ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか 外典   作:ミストラル0

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大変遅くなりました!

しばらく不定期更新が続くかと思いますが、エタる事がないようどんな形であれ続けていくつもりなので今後もよろしくお願いします。


五十九話 仕上げと餞別

遠征2日前。

その日はそれまでの訓練の仕上げとして模擬戦が行われる事になった。

 

「さて、始めるとしようか」

 

そう告げる八雲の手には一本の刃引きされたバスタードソードが握られており、今回はこのバスタードソードと体術のみというのが八雲の条件である。

 

「リディナ、ヴェルフ、いくよ!」

 

「はい!」

 

「おう!」

 

一方のベル達は訓練で成長したという自負から前回のような失態はすまいと気合を入れている。

 

「やぁ!」

 

まずはヴェルフがリディナのカバーに入りベルが双剣を手に切り込んだが、八雲はバスタードソードをショートソードを振るうかの如く素早く動かしていなしてしまう。

そこへ後方のリディナのボウガンから矢が放たれるも同じ様に斬り落とされる。

 

「ここっ!」

 

更にベルとスイッチして前に出てきたヴェルフが自作の大剣を一閃する。

それを跳んで躱す八雲だが、ベル達の狙いはその一瞬の滞空時間。

 

「ファイアボルトッ!」

 

その一瞬を狙いベルのファイアボルトが放たれ命中するかに思われたのだが………

 

「狙いは悪くない………だが、甘い!」

 

八雲はバスタードソードを持っていない左手の掌から魔力放出を行い、ファイアボルトの射線上から外れただけでなく、もう一度魔力放出を使って空中から加速をつけてベルへ飛び蹴りをお見舞いする。

 

「いぃ!?」

 

「「ベル(様)!?」」

 

それでも直撃を避けようとガードはしっかりした様で、数M程飛ばされたが直ぐに起き上がる。

 

「あの態勢から回避した上で反撃までしてくんのかよ………」

 

「普通の人には絶対に真似できませんね………」

 

「………ごめん、師匠が剣しか使わないって言ってたからスキルの事忘れてた」

 

ベルが飛ばされた事でヴェルフが素早くリディナのカバーに戻り、八雲の非常識さに呆れながらも2人でベルの元へと集まり追撃に備える。

一方で、今日も見学に来ていたアイズは久しぶりに八雲の空中機動を見て自分の魔法で使い方を応用出来ないかと考える。

 

「前回に比べて咄嗟の防御やカバーリングも上手くなってるな………もう一段ギア上げても良さそうだな」

 

「「いっ!?」」

 

そして、八雲の無慈悲な宣言に3人は顔を引つらせる。

 

「安心しろ、3連撃以上の戦技(アーツ)*1は使わないでやるから」

 

「「安心でき(ますか)るか!!」」

 

その後、ベル達は前回の倍以上の時間戦い抜いたのだが、やはりリディナが最初に落された所から一気に崩されてしまい、次にベルを庇ったヴェルフが脱落し、残されたベルはマンツーマンで徹底的に扱かれる事となるのであった。

 

***********************

 

「さて、講評だが………」

 

「「(ゴクリ)」」

 

「後衛へのカバーリングは上手くなってるな、前よりは落としにくくなってる。そんでここからは個人への講評だが、まずはリディナ」

 

「はい!」

 

「この広場だと隠れられる場所が無いから仕方ないが、ダンジョンでは迷彩マントとかで隠れると2人がフリーになるし、奇襲とか戦術のバリエーションも増えると思う。という訳でプレゼントだ。このマントはリバーシブル仕様で上層と中層向けに作ってもらってある」

 

そう言って八雲は【宝物庫】から迷彩マントを取り出してリディナに手渡す。

 

「ありがとうございます!」

 

「次にヴェルフ、カバーリングやベルとのスイッチもスムーズに出来るようになったな」

 

「旦那にはそこを重点的に鍛えたられたからな………この前ステータス更新してもらった時に耐久と器用が跳ね上がってて驚かれましたよ」

 

ヴェルフには攻撃の防御や受け流しを教えており、その訓練内容は八雲の放つ攻撃を受け流すというもので、受け流し損ねたり防御し損ねても容赦なく攻撃されてしまうのでヴェルフはかなり必死にこの技能の習得を行った。

耐久と器用が爆上がりしたのはこれが原因である。

八雲の見立てではレベル2下位相当の相手ならヴェルフでも十数撃くらい耐えられるだろう。

 

「ヴェルフには鍛冶師に武器防具を贈るのは違うだろうし、帰りに素材を幾つかやるから持ってけ」

 

「あざっす!」

 

「最後にベルだが………そろそろ本格的にパーティーの指揮を覚える必要がありそうだな」

 

「指揮、ですか?」

 

「リディナとヴェルフが増えてやれる事も広がったし、今後は他の冒険者ともパーティーを組む事もあるだろうしな。とはいえ、俺やフィンのやり方をいきなり教えても難しいだろうし………あっ、そういやアイツらにも貸しがあったな」

 

そこで思い出したのは先日助けたとあるファミリアの団長(苦労人)

 

「確かアイツもアイテムピッチャーだし、リディナにも色々教えさせるか」

 

この時、件の団長は猛烈に嫌な予感がしたのだとか。

 

