ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか 外典 作:ミストラル0
なんとかロキファミリアの協力を得た八雲達は例の冒険者達に勘付かれないように決行を翌日とし、フィン達はメンバーの選別の為に戻り、リリ*1も怪しまれないように現在の拠点に戻り作戦の準備や雲隠れの準備をすると帰っていった。
ここで作戦の概要をおさらいしておこう。
作戦は大まかに3フェイズに分かれており、1フェイズ目はベルとリリが2人でダンジョンに向かい例の冒険者達を釣り出す。
2フェイズ目はリリが裏切ったフリをして八雲が用意した偽ナイフを奪い逃走。尚、リアル感を出す為に割とガチでベルを嵌めるつもりでやれと八雲の指示が出ている。
3フェイズ目は逃走してきたリリから持ち物を奪った冒険者達の前に八雲が現れて持ち物を奪取し、おそらくキラーアントに襲われているだろうリリをロキファミリアが救出し魔法で変装させ、八雲と合流したフィンが彼女のボロボロになった外套を見せる事でリリが死んだと勘違いさせるという作戦である。
あとは後日、ベルと八雲が変装したリリをサポーター兼八雲の店の従業員として雇う形で匿う事になっている。
「上手くいくといいんだがな………」
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八雲の心配を余所に例の冒険者達はベル達を追ってダンジョンへと向かう。
それを冒険者達に知られないようにベル達に伝えると、リリはベルにある提案をする。
「ベル様、今日は10層に行きませんか?」
「10層って確かオークやインプが出て
「はい、そろそろベル様が挑戦しても良い頃かと………けれど、ベル様の普段お使いになってる武器ではオークはお辛いでしょうからこれをお使い下さい」
そう言ってリリはベルに
「両刃短剣か………師匠は何でも使ってたなぁ」
ベルはを八雲の見様見真似で振ってみるが、いつものナイフと重量が違うので少しふらつく。
「やっぱ師匠みたいにはいかないか」
「大丈夫ですよ、ベル様なら」
そうしてオーク等と数戦交えるが1対1であるならばベルは特に苦戦する事が無いと分かり、ベルは作戦の事をすっかり忘れて戦いに集中していた。
「よし、リリあとどれくらい………あれ?リリ?」
ふと、ベルがリリのいた場所を振り返るとそこにはリリの姿は無かった。
「えっ?リリ?」
「ごめんなさい、ベル様」
そのリリは崖の上からトリモチ矢で予め決めていた位置にマウントしていたダミーのナイフを奪取し、モンスター寄せの異臭を放つトラップアイテムの血肉をベルの傍に放り投げ、そのまま上の階層へ向かうルートへと去って行ってしまった。
「(あっ、そっか僕を欺いた振りをしないといけないんだったね………)でもこれはいくらなんでも酷くないかな!?」
そうこうしている間にオークが4匹、いや、まだ遠い位置にいるが追加で8匹のオークの姿が見えるし、オーク以外にもインプの姿も確認出来た。
「これを1人で相手にして追いかけて来いだなんて師匠もリリも酷くない?」
両刃短剣だけでは捌けないと判断したベルは両刃短剣を右に、ガントレットに隠していた“本物の”ヘスティアナイフを左手に持ち迎撃態勢を取る。
「あ〜!もうやってやる!」
自棄になりつつも、頭は冷静にオークの喉仏に両刃短剣を突き刺し絶命させると、その腹を蹴ってその勢いで両刃短剣を抜く、そして消滅する寸前のオークの巨体を後続のオークにぶつけ、その隙に別のオークの片脚を切ってスピードを奪い、その間に迫っていたインプの天然武器をヘスティアナイフでいなす。
その姿を見ている者がいたならばこう思ったに違いない「あの【首狩り族】の再来だ」と………
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一方、ダミーナイフを手にして7層まで戻ってきたリリ。
「(八雲様は心配するな、と言ってましたが、ベル様は大丈夫でしょうか?………私も随分と変わってしまったようです)」
そうベルを心配するリリは自身の内心の変化を感じ笑みを浮かべていたが、突然リリの足元に足が突き出されそれに躓き転倒してしまう。
「うっ………」
「俺が大当たりだったみたいだな」
その犯人はベルと出会うキッカケとなり、今回の襲撃の発端となったリリを嵌めようとした冒険者・ゲドだった。
ゲドは倒れたリリのフード付きのローブを掴み起こし、その顔面に拳を叩き込んだ。
「詫びを入れてもらうぜぇ………この糞パルゥムがあっ!」
先程の一撃で鼻の内部が出血したのか鼻血が滴るものの、ゲドはそんな事お構いなしにもう一発リリの頰を殴り、追撃とばかりに蹴りを浴びせてリリは再びダンジョンの床に落ちる。
「ーーあがっ!?」
まだやり足りないのか容赦の無い蹴りが腹部を襲い、バックパックが外れて軽くなったリリは何度も地面をバウンドして壁に激突する。
「ハッハハハ!いいザマじゃねぇか、コソ泥がぁ!」
ゲドはそこから八雲が予想していた通りソーマファミリアのカヌゥという狸人族の冒険者や他のソーマファミリアの冒険者を味方に付けた企みであった事が判明するも、ゲドも利用していた事を明らかになってこれまた予想通りにカヌゥ達にキラーアントの餌食にされてしまう。
「(ここまで予想通りですと痛いの忘れて呆れてしまいそうです)」
