ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか 外典   作:ミストラル0

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大変遅くなりました………

ワクチン接種の副反応やら色々ありまして執筆に時間が掛かってしまいました。
それでも何とか今回のお話は区切りまで書けました。

原作とやや異なる部分がありますが、あまり気にしないで下さい。


五十三話 アイズとアリア

赤髪の女ことレヴィスが手にした紅剣は刀身半ばで折られておりかなり消耗した様子なのに対しアイズは多少消耗しているのか肩で息はしているが軽い裂傷で済んでいる。

しかも、アイズはいつもの魔法を使った様子が無い。

レヴィスは折れた紅剣を捨てアイズを睨み、アイズも油断なくレヴィスを見つめ返す。

 

「………口だけか、レヴィス。情けない」

 

そんなレヴィスにオリヴァスは嘲笑と共にそう告げるとレヴィスもオリヴァスを一瞥する。

 

「この小娘が【アリア】などと………認められるものではないが、いいだろう。【彼女】が望むというのなら」

 

「おいおい、てめえらで勝手に納得してんじゃねぇよ」

 

そんな彼らに八雲は口を挟む。

 

「死にゆくお前達には関係無いことだ。巨大花!」

 

しかし、オリヴァスはそんな八雲を一蹴して2体目の巨大花を呼び出しアイズを攻撃させる。

 

「アイズさん!?」

 

「持ち帰るのは死骸で構うまい」

 

更にアイズを援護しようとする八雲達をもう1体の巨大花が蔦で妨害してくる。

 

「ああもう邪魔だな、こいつ!」

 

レヴィスがいつ戦線に復帰してくるとわからない以上、あまり時間はかけられない。

 

「くたばり損ないはさっさとくたばりやがれ!」

 

再び死ヲ刻ム影に持ち替えた八雲は刃に魔力を込める。

 

「ぜぇいっ!」

 

その魔力を飛ぶ斬撃として放ち、巨大花の口の中にあった魔石を真っ二つに断ち切る。

それと同時にアイズもエアリアルを発動すると一撃で巨大花を倒してしまう。

 

「無傷のアレを一撃かよ………」

 

「さっきの爆発で弱っていたとはいえ、あんたも大概だろ!」

 

しかし、アイズがエアリアルを発動したことで食料庫の柱に寄生させてあった宝玉の中身が目覚めてしまったようで、ギャーギャーと喚き暴れ出してしまう。

 

「あれがハシャーナさん達が回収を依頼されてたやつか………煩い上にキショいな」

 

「なっ、なぁっ………!?ヴィ、ヴィオラスッ!?」

 

頼りにしていた巨大花が2体とも破られた事でオリヴァスは酷く狼狽し、残っていた食人花を2人に差し向けるが、八雲とアイズ、そしていち早く立ち直ったベートに殲滅されていく。

 

「チッ、差ァ開けられた」

 

「そりゃあ、あれだけ溜め込んでた経験値でレベルアップすりゃそうなるだろ」

 

「くっ!」

 

そんな光景にオリヴァスは自身に埋め込まれた魔石から限界まで力を振り絞りアイズを狙おうとするも、それを察した八雲に胸部を斬られ後退する。

 

「まだ邪魔をするかぁ!?」

 

「チッ、浅かったか」

 

八雲の狙いは胸部の魔石だったが、咄嗟に後ろに跳んだオリヴァスの判断が功を奏して魔石を掠る程度にしか刃が届かなかったのだ。

 

「レ、レヴィス、すまない、手をっ………!?」

 

オリヴァスはレヴィスに援護を要請しようとするが、言い切る前にオリヴァスの胸部からレヴィスの腕が生える………そう、レヴィスがオリヴァスの背後から腕を突き刺したのだ。

 

「な、何を………」

 

「何、もう少し力が必要になっただけだ」

 

そういうレヴィスの手には少し傷のついた極彩色の魔石が握られている。

 

「そんなっ………私とお前は、彼女に選ばれた………」

 

「………選ばれた?お前はアレが女神にでも見えているのか?アレが、そんなものである筈ないだろう」

 

レヴィスが腕を引き抜くとオリヴァスの身体は魔石を失ったせいで次第に塵となっていく。

 

「私がいなくては、彼女は………」

 

「勘違いするな、アレは私が守ってきた。これまでも、これからもな」

 

そうしてオリヴァスは完全に灰となって消える。

 

「全員警戒しろ!コイツ“魔石を食う”つもりだ!」

 

「「!?」」

 

