ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか 外典   作:ミストラル0

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お待たせしました!
色々と家の事情がありましたが、復帰しました。

今回は訓練編その2となります。


五十六話 剣姫と剣技

ヴェルフを交えた初めての模擬戦の翌朝。

一同がいつもの訓練場に使っている空き地にやってくると、そこには何故かアイズの姿があった。

 

「ア、アアアアイズさん!?」

 

「むっ」

 

「何で【剣姫】が!?」

 

ベル達が驚く中、八雲だけはアイズの登場をわかっていたようで溜息をつく。

それから何となく答えは読めていたがここにいる理由を訊ねると………

 

「………フィンからもう少ししたら遠征だって聞いてたが、こんなとこで何してるんだ?」

 

「訓練に混ぜてもらいにきた」

 

即答だった。

 

保護者(リヴェリア)の許可貰ってこい!」

 

対する八雲も即座にそう返す。

それでも居座ろうとするアイズに他のファミリアでパーティーメンバーですらないアイズが参加するのはちょっと問題があると説明すると、アイズは目に見えてしょんぼりとしてしまう。

 

「だーっ!今日はお試しって事で見逃してやるから次は許可貰ってこいよ!」

 

「うん」

 

そうして結局は参加を認めてしまったアイズにも指導に協力させる形で訓練は始まった。

 

***********************

 

「………で、何でいきなり参加したいなんて言い出したんだ?」

 

訓練の合間に八雲は率直に訊ねる。

アイズに対しては遠回しな表現は無駄であるとこの数年の付き合いで理解しているからだ。

 

「彼の………ベルの強さの秘密が知りたくて」

 

訳すなら「最近アビリティが伸び悩み状態で、急成長しているベルから強くなるヒントを得られると思ったから」といったところであろう。

 

「(まあ、あのトマト事件の後の短い期間にシルバーパック倒したり、リリの時の戦闘見てたならそう思うわな)」

 

八雲もヘスティアに直接訊ねた訳では無いがベルに成長加速系のスキルが発現している事には勘付いてはいる。

だが、ベルの急成長はそんな経験値ブーストだけの産物でないことは指導している八雲が一番理解している。

 

「それで昨日も隠れて見てた訳か」

 

「気付いてたの?」

 

「あれだけガン見してたら姿隠してても気配で判るっての」*1

 

それと覗き見していたのはアイズだけではなく某女神もだったりする。

 

「参加してみて何かヒントは掴めそうか?」

 

「うん………でもそれはベルじゃなくて八雲から」

 

「俺から?」

 

アイズの言葉に首を傾げる八雲だったが、アイズは確信を持ったかのように八雲に告げる。

 

「八雲、“細剣も”使えるよね?」

 

「アイズに見せた覚えはねぇんだけどなぁ………ちなみに何でわかった?」

 

「ベルやあっちの赤髪の人に教える時はわざわざ同じ得物を使ってたから………それと勘」

 

「勘かよ………ちょっと待て、この流れから察するにもしかして」

 

「うん、私、我流」

 

「………そりゃあ不壊属性なきゃ武器が保たん訳だ」

 

一応基本的な扱いは学んだそうなのだが、アイズの魔法(エアリアル)を使う関係か武器の耐久値が保たないとのことで、今では不壊属性の武器を使うのが前提の我流剣術となってしまっているという。

なので怪物祭の時のように代用品の武器を使えば加減を間違えて破損させてしまうのだ。

 

「まあ、これは他の冒険者にも言える事か」

 

冒険者と言えば聞こえは良いが、その大半がならず者に近く、キッチリとした剣術を納めている者など極少数で、ほとんどが戦いの中で経験から磨かれた我流剣術。

レベルの低い者であれば適当に振っているだけなんて事も珍しくなく、自分の腕を武器のせいにして高価な武器でゴリ押しするようなのまでいる。

アイズは経験による我流剣術ではあるが、ステータスが高過ぎて不壊属性武器によるゴリ押しになっているという珍しくはないが、実力をしっかり出せているとは言い難いスタイルなのだ。

 

「とはいえベル達みたいにまだ矯正出来るレベルってわけじゃないから確実に強くなれるとは限らないぞ?」

 

「わかってる」

 

アイズが再び即答すると、八雲は諦めたかのように【宝物庫】から鞘に入ったレイピアを2本取り出し、その片方をアイズに投げ渡す。

 

「1日1回どっちかの刀身が折れるか決着つくまでの模擬戦、魔法は無しでいいな?」

 

要は見て盗めという事らしく、レイピアも数打ちの量産品で、レイピアの代金もベルへの授業料という事にし、休んでいたベル達も少しでも己の糧にしようと見学するようだ。

 