「あと、ベルにはコイツをやろう」

 

そう言って八雲がベルに差し出したのは八雲が愛用していた椿製の脇差だった。

 

「えっ?こ、こここれって師匠の!?」

 

ここ数年で何度も打ち直しされ愛用し続けた得物で、ベルもいつかヘスティアナイフ以外にあんな武器を持てたらいいなぁ、と密かに思い続けていた武器でもあった。

 

「椿曰く流石に打ち直しじゃもうバージョンアップも限界らしく、下層より下で使うのは無理そうでな。コイツ(白雲)もあるからお前に譲るよ」

 

「で、でも!この脇差って!」

 

以前ベルがメンテナンスに出しに持って行った際に武器屋の店主からこの脇差は八雲がレベル1の………犬人族の少女(ユーリヤ)と一緒にいた時期からずっと使い続けているものだと聞いている。

そんな思い出の品を自分なんかが使っていいのかとベルは心配しているのだ。

 

「俺がお前に持っててほしいって思ってんだ。それにソイツは俺がよく使ってた得物だから俺をよく知ってるヤツには俺の縁者だって直ぐに判るだろうしな。困った時に助けになってくれるだろう」

 

「し、しょう………」

 

そこまで言われては受け取らない訳にはいかず、ベルはしっかりと脇差を手に取る。

 

「今までは特に銘も付けてなかったんだが、いつまでも無銘ってものあれだし、白雲に連ねて“白閃(はくせん)”って銘を付けといた」

 

茎にも“白閃”としっかり彫られているそうだ。

 

「ちなみに椿からの伝言でメンテは今後ヴェルフに頼むように、だとよ」

 

「俺への課題ってわけか」

 

「そういう事」

 

3人への講評と餞別が済んだところで近くで見学していたアイズがデスペレートではないが数打ちとは思えないレイピアを抜いて八雲の前に立つ。

アイズもこれまでの仕上げとして八雲と打ち合うつもりのようだ。

 

「言っとくが、魔法(エアリアル)は無しだかんな?」

 

「うん、貴方は白雲(それ)を使って」

 

「いいのか?」

 

「うん、教えてもらった技はもう全部頭に入ってるから」

 

「………さいですか」

 

ベル達からしたらその模擬戦は壮絶としか言いようの無い打ち合うだった。

目まぐるしく動き回り時折鋭い刺突や斬撃を放つアイズに対して八雲は抜刀術を織り交ぜたカウンターでそれを打ち返す。

当然レベルが上のアイズが手加減をしているとは言え、レベル6とレベル4の高レベル冒険者の戦いである。

激しくないはずがない。

 

「ベル、視えるか?」

 

「攻撃の一瞬だけならなんとか………ヴェルフは?」

 

「俺もそんなところだ」

 

「あのお二人は出来れば敵にしたくありませんね」

 

「「間違いない」」

 

その模擬戦は不壊属性の白雲と打ち合い過ぎてアイズの用意したレイピアが後数度打ち合ったら折れるかもしれないというところを八雲が見極めて止めとなった。

聞けばこのレイピアは怪物祭の時に折ってしまったレイピアを修復して貰い買い取ったものだという。

尚、買い取れたのは以前同行した際に狩ったゴライアスの魔石の分前があったおかげなんだとか。

 

「これで今度はあの人にも負けない」

 

「ついでだし、もう1つ教えておくか」

 

「?」

 

「ベル達も見ておけ」

 

【宝物庫】から訓練用の案山子とロングソードを取り出した八雲は案山子を立てた後に少し離れた場所に立ち、左手を前に翳しながら右手を肩より上に上げ、刀身を案山子に向かって水平にし、まるで矢を引き絞るように引いた構えを取る。

そして、少し溜めを入れてから踏み出すと同時にロングソードを突き放ち案山子を射貫く。

射貫かれた案山子は突かれた部分のみがキレイに抉れており、その威力の凄まじさを物語る。

 

「ヴォーパルストライク………そう呼ばれていた技だ」

 

それは八雲が元の世界で見たとある作品の主人公の代名詞とも言われた必殺の一撃。

シンプルではあるが、この世界の冒険者が使えば元の技以上の威力を出す事も可能だろう。

アイズのリル・ラファーガの風と共に放たれでもしたらその威力はとんでもないものになりそうでもある。

 

「ヴォーパル、ストライク………」

 

その技にアイズだけではなくベルも衝撃を受けていた。

八雲が何故ベル達にもこの技を教えたのかは直ぐに判った。

この技はシンプル故に刺突攻撃が可能な武器であればほぼ転用が可能なのだ。

アイズにこれを教えたのもレヴィスと直接戦闘をした事があるが故にだ。

 

「明日は遠征前だし訓練は無しの完全休養日とする。今日の訓練も終いだ」

 

こうして八雲とベル達、そしてアイズの奇妙な組み合わせの訓練は終わりを告げたのであった。

*1
ベルやアイズに教えた漫画やアニメ、ゲームの技を再現したものの総称




最後のアレは皆さんご存知かと思われる黒いあの人の技です。
ベル君は中の人が同じなので割と使っても違和感無いんですよねぇ………

遠征前の訓練編はこれで終わりとなります。
次はこのまま遠征(ミノ戦)か一話閑話を挟む事になるかもしれません。
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