そんな中、レヴィスの行動の意味に気付いた八雲が注意を促しアイズとベートもその意味に気付く。

魔石を体内に保有し、他の魔石を喰らう事で力を得る存在をこの世界ではこう呼ぶ。

 

「“強化種”!?」

 

オリヴァスの魔石を嚥下したレヴィスはアイズに向かって高速で接近すると拳を振るい何とかガードしたアイズを後退させる。

その援護にベートとレフィーヤが向かう中、八雲とアスフィは別のものを狙う。

 

「【万能者】!」

 

「はい!あっちは彼らに任せて私はアレ(宝玉)を!」

 

これまでの食人花絡みの事件にはこの宝玉が絡んでいると踏んだ八雲とアスフィはそれの確保に動いたのだ。

だが、それを阻む者がいた。

 

「ぐっ………」

 

「まだ潜んでやがっただと」

 

2人を襲撃したのは紫のローブと不気味な紋様の仮面を着けた男か女かもわからない姿をしている。

その襲撃者が付けていた銀のメタルグローブにより宝玉がある柱から遠ざけられてしまう。

 

「完全ではないが、十分に育った、“エニュオ”に持っていけ」

 

「ワカッタ」

 

そして、アイズと戦いながらそれを見ていたレヴィスがそう告げると、正体が判らないように加工された声で襲撃者はそう答えると、泣き叫ぶ宝玉に手を翳して眠らせると柱からそれを引き抜いて持ち去ってしまう。

 

「待て!」

 

八雲が襲撃者を追いかけようとするが、レヴィスがアイズを振り切って柱へと向かい、柱に寄生していた最後の巨大花に命令を下す。

 

「“産み続けろ”!枯れ果てるまで、力を絞り尽くせ!」

 

その命令に巨大花は食料庫のリソース全てを食人花を産む為に喰らい尽くし始め、【怪物の宴(モンスターパーティー)】すら生温い数の食人花を産み出す。

 

「くっ………」

 

その間に襲撃者は姿を消し、アイズは新たに生成したと思われる天然武器の紅剣でデスペレートを弾かれてしまい窮地に陥ってしまう。

それを見たベートはレフィーヤに発破をかけるとアイズの援護に言ってしまい、残っている八雲、レフィーヤ、フィルヴィス、そしてヘルメスファミリアの面々で食人花の対応をする事になる。

 

「ア、アスフィ!?無理だよこんなの!?」

 

「ルルネ!今は口よりも手を動かしなさい!」

 

「あ、あのっ!」

 

ルルネが喚き、アスフィが声を上げる中、レフィーヤは覚悟を決めた顔で皆に告げる。

 

「………私を守って下さい!」

 

「何分だ?」

 

そんなレフィーヤに八雲は問う。

 

「えっ?」

 

「詠唱に何分掛かると聞いているんだよ!」

 

「5分………いえ!3分下さい!」

 

「あいよっ!」

 

レフィーヤがそう宣言すると、八雲は死ヲ刻ム影を振るい数体の食人花を灰に変える。

 

「総員!【千の妖精(サウザンド・エルフ)】の元に!」

 

アスフィも覚悟を決めてレフィーヤに全てを託すべく、自身のファミリアに指示を飛ばす。

フォーメーションとしては八雲が最前線で大鎌を振るい、それを抜けてきたものをヘルメスファミリアの盾役が防ぎ、フィルヴィスが展開の早い防御魔法と超短文詠唱の魔法を使ってレフィーヤまで攻撃を通させない。

 

「【どうか、力を貸して与えてほしい】」

 

その間にもレフィーヤの詠唱は第2段階へと移行する。

 

「【エルフ・リング】!」

 

【エルフ・リング】妖精の輪とも言うこの魔法は同種族(エルフ)から自身の魔法の詠唱、効果を正しく教わっている場合にこの魔法に続けて詠唱する事でその魔法を借り受けて使う事が出来るという破格の性能を有する。

レフィーヤは師であるリヴェリアから彼女の有する魔法を教えられており、レベル3にしてレベル6の最高峰の魔法を使えるのだ。

【千の妖精】という2つ名もこの魔法の可能性を表している。

 

「【ーー間もなく、焰は放たれる】」

 

そんなレフィーヤが選んだのはやはり師の代名詞というべき魔法【レア・ラーヴァテイン】。

おそらく八雲の世界にあった北欧神話にある【レーヴァテイン】が由来であろう超広範囲火炎魔法だ。

八雲も遠征に同行した際に2人が放つそれを目にした事がある。

だからこそレフィーヤにこの場を任せ、自身はその露払い専念しているのだ。

アイズとベートもレフィーヤの詠唱が聞こえているようで、レヴィスをその魔法に巻き込ませる位置取りをしていた。

 

