にダンジョンに同行するからな?」

 

「あっ、その事なんですけど………」

 

そこでベルが告げたのは最近サポーターを雇ったという。

 

「ソーマファミリアのリリルカ・アーデって犬人族なんですけど」

 

「ソーマファミリアだと?」

 

他にも八雲としては気になる単語はあったが、“ソーマファミリア”というのは聞き逃がせない単語だった。

 

「何か問題が?」

 

「ソーマファミリアの冒険者の評判ははっきり言って底辺だ。あのファミリアは総じて酒中毒で、酒の為なら例え同じファミリアのメンバーだろうが平気で食いものにする外道の巣窟だぞ」

 

「で、でもリリは礼儀正しいいい子ですよ!?」

 

「………今日もそいつとダンジョンに行く予定だったのか?」

 

「えっ、あっはい」

 

「なら丁度良いな」

 

「ヘスティア、何処へ行くの?」

 

「ギクッ」

 

と、話がまとまったところでアフロディーテは何か本のような物を抱えて何処かへ行こうとするヘスティアを呼び止める。

 

「あっ!神様、その魔導書はお店に持って行くって話したじゃないですか!」

 

「魔導書だと?」

 

という訳でヘスティアを捕まえて問い質すと、ベルが魔法を発現させたのは豊穣の女主人にてシルに渡された魔導書を読んだ事が切っ掛けらしい。その段階で八雲はどういう経緯でそれがベルの元に渡ったのか察し頭を抱える。

 

「あの女神め………また問題増やしやがって」

 

結局、ミアの元に赴きベルが事情を説明すると、ミアは「こんなものを置いていくやつが悪い!」と使い物にならなくなった魔導書を捨ててしまう。

 

「ミアさん、要らないならコレ貰っても良いですか?」

 

「あん?そんな使い終わった魔導書なんかどうしようってんだい?」

 

「いや、俺も魔導書なんて現物は初めてなもんで、ちょっと調べてみたいと思いまして」

 

「………どうせ捨てたもんさ、好きにしな」

 

という事で八雲は使い捨てられた魔導書を手に入れるのであった。

 

***********************

 

その後、装備を整えてベルがリリと待ちあわせをしているバベル前の広場にやってきた。

 

「ベル、その軽鎧と籠手どうしたんだ?」

 

「これですか?この前エイナさんにそろそろ防具を新調した方が良いと言われまして、バベルの師匠が前に装備のメンテナンスを頼んでたヘファイストスファミリアの店で買ったんです。籠手はエイナさんからプレゼントしてもらいました」

 

「あ〜、あの店か………籠手の方はわからんが、その軽鎧………もしかして造り手はヴェルフ・クロッゾか?」

 

「はい!お知り合いなんですか?」

 

「俺もヘファイストスファミリアに知己がいてな、その知己から将来有望なやつって事で紹介してもらったことがある」

 

「へぇ〜」

 

そんな事を話していると、2人に冒険者の男が近付いてくる。

 

「おいそこの………って、【単眼鬼の武器庫】!?」

 

「うん?何か用か?」

 

「あっ、いえ、その………」

 

何やらベルに用があったようなのだが、八雲が一緒だと知って戸惑う冒険者。

 

「別にとって食おうって訳じゃねぇんだから落ち着け」

 

「あっ、はい」

 

とりあえず落ち着かせて話を聞く事にしたのだが………

 

「つまり、お前らはそのリリルカってのを懲らしめたいと?」

 

「はっ、はい!この計画にアンタらが参加してくれりゃ万全って訳でさ!」

 

聞けばリリルカという少女は他の冒険者のサポーターをしていた時に冒険者の持ち物を盗んでいたといい、その被害にあった冒険者数名でやり返してやろうと計画しているらしくそれに現在リリルカをサポーターとしているベルを引き込もうとしていたようだ。

しかし、その冒険者は気付いていなかった。その計画が目の前の八雲の虎の尾を踏む行為だという事に………

 

「そ、そんなの」

 

「悪いが俺達はその計画には賛同しかねる」

 

「なっ!?」

 

ベルがその冒険者を批難しようとしたところで八雲ははっきりとその計画への参加を拒否した。

 

「サポーター1人に冒険者が複数人でってのが気に食わねぇ………それに、盗まれたのもお前らにも原因があるんじゃねぇか?」

 

八雲は大手派閥が抱えているサポーターと一般のサポーターの待遇の違いについてはそれなりに詳しく、彼らの態度からもリリルカへの報酬の差別や扱いについても何となく察していたのだ。