「で、では………始め!」

 

リディナの合図で先に動いたのは八雲。

アイズが先に仕掛けなかったのは八雲の動きを観察する為なのだが、八雲は身体を捻りつつ短い距離を一気に詰めてその勢いを利用した突きを放つ。

しかし、この一突きはアイズに見せる為に意図的に加減して放たれたもので、アイズはそれをサイドステップで躱すもそれを見越していた八雲は直様アイズに向かって短い突きを放ち、それをガードされると左から右下への斬撃に移行する。

それも防ぎ切ると、アイズは素早く短いバックステップからの突きを放つも八雲はそれを読んでいたかのように大きくバックステップをして回避する。

それでも避け切れてなかったようで、八雲の頬が浅く切れていた。

 

「あっぶな!?」

 

「ちょっと八雲の最初の突きを真似してみた」

 

「もう技盗んでるよ、この人………」

 

確かに見せるように放った突きだったが、もう吸収されているとは思わなかった八雲はアイズの評価を上方修正し、見せるような加減をする必要は無いと考えを改める。

 

「なら、次はもっと速くいくぞ」

 

そう告げると、八雲は大きく空いていた距離を一気に詰めるように突きを放ち、アイズがレイピアでガードするとそれを待っていたかの如く4連突きに移行し………

 

「あっ」

 

細いレイピアの刀身ではそのダメージに耐え切れずアイズの持っていたレイピアは真ん中からポッキリと折れ、折れた剣先側はクルクルと宙を舞い地面に突き刺さる。

 

「そ、そこまで!」

 

事前に取り決めていた通り模擬戦はそこで終了となるが、アイズは折れたレイピアをジッと見つめる。

そして、何かに気付き八雲に問い掛けた。

 

「………これ、狙ってやったよね?」

 

「えっ?」

 

「確かにいくら数打ちの武器とは言っても同じ武器同士の打ち合いでこんな簡単に折れるのはおかしい」

 

アイズの言葉に驚くベルを余所に鍛冶師であるヴェルフはアイズが言った言葉の意味を理解して同意する。

 

「それにあのルール(刀身が折れたら終わり)を決めたのも八雲様ですものね」

 

「ベートさんとの模擬戦の時も、リヴィラでレヴィスと戦ってた時も八雲は相手の武器を壊してた」

 

「………ホント、よく見てるなぁ、あんたら」

 

3人の指摘を受け、八雲は狙ってアイズのレイピアを折った事を認めた。

 

「今のは武器の脆い部分を狙って集中的に負荷を与えて破壊する技術で、俺は武器破壊(アームブレイク)って呼んでる。対人技として覚えておいて損はないぞ」

 

「鍛冶師泣かせだろ、それ………」

 

「とは言うが、古来より相手の武器を破壊するっていう手段は存在してな。例えばこんなのとか」

 

そう言って八雲が取り出したのは刀身が櫛のようになったソードブレイカーと呼ばれるカテゴリーの短剣。

 

「これは相手の剣の刀身を挟んでこう捻ると細剣程度ならあっさり折れてしまうんだ」

 

「使い難そうな形ですね………」

 

「まあ、細剣とかに対するやつだしな、これは」

 

次に取り出したのは真っ直ぐな金属の棒にL字に曲がった棒をくっつけたような形をしたもの。

 

「こいつは十手と言って刀に対して作られた極東版ソードブレイカーみたいなもんだ」

 

そう、日本では時代劇等でお馴染みの十手である。

 

「これは刀を挟んで受けたり折ったりする以外にも腕とかを挟んで拘束したりする捕縛術にも使えるし、大きさによってはヘルムを叩き割る棍棒のような使い方も出来る」

 

「このくらいのサイズなら片手剣のサブウェポンにもなりそうだな」

 

「俺が知ってる武器には剣をこの十手のような形状にして同じような機能を持たせたもんとかもあったぞ」

 

「八雲様のその武器に対する知識は凄まじいですね………」

 

「師匠、【宝物庫】の中にかなりの種類の武器しまってるからね………」

 

「そういや椿………ウチの団長と色々作ってるもんなぁ………俺も手伝わされた事あるし」

 

その後、朝の訓練を終えた一行は八雲のホームの店に戻り朝食を取りながら八雲から知っておいた方が良い武器の話を聞く事となった。

その朝食の際に試作品の新作ジャガ丸くんが振る舞われ、アイズはなんとしてでも訓練への参加許可をもぎ取ると決意したんだとか。

*1
そんなこと出来るのはある程度のレベルに達した人だけです




訓練編はもう少し続くんじゃよ

今回八雲が使った技は元ネタがあります
さて、わかるかな?
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