「【焼きつくせ、スルトの剣ーー我が名はアールヴ】!」

 

レフィーヤの最後の1節を聞き、ベートはレヴィスの大剣を押し切り距離を取ったその瞬間。

 

「【レア・ラーヴァテイン】!!」

 

味方を避けるようにレフィーヤから放射状に連続して放たれる火炎の極柱によって食料庫を埋め尽くしていた食人花は魔石も残らず焼き尽くされる。

レヴィスも咄嗟に大剣でガードするが、ガードし切れなかった焰がレヴィスの肌を焼き、それが致命的な隙きを作った。

 

「やぁっ!」

 

そんなレヴィスを愛剣を拾い疾走してきたアイズが大剣ごと袈裟斬りにし、魔石の部分こそ逸らされてしまったが深い一撃を与える事に成功する。

そこに追撃の一撃を放つが、今度はしっかりガードされてしまい、それでもレヴィスを大きく後退させた。

 

「はぁ、はぁ………今のお前には、勝てないようだな」

 

既に焼けた肌は魔石の恩恵によって治癒を始めているが、アイズから受けた傷の治りが遅い事から自身の不利を悟るレヴィス。

 

やつ(オリヴァス)の魔石から得られた力も想像よりも少ない………やはりあの男が何かしていたか」

 

死を刻ム影によって魔石から魔力が吸われていた事に勘付いたレヴィスはアイズの後ろに見える八雲を睨むが、八雲はしてやったりという顔である。

しかし、レヴィスは八雲達の想像もしていなかった手段でこの窮地を脱した。

 

「この柱は食料庫の中枢(きも)だ。これが壊れるとどうなるか………知っているか?」

 

「あのやろう、まさか!?」

 

そのまさかで、レヴィスは思いきり柱を殴打して亀裂を刻み、その亀裂に耐え切れず倒壊してしまう。

それに合わせて食料庫も支えを失い崩れ始める。

 

「逃げなければ埋まるぞ?特に、助けが必要なお前の仲間はな」

 

アイズが振り返れば魔法で疲弊したレフィーヤに、限界まで力を出したせいで足を痛めたベート、これまでの連戦で満身創痍なヘルメスファミリアに、最前線で食人花を相手し続けた八雲とほとんどのメンバーが危険な状態であった。

それでも、アスフィは撤退の指揮を取り、フィルヴィスは戸惑いながらもレフィーヤに手を貸し、ベートはルルネに肩を貸されている。

 

「アリア、59階層へ行け」

 

それに続こうとしたアイズにレヴィスはそう告げる。

 

「丁度面白い事になっている。お前の知りたいものがわかるぞ」

 

「………どういう、意味ですか?」

 

「薄々勘付いているだろう?お前の話が本当だとしても、体に流れる血が教えている筈だ」

 

その言葉に心当たりがあるのかアイズは黙って話を聞き続ける。

 

「お前自ら行けば、手間も省ける」

 

今の自分ではアイズを連れてそこに向かうのは一苦労どころでは無いと言外に告げ目を細める。

 

「地上の連中は私達を利用しようとしている………精々こちらも利用してやるさ」

 

まだ闇派閥の残党やそれを利用している存在がオラリオに居る事を口にすると、レヴィスは崩落の向こうへと姿を消してしまった。

 

***********************

 

「久しぶりに死ぬかと思ったぜ………」

 

食料庫の崩落から何とか逃げ延びた八雲達は八雲の【宝物庫】に保管されていた回復薬で傷を癒しながらリヴィラの街を目指し移動していた。

 

「今回は何から何まで世話になりっぱなしですね」

 

「ならまとめて貸しにしといてやるよ。今回の件で割と出費やべーだろ?」

 

「………恩に着ます」

 

アスフィもオリヴァスから受けた攻撃でボロボロになった防具の上に八雲から借りたローブを羽織っており、回復薬も含めたらかなりの貸しである。

 

「それは兎も角………アイズ」

 

「!?」

 

八雲に呼ばれ、ここでようやくアイズは自分が八雲からの頼まれ事を途中で放り出して別の依頼を受けていた事実に気付き、八雲の纏っているオーラがお説教の時のリヴェリアに酷似している事からサーっと顔から血の気が引いて青褪める。

 

「リヴィラに着いたらお説教な?」

 

「………はい」

 

そう告げられたアイズからは先程までの勇猛さは全く感じられなかった。

 




アイズ、結局お説教されるの巻。
この後、何とかその日の内に地上まで帰還しました。

次回からは熱い彼のお話になると思います。
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