それと、今現在ベルに視線を向けているリリルカと思われる少女の視線にも気が付いており、内心「また面倒事か」と思っている。

 

「あ〜!!もう知らねぇからな!後で被害にあっても」

 

「生憎俺がいる限り盗みなんぞ起きねぇよ」

 

「クッソ!」

 

八雲の【宝物庫】の事は既に有名である為に捨て台詞すら満足に告げられず男は走り去っていった。

 

「師匠………」

 

「真偽はどうあれお前の雇ったサポーターは面倒事を抱えているみたいだな」

 

「すみません………」

 

「何を謝っている?とりあえずはそのリリルカって子と直接会って見ないことにはな」

 

「はい」

 

それから少しして待ちあわせ場所にリリルカがやってきた。

 

「あ、あの、ベル様………そちらの方は………」

 

「紹介するよ、こちらは僕の師匠をしてくれている八雲さん。師匠、この子が話してたリリです」

 

「………ちょっと留守にしてる間にベルが世話になったらしいな。よろしくな、リリルカ」

 

犬人族と紹介されてはいたが、その容姿にかつての相棒であったユーリヤの姿が重なって見えて八雲は少し戸惑ったものの無難な挨拶を交わすのだが………

 

「八雲って、【単眼鬼の武器庫】じゃないですか!?私達サポーター界隈では【サポーター泣かせ】とも呼ばれてるサポーターの天敵ですよ!?」

 

そう、八雲はその【宝物庫】を持つ関係からサポーターを必要としておらず、サポーター以上の物資運搬能力がある為にサポーター達からは【サポーター泣かせ】と呼ばれているのだ。

 

「安心しろ、お前さんの仕事を盗る気はねぇから」

 

「そ、それはどうも………」

 

八雲からやけに優しく接され、リリルカは内心混乱の極みに陥っていた。

 

「(どどど、どうなってるんですか!?確かにベル様は冒険者になって日が浅いのに充実した装備と技量を持っていて、それがお師匠様のおかげとは聞いてましたけども!まさかそのお師匠様が【サポーター泣かせ】とは聞いていませんよ!?しかもさっきの男に多分私の事を色々と吹き込まれたはずなのに何でこんなに優しげなんですか!?もしかしてこれは罠!?ベル様を囮に私を油断させようと?わからない!私にはこの人が何を考えているかわかりません!)」

 

そんなパニック状態のリリルカを他所に3人でダンジョンに向かう事に。

 

***********************

 

「ファイアボルト!」

 

「ふむ、詠唱要らずの高速発動型。しかも炎属性でありながら僅かに雷属性のような感じもする。ベルの魔力値の低さのせいかまだ威力は高くないが、成長の余地がある事やベルの戦闘スタイルを考えれば疑似的な機動詠唱のようなもんだし割と当たりの魔法だな」

 

「ま、魔法についてお詳しいのですね?」

 

「知己に魔法に詳しいのがいてな。前に基本的な事について講義してもらった事があるんだ」

 

その知己とはリヴェリアの事で、初めて遠征に同行した後に自身の【魔力放出】について意見を聞こうと訪ねた際にレフィーヤと一緒に色々と講義をしてもらった事があり、そのおかげで様々な活用法を編み出すに至ったのだ。

 

「リリルカもボウガンの腕が良いな。そのボウガンも小型で持ち運びにも優れている」

 

「小型なのであまり威力はありませんが、サポーターとしての作業の邪魔にならないようにと考えた結果です」

 

「成程、収納スペースを無駄にしない為に腕に装着しておけるそれを選んだ訳か」

 

「はい」

 

ベルの魔法検証のついでに八雲はリリルカの動きを観察し色んな質問をしつつ、やけに好意的に接してくる八雲にリリルカは再び困惑していた。

 

「(【サポーター泣かせ】なんて呼ばれているからてっきりサポーターを蔑ろにする人かと思えばかなりサポーターについて詳しいですね、この人………それに私を見つつも誰か他の人の事を考えているような顔もなさいますし………あ〜!もうやり難いです!!)」

 

リリルカがそんな事を思っているとは知らず、ベルが魔法でモンスターを一掃したところで一旦休憩をする事になった。

 

「さて、ここなら邪魔も入らんだろう」

 

「邪魔と言いますと?」

 

「お前さんを狙ってる冒険者共の事だよ」

 

「!?」

 

八雲の突然のカミングアウトにリリルカは警戒を露わにするが、八雲はそんなリリルカに「だから邪魔はいないって言ったろ?」と笑みを浮かべる。

しかし、リリルカは警戒を解かない。

 

「………八雲様はやはりご存知なのですね?」

 

