ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか 外典   作:ミストラル0

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今回は八雲の話ではなく、ベルSideのお話になります
色々と原作と変わっている点があるので原作通りとはなりませんでした


六十五話 二代目首狩り族と首狩り兎

八雲達が穢れた精霊らと交戦している頃、ベル達は何をしていたかを話しておこう。

まずはミノタウロスの変異種を討伐した事でベルはレベルアップに足る偉業を成したと見做されレベル2へとレベルアップを成した。

オマケで【英雄願望】と【首狩り】いうスキルが発現した。

【首狩り】が生えていたのはまあこの世界線で師事した人物(八雲)の影響であろう。

尚、ヴェルフにも【気絶耐性】なるスキルが生えたのは最後までベルと共に戦えなかった事への後悔が反映されたものと思われる。

また、ミノタウロス戦で壊れた装備の修復・新調等をしている間にベルは八雲から紹介された先輩冒険者であるザメルにレベルアップ後のズレ等の修正の為に手合わせをしてもらった。

ザメルもレベル3ではあるが、このままだとベルに追い付かれると奮起したそうで、ガネーシャもご満悦だったとのこと。

そして、レベルアップ祝いとしてアドバイザーのエイナからサラマンダーウールの割引クーポンを貰い、数日の準備を終えた一行は中層攻略を目標に攻略再開した。

 

「にしてもベルのやつ、レベルアップしてから増々八雲の旦那に似てきたよな」

 

「ですね〜」

 

「2人共、どうしたの?」

 

「「いや、なんでもない/ないです」」

 

首の無い死骸が塵となり、魔石だけがのこされていく光景を量産するベルにリディナとヴェルフはかつて見た八雲の戦闘を思い出していた。

実は神会の二つ名決定会議にて、ベルの二つ名として【二代目首狩り族】【首狩り兎】が候補として挙げられていたくらいには神々からもベルは八雲2号のような扱いを受けていたりする。*1

 

「た、助けてくれ!」

 

そこへ4、5人かの冒険者パーティーが駆け込んでくる。

 

「どうしたんですか?」

 

「イ、インファントドラゴンが出たんだ!」

 

「インファントドラゴンか………」

 

インファントドラゴンは上層の実質的階層主とも言われる程の強さを持つモンスターであり、駆け込んできた冒険者パーティーはそこそこ経験は積んではいるもののレベル1ばかりの為にインファントドラゴンを相手にするのは荷が重かったようだ。

ヴェルフからすると、椿や八雲が瞬殺している光景ばかり浮かぶので少し感覚が麻痺している。

 

「インファントドラゴン………」

 

しかし、ベルからしたらインファントドラゴンはかつて師である八雲がレベル2の頃に倒した事があると聞かされていた事から「いつかは僕も………」と密かに思っていたモンスターだったりする。

すると、ベルの右手が白く輝き、「ゴォーンゴォーン」と鐘が鳴り響くような音がし出した。

 

「ベル、何だその音?」

 

「わ、わからない………でも、何だか力が湧いてくるような不思議な感じがする」

 

「イ、インファントドラゴンが来たぞ!」

 

そこへインファントドラゴンが冒険者パーティーを追って現れる。

 

「ベル様!ヴェルフ様!」

 

「とにかく今はアイツを何とかするぞ」

 

「う、うん!」

 

そうして戦闘態勢を取る3人。

そして………

 

「【ファイアボルト】!」

 

まずは開幕に一発とブレスを吐こう口を開いたインファントドラゴンの口にファイアボルトを撃ち込もうとベルが魔法を放つと………

 

「グギャアアアア!?!?」

 

想定していた威力より遥かに強力な爆発が起きてインファントドラゴンの首が消し飛んだ。

そのまま首から上を失ったインファントドラゴンは地に倒れ伏して塵へと変わる。

 

「へ?」

 

「「はぁ!?」」

 

これには放ったベルもファイアボルトの威力をよく知るリディナやヴェルフも、そして、それを見ていた冒険者パーティーも開いた口が塞がらなかった。

 

「助けた代わりに先程の事は………」

 

「ああ、多分言っても神々しか信じてはくれまい。それに助けてもらったんだ。この事は口外しないと約束するよ」

 

落ち着いたところでリディナが冒険者パーティーのリーダーに先程の事は口外しないように頼み、リーダーも助けてもらった恩から口外しないと約束して別れる事となった。

 

「にしてもさっきのは何だったんだろうな?」

 

「あの馬鹿げた威力は先程の1回だけのようでしたし、やはりあの光が原因かと」

 

「だよね………」

 

「試したところ、ベルの意思で自由に使える理由でもなさそうだしなぁ」

 

けれど、インファントドラゴンの首が消し飛んだのはまず間違いなくあの光と【首狩り】のバフの相乗効果だろう。

多分だが、ベルが口を狙わなければもっとマシな倒され方だったと思われる。

そんな想定外の事があったのでその日の攻略は中断して撤収する事となったが、インファントドラゴンの魔石とドロップアイテムのおかげで収支は+だった。

 

***

 

翌日、改めて中層へと向かったベル達はあのモンスターと邂逅した。

 

「ベル様ですね」

 

「ベルだな」

 

「いや!アルミラージだから!似てるのは白い毛色と赤い眼だけでしょ!?」

 