そして、身ぐるみを剥がれ最低限の装備になり、抵抗も馬鹿らしいのであっさり金庫の番号を教えると、カヌゥ達はリリをキラーアントの群れに投げ込んでその場を去って行った。
幸いにもキラーアント達は飛ばされてきたリリを避けるように一度広がったせいで直ぐには襲ってくる様子は見えない。
「………あ〜、本当ならリリはここで死んだんでしょうね」
もし八雲に企みがバレずに実行に移していた場合、今と同じ状況になったのは容易く想像出来る。
だが、そうはならなかった。
「やっ!」
「アルクスレイ!」
カヌゥ達がいなくなった事で隠れている必要がなくなったロキファミリアの面々が現れキラーアントを蹴散らし始めたからだ。
「大丈夫かい?」
「は、はい」
そして、彼も………
「リリー!!」
「ベ、ベル様!?」
「おや?随分早い到着だね?」
「途中でアイズさんが手伝ってくれましたから」
予想よりも早いベルの到着に驚くリリ。
その原因はアイズが加勢したからであったが、実はアイズが加勢した頃には過半数の魔物は蹴散らされていた為、加勢しなくても時間の問題だったようだ。
「ベル・クラネル、そのアイズは?」
「あれ?途中まで一緒だったのに………」
これが別の騒動の始まりであった事にまだ彼らは気付く事はなかった。
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そして、リリを捨て駒にしたカヌゥ達はリリから得た戦利品にホクホク顔で地上へ帰還しようと6層へ向かっていた。
「へへ、アーデのやつ結構貯め込んでやがったみたいだな」
「しかも“魔剣”まで持ってやがったもんな」
魔剣とは魔法を使用出来る剣、または特別な力を持つ剣の呼称ではなく、この世界では魔力を持たぬ者であっても魔法を使用出来る高価な剣の形をした消耗品の事を言う。
ただ、消耗品であるが故に使用限度を迎えると塵となって失くなってしまうのと、その使用限度が判別出来ないので、いつ使用限度を迎えるか分からないという欠点はあれど魔法が使えない者でも使用出来るという点から購入する冒険者は多い。
こちらの世界からすればドラ○エのい●づちのつえ等に近いと言える。
「それにこの“ヘファイストスファミリアの紋章入り”のナイフ………こいつは高く売れそうだ」
そう言ってダミーナイフとは知らずにそのナイフを眺めていたカヌゥだったが、そこに彼らにとって出会いたくなかった人物が現れた。
「へぇ〜、そのナイフ、ちょっと見せてくれないか?もしかしたら知り合いが“オーダーメイド”で作らせたナイフかもしれないからよ」
それはずっと彼らを監視していた八雲だった。
そのカヌゥ達は八雲の呟いた“オーダーメイド”という言葉に顔が引き攣る。
無理も無い。オーダーメイドという事は作った鍛冶師と購入者がはっきりとした物という事で、もしそれを転売した事がバレれば入手経路等から本来の持ち主を害したと見なされただでさえ評判の悪いソーマファミリアのカヌゥ達がいくら言い訳したところで報復を受けかねないからだ。
「こ、これはアーデのやつが持っていた物で!俺達はそれをアーデから取り返してやっただけだ!」
「そ、そうだぜ旦那!俺達は悪くねぇ!」
「ほぅ………じゃあそのアーデはどこだよ?そのナイフの本来の持ち主の事も聞きてぇしよぉ」
「そ、それは………」
「そのアーデというのはこのローブの持ち主のパルゥムの女性の事かな?」
動揺するカヌゥ達の後ろから現れたフィンの声で顔が真っ青となる。
パルゥムの希望、小人族の勇者と名高いロキファミリアの団長に同族を虐げ、謀殺したのがバレかけているのだから仕方あるまい。*2
「やあ、八雲。実は先程キラーアントが固まっていたのでおかしいと思って蹴散らしてみれば同胞の亡骸があってね。これはその遺品だよ」
「へぇ〜、キラーアントねぇ………」
「しかもキラーアントのものとは思えない殴打の跡もあったよ」
「「(ゲドのバカヤロウ!)」」
これでリリが自発的に殿として残ったと主張する事は不可能となり、先程の自分達の会話も全て聞かれていた事に気付き、この後自分達がどうなるのかを悟る。
「じゃあ、そのアーデってやつの持ち物全部頂こうか?俺の知り合いがそいつからどんだけ被害受けてたか分かんねぇしな」
「そ、そんな横暴な!?」
「ん?別にいいんだぜ?出さなきゃそこの【勇者】殿にお前らの処遇任せても」
「ひっ」
八雲とロキファミリアが知り合いなのは割と有名な話で、ここで八雲の提案を蹴ればどうなるかなどゴブリンでも判る事だ。
カヌゥ達は直ぐ様リリから奪った全てを八雲に差し出した。金庫の鍵と番号も全てである。
「そんじゃあ、“俺からは”これで勘弁しといてやるよ」
そこでカヌゥ達はホッと息をつくが、それはまだ早かった。
「あとは程々にな、フィン」
「ああ、八雲に免じて殺すのとギルドに報告するのは勘弁してあげるよ」
彼らが振り返ると口元は笑みを浮かべているのに目は全く笑っていないフィンがいた。
これ以降、彼らは何があっても小人族にだけは手を出さないと深く心に誓うのであったとさ。
リリ編は次回の後日談辺りでとりあえず終わりとなります。
これと連動したオラトリアの話はどうするかまだ考え中ですが、アンケートをつけておくのでご意見をよろしくお願いします。
次のソード・オラトリアのお話をやるかどうか
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アイズを追ってレヴィス編へ