「まあ、ソーマファミリアの噂は色々聞いてるからな」

 

「なら何故!?」

 

リリルカがベルの装備目当てで近付いた事に八雲が気が付いていると察して何故そんな自分を直ぐに糾弾しないのかとリリルカが訊ねると、八雲は少し困った顔をする。

 

「言ったろ?ソーマファミリアの噂は聞いてるって。あそこのサポーターの扱いは最悪の一言だからな」

 

サポーターを見下している冒険者は多々あれど、あそこまで腐った冒険者がいるのはソーマファミリアくらいだと八雲は言う。

 

「そんなに酷いんですか?」

 

「酷いなんてレベルじゃねぇぞ。分け前は端金、少しでももたつけば殴る蹴るの暴行もしくは暴言、終いにはモンスターを囮にして見捨てるなんて奴らさ………そんときにはご丁寧にサポーターの持ち物全部没収して、だ」

 

「なっ!?」

 

「………」

 

あまりの扱いにベルは啞然とし、リリルカは否定もせず沈黙している。

 

「多分、リリルカはソーマファミリアを脱退したくてヴァリス貯めてんだろ?」

 

「………はい」

 

「脱退するのにお金が?」

 

「あそこは酒中毒の巣窟って言ったろ?ファミリアへの貢献度であそこの主神であるソーマ神の酒が下賜されるんだ。その為に団長かそこらにその貢献度を譲ってソーマ神に改宗の許可をもらおうってことさ」

 

「そこまでなんですね、ソーマファミリアって」

 

「俺も聞いた話だけで実態までは知らんがな」

 

「いえ、八雲様のおっしゃる通りです」

 

そこからリリルカはベルにはヘスティアナイフが一級品の業物である事からそれを売れば目標金額に一気に近付けると接触した事を語る。

 

「あ〜、あのナイフが目当てだったか………」

 

すると、八雲は申し訳のなさそうな顔をする。

 

「悪いが、あのナイフはベル以外が持っても鈍ら以下の価値しかねぇぞ。あのナイフはベルのステータスに連動するようになっててな、だからベルが握れば唯一無二の業物となるが、他の奴が手にしても何の価値もありゃしない」

 

「えっ!?あっ、だからあの時………」

 

更にリリルカは一度ヘスティアナイフを盗んで質屋に持っていったものの、そこで「刃が死んでいる。大した価値は無い」と言われ、その直後にベルの知り合いというエルフとヒューマンにナイフを取り返され、ならば今度はヘファイストスファミリアの紋様が刻まれた鞘ごと奪取しようと計画していた事を告白する。

 

「そんな………」

 

リリルカの告白に驚くベルではあるが、八雲は「そんな事だろうと思った」という顔だ。

 

「で、リリルカ・アーデ。お前はこれからどうしたい?」

 

「えっ?」

 

「多分だが、俺達と離れれば例の冒険者がソーマファミリアのクズ共と組んでお前を嵌めにくるぞ?ソーマファミリアの奴らならお前が金を貯め込んでるのは知ってるはずだ。それも奪った上でモンスターの群れに放り込んで始末する可能性すらある」

 

「………」

 

八雲の推測を聞いてリリルカはガクガクと震えだし、その場にへたり込んでしまう。

 

「それと、犬人族ってのも嘘だよな?変身魔法かなんかだろ?多分本当は小人族だ」

 

「!?」

 

「そうなんですか!?」

 

「リリルカが言ってたエルフ………リューさんから今朝話は聞いててな。そんな貴重な魔法を持ってるのを知ってて容易く手放すとは思えない。団長からもかなりふっかけられてるだろうな」

 

「………ほんと、八雲様には何もかもお見通しなのですね」

 

そう言うとリリルカは被っていたフードを外し、変身魔法で偽装していた犬耳を消す。

 

「これがリリの本当の姿です」

 

「リリ………」

 

続け様に明かされる真実にショックを受けるベル。

だが、八雲の話はまだ終わりではない。

 

「って訳でこのままリリルカがソーマファミリアをすんなり脱退出来るとは思えない。だが見捨てるのも嫌だろ?ベル」

 

「当たり前じゃないですか!」

 

「ベル様………」

 

「フフフ………なら奴らの計画をそのまま利用してやろうじゃねぇか」

 

「「へっ?」」

 

後にベルとリリルカは語る。「絶対この人とは敵対してはいけない」と。




犬人族の少女を嵌めるという八雲の地雷に触れた冒険者達………
彼らの運命は如何に。
尚、八雲がリューから話を聞いたのは魔導書の件で豊穣の女主人に立ち寄った際です。
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