それはゴブリンと同じカテゴリーに分類される2足歩行し、額に一本角を持つ兎型のモンスターであるアルミラージ。

毛色は白や黄色に近い白で、眼も赤とベルに似た特徴を持っている。

 

「いや、この首への致命傷(クリティカル)狙いなスタイルとかそっくりだぞ?」

 

「ですです」

 

そう言いつつもしっかり対処出来ているのは八雲との模擬戦でも散々狙われた箇所だったからだったりする。

 

「あっ、見てください!あそこのベル様はほんとベル様そっくりです!」

 

「ありゃここでやられた冒険者の短剣か?随分と様になってんな」

 

そうしてアルミラージの一団を倒し終えたところに現れたのは短剣を逆手二刀流するとかいう増々ベルそっくりなアルミラージだった。

実はこのアルミラージ、通常のアルミラージとは異なる特殊な個体で、数年前にとある冒険者の戦闘スタイルに感銘を受け、その冒険者が中層に籠もっていた際にその戦闘を見て学んだとかいう変わり物。

普段は中層でも下の方で研鑽を重ねているのだが、今日はとある予感がしてこの中層の上の方まで上がってきたのだ。

そして、そのアルミラージは一瞬でベルとの距離を詰めるとその首へと短剣を振るう。

並の冒険者ならその一撃で勝敗が決する程のそれをベルは自身の双剣で弾き返し、お返しとばかりにアルミラージの首へと双剣を一閃するも、今度はアルミラージにその一閃は弾かれてしまう。

 

「「えっ!?」」

 

その一瞬の攻防を目の当たりにしてリディナとヴェルフは驚愕するが、ベルにはアルミラージのその戦闘スタイルが誰の模倣であるか直ぐに判った。

対するアルミラージもベルの戦闘スタイルの源流にあるのが誰であるかを察し、先程よりも姿勢を低く短剣を構える。

 

「なるほど………これは負けられないね」

 

ベルも姿勢を低くしたかと思えば両者は同時に駆け出し刃を交える。

気を抜けば首を斬り飛ばすと言わんばかりの剣閃がお互いから放たれ、相手のそれを相殺(パリィ)する繰り返し。

その凄まじい応酬にリディナとヴェルフは手を出す事が出来なかった。

 

「な、何なんだよあのアルミラージ………冗談じゃなくほんとにベルが2人いるような感じじゃねぇか………」

 

「見たところ強化種ではなく、前のミノタウロスのような変異種でしょうか?」

 

しかし、その決着は早くに決した。

というのも、ベルが使っているのは先日ヴェルフによって整備されたばかりの双剣。

対するアルミラージの使う短剣は倒した冒険者から戦利品として持ち去った短剣で、当然アルミラージにそれを整備するという概念はなく、消耗したり壊れれば別の得物を手に入れて使うだけであり、その短剣にも少なからずダメージが蓄積されたままだったのだ。

そんな両者が何度もぶつかり合えばどうなるか等誰が見ても明らかだった。

 

「あっ、アルミラージの短剣が!」

 

「見たところ、いい短剣だが、状態がよくなかったな………それに、ベルのやつ武器破壊(アームブレイク)を狙ってやがったな?」

 

そう、ヴェルフの言う通りベルはただ打ち合わせるだけでなく、短剣の一点を狙って打ち合わせていたのだ。

それによりアルミラージの持つ短剣の耐久値が限界に達したのだ。

アルミラージもその絶技に眼を見開く。

そして、片方とはいえ得物を失ったという事はベルの次なる攻撃を防ぐ事が叶わないという事。

それを悟ったアルミラージは眼を閉じてその一撃を受け入れる。

だが、その胸の内にあったのは悔しさだった。

 

「兄弟………」

 

そんなアルミラージにベルは思わずそう呟く。

明らかに致命傷の一撃を受けたアルミラージはその身を地に落としつつもベルを見つめ、残ったもう1本の短剣をベルに差し出した。

短い時間ではあったが、兄弟弟子とも言える両者は確実に分かりあったのだ。

ベルが短剣を受け取ると、アルミラージは静かに塵となって消えていった。

 

「な、何かスゲーもんを見た気がする」

 

「は、はい………もしもあのアルミラージの短剣が万全の状態でしたら勝負はわからなかったかと」

 

暫くアルミラージが残した魔石とアルミラージの角に黙祷を捧げていたベルが眼を開くとヴェルフに声をかける。

 

「ヴェルフ」

 

「何だ?」

 

「帰ったらこれを使ってこの短剣を打ち直してほしい」

 

「ああ、わかった」

 

元は名も知らぬ冒険者の持ち物であった短剣だが、今のベル達からしたらあのアルミラージがいた証である。

故にベルはアルミラージが残したドロップでその短剣を打ち直してくれるようにヴェルフに頼み、ヴェルフもこれを請け負うのであった。

*1
結局は原作通りの二つ名に決まった




このアルミラージ変異種、中層に進出した冒険者にとっては鬼門となっており、【首狩り兎(ヴォーパルバニー)】という二つ名持ちだったりします
そして、やはり感銘を受けたという冒険者は八雲です
しかもコイツ、自分が何をしても勝てないとわかった相手には姿を現さないとかいう厄介すぎる察知能力まで備えていましたが、ベルから感じた八雲の気配に姿を現しました


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